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狂気の沈黙科学者〜マッド・サイレンティスト〜

15黒椿:2011/10/31(月) 17:45:05 HOST:110-133-210-156.rev.home.ne.jp

第一章「大きすぎた躍動」
1.「武士(もののふ)たちの沈黙」
「あー、えっと・・・」
言葉も出てこなかった。逆に今の状況で気丈に振舞いつつ、ジョークのひとつでも言える人間だったのならどれだけ楽だったか。
耀にとっては、それほどに緊急事態だった。普段どおりに家に帰ってきて、二回にある自分の部屋に荷物を置いて、洗面所でうがいをしてからなにげなく入ったリビング、に何を隠そう今現在、堂々と少女が座り込んで茶を啜っていたのだ。
「・・・どなた様ですか?」
気まずい沈黙に耐え切れなくなった女性経験ゼロの耀が、がんばってのどの奥から言葉を搾り出すと、少女はやっと耀に気づき無言で振り向く。
その動作だけでも、目を引かれるものがあった。日本人にはありえないほど色素の薄いパールグレーの髪の毛をしているが、外国人にしてはまったくの手ぶらだった。
一言その少女を形容するなら―――――美しかった。「とても」とか、「絶世の」とかいくらつけても取るに足らない、言葉も要らないぐらいに。
そんな少女は、さっきから耀のことを見つめて離さない。その癖、耀の質問に答える気配はまったくなかった。
ここにいることがさぞ当たり前のように居座るその少女は、耀の狼狽をじっくり楽しんだ後、電話の横に歩いていき、紙とペンを手に取った。
耀がいることなど分かっていて、何も思うことがないようにその少女のペンだけがスラスラと進む。
『上がってるわ。先にお茶を一杯もらったけど気にしないで』
ぴんと伸ばされて少女の手の先に掲げられたメモ帳には、丁寧な字でそう書かれていた。
数秒間いろいろなことが頭の中をめぐるが、数あるつっこみの中の選択肢から耀は一息飲み込んでから、口を開く。
「電気ぐらいつけろ!!」
耀は別に取り乱したわけではない。いわばつかみジョークのようなものだった。
・・・が、少女はまじめに考え込み、メモ帳に字を書くと見せてくる。
『ごめんなさい。耀が帰ってくる前に電気代を消費するのは気が引けたから・・・』
(そういうことじゃねぇんだよ!!)
耀は心の中で思い切り叫ぶ。だが一人でボケてスベるイタい奴のフォローをしてくれるやさしい者などいない。
自分には学力や運動神経どころか、人を笑わせることもできないのかと、耀は膝をつきたい気分だった。
「ごめん。せめて君の名前くらい教えてくれ・・・」
表情一つも変えてくれない少女の目が見られなくなった耀は、普通の質問に移った

※2スレ目と内容が同じところがあるのは仕様です。


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