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てんしさまのすむところ-刹那の大空-

32霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2012/04/08(日) 23:41:20 HOST:i121-116-249-115.s04.a001.ap.plala.or.jp
 運転手にお礼を言って、母さんに事情を説明する。そうすれば母さんは笑みをキラキラとした笑みを浮かべて玲が泊まることを了承してくれた。どうやら俺がまともに母さんにお願いしたのが相当嬉しかったらしい。……俺は特殊だからあまりそういうことしたことなかったんだっけ。どうでもいいけど。
 とりあえず玲に吸入器の使用を促して、台所へ。兄貴が食事を取っている真っ最中で何か言ってきたが無視。今はそれどころじゃないんだ。体調が悪い人間と元気な人間ならば前者を取るのは当然だろう? だが兄貴はそれが気に入らないらしく膨れっ面。

 「葵、ご飯は後で部屋に持って行くから、月城君を休ませてあげなさい」
 「分かりました。……突然ですみません、美幸(ミユキ)さん」

 吸入器を使い終え、幾分か落ち着いた玲を支えながら、軽く頭を下げて言うと、母さんは静かに笑った。……ただ、顔を見たとき、それは何処か悲しげで……。きっと名前で呼んだせいだろう。俺は、面と向かって母さんって呼べないから……。
 玲は深く息を吸い込んだり、吐き出したりするだけで何も言わない。空気を読んで何も言わないのか、いえないのか、それは良く分からないが気にしないでおこう。あまり考えたところで利益を生まない問題なんだしさ。
 玲を部屋へと連れて行く。元気なときの一人、なら問題はないのだが病人を連れていたりするとまた面倒なものだ。第一に、階段が上りにくい。これは自分が体調を崩したときにも思ったことだが……。だからといって普段生活するにおいては何の支障もない。

 「アオ兄、怒ってる……?」

 今まで黙っていたステッラが急に口を開いた。玲が休まずに症状を悪化させたことになら怒っているが、ステッラには別に。まずステッラと玲の関係も分からないし、玲が何をしたかったのか良く分からないから、不用意に怒るわけにもいかないのではないだろうか。
 そんな事を考えていると、ステッラはシュンと俯いてしまう。何のことだが良く分からないが、玲をベッドに押し込んだ後、ステッラの頭を撫でてやる。きょとんとした表情で俺を見上げるステッラ。……こういうところはまだ可愛いんだけどな。普段のテンションさえなければ……。

 「別に。怒っちゃいねー。ただ、何がなんだか分からないってのはあるな」

 俺に顔を向けた玲は何か言いたげに、口をパクパクと動かしている。しかし、完全の声はまったくと言っていいぐらいに出ていない。しばらくして、諦めたように口を閉じてシュンとしていた。発作が出ると急激に大人しくなるんだよな、コイツって。

 「うにゅ……それは明日説明するから今言う人物をそろえて欲しいの。無理だったら仕方ないけど」
 「明日、ね。俺が連絡取れる奴なら集めるよ」

 ステッラのことだから、期待は出来ないだろうななんて思いながら俺は答える。ステッラが答えなかったら玲に説明させれば良い。最も玲から情報を引き出したり、説明をさせたりすると豪く苦労するのだが、気になったことは片付けておきたい。
 ステッラが言ったのは、聞きなれた名前。美穂に遊莉、凛、彩花、ルチだ。ルチ以外の全員は俺と同じように欠片に憑かれているらしい。ルチに関しては普通は見えないはずのステッラの姿が見えたから全力で巻き込むんだと言っている。ちなみに玲も欠片に憑かれてるとのこと。
 何か俺の周りの人間、憑かれ過ぎじゃないだろうか? 偶然にしてはあまりにも出来すぎな気がして俺はため息をついた。そしてステッラは憑かれている奴全員の家を回って、欠片のことは説明した居たという。場所は分かっていても何らかの理由で回収できないらしい。迷惑な話である。

 「葵ー入るぜー」

 俺の返事を待たずに、兄貴は部屋に入ってきた。その手には俺の晩御飯が置かれたお盆。そのお盆の中には小さな土鍋もあった。玲の分のお粥らしい。……とことん迷惑をかけてしまった。後で母さんにもう一度謝っておこう。
 兄貴の言葉など聞かずに晩御飯を受け取って部屋から追い出す。ぼんやりとした目で玲はそんな様子を眺めていた。その表情は少しだけ羨ましそうで俺は首を傾げる。どういう意味か全く分からないし、今のやり取りの何処に羨むような要素があったのだろうか。


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