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てんしさまのすむところ-刹那の大空-

42霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2012/05/27(日) 01:17:23 HOST:i114-180-35-89.s04.a001.ap.plala.or.jp
 「まぁやろうと思えば欠片なんてすぐに使えるようになるぜ? 俺もそうだったしな。とりあえず欠片に関する知識を共有してやるよ」

 そういいながら、手元に分厚い本を出現させる玲。……それ、実際に使いこなすことができる人物だからいえることだろ。
 瞬間に、頭の中に情報が流れ込んでくる。さっきステッラが話してくれた説明、俺たちの欠片の形、司る力。欠片の作動方法……。欠片を使って戦う玲の記憶……何がなんだか分からなくて、ますます混乱する俺を見て玲は笑った。
 手に持った本を軽く叩いて、この欠片で記憶を情報として共有させただけだと言う。玲のやつ着実に人外への道を歩んでいるなぁ、なんて考えて俺はため息をついた。もう立派な欠片の使い手じゃないか。……頼むからこれ以上俺のリアルを壊さないでくれよ。いい加減に頭がパンクしそうだ。

 「想像、創作、無効化、防御、水、情報、音、癒し、蘇生……案外細かく分かれているんだね……」

 ずっと黙っていた彩花は小さな声で呟いた。どうやら対応完了したらしい。……何かついていけてないのって俺だけ? 俺が可笑しいのか? ついていけない俺が可笑しいのか!? いや、そんな訳ない。ついていけるほうが可笑しいんだ。
 ぼんやりと、頭に流れ込んできたことを思い出す。欠片を呼び出すときは、呼び出したい欠片の名を呟いて、右手を上げるだけ。非常に簡単なお仕事です。後は暴走でもしない限りは頭の中で指示を出したりすれば自分の思い通りに欠片の力を行使できる……もちろん欠片の管轄の範囲内でだが。
 欠片の扱う力はその名前で明記されていることが多いらしい。玲の蘇生、俺の無効化がいい例だろうか。

 「まぁ、ゆっくり慣れればいい。始めのうちは戦力としては考えねーし……」

 ブツブツと呟く俺の肩に玲が手を載せて笑う。お前にとってはその程度の問題でも、俺にとっては酷い大きな問題だよ。一体どう慣れろって言うんだ。いくらなんでも無茶振りにほどがある。
 ただでさえ、俺は順応力が人よりも低いんだから。……嗚呼もう、ニコニコ微笑むルチとか、楽しそうに話す凛や美穂が酷く憎らしく見える。何でこんなありえないことにまで対応できるんだよ。普通混乱するだろ。
 あ、あれか? 混乱しすぎて可笑しくなっているだけか? そんな風に考えていると、玲の方を叩く三人組の男の姿があった。玲よりもがっちりとした体格の、まさに体育会系って感じの男。その姿を確認した瞬間に玲の表情が凍りつく。

 「あー!! やっぱり月城だ!! 懐かしいなぁ、小学校以来か?」
 「え、えっと……?」

 小学校以来で高校生まで成長した相手の顔が記憶と一致するもんなのだろうか。そんな風に俺の思考は一瞬で男の言ったことに向く。もう訳が分からないことを考えたくないからちょうどいい助けだ。
 戸惑ったようにする玲を男たちは、玲の手を掴んで笑う。……その笑顔は酷く醜悪なもののように見えた。

 「いやー、久しぶりだな。少し話したいからついてきてくれよ」
 「あ……えっと……まぁ構いませんが……」

 俺たちに別れの挨拶をし玲は男達に囲まれて歩いていく。止めようとしたけれど、体が動かなくなってしまって……。

 ――ああ、この時に玲を止めることができたら、あんなことにはならなかったかもしれないのに……。


NEXT Story 第三章-嘘つき少年の末路-


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