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てんしさまのすむところ-刹那の大空-

60霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2012/09/16(日) 03:00:35 HOST:i121-115-63-50.s04.a001.ap.plala.or.jp
 「うあー……今何時ー……?」

 気づけば眠っていたようだった。窓から入り込んでくるのは優しげで、少し寂しそうな、夕日に光。その光の中に、玲が立っていたような気がして、私は目を擦る。何も……いなかった。いる訳がなかった。こんな幻覚を見るなんてどうかしている。
 ため息をついて、傍においてあった携帯で時間を確認する。日にちが進んで現在十八時半過ぎ。どうやら丸一日眠ってしまっていたようだ。着信履歴には葵の文字。今日の十時から一時間おきに電話をかけてきているようだ。……暇なのかな?
 とりあえず顔とか洗ってから電話しよう。そう考えて、もぞりと身体を起こすとちょうど部屋に兄が入ってきた。

 「おー随分寝坊したなー。今さっき櫻井のところの末っ子が来て、病院に来いって言い残して行ったぞ? 玲少年が目を覚ましたんじゃないか? ちょっと待て、ヒデー顔してるから、とりあえずシャワー浴びて来い。母さんには俺から伝えとくから」

 兄の言葉を聞いて、私は勢い良く立ち上がった。鏡を確認すれば確かにそれは酷い有様。……急いで準備して行かなくちゃ。そう考えて、兄にお礼を言うことすら忘れてさっさとシャワーを浴びにお風呂場に。そんな様子を兄は笑ってみていた。
 シャワーを浴びた後、髪を整えてリビングに出ると兄はにっこりと笑って立ち上がった。……その笑顔が少し不気味だったなんていえない。兄はいつものだらしないスウェット姿から、Tシャツにジャーパンと言う格好に着替えていた。
 ……どこかに出かけるのだろうか? そう考えながらも私はパーカーを腰に結んだ。

 「おし、優しいお兄ちゃんが送ってやろうではないか!」

 車のキーを見せびらかすようにしながら兄はいう。私も急いで病院にいきたいから黙って頷いた。この際、本当に優しい人は自分で優しいなんていわないと思ったけれど、そんな事はどうでもいい。はやく玲に合いたい。話をしたい……。
 ただ、玲が起きたのかもしれないと言う希望で一杯だった。
 兄と家をでて、さっさと車に乗り込む。そういえばお母さんに伝えるって行った兄も一緒に出てきているんだけど、こういう時って誰がお母さんにこのことを伝えるんだろうか? 後で兄が電話でもしてくれるんだろうか? そんな事を考えていると車はゆっくりと走りだした。
 病院。急いで玲の病室に入ると、玲は目を閉じて横になっていた。……なんだ起きていないんだ。残念に思いながら玲に近づく。じゃあ葵は何で病院に来いなんて行ったのかなぁ? と、言うか葵たちは? 姿の見えない友人達に呆れながらも私はベッドへと近づいていく。
 ちなみに兄は見たいテレビがあるからとさっさと帰っていった。
 ぎりぎりまで近づくと、玲は少し身動ぎをした。今まで、ビクともしなかったのに……。それだけのことが嬉しくて、私は玲の頬に触れる。元気だった頃に比べるとまだ冷たかったけれど、確実に前よりも暖かかった。そんな些細かもしれない変化が嬉しい。

 「……ぅ……ん?」

 ゆっくりと玲が目を開いた。私に顔を向けて、何故私がここにいるのか分からないとでも言いた気な表情を浮べていた。

 「おはよう、馬鹿玲。気分はどう……」
 「っ……ダレ? ……僕の知り合い、なの?」

 身体を起こそうとして顔を顰めた玲は私に向かってそういった。冷たい感情を感じない声。玲が何を言っているのか、理解できなくて……いや理解したくなくて、私は必死に玲に話しかける。おどけた調子で、事故のことを、皆の事を。
 ……私の声は、震えていた。
 玲は理解していないようで、ただただ無表情で固まっていた。始めよりも少しだけ首を傾けているように見えた。必死になって私は“私達の”思い出を並べていく。中学生の頃葵が大会でドジをしてよりによって最後の大会で負けたこと、みんなで一緒に遊園地に行ったこと、みんなで海に、キャンプに……いろんなことを行ったこと。

 「美穂ッ!! 玲は!?」

 息を切らせて葵が部屋に飛び込んでくる。もしかすると葵が玲の変化に気づいてみんなの家にたずねて伝えて歩いてたのかもしれない。皆なんだかんだでまともに電話でない人だし……。葵は目が覚めた様子の玲を見てほっと息を吐いた。


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