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夕暮れの坂道

19りほ:2010/12/03(金) 18:55:58 HOST:cm017.ucat7.catvnet.ne.jp
♯8 「行かなきゃいけないところがある。」

 「あはは。ひいちゃった?」
 心では笑ってない。だけど、笑うしかない。
誰にも言ったことなんかなかった。
 酷い言葉でしか、返ってこないって分かってたから。
 だから、吉川 樹の言葉にはビックリした。

「そんなことない。人に裏切られて、誰かに頼るのも当たり前。
その人にも裏切られて、誰も信じられなくなるのも、
相手に辛く当たるようになるのも当たり前。
 奏嘉は悪くない。」
     『奏嘉は悪くない。』
 心に響く。
 ずっと辛かった。悲しかった。
 今、思うとなんであの時、どうしようもなく吉川 樹に話したくなったか分かった。
誰かに聞いて欲しかったんだ。聞いて、何か言って欲しかった。
ううん、違う。とりあえず聞いて欲しかった、それだけだ。

「ねえ。奏嘉。なにかしなきゃいけないんじゃないの?」
「えっ?」


「ちょっと、吉川 樹。それ、菊。お葬式に使うの。ダメ!」
「えwwwwww? じゃあ、これは?」
「植木鉢もだめなの!!」
 私達は今、母さんに会うためにお花を選んでる。
 何を話せばいいか、分からないけど……


「桜井志保さんは405号室ですよ。」
 私は息を吸う。緊張どころじゃない。
 怖い。

 がらっ。
「あら。来てくれたの?」
 母さんの声。久しぶりに聞く。
「かあさん、私。奏嘉。」
「奏嘉?」
 私はゆっくり、カーテンを開ける。


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