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小さな街の中で。

13とある人:2011/03/27(日) 19:34:57 HOST:KD111098194105.ppp-bb.dion.ne.jp
 007


 「今日はいろいろあったなー。」
雄哉が呟く。
「三人と知り合ったもんね。」
美野里も言う。
「5月になって欲しくないなあ。」
博也がぼやく。
「お前はビビり過ぎだ。」
5月16日に校区内分散がある。
「だって、刃物を持った少女と一緒に班別分散にいくんだぜ?そりゃあビビるよ。」
帰り道、雄哉と博也、美野里が一緒に帰っている。
「じゃあ、うちが刃物を持って博也を切りつけたら?」
「多分俺はおまえの隣から引っ越す。」
博也の家は美野里の家の隣である。
「え〜?博也ってそんなにチキンだったんだ。」
「怖いだけだ!」
「や〜い、チキン、チキン〜!」
美野里が博也をからかう。
「うるせえ!」
「チキンチキン〜!!」
雄哉も乗ってきた。
「うるさい!黙れ!団体行動を乱すな!男子、女子、男子、女子と交互に並べ!」
「先生、しかし、僕は右折しなければなりません。」
いつの間にか交差点についていた。雄哉は右に、博也と美野里は左に曲がる。
「それでは、解散!」
「じゃあな。」
雄哉は博也と美野里に別れを告げる。とはいっても、彼らの家は百メートルと離れていない。

 十秒くらい歩くと、雄哉の家が見えた。ポケットから鍵を取り出し、開錠する。
「ただいま〜。」
家に入る。
 が、迎えてくれる者は誰もいない。いつものことだが、寂しかった。
 両親は共働きか?
 否。
この家に帰ってくる大人は、いや、雄哉以外にここに帰ってくる者は・・・・・・

 誰もいない。

 薄暗い部屋を、蛍光灯の光が照らす。二階に上がり、自分の部屋に入る。鞄を下ろし、制服を脱ぐ。
「まだ寒いねえ。」
雄哉はつぶやく。ベッドに飛び乗り、寝そべる。
「あいつ、どっかで見たことあるような気がするんだよなー。」
帰り道、雄哉はずっと亜矢のことを考えていた。心の隅に何かが引っかかっていた。
 その何かは、何なのか。
 雄哉はベッドから降り、クローゼットから適当に服を引っ張り出し、着替える。ジャンパーを羽織り、鍵を掴んで外に出る。家の鍵を閉め、そばにあった自転車のチェーン錠を外す。
 自転車と言っても、そこいらのチャリンコとは、ちょっと違う。ダブルギア、二十一段変速のマウンテンバイクだ。祖父からもらった、三十年物だ。しかし、きっちり手入れされているらしく、フレームは輝いている。だが、雄哉にはあきらかに大きすぎる。
 自転車にまたがり、発進する。いつものサイクリングコースを走る。雄哉の家から南に下り、川まで走る。そこから西に向かい、駅を通り過ぎ、隣町との境目で反対側にわたり、元の道まで戻る。10キロくらい距離があるが、自転車の速さには自信がある雄哉はそれを30分くらいで走る。飛ばせば十五分もかからない。
 雄哉は川沿いの道を走る。ここはサイクリングコースの中でも特にお気に入りの道である。夕日がまぶしい。
 駅が見えてくる。ホームがひとつしかない、とても駅とは呼べない駅だ。駅のそばで一旦立ち止まり、ホームの方を見る。
ここで、あの少女を見かけた気がした。
(気のせいだよな・・・・・)
雄哉は再び走り出す。全速力でペダルをこぐ。タイヤが音を立てて回る。雄哉はこの音が、この風が大好きだった。
川の反対側に渡る。曲がるとき、後輪が少し滑った。ちょっと速度を出しすぎた。
 雄哉は家までの道を、夕日を浴びながら走り抜けた。


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