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てんしさまのすむところ-刹那の大空-

47霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2012/08/15(水) 23:26:42 HOST:i121-115-63-50.s04.a001.ap.plala.or.jp
 俺は話しかけてくる葵のお兄さんの相手をしながらぼんやりと外を眺める。流れていく景色は眩しい。暗いはずの夜を彩るのは色とりどりのネオンの明かり。ふと視線をずらすとルチと目が合った。ルチの目は不思議と俺のほうを向いていたんだ。遊莉と話しながら真っ直ぐ、真っ直ぐと。
 その目を真っ直ぐ見ることがなぜだか怖くて、俺は無言で視線を前へともどす。葵は小さく寝息を立てていて眠っていた。疲れていたのだろうか? まぁ、カラオケで歌い狂っていたし、最近はまともに部活にも参加していたし。テストもあったしな。
 ふと俺の携帯が鳴り響く。面倒だから、初期設定のまま変えていない着信音。葵のお兄さんに断って電話に出る。……相手はできれば聞きたくなかった奴らの声。つい最近に再開してしまった大嫌いで、とても憎くて……できればその身体を引き裂いてしまいたい奴らの、声。

 「……分かった。今行く。……すいません、そこのコンビニで下ろしてもらえますか?」
 「ん? 何だ玲。用事でもできたか?」

 俺が少し向こうの方に見えるコンビニを指差す。葵のお兄さんは少し不思議そうに俺に問いかけてきながらもコンビニの方へと車を走らせていく。とりあえず質問に答えながらもコンビニに着くのを待つ。といってもそこまで離れていなかったからすぐにたどり着いたのだけれど。
 礼を言って車から降りると、俺を一人にすると心配だからと美穂も降りてきた。……余計なお節介だ。やっぱりこの前の喘息のせいで警戒でもされてるのかもしれない。だとしたら俺、馬鹿なことしたなぁ……。面倒臭いことは避けたいんだが……。
 とりあえずついてくるとごねた美穂を、睨みつけながら上手い事言いくるめてあいつ等の待つ路地裏へと入り込む。ムッとした臭いに思わず顔を顰める。最悪だ。嫌いな奴に会わなければいけないのに、更に鼻を塞ぎたくなるような悪臭……。ついてねーな。
 行き止まりまで歩いてそいつらを見つける。ニヤニヤと笑うその顔を殴りつけてやりたいのに、身体が震える。……まだ、俺が“過去”に囚われているとでも言うのだろうか? そんなはずはない。俺はもうあのときの俺じゃないんだ。

 「おー月城ちゃん、早いねー」
 「……用件はなんですか? 僕はあなた方と違って忙しいのですが」

 できるだけ、相手を睨みつけながら俺は言う。なんだ、いえるじゃないか、俺。俺の言葉にそいつ等は目に見えて不愉快になったようだった。俺の前に寄ってきて、睨みつけてくる。……一緒にいるメンバーの少女が怒ったときのほうが怖いはずなのに、何で……なんで身体は震えて行動を起こせなくなるのか。
 ……俺が、俺じゃない。ポツリ、頭に浮かんだ言葉が余計に俺のことを身動き取れなくしていく。

 「分かってんだろ? 何、昔のことバラされたいの?」
 「ッチ……どうぞ。これで満足でしょう?」

 財布から数枚の札を取り出して相手に向けて放り投げる。さて、全財産持っていかれたわけだが俺どうやって生活しようか。食料買いだめしてねぇんだよな。そんな事を考えていると、軽く肩を叩かれた。……汚らしい。悪寒が走る。一瞬にしてそんな風に頭の中が塗り替えられた。

 「分かってんじゃん。今日もごちそーさま、月城ちゃん。お友達に宜しくー」

 語尾に星やらハートやらがついてそうなムカつく言葉。ああ、ここで殴ることが、関わるなと叫ぶことができたらどんなに楽だろうか? 何故、俺の身体なのに、俺の言うことを聞いてくれないのか。何故、俺の口なのに自由に言葉を発してくれないのか。
 去っていくそいつら一人に肩を押されて、だらしなくその場にへたり込む。そして、そのままソイツ等の背中を見送る。……悔しい。憎い。……やり返してやりたい。今ならそれができるはずなのに……できない。
 ひんやりとした風に頬を撫でられるがまま、俺はぼんやりと空を眺める。雲に覆われた暗い空。……何故その空を自分に似ていると思ってしまったのだろうか。自分がわからないまま、俺は空を見つめ続ける。
 鳴り響く、音。最早義務的に携帯を取り出す。ディスプレイには美穂と言うた


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