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光のロザリオ

9竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2011/07/17(日) 14:28:23 HOST:p3161-ipbfp3105osakakita.osaka.ocn.ne.jp
第2話「黒い少年の持つ十字架」

「………」
 黒崎は目を開ける。
 自分はどうやらベッドに寝ている、ということは把握できるが身体が異常にだるく感じ、身体を起こそうという気がまるで起きない。
 ふと、黒崎は目覚まし時計に目をやって現在の時刻を確認する。
 時刻は午前八時十五分。

 学校開始は八時三十分。つまり、遅刻まで残り三十分。

「のわああああああああああっ!?」
 この日は自分の悲鳴で幕開けとなった。

 黒崎は学校へ猛ダッシュで向かったため、何とか二十五分には学校の校舎へと入ることが出来た。
 四階にある教室へと向けて、廊下を歩いているとスッと金髪の女子をすれ違う。
 もうすぐ始まるのに何処に行くんだろうと思い、黒崎はその女子に声をかける。
「奥村。何処行くんだ?もうすぐ始まるぞ」
 奥村と呼ばれた女子はくるっと振り返って、黒崎の方へと視線を向ける。
 奥村加凛(おくむら かりん)。中学の頃は不良と呼ばれる問題児で、一緒にいる女友達を苛める生徒から彼女を守っただけで問題児扱いされてしまった、とクラスの生徒の噂が黒崎の耳にも届いていた。
 その少女がこの学校にいるらしいが、黒崎にはそれが誰だか分からないし、クラスもしらない。現在はその少女を苛める生徒もいないのか、机に足を乗せて座っている以外は成績も優秀だし、何も問題はない。
「別に。ただ倉木先生に呼ばれてるだけだ。大した内容じゃねぇよ」
 奥村の口調は男みたいで、男子としては話してても違和感がないのだが、普通の女子の格好をしてるため、どこか合ってない様な気がする。
 そっか、と黒崎は短く返すと奥村は再び歩き出す。
 黒崎が教室へ入ると、目が合った白銀がしたり顔で笑みを浮かべている。
 その顔に怒りを覚える黒崎だったが、ここは怒りを抑えて、相手に近づく。
「あら、遅かったね黒崎君」
「あらじゃねぇよ。昨日の記憶ほとんどないんだけど、結局どうなったんだ?」
 黒崎は鞄を机に置き、立ったまま白銀に問いかける。
 白銀は人差し指をピンと立てて、
「君は結局七十八回目で倒れて、私がベッドに寝かせてあげたのよ。もう夜も遅かったし、私も泊まってったけど」
 じゃあ起こしてくれよ、と黒崎は机をバン!!と叩くが白銀が黒崎の口に人差し指を当てる。
「そう叫ばないの。君の寮は男子寮でしょ?そこに私がいた、なんて知れたら私達二人揃って何されるか分からないわ」
 誰のせいだよ、と黒崎は思うが心の底にしまっておくことにした。
 白銀は鞄の中から弁当を取り出して黒崎にスッと差し出す。
「君の分も作っておきましたー。どうせお昼持ってきてないんでしょ?」
 白銀は色々と奇想天外な奴だが、こういうことをされると僅かにきゅんとしてしまうほど黒崎は軽い男だった。
 黒崎は弁当を受け取り机に座ると、ポケットから何かが落ちたのを白銀が目撃する。
「何か落ちたよ」
 白銀が身をかがめて、それを拾う。
 拾ったものは黒崎が眼鏡の男からもらったロザリオだ。黒崎に渡そうとしたところで、拾ったものを白銀が見ると、急に彼女の表情が変わる。
「……白銀?どうした?」
 白銀は信じられないものでも見るかのように、黒崎へと視線を向ける。
「こ、これ……。何処で……?」
 黒崎は首をかしげながら、貰ったときのことを思い出す。
「これは街であった眼鏡の人にもらったんだ。気休め程度にって」
「そ、そう………」
 白銀はロザリオを黒崎に渡すと、それからしばらく口を閉ざしていた。


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