したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | メール | |

小さな街の中で。

17とある人:2011/04/26(火) 21:26:59 HOST:KD111098194105.ppp-bb.dion.ne.jp


 011


 「やっちまったな、あの先生。」
博也がつぶやく。
「だね。」
と美野里。
「? 何のこと?」
と亜矢。
「分かるだろ。」
博也が不快感をあらわにする。
「何だったんだろう。」
と勇人。
「逆鱗にでも触れたんじゃない?」
と洋子。
「逆鱗に触れた、ってレベルじゃないと思うよ・・・?」
亜矢が呟く。
 彼らの話題に上っているのは、言うまでもなく、先ほどの事件である。
 雄哉は、あの言葉を聞いた瞬間、激怒した。
 いや、“豹変”した。
「さて、どーなってるかな、あいつ。」
博也が投げやりに言う。しかし、その眼はしっかりと前を見据えていた。
 六時限終了間近。あと五分もしたら下校である。
「博也ぁ。」
美野里が博也の袖を引っ張る。
「雄哉を見に行く?今日。」
博也は美野里の問いに目で答える。
「?」
亜矢が首をかしげる。
「何をしに行くの?」
「雄哉はな、あの言葉を聞くたびに、ああやって豹変しちまうんだよ。」
博也は一度言葉を選ぶような仕草をする。
「だから、それを元に戻すために・・・なんて言ったら変だけど、俺らが見に行ってやるわけ。」
「そんなこと必要なの・・・かな?」
「何で必要ないと思うんだ?」
博也は少し目を細める。
「え?そ・・・それは・・・えっと・・・」
亜矢はしばらく黙り込む。
「ほら、こう・・・男の子ってさ、怒っちゃうと・・・なんか、『放っておいてよ』みたいな感じの・・・圧力?を発すると思うからさ、こう・・・そっとしてあげた方がいいんじゃないかな?」
亜矢は力説するが、あまり説得力がない。
「読点と『・・・』が多いぞ?」
「あ・・・そうだったかな?」
亜矢は少し赤面する。
「まあ、何故かっていうとな・・・」
博也は少しためらう。
「寂しいと・・・思うんだ。」
「寂しい・・・。」
博也はうつむく。
「あいつの寂しさは、あいつにしか、分からないんだ。」
博也の声には、悲痛な響きがあった。
 亜矢はさっきの雄哉の姿を思い出す。
 怒りに任せて、叫び声をあげて、ただただ相手を殴っていた。
 誰にも、止められずに。
 誰にも、助けられずに。
 誰にも、慰めてもらえずに。
 ただ、自分の感情を相手にぶつけ。
 理解してもらえないと分かっていても。
 それしか、出来なかった。
 そして、亜矢ははっきりと見ていた。あの時の、雄哉の目を。
 その眼は、怒り狂った・・・獣のようだった。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板