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てんしさまのすむところ-刹那の大空-

31霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2012/04/08(日) 21:52:12 HOST:i121-116-249-115.s04.a001.ap.plala.or.jp
 長いこと歩いて、マンションの前にたどり着く。そこには不安そうな表情の美穂が立ちすくんでいて……俺達を見るなり凄い速さで駆け寄ってきた。そしてステッラを見て口をパクパクさせている。どうやら美穂にもステッラが見えるようだ。

 「ステッラ!? 何で葵と……」

 見えるどころではなく知り合いだったらしい。ステッラが事情を説明している間、俺はとりあえずタクシーを拾う。といってもマンションに乗ってきたタクシーがなぜかそのまま残っていたので、それに乗り込む。どうやら心配して待ってくれていたらしい。いい人だ。
 説明を終えたステッラがタクシーに乗り込んでくる。しかし今度は運転手に姿は見えていないようで……見える人間、今のところ全員俺の知り合いじゃないかと考えて俺はため息。しかも見える奴全員何らかの面識はあるっぽかったし。色々面倒なことになるぞ、と本能が告げる。
 もうどうにでもなれ。ステッラみたいなのと会った時点でもう面倒なことに巻き込まれているんだ。今頃慌てても遅い。最悪自分に被害がない限りは無視でもいい。命に関わると言われない限りは気にする必要もないだろう? 無駄に体力を使いたくない。

 「じゃあ、玲は預かっておくな。お前も風邪には気をつけろ」

 玲の荷物をまとめて持ってきた美穂にそういう。美穂の表情は何処か浮かないもので……きっと責任でも感じているのだろう。変なところで責任感の強い奴なのだ。何でずっとついていなかったのだろうだとか、そんな風に考えているに違いない。あ、もしかすると縛って動けないようにしておくんだったとでも思っているかもしれない。
 ただそれはあくまで俺の予想だ。外れている可能性のほうが大きいのだから俺は何も言わない。軽く美穂に手を振ってタクシーに目的地を告げる。こういうときにあの家は便利だ。神社名を告げれば後はすぐ。少し歩くと言えば歩くのだが、そこまできつい距離でもない。近道使えばすぐだし。
 流れる景色を眺めていると、玲が咳き込み始めた。相当苦しいのだろう。その瞳には涙が浮かんでいる。これが女の子だったら非常に嬉しいシチュエーションなんだろうなぁ、なんて考えながら背中をさすってやる。何かを探すかのように彷徨う手は、やがて俺の服の裾を掴んだ。……なんだろう、全然嬉しくない。

 「どうした? 吸入器か?」

 俺が問いかけると玲は、コクコクと頷いた。きつく目を閉じながら必死に呼吸をしようとしている。俺はいたって健康で持病なんて持っていないからその苦しさを理解できないが、見ている限り自分がなるのは遠慮したい。ヒューヒューと鳴る音が本当に嫌だ。
 玲の荷物の中から吸入器を取り出して、渡してやると、僅かに震えながら玲は吸入器を軽く振っていた。今にも手から吸入器が抜け落ちてしまいそうなぐらいに、力が入っていない。ふと思い出したように俺の顔を見上げる玲。俺は黙って首を傾げるだけ。
 しばらくそのままでいると、心底苦しそうに「これ、使った……後、うがい、しなきゃ」と玲が言う。良く分からないが、それなら今使うことは出来ないじゃないか、そう考えて玲を見てやると、また咳き込み始めている。本当、大丈夫かなぁ、コイツ……。

 「ついたぞ、歩けるか?」

 運転手に金を払い、玲に声をかける。小さく首を振る玲を見ると、運転手が手を貸してくれた。運転手が玲を背負って、俺は玲の荷物を持って家まで先導。運転手は俺の家に驚いたようだが気にしない。たいていの人は驚くから別に気にならなかった。
 家のドアを空けると、母さんが凄い勢いで飛び出してきた。ご飯の時間になっても出てこないから心配したら俺が家に居なかったらしい。俺、家を出る前に声をかけたはずなのだが……別のことに集中していて聞いていなかったのだろうか、この母さんは。

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ギャグの消失


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