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てんしさまのすむところ-刹那の大空-
49
:
霧月 蓮_〆
◆REN/KP3zUk
:2012/08/16(木) 00:16:26 HOST:i121-115-63-50.s04.a001.ap.plala.or.jp
フッと俺の前に、子供が降り立つ。隠した右目、赤い瞳。黒い髪、赤と黒い服に翼。悪魔、ネーロ=ディスペラッツィオーネ。俺の前に一番最初に現れた“人外”で欠片を狙う者。もう自然に構えが取れるようにまでなっていた。
「……今日は生憎と力が出せない日でな。安心していい。今日は襲わない。それは約束しよう」
「……信じられるとでも?」
腕を組みながら俺を見上げるネーロに俺は言う。そうするとネーロは確かに、とでも言うかのように笑って見せた。
「信じられないだろうな。でも本当だ。俺は悪魔でありながらも誠実な方でね?」
さりげなく、情報の欠片で探ってみるが嘘を言っているような様子はない。……まぁあいつ等を相手にするよりはマシだろうか。別に会話が嫌いとか、ネーロが嫌いだというわけじゃないんだし。普段はネーロが襲い掛かってくるからそれに対応して応戦してただけ。
ネーロはフッと笑う。その表情は何処か嬉しそうで……。何だか不思議な奴だと思う。何度か戦いはしたけど、絶対に本気に殺してこようとはしなかったし。こいつが本気で来ていれば俺はなすすべなく殺されている。……それは情報の欠片から手に入れた“情報”。
ネーロは静かに俺の近くへと歩いてくる。狭い路地裏にいるからだろうか? その翼はいつもよりも小さく折りたたまれている。そんなことが少し面白くて、俺は笑みを浮かべる。それにネーロは少し驚いたようで、動きをとめてジットリと俺のことを見てきた。
「……嘘で塗り固めた“セカイ”は楽しいか?」
「は? どういうことだ?」
予想もしていなかった言葉に俺は首をかしげた。気づけば本当の真正面に移動してきていたネーロはその手で俺の頬に触れる。その手は彼が人間じゃないからなのか、酷く冷たくて……それなのに心地がよかった。何故か暖かい温度よりも落ち着く気がする。
真っ赤なその瞳は真っ直ぐと俺の目を見つめてきた。ああ、思ったよりも綺麗な色をしているんだ。ただ、それは冷たさの宿る色……。光などは宿っていない。変わりに宿るのは闇……。冷たくて、鋭いそんな闇。
「……君に“本当”はあるのかい? 嘘で固めて生きてきた君には、本物の存在があるか?」
息が詰まる。“本物の存在”、それの検討がつかずに俺は黙ってネーロの目を見つめ続ける。……そらすことを許されないような、そんな錯覚。
「俺が断言してやろう。お前に本当の存在などない。友人も、何もかも偽者だ。お前が偽者だから」
胸を抉られるような感覚。“偽者”……自分でも理解しているはずの、自分が望んでいるはずの言葉を言われたはずなのに、俺はショックを受けて固まっている。何故、コイツにバレた? 戦いの最中でボロを出したか? それともコイツが人外だからか? ……いや、違う。もっと別の何かが原因だろう。
じゃあ、一体何が? そう考えるももう、理由は浮かばない。余裕のなくなった俺は取ってつけたような笑みを浮かべているのだろうか? ネーロは嗤う。引き裂いたような残酷な笑み。そして彼は告げる。俺を“止める”一つの言葉。
「……お前に向けられるものは全て嘘さ。君が向けるものが嘘なようにね。まぁ、君は人間の大切な部分を“理解してないし持っていない”のだから関係ないだろうね」
喉が干上がる。声も出せずに俺は固まっていた。何故、コイツは知っている? ……何故? 何故、何故何故何故なぜナゼ!? 何故コイツは俺の欠陥を知っている? 何故コイツは俺の嘘を見破った? ばれない自信はあった。絶対に完璧だった。なのに、何故……。
信じられない、信じたくない。何かが凍り付いていくような感覚。それは表情か、それとも……?
「おや、君他人を待たせてるんじゃないか? これは引き止めてしまって悪かったな。もう行けばいい。……最初に言っただろう? 今日は襲わないと」
ネーロに軽く背中を押されて歩き出す。鳴り響く携帯。メールだ。中には早く戻って来いとか、発作が起きたのかとかそんなことが書き綴られていた。振り返ったとき、もうネーロは飛び立とうとしていた。……何処か悲しそうな笑みを浮かべて。
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