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てんしさまのすむところ-刹那の大空-

23霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2012/03/10(土) 19:18:56 HOST:i121-116-249-115.s04.a001.ap.plala.or.jp
 「え、えっと。初めまして。僕は、ルチアーノ。ルチアーノ=クローチェ」

 少しだけ戸惑ったような表情をした後、ルチがペコリと頭を下げた。玲が悶え始めたが、美穂による強烈なボディーブローによって沈黙。……美穂、女子の力じゃねぇぞ、そう言おうと思ったがそんな事を言えば後で犠牲になるのは確実に俺だ。それだけは勘弁してもらいたい。
 ああ、そうだ。俺のいるこのグループは、基本的に小学校からのメンバーで構成されている。その影響か相手の大体の癖や、性格は把握できている。嫌いなことや好物についても同じく。過去に何人かグループに加わったやつがいたが、すぐに抜けていった。大体玲と凛のせいである。
 今でこそなんでもないが、実は玲と凛、元はとんでもない人見知り、人間嫌いである。俺、初対面のときに潰す宣言されるわ、ぶん殴られるわで色々大変だったしな。そんな二人の影響で新しい人間が溶け込もうとしてもそこには不和が生まれてしまったのだ。おかげで今の関係があるとも言えるのだが。

 「初めましてと言っても私と美穂はルチ君と同じクラスだけどね」

 そういって笑ったのは彩花だ。俺と同じクラスなのだからまぁ当たり前である。この中で俺と同じクラスなのはルチ、美穂、彩花だ。だからルチは少なくても俺含めて3人とは少なからず面識がある。会話したかは別とするが、顔ぐらいは知っているはずなのである。
 逆に玲、凛、遊莉のクラスは俺とは別だ。だからルチは殆ど面識がないかもしれない。あ、玲とは体育のときに数回顔を合わせているか。……ほぼゼロの状態からルチと打ち解けてしまった遊莉を俺は正直に凄いと思った。きっかけはチューリップ。……まぁ悪くないじゃないか。

 「にしてもルチ君ちっこいなー。牛乳は飲んでるか?」

 美穂がルチの頭に手を乗っけてそう言った。悲しいことにルチは今、この中で一番小さい。いつもなら一番小さくてからかわれるのは遊莉なのだが、今日ばかりは違う。遊莉は両手を挙げて喜んだ後に、遊里が小さいのも変わりはないよ、と言われて落ち込んでいた。
 ルチの方はと言えば、小さいと言われるのには慣れているらしく、特に変わった素振りは見せなかった。ごく普通に美穂がからかうのを受け流している。ただ時々飛び出す身長が伸びるだとか言うワードには敏感に反応していた。分かりやすいやつである。
 ふと、玲が美穂の頭の上に手を置いた。高笑いをしながら「チビだなーお前ら」なんて言っている。事実、玲は長身だ。現在百八十.五センチメートル突破したところで、まだまだ伸びると本人は言っていた。……なんかの嫌味だと思ってもいいのだろうか? 俺はもう身長に変化が出てないと言うのに。

 「玲はでかいだけでしょ。平均サイズじゃないよ」

 なんでもないことのように凛が言う。平均サイズって何だろうと思いながらもその会話に耳を傾ける。気をつけないと急に話が飛んできたりするんだけどな。ちゃんと聞いていれば焦ることはまずない。遊莉からの良く分からない言葉には無条件で戸惑う自信はあるが。
 ルチは早くも溶け込んでいた。さすが見知らぬ人物だろうが容赦なく巻き込む我がグループ。ルチの愛想の良さもあるんだろうが、うん良かったよかった。これでルチも学校内では過ごしやすくなるだろう。俺が休んだとき孤立したって話を聞いて少し心配したりした。
 愛想はいいのに何故自分から関わっていこうとしないのかが良く分からないが、もしかすると人見知りさんなのかもしれないと考えておくことにする。もしくは俺の知らない間にクラスのボス的な奴と喧嘩でもしたのだろう。だとしたらそれについて、俺は手を出せないから時間に任せるしかないのだが。

 「アオー、何考えてるの? あまり思いつめるとハゲるよ?」
 「既に薄毛に悩んでる奴にゃ言われたくないな」

 歩きながら彩花が心配そうな顔をしていたから、なんでもないようにそう言ってやる。俺が話の途中に関係のないことを考えているのはいつものことである。その影響か話してることと表情が食い違っていて怖いと言われることも覆い。全く失礼な話だと思うが。
 俺の言葉に彩花はうな垂れていた。一番触れてはいけない部分なのである。何故彩花が薄毛を気にしているかと言えばこれは簡単。何気なく彩花のポニーテール一房と、凛のツインテールの片方を掴んだ玲が、凛のツインテールの方が毛束を掴んでる感じがする、なんている風に口走った影響だ。
 そのおかげで、彩花は凛や玲からハゲとからかわれることになっている。たまに美穂や俺もからかってやるから、その心労はとても大きいものだろう。……ふと心配になったけど大丈夫かな? そのうち倒れたりしないだろうか? はっきり言っておくがそんなことになれば、色々と面倒くさそうなのでご勘弁していただきたい。


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