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てんしさまのすむところ-刹那の大空-
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:
霧月 蓮_〆
◆REN/KP3zUk
:2012/08/18(土) 20:56:25 HOST:i121-115-63-50.s04.a001.ap.plala.or.jp
でも、俺は家を飛び出していた。鍵なんて閉める必要性を感じなかった。ふらふらと辺りをさ迷い歩く。行くなんてなんてあるわけなかった。必要もなかった。外の空気を吸って、自分の思考をきちんと整理で着ればいいのだから。外ならスッキリできると思っただけだから。
流石にまだ春の夜は寒かった。まぁ、別にどうでもいいんだけど。少し寒いぐらいで死ぬような軟弱人間ではないし。
ふと、俺の前に、踝まであるであろう綺麗な白金の髪に紅い瞳の青年が現れた。髪は淡い光を放ち、その紅い目は冷たく俺を見据えて、全く動かない。口は、何かを言いたげに開いたり、閉じたりを繰り返している。背中には純白の翼。ああ……天使か。そんな風に考えてぼんやりと青年を見つめる。
……青年は静かに、儚く笑った。
「儚き命……貴方には短き悪夢を……」
俺に近づいてきた青年は、静かに俺の首筋に触れた。その手がとても冷たくて、何故か心地いい。……その温度に、俺は最近良く触れているような気がした。青年は俺の頭をなでると闇に溶けて、消えていった。まるで、最初からそこになどいなかったように。
俺がそこでぼんやりを呆けていると、携帯が鳴り響いた。……美穂だ。また震えだした手で、携帯を耳に当てる。飛び込んできたのは、酷く不安そうな美穂の怒鳴り声。鍵も閉めずに、上着も着ずに何処に行ったんだと言われた。
ああ、何だ。いつもの美穂じゃないか。なんだかんだ言って俺を気にかけては小さなことで小言を言うために電話をしてくる。俺が言葉を返してやれば、いくらか安心したようで、美穂は怒鳴るのを止めた。その後は今日のパーティーの話になる。まぁ、俺が強引に話を振ったのだけど。
ゆっくりと歩き出す。フラフラと不完全な闇の中を。耳に飛び込んでくるのは心地いい少女の声。俺も笑ってそれに答えながら辺りを歩く。辺りに見える街灯の明かりはこれでもかって言うぐらいにかすんで見えた。いつもは明るいはずの道なのに今日は何かが違う。
「何か、そっち騒がしいみたいだね」
「ああ……何かトラックが暴走してるみたいだな。危ねー」
周りの叫び声から情報を得る。何でもトラックが異常なスピードで暴走して、今にも歩道に突っ込んでいきそうらしい。轢かれてしまった人もいると聞いて俺は辺りを見渡す。人の姿は何も見えなかった。ただただ、聞こえてくるのは危ないよという声。
今度はさっきとは反対の歩道に突っ込みそうになっているというトラック。そこには一人の少年がおぼつかない足取りで歩いているのだそうだ。周りの人がいくら叫んでも少年は気づかない様子で、フラフラフラフラ。……だから俺は少年を笑ってやる。
「今、轢かれそうになってるのに気づかないやつがいるんだと。ははっ、間抜けなヤツだよな」
「玲、それって!!」
「――ッ!?」
美穂が何かを言おうとした瞬間、鈍い音と、衝撃。……妙な浮遊感の後、自分の身体が地面に叩きつけられて、転がるのが分かった。手からは携帯が滑って……。何だ、周りが必死になって叫んで、助けようとしていたのは、俺だったのか……気づかなかった。
頭と、腹に激痛。顔や手はひりひりして熱いのに、それ以外は酷く寒い。腹には何か刺さっているような感覚。こういうときどうすればいいのか、目を開こうにもどうすればいいのか分からない。ああ、動くってどうするんだっけ?
話すって、声を上げるってどうするんだっけ? 分からない。嗜好に靄がかかって、何も考えられなくなっていく。
……痛い、熱い、寒い。感覚が分からない。何が正しいのかも分からない。今日何があったかも思い出せない……。何もかもが分からなくなっていく。俺、何デコンナ事二ナッテルノ? 意識は吸い込まれるように、闇の中へ落ちていった。
――オレはダレ?
NEXT Story 第四章-壊れたキオク-
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