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初婁
:2010/12/28(火) 15:05:01 HOST:baid201b4d0.bai.ne.jp
*
そしてそのサンマ傷の男―薬師寺遠野は、気絶させた少女を抱き抱え(目立たないように裏路地を駆使して)家へと帰宅した。
最初こそ彼女の「犯罪」に対しての罰はあったが、それも次第に実験へと傾倒していく遠野の脳は即座に隅へとその思いを追いやった。
別にその家の条件は悪くはなく、寧ろ母親が科学者である所為か金は一般よりはあるため、豪邸と言って差し支えない邸宅だったのだが―
彼女の本能は、ただ一心に母親に対しての歪んだ気持ちを叫び続ける。
今となってはそれさえも兄妹の策略だったのかもしれないが。
―あれだけの研究を受けたから……普通の人だったら、まだ意識を取り戻していないし、痛みで起き上がれない。
走りながら、少女は自分が改めて「人ではない」という事を思い知る。
―私は人じゃないから、誰も巻き込んではいけない―
少女は、もう既に気付いていた。
自分の思いが異常である事に。
嫌でも思い知らされた。
自分を慕ってくれる数少ない友人も、こっそりといるファン倶楽部の会員も―
その愛は自分の向けている愛とは別の物である事に、嫌でも気付かされていた。
―でも、これで良かったのかもしれない―
―だって私は、人ではないから。
其処まで考えて、少女は自虐的に微笑んだ。
しかし―
ある出来事が、彼女をまたもや奈落の其処へと叩き落す。
「沙夜さん!」
*
―ああ、
―私も、私もなってみたい!
―あの「殺人鬼」に―
人工都市―
それはその名の通り、埋め立てによって人工的に造られた都市である。
その都市には「夢幻市」という名が付けられ、最先端の医療、自転車や車などの乗り物、学校の設備が有名となっている。
そこに一人、「殺人鬼」に憧れる少女がいた。
殺人鬼よりずっと年下の少女―風池円(かざいけまどか)は、テレビニュースを見てその「殺人鬼」の存在を知った。
無差別に人を殺傷する。
世間から見ればソレは理不尽であり、憧れに値するような事はないが―
ただ一人、円だけは―たとえそれが無意味な殺戮(さつりく)であっても、憧れを抱いた。
理由はごく簡単な物。
円にはとても大切な友人―大染環(おおぞめたまき)が居た。
幼い頃から一時も離れず傍に居た、それはもう「友達」や「大親友」という言葉では生ぬるい―「片割れ」。
円は彼女が居れば満足だった。環は円がいれば満足だった。
しかし、小学校に上がってから―環の両親が離婚してから―その環境は一変する。
クラスメイトは環に冷たくし始め―、時には暴力を振るっていた。
環はその同時期に離婚のストレスから母親からも虐待を受け、登校したときには痣が絶えない日々が続いていた。
自分の「片割れ」を虐めから救うべく、円は何度も前に立ちふさがった。
その時は、虐めの理由は円は知る由も無かったが―後々、環の口から聞かされた。
この人工都市の輝かしい栄華とは裏腹に―環の家は、少し特殊な位置についていた。
「開発者」―表ではそう呼ばれているものの、実態は人体実験と何ら変わりの無いモノだった。
そしてある日―薬師寺、という科学者と言い合いになり―有名だったその科学者に、まだ新米だった(その腕は認められていた)環の父は、悉く(ことごとく)その権力に打ちひしがれる結果となったのだ。
夫婦関係は悪化の一途を辿り、仲が良かった家族は引き裂かれる。
そして揉め事の噂は急激に学校中を駆け巡り―
その噂を耳にした親は、皆口々に警告を子供達に出す。
「風池さんの家のお子さんは、悪い子なのよ」
そしてその噂を一部の生徒が背びれに尾びれをつけて広めた事から―この虐めは蔓延し始めたのだった。
その話を聞き、円は憤慨した。
同時に失望した。
―なんて、汚い世界。
夢幻都市、などと―こんな場所に、「夢」なんていう名前をつけるなど、なんと皮肉な話だろう。
その日から円の環への気持ちは、少し変化する。
―環を守るんじゃない。「環を取り巻く世界を壊す」んだ。
そして―
幼い少女の壮大な決心は、少女を「突き落とす」。
深みへ、深みへと。
―この都市を、壊す。
ただ、少女は親友を守るために―自分がどれだけの事をしようとしているかも知らずに―
疑問を抱く事さえおかしいと言わんばかりに、走り出す。
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