冒険姫と二人の王子様 - 1301651354

3：ねここ ◆WuiwlRRul.：2011/04/01(金) 21:18:16 HOST:221x248x191x126.ap221.ftth.ucom.ne.jp: 　　　　　～　蓮　～

「あらあら、蓮様が寝てらっしゃるわ……可愛らしい寝顔。けれど、毛布も何もかけないで……寒そう、風邪をひいてしまうわ。……よいしょ、っと。これで暖かいわね。さあ、蓮様……ゆっくりお眠りなさい。お目覚めにはキスをプレゼントしてあげるから、安心してね……。」

　女の人の言葉が俺の頭の中でぐるぐる回って4、5周目くらいでぼやけるように消えていく。目を開こうとしても、瞼が重くて開かないのか、それとも目覚めたくないのか、いくら力をいれても開けれな……っ？！

「れーんーっ！　あれっ……、寝てるの？　起きてよー蓮ー………蓮っ！」

　バタバタと大きな足音を屋敷中に響かせ、廊下を走る。今は12時なので屋敷の偉いお方も昼食を食べているところだ。その足音は偉いお方の耳に届いたらしく、ぶっ、と豪華な昼食ごと吹き出すような音が聞こえた。それに……
　俺の目も、ばっちり覚めてしまった。……まあ、耳元で「蓮」と連呼されれば流石に重たい瞼でも開くだろう。

ちゅっ

　頬に温かい女の人の唇が触れた感じがした。その瞬間、俺の元へやってきて名前を連呼してきた少女……恐らく桜乃姫であろう人物が顔を真っ赤にしているのも見えた、気がする。

「うふふ、蓮様あ！　お目覚めのキスはいかがでした？！」

　げっ……、叶羽蓮………俺、こいつ苦手なんだよねー。いかにも嫌そうな顔をしていると、姫にぐいっと腕を引っ張られた。

「だめだよ、恋ちゃん！　両思いでもないのにキスしちゃ……蓮、嫌がってるよ？！」

　同じれんだから何て言ってるか分からない……けれど俺の天才的な！頭をぐるーんと回転させて理解した。姫もたまには良いこと言うじゃねえか。

「そんなことないよ、姫ちゃん。好きなら好きって言わなきゃ伝わらないでしょ？　それを伝えるかどうかは自分次第……じゃあ、キスだってするかしないかは自分次第なんだよ！　分かる？　……というか、年上のお姉さんなんだから理解してほしいな。」

「……そっかあ！　じゃあ、恋ちゃんは当たり前の行為をしただけなんだね。ごめんね、だめとか言っちゃって……私が馬鹿だった！　いや～、もう本っ当恋ちゃんはしっかり者だよねえっ。」

　あはははは、そうだねー……恋ちゃんは頭が良いねえー……って、

「おまっ、馬鹿姫！　納得すんなや……。塚、もう行くぞ！　今日はカナリアの森に行くんだろ？」

「うんっ、れっつごー！　……んじゃあねっ、恋ちゃん。」

　ああ、もう本当……楽しいんだなあ、姫といると。これが恋なのか？　いやいや……俺があんな2歳も年下の小娘を好きって……ロリコンかよ！　あれ、2歳……しか違わないのか？　ぐるぐる、ぐるぐる……頭をフル回転させるけど、解決しないこの悩み。珍しくふらふらしてしまい……

ゴツンッ！

「って……。」

　もしかして、姫にぶつかった……？　やべえ、謝んなき………え。

「な、んだよ………？」

　えっと……？　俺が姫にぶつかって、姫はそれで前にずてんっと転んで……それを支えたのが………幸、先輩……？」

「痛っ…………！」

　もしかして、怪我をさせたかもしれないということに焦り慌て……更にそれを支えているのが昔一緒に遊んでくれた幸先輩だと気づくともう何が何だか分からずに倒れたくなってくる。ああ、ふらふらする、もうやだ！

「おやおや……、蓮に姫じゃありませんか！　……というよりも、姫は足に怪我をしていますね。……とりあえず、僕の家に来てください。」

　え、ちょ、森……は？　カナリアの森に行って、虹色のカナリア……レインボーカナリアを一緒に捕まえるって言ったじゃないか！　一緒ってところが最高だよな！　……じゃなくてどうするんだ？　これから。

　　　　　～　幸　～

　転びそうになっている、いや……もう転んで倒れそうになっていた美しい外見の少女を華麗に支えて見せた。周りの人や、並んでというより少し後ろ気味に歩いていたふらふらの少年に。なのに、支えた少女が長年恋し続けていた姫だなんて……正直、運命とかは信じてないんだけど、この一瞬だけ信じてしまいそうだった。何せ、僕と姫は結婚の約束までした仲だからね。だけど、苦しそうだった。何があったんだと思い足を見ると、かなり真っ赤に腫れていた。きっと、転ぶ前からだと思う。何処かで怪我したのかな……いや、姫のことだから、他人の為に頑張りすぎて、無茶な事でもやり遂げたんだろうな。この傷は、俺でも癒せるだろうか……。今は蓮がついているけれど、いつかは僕にもチャンスがあるだろうと思って、とりあえず蓮ごと笑顔で家に迎えることにした。

　　　　　～　続く　～