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てんしさまのすむところ-刹那の大空-

21霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2012/03/10(土) 16:46:43 HOST:i121-116-249-115.s04.a001.ap.plala.or.jp
 そんな不思議少女の名前は永守 遊莉(ナガモリ ユウリ)。こちらも小学校の頃からの友人である。

 「アキー、遅いよぅ? 凛(リン)が暴言吐いてるから急いだ方がいいよ?」

 遊莉の言葉に玲が、肩を震わせた。ニコニコと笑う遊莉は、俺の横にいるルチの手を掴んで歩き始める。ちょっと待て、ルチが展開がつかめずに泣きそうになってるぞ。そんな事無視して玲は俺の手を引いて走り出す。爪が食い込んで、とてつもなく痛い。逃げ出そうにも、玲の力が強すぎて無理。……馬鹿力め。
 半ば引き摺られるように走っていると、生活指導の教師に怒鳴られた。……俺は悪くないと呟くが、俺の主張は却下される。いや走っていたのは事実だから仕方がないとは思うけどさ……。男二人が廊下に正座している光景ってどうよ? 違和感ありすぎるだろ。
 しばらくして、すっかりマイペースで歩いて来た遊莉とルチと合流。……この二人、既に打ち解けていた。チューリップの品種について熱く語り合っている。遊莉のチューリップトークに真面目についていくやつは初めて見た気がする。……俺らのグループでさえ軽く流すことが多いのだ。……これは有能な素材かもしれない。
 そんな風に俺が思考を脱線させていると、目の前に仁王立ちしていた教師の影が消える。……やべぇ全く聞いてなかった。玲の方に目をやると、何でもなかったように伸び。ああ、コイツも話聞いてなかったな。直感的にそう感じて俺は深くため息をついた。

 「うーし、美術室まで急ぐぞー。早くしねぇと凛に殺される」

 勢いよく立ち上がった玲がそう言って笑う。どうやら教師の説教は無駄だったらしく、再び廊下を全力疾走。たまに女の子にぶつかりそうになるが華麗に回避していた。アイツのことだから全力でぶつかっていくと思ったのだが、それは違ったようだ。
 俺はとりあえず、マイペース二人の手を引いて玲を追う。二人とも軽い方だと思うが、あくまでも走る気がない奴を引っ張って走るのはきつい。この際背負って走ろうかと思ったが、いくらなんでも二人は無理だ。俺はそこまで体力馬鹿じゃない。そんな事をやればまず倒れる。
 玲の野郎、遊莉ぐらいつれて走っていけるだろうが、なんて悪態をつくが、既に玲は遥か向こう。人を引っ張って走るのがこんなにきついことだとは思っていなかった。普段なら玲ぐらいにならついていける自信はあるのに、今はまず走ることでやっとだ。だって俺が引っ張ってる二人、走る気ないんだもん。

 「や、やっと……ついた」

 美術室の前に到着。そこには玲が呆れたような表情で、腕を組んで立っていた。どうやら待ってくれていたらしい。……正直待ってなくてよかったからさっさと目的の人物を連れて俺と合流して欲しかった。俺、もう死にそうだ……。どうやら風邪で数日休んだうちに体力はグンと落ちたらしい。……悲しい話である。これじゃあ体育祭も危ういかもしてない。
 どうにか俺が呼吸を整えると、玲がドアを開いた。ルチは俺の様子を心配そうに伺っている。……お前だけだよ、そんな心配そうな顔をしてくれるのは。ただ、お前も原因の一つだと言うことは理解しておけ。そう考えていると視線。どうやら美術部の皆さんが弁当を食いながら俺達を凝視しているようだ。それはもう、品定めのように。
 玲が、笑顔を作った。こいつ、俺ら以外の人間がいるときは基本的に、穏やかな優等生キャラを演じている。教師や先輩達には頗(すこぶ)る評判が良いらしい。ただし本性を知っている俺達からすると、それは滑稽なものにしか見えない。本人もそのことは理解しながらやっているらしいから何も言わないけどさ。

 「あらぁー、月城君、どうかしたのかしら?」
 「すいません、古川(コカワ)さんって連れ去ってしまっても大丈夫ですか?」

 対応するために出てきた先輩が玲の頬をつつきながら言う。玲はと言えばそれを片手で制しながら何もないかのように言葉を返していた。普段はと言えば何でもかんでも表情に出てくる玲だったが、やはり演じているときは別らしい。全く笑顔が崩れないのが逆に恐ろしい。

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正座 in 廊下
周りの生徒はきっと驚いたことでしょう。

実は書き溜めがあるので次もすぐに出します


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