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終焉を裂く運命の神斬(ゴッドブレイド)
1
:
ねずみさん?
:2011/06/20(月) 02:07:32 HOST:p1207-ipbf1001niigatani.niigata.ocn.ne.jp
この物語はフィクションです。
実際の人物・地名・団体名とは一切関係ありません。
・ファンタジー色がとても強いです。
・題名からも分かるように、厨二病的な内容が大変強いのでそのような物が駄目な方は見ない事を推奨します。
・ファンタジーは初挑戦なので、本当に下手くそですが暖かい目で見守って下さい。
・更新の頻度は大変遅いのでご了承下さい。
・普段はアニメ等は見ないのですが、これを作るに当たって色々と参考にさせて頂いたアニメが何個かあるので
それを知っている方にはパクリと思われるかもしれません。
ですが、後々この作品を参考にした、と報告させて頂きます。
・荒らしは厳禁です(要注意)感想・批判等はお待ちしております。
自分は下手くそなので、面白い作品は作れないと思いますが精一杯
頑張りますので、応援宜しくお願い致します。
他の掲示板で書いてるものをコピペしてます。
完結はしてないので頑張ります!
2
:
ねずみさん?
:2011/06/20(月) 02:10:28 HOST:p1207-ipbf1001niigatani.niigata.ocn.ne.jp
「ああっ? 今なんて言ったかよく聞こえなかったわ。もう一度言ってみろや、その答え次第でお前の運命は決まるぞ」
一人のスキンヘッドをした男が少年の胸ぐらをつかんで引き寄せる。
「いやあ、あの女の子がかわいそうだから止めてあげてって言ったんだよ」
少年が指を指す方向には怯えて震えている女子高生。少年はこのスキンヘッドの男が女子高生を
無理やり路地裏まで連れていく所を偶然見つけたのである。
スキンヘッドは、怒りが頂点まで達して少年を鉄の柵へと投げ飛ばした。
少年は苦痛の声を上げる、スキンヘッドは拳をポキポキと鳴らしながらその少年との距離を狭めていく。
しかし少年に、怯える表情はなくどこか余裕の表情だった。
「舐めてんじゃねぇぞガキが!!」
男はそう言って鉄の柵にもたれかかっている少年との距離を一気に縮めると
主人公に向かって右脚を飛ばした。 殴るんじゃないんだ。
少年は心の中でそう呟いて口元に笑みを浮かべた後スキンヘッドの男の右脚を左に華麗にかわす。
「フフ、甘いよおじさん、もっとこうやって。ヤクザの人でしょ?」
少年は、右脚での蹴り方をジェスチャーしながら男に訪ねる。
「ガキが死にたいんか!」
男の声が薄暗い路地裏へ響いていく、少年がふと女子高生に視線を
向けるとそこには既に、女子高生の姿はなかった。
まあこれが現実か、やっぱ面倒事には首を突っ込まないほうがいいな。
女子高生は多分逃げたと推測した。事実、解決するまで待っていてお礼
を言う女子高生なんてドラマやアニメの世界だけだ。
現実はごちゃごちゃしてる間に逃げるのがほとんどを占めている。
少年は自嘲的に笑みを浮かべたがスキンヘッドにとっては挑発に見えたらしい。
柵から離れた少年を鋭い眼光でとらえて、足を踏み込んだと思ったら
次の瞬間には左の拳が少年の目前に迫っていた。
3
:
ねずみさん?
:2011/06/20(月) 02:14:04 HOST:p1207-ipbf1001niigatani.niigata.ocn.ne.jp
目前に迫ってきた拳。一般人にはとても速いと感じるかもしれない。
だが少年は怯む事なく手で円を書くようにして拳を受け流した。
それでも男は体制を崩しながらも今度は右の拳を放つが少年は腕を
掴んで一本背負いのような体制で男を投げ飛ばした。
「ふー、ねえもう女の子逃げたんだし止めませんか?」
少年が倒れている男を見下ろす形で訪ねる。
少年は女子高生の安全を確保するために男と闘っていた訳で女子高生が
逃げた今、これ以上続ける意味は無いに等しかった。
一応訪ねてはみたがこれで止めるなんて少年も思っていなかった。
男は体を起こして口を開く。
「そんなんできるかぁー」
「ふぅ仕方ないですねぇ」
そう吠えた男は少年の肩をつかもうと体ごと迫ってくるが
少年は口元に笑みを浮かべた。
笑みを浮かべたのは一瞬で、よく見ないと分からない程だった。
男の185はあるかという巨体が迫るが少年は至って冷静に右足を下げて
右手も後ろへ下げる。
そして右手を開く。裳底。
ーーー裳底 それは手の固いところで相手を攻撃することにより外部
よりも内臓へのダメージが多くなる技である。
その裳底を迫ってくる男の腹目掛けて弓矢のように引き放つ。
裳底が鳩尾に突き刺さり、ヨロヨロと後退した後そのまま後ろへ倒れた。
少年は倒れた男の元へ行き、溜め息をつく。
「やりすぎたか、すいませんおじさん」
少年が手を前で合わせながら謝罪をすると立ち上がった。
辺りは既に暗くなり始めて、夕日が沈みかけていた。
最近は、真夏だと言うのに夜がくるのが早く、その事で特集番組も作られる程だ。
帰ろう。少年がそう思った時呻くような声が後ろで聞こえた。
「お前……名前は」
男が今にも死にそうな声で訪ねると、少年は溜め息をはき、男に背を向けながら言い放った。
「深琥。双神深琥だ(フタガミ・シンク)。 よーく覚えておいた方がいいですよ、おじさん」
4
:
ねずみさん?
:2011/06/20(月) 02:18:15 HOST:p1207-ipbf1001niigatani.niigata.ocn.ne.jp
シンクがもう一度ため息をついて、路地裏を出ようと歩みを進める。
すると前方から手をパチパチと叩きながら笑顔で向かってくる
シンクと同い年くらいの青年。
シンクはその少年を見て再度大きな溜め息をついた。
「蓮、お前見てたのかよだったら助けろよ」
「フフ、この赤羽蓮さまは喧嘩は嫌いでね」
赤羽蓮(アカバネ・レン)。そう名乗った少年は顔に笑みを浮かべながら
シンクが倒したヤクザの元へ近寄ると少し観察して感心の声を上げた。
「女子高生を助けようとするから闘うハメになるんだお前のポリシーは”面倒事には
首を突っ込まない”だろ。お前高校生になってから何回喧嘩してんだよ」
蓮は倒れているスキンヘッドのヤクザを見下ろした後シンクの
目の前まで来て、ポケットから何かを取り出してシンクに差し出した。
「ほい、助けなかったお詫びと思ってくれ。大好物だろ? クリームコロッケ」
「物でご機嫌とる気かよ」
シンクはそう言いながらも差し出されたクリームコロッケを受け取り
口いっぱいに頬張った。
この蓮と言う男はシンクが面倒事に首を突っ込む度
に最後になって現れては、クリームコロッケを差し出すので
最近シンクはストーカーとも思い始めていた。
「それで今回はなんで女子高生を助けようとしたんだ」
今シンクが思い返すと理由は目があったからという単純な物だった。
「女子高生が助けてって目でみたから」
「それだけ? お前はポリシーの割にはお人好し過ぎなんだよ
それに鈍感すぎる。 ここで助けたらどうなるか位予想できるだろ?
それにお前がやってる”双神流古武術”は危険なんだからさ」
蓮は呆れるように問いかけるがシンクは平静と切り返した。
「手加減したんだからいいだろ、それに真価を発揮するのは素手じゃなくて刃物を扱う時だしよ」
「そりゃそうだけどよ」
蓮がまた呆れたように呟くがシンクは気にも止めていなかった。
シンクはクリームコロッケを食べ終えるとこの薄暗い路地裏
から出ようと歩みを進める。
「クリームコロッケ。俺が作った方がうまいな」
シンクがそう蓮に言いながら繁華街へと出る。
この繁華街はデパートや飲食店等全てが揃っているので休日
はシンク達と同じように学生の姿が多く見られる。
それゆえに、さっきのようなトラブルも日常茶飯事である。
5
:
ねずみさん?
:2011/06/20(月) 02:21:49 HOST:p1207-ipbf1001niigatani.niigata.ocn.ne.jp
トラブルが日常茶飯事である。今年めでたく高校生となったシンクは
面倒事には首を突っ込まないというポリシーをずっと掲げながらも
根が極度の善人であるがゆえに、ことごとく面倒事に首を突っ込んでいる始末である。
「お前が料理うまいのは知ってるけどよ、毎日作ってるのか?」
「作ってるよ。父子家庭だし、うちのバカ親父は道場に籠もりっぱなし
でメシ作らねえからな。俺も親父に散々双神流古武術を叩きこまれたからな」
シンクは自嘲的に笑みを浮かべると時計を確認した。
時計が指す針は5時30、今は真夏なのだからこんな時間に日が
落ちていくのは早すぎる、それに朝も6時30くらいからやっと
日が昇り始めるのだ。
「なあシンク、突然で悪いがお前学校でモテてるの知らないだろ?」
「何言ってんだ? 知らないもなにもモテてないからな」
シンクの言葉に呆れたように溜め息をはく蓮。
「さすが鈍感王子。 あんなに女の子からアプローチされてる
のに気づかないなんて逆に幸せだよお前は男の俺から見ても
かっこいいし、料理はできるわ、強いわ。で完璧なんだからモテないはずがないだろう?」
こいつは何を言ってるんだ? そんな事を思いながら繁華街を
目的もなくぶらぶらする。
シンクは自分がモテているなんて全く思ってなかったし
近寄ってくる女子も、ただ単に物珍しさで話しかけているんだろうと感じていた。
「お前がプール入る姿を見たいって言ってる女子も多いんだぞいい加減入ったらどうなんだ」
シンクはその言葉に自分の腹を押さえる。
シンクは生まれてから家族以外の前で裸になった事がないのだ。
プールなんて生まれてから一度も入った事がなかった。
「プールなんて一生入らねえよ、この"アザ"がある限りはな。
お前以外はこの存在を知らないしそれでいいとも思っている」
再度シンクは自分の腹を押さえる。
少し気まずい雰囲気になり始めたのを察知した蓮はシンクの左隣に移動した。
「誰にでもコンプレックスはあるさ、それより飲み物おごりますぜ」
蓮は笑みを浮かべながら、強引にシンクを引っ張っていき自動販売機の所へ連れて行った。
シンクが価格を確認すると、缶ジュースは100円さらに
500mlのペットボトルでさえ100円と表示してある。
「安いだろ、どれがいい? 俺はサイダーだな」
6
:
ねずみさん?
:2011/06/20(月) 02:24:05 HOST:p1207-ipbf1001niigatani.niigata.ocn.ne.jp
蓮が三ツ矢サイダーのボタンを押して、でてきた三ツ矢サイダーを見て満足そうな声を上げる。
シンクは散々迷った挙げ句ある飲み物に決めた。
「CCレモンにしよう」
シンクはそうつぶやいてボタンを押して、出てきた飲み物の封をあけ少しだけ飲む。
「シンクはもう帰るのか? まだ六時にもなってねえってのに真っ暗だよ、ほら星もみえるし」
蓮が言った通り既に夕日は完全に沈み、夜の気配が漂っている。
シンクが天を仰ぐと、都会ならではの少ない星が出迎えてくれた。
「これからどうしよっかな、折角の夏休みなのにな」
「俺は暗いしもう帰るぜ、シンクも帰れよ。また面倒事に巻き込まれるぞ」
蓮が挑発するような笑みを浮かべる。
「いや、俺はあの杉の下で休むよ。メシなら作って置いたんでな」
シンクの言葉に蓮は呆れた表情を浮かべる、今日だけで蓮は何回
シンクに呆れたか分からない程だった。
「またあの丘に行くのか? お前いつからあそこに通ってるんだよ」
その蓮の問い掛けに、しばらく考えを巡らすが面倒になった
のですぐに考えるのは止めた。
「さあな考えるの面倒だし、それでもあそこにいると落ち着くんだよ、なんとなく」
蓮が納得したような反応をする。
「じゃあ俺はここで帰るわ、じゃあな」
「おうじゃあな、それとジュースサンキュー」
蓮が手を振りながら背を向けて歩きだした、シンクはその背中が人混みで見えなくなるまで見つめていた。
「さて、俺もいきますか」
シンクが目指している場所、それは少し高い丘の上にある一本の杉。
樹齢は定かではないが、その大きさからかなりの物だろうと推測できる。
都会にあるとは思えないので、シンクは気に入っていた。
シンクはその重い足取りを少しずつ進めていった。
7
:
ねずみさん?
:2011/06/20(月) 02:26:28 HOST:p1207-ipbf1001niigatani.niigata.ocn.ne.jp
繁華街の外れにあるその高い丘を登っていた。
シンクはその重い足取りながらも着実に一歩一歩進んでいた。
一歩踏み出す度に少しずつ少しずつ小さくなってゆく繁華街の
賑やかな音と車の音。静寂へと近づいていく。
そしてシンクが最後の段差を登った時目の前に繁華街を
見下ろせる景色と一本の杉が現れた。
その巨木を見据えて、景色が見える表面と呼ばれる木肌に寄りかかる。
表面とは繁華街などの綺麗な景色が見えるが、反対に裏面は綺麗
な景色が見えないので表面の木肌に寄りかかる人は多く
シンクもその一人だった。
一端ため息をつき、空を見上げる。葉の間から星空が見える。
「面倒だなぁ」
シンクはそう言ってほとんど口にしていないCCレモンを口に含む。
シンクは別に何も面倒な事はないのだが、無意識のうちにそう呟いていた。
◇◆◇
いつまでそうしていただろうか、一時間? 三十分?
正確な時間は分からないが、心身ともに十分にリラックス
できたシンクは立ち上がって、裏面に周り丘を下ろうとした。
「なんだ? あれ」
シンクが目にしていたのは裏面の根本。さっきまでは何の変哲も
なかったのだが、今はシンクの身長175cm程の紫のモヤができていた。
得体の知れないその紫のモヤに少しずつ少しずつ近づいていく、
触らなければ大丈夫。そんな浅はかな考えがあった。
紫のモヤとの距離を一メートル程にした時、不意に紫の
モヤがシュルシュルと音を立てて見る見るうちに大きくなった。
恐怖が包みこみ急いで下ろうとするが、紫のモヤはシンクを
一瞬で飲み込み、そして消えた。
8
:
ねずみさん?
:2011/06/20(月) 02:29:34 HOST:p1207-ipbf1001niigatani.niigata.ocn.ne.jp
シンクの耳に届いてきたのは、小鳥のさえずりそして
木々が風に揺られる音だった。
何が起きたか分からなかったが、恐る恐る目を開けると目に
飛び込んできたのは、青々とした大木が生い茂る世界。
シンクはキョロキョロと辺りを見渡すが、周囲全ては
大木に囲まれていてよく確認できない。ここはどこだ?
そう考えても紫のモヤに飲み込まれてからの記憶がない。
ただ分かる事はここが樹海だと言う事。
「なんだよここ、どこなんだよ」
シンクが住んでいる近くにこんな樹海は存在しない
かと言ってここはアマゾンでもない。
決して蒸し暑くなく、乾いていて気温もあまり高くない。
その原因は日が落ち始めてているからだろうと予測する。
ここでこうしていても仕方ないのでシンクは歩きだした。
◇◆◇
「やべぇ死ぬ」
そう呟いたシンクはあれから丸一日動き続けた。
CCレモンが残ってるのがせめてもの救いである。
少しずつ進んでも進んだ気がしない、段々と視界が薄れていくのが分かる。
周りに生い茂る大木も歪んで見えた。
「本当にヤバい……」
本当に死にそうになった時、目の前に人影が見えた。
シンクはそれに安堵し気を失った。
◇◆◇
気がつくとそこは、テントのような狭いスペースだった。
そこで仰向けに倒れているシンクを心配そうに見つめる少女の姿。
その顔は人形のように整っていて、目の色は右目がブルーの瞳。
そして左目はルビーのような瞳、そして髪型はツインテールでほとんど赤色なのだが、
右側の一部の毛先の部分が青くなっている。
その容姿は地球人では見たことのないものだったがシンクは
その少女を、かわいい、そう思っていた。
「目が覚めた? あっ、近寄らないでよね変態!」
なにもしていないのに、変態呼ばわりされた事に傷ついたが
今はそんなのどうでも良かった。
ここはどこなのか、そしてこの少女は誰なのかを訊く必要があった。
そこでシンクはなんとか口を開いた。
「名前は?」
「声が低い、やっぱりケダモノ!……そんな残念な人を見る目で
見ないでよね!名前でしょ名前はねアリシアよ。アリシア・シンメトリー」
そのアリシアと名乗った少女は何故か勝ち誇った表情をしていて、
シンクにはそれが理解できなかった。
アリシアという名前だけでも、日本人ではない事がまだ意識が朧気なシンクにも理解できた。
9
:
ねずみさん?
:2011/06/20(月) 02:32:59 HOST:p1207-ipbf1001niigatani.niigata.ocn.ne.jp
この少女の名前は把握したシンクだがまだ謎は大量に残っていた。
仰向けに寝ていたシンクはなんとか体を起こすが、その時の
アリシアは何かとても珍しい物を見る目でシンクを見つめた。
(なんだよこのアリシアって娘。かわいすぎだろ)
その大きく見開かれちルビーとサファイアの瞳はシンクの体
を舐め回すように見つめる。
シンクはそんなアリシアを不思議に思ったが口に出さなかった。
今は謎を解決するのが先だ、少し体制を立て直そうと体を動かす。
「へっ、変態! ケダモノ、淫獣! あたしに触らないで!」
甲高い声でシンクを拒絶するアリシア。
シンクは訳も分からずにぽかんとしていた。
「あたしだって最初に”男”だって知ってたら逃げてたわよ
でもここに運んでから気づいたけど流石に放り出すのはかわいそうだから……感謝しなさい!」
会話をしながらも一定の距離を取るアリシアにシンクは
呆れて両手を挙げて降参の意図を示す。
するとアリシアは意外そうな表情を浮かべ、とりあえず落ち着いた。
「えっとアリシアでいいのかな?」
「”男”にそう呼ばれる筋合いはないけどとりあえずそう呼ばせて上げるわよ」
アリシアは見た目は最高級、しかし性格に難があるんだとシンクは悟った。
「えっとここどこ?」
「そんな事も知らないの?」
「ごめん」
シンクが素直に謝ると アリシアはまた意外そうな表情を浮かべる。
まだ距離はあるがそれでもアリシアは女の子座りで座っている。
そのどこか学校の制服のような白と青を基調にした服装の膝より上のスカートから覗く、触れてしまうと汚れて
しまいそうな真っ白で雪のような肌の美脚が姿を見せていた。
「えっと意外と素直じゃない、あたしの男のイメージはもっとこう」
なにやらアリシアが独り言をぶつぶつと呟いているので質問に
答えてもらえないシンク。
「あのー質問」
「えっ? ああそうだったわね、ここは”アストラル”のムテライド樹海よ?
もしかして知らないで入った訳じゃないわよね」
その問いかけにどうするべきなのか迷っていた、シンクは好きで
入った訳ではないし気がついたらここにいたのだ。
それよりもまた分からない単語が何個かでてきたぞ。
「えっと何? アストラル? なんだそれ」
「あんた何言ってるのよアストラルってのは……」
刹那。轟音が響いた。
10
:
ねずみさん?
:2011/06/20(月) 02:35:58 HOST:p1207-ipbf1001niigatani.niigata.ocn.ne.jp
まだアリシアが話終わる前にその轟音は響いた。大気が震えるのをシンクは
感じ、急いでアリシアの表情を確認するがその表情はほとんど
変わっていなかった。何事も無かったように涼しい顔をしている。
自分にしか聞こえなかったのだろうか?
シンクはそう思いながら再度アリシアの言葉に耳を傾ける。
「もう! うるさいわね。音からしたら結構大きめの害霊だと
思うけど大丈夫よ。このテントの周りには霊縫結界が張ってあるから」
アリシアの口から放たれた言葉はまるでゲームの中の言葉のようで、
シンクはよく聞き取れなかったのだが、アリシアの表情を
見る限りでは決してふざけてる様子ではないようだ。
その後アリシアがため息をついた後、どこからともなく小鳥
が飛んできてアリシアの腕に止まった。
その鳥は雀のような大きさで、アリシアと同じように体の
大部分は赤なのだが、右の少しは青になっている。
「フェイラール、念の為にここに居てね」
そう小鳥に呟いて、アリシアはシンクを見る。おそらく
フェイラールというのは小鳥の名前だろうとシンクは推測した。
「フェイラールって名前?」
「そうよ、でもアンタには触らせないんだから!」
妙にトゲトゲしい言葉がシンクに突き刺さっていく。
何か悪い事でもしたのだろうか? シンクは考えを巡らすが
特に思い当たる節は無かった。
「あの〜さっきから冷たいんだけど俺何かしたっけ?」
「別に何もしてないわよ、でもアンタが男だから」
「なんだよそれ」
シンクはがっくりと肩を落とす。改めてアリシアに質問を
しようとした時、大地が揺れた。
その振動は大気を揺らした。
「くっ……結界が破られた!? どうして、並の害霊じゃ破れないはずなのに! フェイラール!」
かなり焦っている様子のアリシアを見てただ事では無いことは
シンクにも容易に理解できた。
しかし分からない事が多すぎるのも事実だ。さっきから害霊
だのと言っているが何かは理解できない。
すると突然、アリシアは立ち上がってテントの入り口を見据える。
立ち上がったアリシアの体系を見ると、やはり胸は
残念なのだとシンクは思った。
しかしシンクは女の体には特に特別な感情がないので、
そういうスタイルの事は気にしなかった。
「アンタはここで待ってて、すぐに戻るから。フェイラール準備して、闘いよ」
11
:
ねずみさん?
:2011/06/20(月) 02:39:02 HOST:p1207-ipbf1001niigatani.niigata.ocn.ne.jp
その場でふぅと深呼吸をするアリシア。シンクは未だに状況が理解できてないようだ。
そんなシンクを横目にアリシアは静かに目を閉じる、この間にも
地面は揺れ大気は震えているが、アリシアは少しずつ心を落ち着かせていった。
大丈夫、あたしならできる。
「別にアンタを守る訳じゃなくて、このテントを守る為それだけだからね。
フェイラール久し振りだけど行けるわよね?フフ……聞いた
あたしが馬鹿だったわね、よし行くわよ!」
そう呟き、アリシアはテントの出口から外に飛び出す。
目に飛び込んできたのは、ドーム場に張っておいた霊縫結界を破ろうとしている、白虎のような生物。
大きな翼も生えていた。
しかしその大きさは、想像を絶するもので、縦だけで10メートルはあるかと言う巨大。
辺りの日は既に沈み、その生物の白い体が余計に目立ち、
その黄色い2つの目がギラギラと輝いている。
「何よこの害霊……大きい」
アリシアは恐怖で後ずさりする。強い害霊だとは思っていた
ここまでとはさすがに予想していなかったアリシアは
無意識のうちに恐怖に包み込まれていた。
少しずつテントへと後ずさりしてしまう。その時、その生物の
目線がアリシアを捉える。
アリシアは体を震わせその生物と対峙するが、その生物
は大気を震わすようなほうこうと共に、再度結界への攻撃を開始した。
少しずつ少しずつ、結界にヒビが入って行く度にアリシアは覚悟
を決めていった。
「あと二、三発で結界は破れるわね、そうなったら少しでも先手を取って」
そう考えを巡らせていると、閃光が走り、大気が震えて結界に
さらに大きな亀裂が入った。
その瞬間、アリシアは何が起こったか分からなかったが
すぐにその生物の攻撃だろうと予想した。
あと一発で破られる。アリシアの本能はそう告げていた。
「時間がない、フェイラール!」
アリシアはフェイラールの名前を呼んだ後静かに瞳を閉じて、
右腕を横に伸ばす。 すると足元に魔法陣のような紋章が出現した。
その魔法陣の影響で、髪の毛は風に揺られるように
たなびいてスカートはめくれ上がっていた。
アリシアは左腕も横に伸ばして瞳を見開く。
「紅連の朧火と氷雪の鳳凰よ。天よりより来たりし二つの獄炎氷よ。
今こそ神を喰らい、聖を持って邪を滅っせ!
獄炎と氷迅の聖霊。フェイラール!」
12
:
ねずみさん?
:2011/06/20(月) 02:41:50 HOST:p1207-ipbf1001niigatani.niigata.ocn.ne.jp
痺れを切らしたその生物、害霊は尻尾て結界を薙ぎ払った。
直後その言葉と共にアリシアとフェイラールの下にある魔法陣は光を放ち、どんどんと
巨大化していって、弾けた。
弾けた光は辺りを一瞬昼と思わせるような輝きを放った、害霊は
その光で目がくらみ一瞬の間だけひるむ。
そしてその眩い光の中からそれは現れた。
アリシアの頭上には、ルビーとサファイア色のオーラをまとった鳳凰。
その体躯は翼を広げるだけで5Mにも達し神、まさにそう呼ぶにふさわしい姿だった。
光にひるんでいた害霊はようやく目が慣れて大気が震える
ようなほうこうと共にアリシア目掛けて飛びかかってきた。
しかしフェイラールがそれを阻むように、左右の紅と蒼の翼を
害霊に向けてはためかせ、そこから紅蒼の無数の羽根が害霊に襲いかかる。
その紅蒼の羽根は、紅は炎、蒼は氷を纏い害霊の体を切り裂いてゆく。
その傷口からは、炎が舞い上がる所もあれば、傷口が氷によって一瞬で凍っている所もあった。
害霊はそのスコールのような無数の羽根に切り裂かれ、体に傷
を負いながらよろめく。
そのひるんだ所にフェイラールは紅蒼のオーラをさらに大きくした後、
害霊の横に周りこみ甲高い鳴き声とともに脇腹に突進した。
その衝撃に耐えきれず害霊は吹き飛び、吹き飛んだ先で土煙が舞う。
間髪入れずにフェイラールは、口に紅蒼色の光を貯めてそれを
レーザー状に放出した、放出した先ではさらに土煙が舞う。
相手の様子を伺うフェイラールとそれを見守るアリシア。
しばらくの間、そうしていたが害霊はそれ以上襲って来なかった、アリシアはもう大丈夫、
そう判断して表情を緩めてフェイラールの所へと近づいてゆく。
「よくやったわフェイラール! それにしても先手だけで倒せて良かったわね。
聖霊魔法(エレメントソーサリー)と聖霊変換(ホーレイトランス)も
使わなくてすんだし。本当によくやったわ! ありがとう!」
アリシアは満面の笑みを浮かべながらフェイラールの翼に顔をうずめる。
しかし、アリシアが翼から顔を離した瞬間だった。
閃光が閃き、一瞬にしてフェイラールを飲みこんだ。
その閃光は害霊の口から放出されたものだった、結界を攻撃したときと同じもの。
フェイラールはその閃光に飲みこまれ、少し離れたところまで飛ばされていた
13
:
ねずみさん?
:2011/07/01(金) 19:19:15 HOST:p1207-ipbf1001niigatani.niigata.ocn.ne.jp
「フェイラール!! くっまだあの害霊!」
閃光が走った方向を確認すると、倒れたはずの害霊が大きな翼を広げていた。
アリシアは舌打ちをした。
あの翼が攻撃する為のものだとは思わなかったのだ。 状況は良くない、フェイラールは害霊の攻撃の直撃によって闘えるか分からない。
「どうしよう……フェイラールはあまり動けないし。
聖霊魔法(エレメントソーサリー)か聖霊変換(ホーレイトランス)を使ってあたしがやらないと」
残りはあまりない”神喰”を使って聖霊魔法と聖霊変換を
使役するには環境も良くない。聖霊魔法と聖霊変換を使う為の
エネルギーである神喰(シンク)は使いすぎると動けなくなってしまう、
そんなリスクを犯すのは流石に危険だとアリシアは判断した。
そうやって考えている間も害霊は待ったを知らずアリシアへの
距離を急速に縮めていく、夜の闇を切り裂く白い巨大がせまる。
アリシアは右手を胸の部分に当てて瞳を閉じる。
「力を貸して。 閃滅の氷原(フロスト・バーン)!」
そう言ったアリシアの手は青白く輝いて、アリシアの体もサファイアのオーラを纏っている。
その輝く右手を目の前に突き出す。
すると、害霊が向かってくる足元から氷の柱が次々と姿を表す。
氷柱に斬り裂かれそして無数の氷柱に囲まれ身動きができなくなった害霊はただほうこうを上げている。
「ひとまずは大丈夫……」
そう胸をなでおろした直後、ピキピキという音が響く、慌てて確認すると害霊を取り囲み拘束
していた氷柱が害霊の攻撃に耐えきれずにヒビが入り始めていた。
14
:
ねずみさん?
:2011/07/02(土) 14:10:17 HOST:p1207-ipbf1001niigatani.niigata.ocn.ne.jp
確認すると害霊を拘束している氷柱が害霊の動きに耐えきれずに
ピキピキと悲鳴を上げていた。アリシアは少し距離を取り今度は左手を胸の所
にあてて静かに瞳を閉じる。
するとさっきまでアリシアを覆っていたサファイア色のオーラが消えて、
代わりにルビー色のオーラがアリシアを包み込んだ。
包み込んだと同時にアリシアは瞳を強く見開き、その瞬間
ルビー色に輝いていたオーラがよりいっそう輝きを増し、
夜の闇に包まれる樹海を紅色に染め上げた。
「これで、最後よ!」
アリシアが左手を天に突き上げそして害霊の方へと向ける、害霊が
拘束されている足元に害霊全体を覆うような紅いひし形の魔法陣が展開する。
その紅い魔法陣は徐々に輝きを強めていき、アリシアはその輝きが増していく。
「地獄より来たりし断罪の業炎よ。今、裁き、浄化せよ!
炎業の深層槍!(スフィラート・グラエン)」
その聖霊魔法(エレメントソーサリー)の名前を言い放った時、害霊が
一際大きなほうこうを上げそして害霊を拘束していた氷柱が粉々に崩れさった
しかし時既に遅し。
アリシアは詠唱をした後で、害霊の足元の魔法陣から
螺旋を描くようにして害霊を飲み込む炎槍が出現した。
その炎槍は害霊を飲み込むと共に周囲の塵を引き寄せては無に還していた。
ようやく、アリシアは安心してその場に座りこんでしまった。
「今度こそ……はぁはぁ」
アリシアは周囲に目をやると害霊の気配は無いように思えた。
いつの間にかテントの近くにまで移動していたようで、ヨロヨロと立ち上がりテントへ向けて歩きだす。
よく見ると入口が少し開いていて、そこからシンクが様子をうかがっていた。
アリシアは呆れるが怒鳴る気力は既に持ち合わせていない、
フェイラールもようやく動けるようになり、アリシアの方へ向かってきている。
その時だった、木々の向こうから物音が聞こえてくる、
また緊張が走り警戒する、そしてそれは姿を現した。
「あの害霊なんでまだ生きてるの!? 確かに当たったのに」
姿を現した害霊は、有無も言わさぬ疾風の如き速さでアリシアに向かう。
その姿は確かに聖霊魔法が当たった傷もあるが間一髪致命傷は避けた様子。
アリシアは急いでその場を離れようとするが、疲労感のせいか
足は言う事を聞かなかった。フェイラールも距離が遠く間に合わない。
そして……害霊の鋭利な爪が目前に迫っていた……
15
:
ねずみさん?
:2011/07/02(土) 14:13:13 HOST:p1207-ipbf1001niigatani.niigata.ocn.ne.jp
確認すると害霊を拘束している氷柱が害霊の動きに耐えきれずに
ピキピキと悲鳴を上げていた。アリシアは少し距離を取り今度は左手を胸の所
にあてて静かに瞳を閉じる。
するとさっきまでアリシアを覆っていたサファイア色のオーラが消えて、
代わりにルビー色のオーラがアリシアを包み込んだ。
包み込んだと同時にアリシアは瞳を強く見開き、その瞬間
ルビー色に輝いていたオーラがよりいっそう輝きを増し、
夜の闇に包まれる樹海を紅色に染め上げた。
「これで、最後よ!」
アリシアが左手を天に突き上げそして害霊の方へと向ける、害霊が
拘束されている足元に害霊全体を覆うような紅いひし形の魔法陣が展開する。
その紅い魔法陣は徐々に輝きを強めていき、アリシアはその輝きが増していく。
「地獄より来たりし断罪の業炎よ。今、裁き、浄化せよ!
炎業の深層槍!(スフィラート・グラエン)」
その聖霊魔法(エレメントソーサリー)の名前を言い放った時、害霊が
一際大きなほうこうを上げそして害霊を拘束していた氷柱が粉々に崩れさった
しかし時既に遅し。
アリシアは詠唱をした後で、害霊の足元の魔法陣から
螺旋を描くようにして害霊を飲み込む炎槍が出現した。
その炎槍は害霊を飲み込むと共に周囲の塵を引き寄せては無に還していた。
ようやく、アリシアは安心してその場に座りこんでしまった。
「今度こそ……はぁはぁ」
アリシアは周囲に目をやると害霊の気配は無いように思えた。
いつの間にかテントの近くにまで移動していたようで、ヨロヨロと立ち上がりテントへ向けて歩きだす。
よく見ると入口が少し開いていて、そこからシンクが様子をうかがっていた。
アリシアは呆れるが怒鳴る気力は既に持ち合わせていない、
フェイラールもようやく動けるようになり、アリシアの方へ向かってきている。
その時だった、木々の向こうから物音が聞こえてくる、
また緊張が走り警戒する、そしてそれは姿を現した。
「あの害霊なんでまだ生きてるの!? 確かに当たったのに」
姿を現した害霊は、有無も言わさぬ疾風の如き速さでアリシアに向かう。
その姿は確かに聖霊魔法が当たった傷もあるが間一髪致命傷は避けた様子。
アリシアは急いでその場を離れようとするが、疲労感のせいか
足は言う事を聞かなかった。フェイラールも距離が遠く間に合わない。
そして……害霊の鋭利な爪が目前に迫っていた……
16
:
ねずみさん?
:2011/07/02(土) 14:16:05 HOST:p1207-ipbf1001niigatani.niigata.ocn.ne.jp
すいません同じの二回投稿しちゃったみたいです……
17
:
ねずみさん?
:2011/07/02(土) 14:18:40 HOST:p1207-ipbf1001niigatani.niigata.ocn.ne.jp
すいません同じの二回投稿しちゃったみたいです……
18
:
ねずみさん?
:2011/07/09(土) 23:48:19 HOST:p4019-ipbf706niigatani.niigata.ocn.ne.jp
◇◆◇
その少し前。シンクはアリシアが出て行く時に見せた清々しい表情に見惚れていた。
元々長い腰ほどまである髪の毛に、頭の上の方で結んだ肩ほどまでのツインのテール。
さらに世の中だれが見ても美少女と思わせる顔立ちでシンクは見惚れるのも当然だと開き直った。
そしてアリシアが出て行った直後、一際大きな轟音が鳴り響いた。
アリシアは出て行く前に害霊と呟いていたが何がなんだかシンクには理解出来なかった。
その轟音や、今まで聞いた事の無い音が聞こえるてくる。シンクはそれが
何か確認しようと、テントの出口に向かう。
しかし立ち上がろうと思った所で脚に痛みが走る。痛む脚を見てみると
半ズボンだったせいもあるのか、かなり生傷ができていて、中には深くまで切れ込みがある。
「アリシアの奴……手当てくらいしてくれよ」
シンクが付近を見ていると、乱雑にしてある包帯を見つけた。
歩けない程の傷では無かったが無理に立ち上がると傷口を開いてしまうので、包帯の所まで這って移動する。
その包帯を手に取ると、人の手によって一度手を加えられている様だった。
多分アリシアが俺の脚に包帯を巻こうとして、巻けなかったのだろう。
実際に所々に血が付着している。
「どんだけ不器用なんだよ」
シンクはそんな独り事を漏らしながら、すぐに自分の
脚に包帯を巻き付ける。
この包帯は清潔か分からないが、傷口をそのまま晒している
よりは痛みも和らぐので包帯を巻いた方がいいと判断した。
包帯が巻き終えた所で外から冷気を感じたシンクは這いながらテントの
出口にたどり着いて、外の様子を確認する。
「何だよ……アレ」
シンクの目に飛び込んできたのは、アリシアの氷の聖霊魔法により
拘束されている害霊と、その様子をまばたき一つせずに見守っているアリシアの姿だった。
すると害霊を取り囲んでいる無数の氷柱にヒビが入り始めていた、
それと同時にアリシアは見たことも無いような構えをしたと
思ったら害霊の足下に魔法陣のようなものが展開していた。
それはまるでアニメの世界でシンクの想像を遥かに超えていた。
その後、アリシアが害霊に向かって手を振り下ろした瞬間、火柱が立った。
害霊を倒したのかアリシアはふらふらとした足取りでテントに
向かってくる。その時に目が合う。アリシアは呆れたように溜め息をはいてまた歩みを進めてくる。
19
:
ねずみさん?
:2011/07/09(土) 23:51:03 HOST:p4019-ipbf706niigatani.niigata.ocn.ne.jp
しかしその瞬間、アリシアは表情を変えてある方向を見つめる。
シンクもそれにつられてアリシアが向いた方向を確認する。
シンクの耳には何かが木々の向こうでうごめいているような音に感じ、シンクの本能は告げた。
このままだとアリシアが死ぬ。
シンクは立ち上がって助けに行こうとするが、それでも脚に
痛みが走り立ち上がれない。
声を出す事が一番早いのかもしれないが、その時のシンクには
冷静な判断なんてできる筈が無かった。今まで見た事も無いようなものに触れて、
さらに本能が告げるようになるとすれば、目の前で人が死ぬ事になる。
「糞! なんでこんな面倒事に! とりあえず動けよ俺の脚!」
シンクは自分の脚を叩く、気合いを込めるかのように。ありったけの力を込めて、
痛みに耐えながらヨロヨロと立ち上がるシンク。
元々古武術をやっている事もあり、痛みにはなれていた。
あとは飛び出すだけ、一刻も早く。
「面倒だな。でも人が死ぬよりは全然マシだ!」
シンクは自分が言い放った一言と共にアリシアめがけて
テントを飛び出す、しかしその直後に木々の向こうから
害霊が突進してきた。アリシアは気づいた様子だが、フラフラとしていて
その場を動けないでいる。
痛む脚。それでも全力で疾走する。アリシアはそんなシンクに
気がつかずただ呆然としている。害霊よりもアリシアへの距離は近い、
そう思った時害霊は飛びかかって一気に距離を縮めてきている。
ーー間に合わない。そう感じたシンクは、意識などせずに
ただ本能だけで全力で走り、害霊の鋭利な爪が届く寸前の所で、
アリシアにタックルするようにして飛びかかった。
「大丈夫か!?」
間一髪、シンクの方が早くたどり着きなんとか二人共無事だった。
しかし考え無しに飛びかかった事もあってかアリシアを地面に叩き
つけてしまったのも事実でシンクの背中の服は害霊の爪
によって引き裂かれていたそして、アリシアは仰向けでシンクは
アリシアの両手を抑えつけて押し倒すような格好になっていた。
幸いアリシアは目を閉じて痛がっている
「痛い……一体なんなのよもう。誰?」
「いや、シンクだけど」
「えっ? なっ!……」
そこでアリシアは目を開き、シンクに押し倒されている状況を
理解した様子で少し目をそらして顔は耳の先まで真っ赤に染まっている。
「大丈夫か? 痛くないか?」
「この、この!ヘンタイ!!」
20
:
ねずみさん?
:2011/07/09(土) 23:53:46 HOST:p4019-ipbf706niigatani.niigata.ocn.ne.jp
「ヘンタイ! ヘンタイ! ヘンタイ! ヘンタイ!止めてなさいよ!!」
「待てってアリシア暴れるなって」
シンクは抵抗するアリシアを抑えようと、アリシアの腕を抑えこんだ。
これでは端から見たら、美少女を襲っているようにしか見えないだろう。
アリシアは必死に抵抗するが、古武術も会得しているシンクの力
に叶う筈がなかった。
「うぅ止めなさいよぉ。うぅえぐっえぐっ」
「あっ……悪い。泣かないでくれよ」
「うぅ。早く離れて!」
シンクは泣き出してしまったアリシアに思いきり吹き飛ばされる。
アリシアは未だに顔を赤くしながらシンクを睨みつけながら、立ち上がる
「このヘンタイ淫獣エロ魔神! ……でも助けてくれた事には感謝するわよ……」
顔を逸らしながら恥ずかしそうにそう告げるアリシアにシンクは
またしても見惚れてしまった。夜の闇と木々の間から覗く月が
アリシアと重なって幻想的な雰囲気を作り上げる。
しかしその雰囲気を消し去るかのように、シンクの背後で害霊の雄叫び。
「フェイラール! 大丈夫? 今度は確実に消滅させるわよ……行けフェイラール!」
その言葉と共にシンクの横を神鳥が通り過ぎていき害霊を
炎の翼で切り裂いた。シンクはやはり状況が読み込めず、
アリシアの方を見つめるがアリシアは目を閉じて上を向き、手を天に翳してなにかをブツブツと呟いている。
「天よ……我に与えし神喰を喰らい力を解放せよ」
その言葉と共にアリシアを蒼紅色のオーラが包んでいく。
「フェイラール! こっちよ」
シンクが再び害霊の方を向くと、それまで応戦していたフェイラールが
旋回して害霊の背後に周りこみ、大きく雄々しい翼を振り抜いた。
すると害霊はフェイラールの攻撃の勢いでシンク達目掛けて
巨体が飛んでくる。
「おいっアリシ……」
「静かにして!!」
アリシアにそう牽制されたシンクは体を震わして再度害霊の方を見ると、
既に害霊の巨体は目前まで迫っていた。
しかし。
「聖を仕えし2つの刃よ! 炎(えん)と氷(ひょう)を持って邪を消し去れ! 拒絶する邪への双刃(リジェクニーサキュレーション)!」
シンクの後ろでそう叫んだアリシアの声と共にシンクの目の前に巨大な
魔法陣が浮かび上がる。空中で害霊の方を向いて展開した魔法陣はその両端から
蒼と紅の剣を生み出し、飛んできた害霊に向けて双つの刃を放った
21
:
ねずみさん?
:2011/07/23(土) 19:11:06 HOST:p4019-ipbf706niigatani.niigata.ocn.ne.jp
シンクの目の前を紅と蒼の閃刃が踊る。シンクが気づいた時すでに害霊と呼ばれた
化け物は刃によって形を留めていなかった。留めていないと言うよりは消えたのだ。
跡形もなく刃に貫かれた瞬間に、消えたのだ。そしてアリシアが放った双つの刃も既に
どこかへ消えて、さっきまでとは比べ物にならない程に樹海は静けさに包まれていた。
なんだよこれ、こんなのありなのか? アニメだよこれ。シンクはそう思いながら夜の樹海を見つめる。
すると背後で荒い息が聞こえてくる。
後ろを振り返ると、自らの肩を抱いて息を荒げているアリシア。シンクはなんとか立ち上がり
そんなアリシアの前に立つ。
本当だったら今すぐにでもアリシアの肩を支えてやりたいが、きっとアリシアは男嫌いで
男に触られるのが大嫌いなのだ。シンクはそう予想した。現にさっき泣かれてしまって
これ以上泣かれるのは御免だった。
「あの……大丈夫?」
「はぁはぁ」
シンクが声を掛けてもアリシアは息を荒げるだけで反応はなかった。シンクが
困り果てていると、突然突風が起きる。シンクが腕で顔を覆い隠すと
風の音と共に鳥が放つ甲高い鳴き声が聞こえた。そして突風が止んだ所でシンクは
アリシアの方を確認すると、アリシアの横にはフェイラールと呼ばれた巨大な
鳥が翼を畳んでいた。
フェイラールはその後しばらく翼を整えた後に甲高い鳴き声が上げた。シンクの
鼓膜を破るのが目的なのかと思う程だった。しかしフェイラールの
すぐ横にいるアリシアは相変わらずに自分の肩を抱いている。
鳴き声が終わった瞬間だった。
フェイラールは蒼紅色の光に包まれた。その光は徐々に小さくなっていきやがて
手のひらサイズにまでなる。シンクはもう何がなんだか分からないで
いると、突然光が弾け飛ぶ。
光があった所を見ると、薄い蒼と紅色の鳥をかたどったネックレスが
宙に浮いていた。
「フェイ……ラール」
アリシアが今にも倒れそうな口調でそう呟くと、ネックレスは自動的に
アリシアの首に付けられた。ネックレス自体が意志を持ってたよな今
シンクが首を傾げると、今まで動けなかったアリシアが突然口を開いた。
「少しはマシになったわ……まだ辛いけどね。
それより男なら闘いなさいよ! 男はみんな私と同じかそれ以上の
”聖珠”を使えるんでしょ? ”リペアーツ”にいる唯一の男の奴も凄い聖珠使うし……
アンタはどんな聖珠を使うのよ」
22
:
ねずみさん?
:2012/02/04(土) 22:21:59 HOST:p4247-ipbf407niigatani.niigata.ocn.ne.jp
「いやあの……何がなんだか分かんないだけど」
シンクがそう告げるとアリシアは目を丸くして首を傾げた。
「えっ、分からないってどういう事? ちょっと大人しくしてなさいよ?」
アリシアはそう言ってシンクに恐る恐る近づいていく、腫れ物を触るように慎重に。シンクは言われた通りに大人しくしていると、アリシアがシンクの肩に触れた。シンクは突然の出来事に体を震わして、
「ちょっ……どうしたんだよ急に。男嫌いなんだろ?」
なんて事を言う。アリシアはその言葉に一気に顔を赤く染める。
アリシアは俯いてぶつぶつと独り言を言い始めたので、シンクは「聞こえない」と言う。すると肩の服を掴んでいたアリシアの力が強くなるのを感じる。その瞬間、アリシアは真っ赤に染まった顔を上げ涙を浮かべながら言い放った。
「あ、あたしだって好きでやってるんじゃないわよ!」
アリシアは顔を逸らして、肩にあった手を少しずつ胸の方にずらしていく。その手つきは他を興奮させるには十分でシンクもその手つきに魅了されてしまっていたのだが、理性が働いた。
「ちょっ、ちょっと待て! まだ出会ってから少ししか経ってないのにそういうのは早いって。体は大切にした方がいいぞ。な? アリシア」
「な……何言ってるのよ! あたしはそんな事しないわよ! この変態!」
アリシアはそう言いながらも手を止めようとしないので、シンクはまた止めようとしたのだが、「黙って」と牽制されてしまい何も言えなくなる。しばらくそうしていると、突然アリシアの手が止まった。
「聖珠の気配が感じられない? 男なのに……どういうこ……」
アリシアの言葉はそこで止まった。フラフラとし始め倒れてしまうのではないか?
そうシンクが考えた時、アリシアはついに自分の身体を支えきれなくなりシンクに向かって倒れこむ。シンクは慌てて受け止めるとアリシアの顔は右肩に乗せられ吐息が首筋に当たり、煩悩を刺激する。さらに、手を動かそうとするとなにやらムニュムニュとした柔らかい感触。
これはよくあるパターンの奴であって……そして非常にマズい。そうシンクが予感しながらも、手を揉むようにして動かすとアリシアは悩ましげな声を上げる。
「んあっ……どこ触ってんのよ! んん! 早く胸から手離してよぅ。うぅ」
「わ、悪い。でもかわいそうにな、こんなに小さくて……」
23
:
ねずみさん?
:2012/02/04(土) 22:25:14 HOST:p4247-ipbf407niigatani.niigata.ocn.ne.jp
言った後に気がついた。地雷を踏んでしまったのだ、それも思い切り。確かにアリシアの胸は小さい。Aはあるとは思うが、かなり小さい。それをシンクは口走ってしまったのだ。これはマズいそう感じながらアリシアの様子を確認しようとすると、突然アリシアはシンクの下を離れ、少し俯いた。
俯きながら自分の胸に手を当てて、何かを確認している。そして、顔を思い切り近づける。
「小さくて悪かったわね! ……これでも気にしてるんだから」
声を張り上げた直後に涙目で、俯いてしまうアリシア。
「まあ……俺は貧乳も好きだぞ?」
シンクはそう慰めるのだが、アリシアは落ち込んでいるのか俯きながら溜め息を吐いていた。
そして、アリシアが顔を上げた時またしてもアリシアはフラフラとし始め、案の定自分の身体を支えきれなくなり、シンクはそれを受け止める。今度は胸に手が当たらないように、慎重に。「大丈夫か?」
そう声を掛けるが、アリシアの反応はなかった。不思議に思ってアリシアの様子を伺うと、息が荒いのが確認できた。シンクはアリシアをその場に寝かせると、アリシアさらに苦しそうに息を荒げた。
「大丈夫か? オイ!」
「はぁっはあっ! 身体が熱い……」
胸の辺りを抑えながら悶えるアリシアはどこか艶めかしい。シンクは雑念を振り払う。今アリシアは本気で苦しんでいるんだ。身体が熱いと言う事は熱なのだろうか?
シンクは少ない医療知識を絞り出し、熱い=熱という子供でも思いつくレベルの答えにたどり着いた。
恐る恐るアリシアの額に手を近づける。真っ白な肌が今は少し赤みを帯びているようにも見える。そしてアリシアの額に手を触れると……
「熱い……熱だ。何度あるんだよ。こんな森の中で……」
シンクはふぅと溜め息を吐いて、今どうするべきなのかを考えた。今は夜で冷える。近くにテントがあるのならそこに運ぶのが一番良い。
シンクはアリシアをお姫様抱っこの形で持ち上げようとする。
「大丈夫……だよな? 仕方ない事なんだよ、うん。よっこらせっと。おっ軽い……」
シンクが予想していたのよりも遥かに軽く、いい意味で期待を裏切った。シンクは腕の中で悩ましげな声を上げ続けるアリシアを意識しながら、すぐそばのテントへ向かった。
24
:
ねずみさん?
:2012/02/04(土) 22:27:56 HOST:p4247-ipbf407niigatani.niigata.ocn.ne.jp
「たくっ……どうしろってんだ……」
シンクを取り巻く状況は――良くない。
赤いテントにアリシアを運びこんで、先ほど包帯を取り出したアリシアの物であろう薬箱を確認する。しかし、中に入っていたのは良く分からない紫の液体がビンに入っている物と、ひし形にカットされた手のひらサイズの赤い結晶だった。
シンクに宝石の知識は無いため詳しい事は分からないが、ルビーだと推測した。赤い宝石なんてルビーしか知らなかったからだ。
良く分からない紫の液体が入っているビンはひとまず置いておいて、ルビー(?)を手に取って、気づいた時からテント内に内蔵してあったランプの光に当ててみる。
「綺麗……だ。これ、高いんだろうな……もしかして、どこかのお嬢様だったりするのか?」
光に当てたルビーはシンクの常識を凌駕する透き通り具合で、ルビーの反対側もくっきりと見える程である。それはシンクにとって未知の輝きであり、自分がルビーを掴んでいるだけで自然と罪悪感が生まれてしまう。
ルビーを介してアリシアの顔を覗きこむ。
閉じられた目から生える長く綺麗なまつげ、少し開いた口元からは熱の影響か荒い吐息が吐き出されている。元は白磁のような柔肌が紅潮し、汗で張り付いた髪の毛がシンクの煩悩をくすぐった。
しかし、その無防備な状態にあるアリシアだが目鼻立ちはくっきりしているので、お嬢様と呼んでも差し支えないように思える。
目の前で女の子が倒れているのに、見とれている自分を叱咤し思考を巡らす。
思いついたように勢いよく立ち上がろうとして、脚に激痛が走り、その場に崩れ落ちる。
傷がある事を忘れていたのだ。
いつの間にかついていた傷だったが、深く、動くには厳しいものだった。先程アリシアを助けに入れたのは、人に目の前で死んで欲しくなかったからだ、それによってアドレナリンが出ていて傷の痛みもあまり感じなかった。
今も焦ってはいたが、心のどこかで緊急ではない、という感覚がある。意識的には緊急事態に違いはないが、人の生き死にに直結するものではない、と漠然と感じている。
もう一度挑戦するが、痛みが邪魔して失敗に終わる。
包帯の中で傷口が開いてしまったのか、血が滲み出てきている。
「立って、どうしようってんだ俺は……」
25
:
ねずみさん?
:2012/02/04(土) 22:31:16 HOST:p4247-ipbf407niigatani.niigata.ocn.ne.jp
「ふぅ……、寒くなってきたな」
立つこと、動くこと、行動することを諦めてから少し経った頃。
一向に和らがない夜の冷え込みの中、シンクはアリシアの顔をひたすらに眺めていた。やましい気持ちすら抱かせないような聖なる容貌に見とれていた。それと同時に自分は何も出来ないのか、水を持ってきたりすることくらいは出来るのではないか、という自問自答を繰り返す。
しかし行動に移す前に、先程遭遇した虎のような化け物の姿が脳裏によぎる。
見たこともない生物、聞いたこともない生物、異形な生物、生物じゃないかもしれない――生物。夏だった筈の季節も今では寒いと感じるレベルになっている。
おかしい。何もかもが、全て。
日本ではありえないような大量の木々が連なる樹海。富士山にも樹海はあるが。
それでいて夏ではない気候。
それに――
「ああ、糞! 分かんねぇ……ここはどこでなにで、なんなんだよ」
シンクは頭をかきむしり、呼吸も少しずつ荒くなる。
恐怖心が、今になってようやく追いついてきたのだ。
――これが普通。
脳内が確実に麻痺していたのだろう。知らない人とはいえ人が目の前で死ぬなんて想像してみたら、それだけで罪悪感に支配されて生きていけないだろう。 人を助けるという明確な目的があったからこそ化け物にも立ち向かえた(戦ってはいない)。
その目的意識がない今、恐怖心はシンクを縛り付けておくには充分すぎる檻だった。
「ごめん……」
自分の情けなさや不甲斐なさに漏れたその言葉は、誰に向けたものではなくただ自分の中の心を吐き出したもの。
家が古武術の道場で、シンクも業に従いそれを身につけた。
それにより喧嘩では無双。
――調子に乗っていた。
「ル……ビ……」
「――えっ?」
微かに聞こえた鈴の音が小さく凝縮されたような声。
小さいながらも凜とし、力強く透き通ったの発声者はアリシアしかいなかった。
シンクは体をバネのように動かし、怪我をしていると思えない俊敏さでアリシアの顔を覗きこむ。
四つん這いになって真上から見下ろすと、じっと閉じられていた美しいまつげが微かに震えた。
その一瞬の動きに歓喜したシンクは無意識のうちに顔を更に近づける。
シンクが息を呑んで見守るなか、今度はアリシアの口が微かに震える。
「返して……そ、れ――頂戴」
「えっ? 大丈夫か? 話せるか!?」
26
:
ねずみさん?
:2012/02/04(土) 22:34:15 HOST:p4247-ipbf407niigatani.niigata.ocn.ne.jp
アリシアが何を言ったのか、それは分からなかった。
しかし、意識が戻ったという事実に対してシンクの心は躍った。
ただアリシアが無事で居て欲しいという気持ちもあったが、ほとんどは――自分のためだった。
アリシアが目を覚まさなければ自分は何も分からない、アリシアが目を覚まさなければ自分は帰れない。全て、自分自分だ。
そのことを考えた瞬間シンクは喜んでいいのか不安になる。
「おい大丈夫か!? 話せる?」
「ん……んぅ」
少し辛そうな悩ましい様な声を上げ、手を上にゆっくりと上げた。目は微かに開いている。
「なん、で。あんた……そ、れ」
顔を少し傾け、視線の先にあったのはシンクが右手に持っている真紅の宝石。
それを見てアリシアは言っているのだ。
シンクが勝手にカバンを漁って見つけたルビーだ。目を覚ました途端にルビーを求めるということは、プライベートな何かがあるのかもしれない。
「あっ、ごめん勝手に漁っちまって。何かあるかなと思ったんだよ包帯とかはあったから他にも、と思ったけどこの宝石だけだった。大事なもの、なんだよなきっと。本当にごめん」
気がつけばシンクの顔の前に差し出されていたアリシアの手にルビーを握らせる。触れた手は恐ろしい程に冷たく、熱を帯びていた体はその芯から冷え切っているようにも感じる。
受け取った宝石を胸元に当て、もう片方の手も宝石を握っている手に添える。
そうして、目を完全に閉じる。
(安心するのか?)
そのまま眠ってしまうかに思えたアリシアの口が開く。
「触って……どこでもいいから、早く。早く、触って……」
先程は完全に拒絶されていたはず。
――触って? 溢れてくる煩悩は、勿論止まらない。
呼吸は落ち着いているので艶めかしさは強くはない、が冷静そうだからこそ自分の意志でそう言ってるのではないかと錯覚する。
アリシアの訴えにあたふたとしてしまい、正常な判断は難しい。
「いや、俺達まだ出会ったばかりじゃないか。それに歳的にもそういうのはあんまり……いやアリシアの歳は分からないんだけどさ」
乙女のようなそんな呟きをしているうちに、アリシアは苛立ったのか目を閉じたままルビーを手にしている右腕をシンクの目の前に突きつけた。
「掴んで」
「えっ?」
「早く」
「わ、分かった」
静かながらも威圧感が伝わる。
それに押されて慌てて二の腕の辺りを掴んだ。
27
:
ねずみさん?
:2012/02/04(土) 22:38:50 HOST:p4247-ipbf407niigatani.niigata.ocn.ne.jp
随分なご無沙汰です(笑)
読んでくれてる人はほとんどいないと思いますが
読んでるよ!て人は
>>22
から
>>26
までの5レスを半年ぶりくらいに更新しました(笑)
ので読んでみて下さい〜
28
:
名無しさん
:2012/02/10(金) 14:32:03 HOST:wb92proxy03.ezweb.ne.jp
>>27
何の話?
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