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Il record dell’incubo〜悪夢の記憶〜

1霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2011/03/06(日) 23:06:24 HOST:i114-180-240-196.s04.a001.ap.plala.or.jp
初めまして、霧月 蓮(ムヅキ レン)と申します。ここでは始めて小説を書かせていただきます。

更新は非常に亀で、誤字脱字も非常に多いですが、生暖かい目で見てくださると助かります。
出来るだけ遠まわしに表現するように致しますが、グロイ表現が多々あります。それでも大丈夫、と言う方はどうぞよろしくお願いいたしますね。

アドバイス、感想等があれば喜んで。

一応、学園、ファンタジー、歪み、と言った感じの者が中心となっています。特殊能力が出てきたり、魔法使い吸血鬼が出てきたりと、多分滅茶苦茶です
非常に駄文で、まとまりのない文章ではありますが……。

39霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2011/07/02(土) 14:42:08 HOST:i121-115-45-73.s04.a001.ap.plala.or.jp
 しばらく睨みあった後、フッと楓が天上へと手を伸ばす。それに遅れて刹が楓の懐に飛び込んだ。牢屋の中から出ようと必死になりながらもこんなのが、普通だと思われてはたまらないと湊は考える。それに刹は敵ではあるが目の前で血が流れるのは見たくない。刹は本気だし、楓も同じだった。刹の能力で作り上げられた牢屋がガチャガチャと音を立てるが、鉄格子を捻じ曲げるほど湊は怪力ではない。低く舌打ちをして能力を使おうとしたところで、刹が声を普段はないほどに荒げて言う。その姿に思わず湊も動きを止めて、刹を見つめる。

 「ふざけるなよ……お姉様を捨てておいて今頃のうのうと現れやがって。しかも光につくだ? 何処まで馬鹿にしてくれんだよ!?」

 ヒュンッという風斬り音とともに刹の刀が振るわれた。それなのに楓は慌てることもなく、静かに目を閉じて繰り返し何かを呟いている。今度こそと湊がポケットの中に手を突っ込んで、種を一つ取り出す。湊の能力の一つ植物、植物操作は自在に植物を操ることができる。強度や動き、操作速度まで操作できる反面近くに植物や、その種子がないと意味を成さない。それ故に湊は普段から植物の種子をいくつか持ち歩いていた。拳銃などの武器を使うのもいいのだが、それだと大抵の能力者には防がれてしまう。テレキネシスやテレポート、音掌握などさまざまな能力がある時点で、能力なしに戦おうというのが間違っているのである。
 湊が手の中にある種子を成長させようと、意識を集中し始めたその時、大きく視界が揺れた。それは刹も同じようで、まっすぐと楓を切り裂く予定だった刀は勢いを失って下へと刃の軌道を変化させる。唯一の救いといえば下へと向かった刀が刹の足を切り裂いてしまわなかったことだろうか。2、3歩よろめいた後に右手で額を押さえる刹に目を向けて、楓は静かに悲しそうな笑みを浮かべた。湊の方はといえば訳が分からないというような表情をしながら、両手を下へと下げている。手を上げようにも力が入らないのだ。手に握っていた種子は音もなく床へと落ちた。

 「異端に裁きを、私に守護を」

 平坦な声で楓が告げる。鋭い光が走ったかと思えば、刹と湊の体から力が抜けて床へと突っ伏す。湊の場合は小さな牢屋に閉じ込められていたため、顔面を強打することになってしまったのだが。痛む顔を押さえようにも、力が入らない。意識があるのが不思議なぐらいに指一つ動かすことさえ出来なかった。刹が絞り出すような声で何かを言っているが湊も、楓もそれを聞き取ることは出来ない。遅れて刹の刀が倒れる音が響いた。不自然に遅れて倒れた刀に楓は目をやったが、すぐに興味なさ気な表情をして、床に突っ伏す刹に目をやる。
 小さく息を吐いた後に、楓は静かに指を鳴らした。それに少し遅れて湊と刹の体に妙な圧力がかかる。ビクンッと不自然な位に体を震わせて湊は声を上げた。刹の方は声さえ出せないようで痙攣するかのように体を震わせている。その目だけは鋭く楓を睨みつけているが、涙が溜まってしまっているため恐ろしさなどはかけらも感じない。小さく楓は口を動かす。声には出さないが謝るかのように“ごめんなさい”と。優位に立っているはずなのに、少しも嬉しくなさそうに、ただただ口を小さく動かしている。

______________________________________
二つ変換ミスを発見したので修正。圧力を掛けられたのは楓じゃないのに楓と書いていたとか……

40霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2011/07/02(土) 15:40:49 HOST:i121-115-45-73.s04.a001.ap.plala.or.jp
 ふと、楓が湊のいる牢屋に近づいてきた。苦しげに声を上げながら体を震わせているその姿に顔を向ければ、心底後悔したような表情を浮かべる。フラリと僅かに視界が揺れるのを感じながらもただただ湊を見つめる。湊には今それがどんなことだかという事にに思考を割く余裕なんてないのだが、楓は無言で湊を見下ろしていた。悲しそうにそれでも何かを堪える様に複雑な表情をしながら。しばらくした後にフッと体を刹の方へと向ける。ゆっくりと床に転がる刀に手を伸ばす刹を見て、流石にランクの違いで効き目に違いは出るのかとため息をついた。出来ることなら刹を傷つけたくはなかった。数少ない家族で実の兄弟を手にかけたいなんて微塵も思っていないのだ。当然といえば当然のことであろう。

 「う……あぁぁぁぁぁ!!」

 両目に涙を溜めて湊が絶叫する。その声に驚いた刹がぴたりと動きを止めた。先ほどまでは震えていた湊の体がピタリと動かなくなる。それに目をやることはなく楓は平坦な声で「私が使ったのは能力者にのみ有効な魔法です。傷はつきませんし、一時的に意識がなくなるだけなので安心して眠ってくださいね」と告げて笑った。色々な感情でぐちゃぐちゃになったぼろぼろの笑顔を……。だからと言って魔法の発動を止めたりはしなかった。今魔法を止めたりすれば先に意識を失った湊を含めて、刹はここにいる全員に牙をむくだろう。自分が殺されるは嫌だし、刹に自分を殺させるのも嫌だった。それに兄弟の問題に、関係ない湊が巻き込まれるのも嫌。意識がなくなった後も圧力をかけられ続ける湊に謝罪の言葉を述べながら、楓はさらに圧力を強いものへと変化させる。
 大きく刹の体が仰け反る。自然に圧力から逃れようとしているようだが、もう力が入らなくなってしまったようだ。意識を失うのも時間の問題だろうか、そう考えて静かに声を上げ始めた刹に近づく楓。刹のその手は刀に届く寸前で伸ばされていた。自分の顔の横に立った楓に助けを請うように顔を向けて、両目に溜まった涙を流していた。その姿を見て楓の心が揺らぎそうになる。助けてあげてもいいのではないだろうか? この子は意識がない人を襲ったりする子ではない、自分は殺されてしまうかもしれないがその前に少しだけでも躊躇いを見せてくれるのではないだろうか? もしかしたら一瞬でも昔のように笑いかけてくれるのではないのだろうか? そう言った考えを首を振りながら必死に頭の中から追い出そうとした。出来るだけ刹の顔を見ないように顔を逸らす。

 「ゆ、るさない……」

 ポツリ、と刹が呟いた。その後はもう声を上げることさえせずにぐったりとしていた。しっかりと閉じられた目からは意識を手放した後でも涙が零れている。指をならして湊と刹に圧力をかけていた魔法を解き、そっと刹の頬に触れた。妙に冷たいようなそんな気がして、僅かに焦りを見せる。もしかして死んでしまったのだろうか? 混乱に落ちかけた楓を救ったのは小さな、刹の口から漏れる吐息だった。ほっとしたように息を吐いて静かに刹の頭を撫でてやる。刹は何の反応も示さなかったが、楓はただただ満足そうに笑っていた。
 しばらくの静寂の後、楓は再び両目を隠すように包帯を巻いて車椅子に座った。いつの間にか牢屋が消えて、冷たい床に突っ伏した湊はソファに寝かせて、ブレザーの上を掛けてやる。三十分ぐらいで目を覚ますだろう、そう推測してそれまでに刹を紅零に押し付けるか寮に送り届けるか、そう考えて刹を抱きかかえる。ゆっくりと動き始める車椅子が自動だということが今は凄く助かった。
 ふいに動き始めていた車椅子が停止した。機械的な音声は「前方に人。しばらくお待ちください」なんていう風に告げる。教師でも見回りに来たのだろうか、楓はそう考えて小さく首をかしげた。そんな楓の耳に次に飛び込んできた声は車椅子が発する機械的なものでも、腕の中にいる刹の声でも、横たわる湊の声でもなく、低く静かな冷たい声……。蓮の声だった。

 「相変わらず甘いな。楓は」


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