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夕暮れの坂道
11
:
りほ
:2010/11/26(金) 18:23:42 HOST:cm017.ucat7.catvnet.ne.jp
♯5 『生活観のない家』
あの日以来、私はよく笑うようになってた。
吉川樹と一緒に居るようになったからかな?
吉川樹といると、あのことは忘れられる。
家のことも。あの日のことも。
だけど、あいつと離れるとすぐに思い出す。
夜も眠れない。
私はある夜の11時。
眠れないまま、リビングのソファに座ってココアを飲んでた。
真っ黒のソファは今の私の心にぴったりだ。
私は時々、このリビング、廊下、全てが
人の家のものみたいに感じる。
皆もない?人の家にいたら、自由に動き回ったり出来ないことって。
新築のような外装。モデルルームや雑誌に出てきそうな家具。
机の上に何気なく置いてある、雑誌でさえも
緻密に計算されて、この角度が一番綺麗に見えるって
置いてあるみたいだ。
そう、この家は生活観がない。
「まだ起きてたのか。」
一人の男の人がリビングに入ってきた。
「お母さんは?元気だった?」
私は聞いた。
するとその人はチッと舌打ちした。
そして凄みのある目つきで私を睨む。
「なわけないだろ!?」
びくっとする。
「……ごめんなさい…」
私はそう言ってから、ココアを啜る。
他の人から見ると、その男の人は『お父さん』ってことになるらしい。
でも、私は思ってなんかない。普通のお父さんなら、
娘が「お母さんは?元気だった?」って聞いたら、
嘘でも「元気だったよ。」って答えるもんじゃないの?
たとえ、実の娘じゃなくても。
長い沈黙の後、男の人は長いため息をついた。
ダイニングテーブルの椅子にコートをかける。
「おい、学校で何かあったか?」
「何って…なんでそんな事聞くの?」
いつもそんなこと聞かない。いきなり、しかも唐突すぎる。
しかも、私の名前は『おい』じゃない。
奏嘉って名前があるのに。
「ああ、志保が聞いとけって。」
そうだった。この人はお母さんだけは愛してるもんね。
連れ後の私には興味なんてない。
大好きなお菓子を買ったら、どうでもいいおもちゃがついてきた、そんな感じ。
「べつに。特に変わったこともなかったよ。」
私はココアのカップを洗いながら言った。
そのとき、あの人はネクタイを緩め、
足を組み、ぼそっと小さな声で
「あー、めんどくせーな。」
って言った。
私はココアを飲んだカップを乾燥棚に置くと、
「おやすみ」も言わずリビングを出た。
部屋に入る。私が始めてここに来て、部屋を見てから何も変わってない。
始めて見たとき、モデルルームみたいって思ったけど、
今見ても、モデルルームみたいって感じ。
私は、ベットに横たわる。
疲れた。
ああ、速く吉川樹に会いたい。
心からそう思った。
続く…
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