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真昼の月
23
:
りほ
:2010/11/04(木) 18:02:14 HOST:cm017.ucat7.catvnet.ne.jp
人生にも道があったらいいのに。
誰かが造ってくれた道があれば良いのに。
それならこんなに進路について悩むことなんて無いのに。
こんなに、恋について考えなくて良いのに。
最近めっきり寒くなった。
マフラーとか、手袋とか、ダッフルコートを
着た生徒達がわれ先にと、正門のほうでごった返している。
あたしは下を向いて、悴んだ手を擦り合わせながら、
郁を待ってた。
ああ、ほんと手袋持ってくれば良かった。
ミトンで、色は薄い茶色。トナカイの絵が刺繍してあって、
すっごく可愛いんだ。
だけど、そのミトンは郁がくれたものだから
付けるのに躊躇っちゃった。
郁が頬をリンゴ色に染めながら
『あげる』ってくれたとき、ものすごく嬉しかった。
だけど、もう、そのときのあたしと郁は今、どこにもいない。
「あっ、郁。」
あたしは、ゆっくりと顔を上げた。
郁は物悲しそうな顔をして笑う。
「………」
「………」
しばらく2人とも黙ったままだった。
遠くで鳥の群れがどこかへ向かってる。
言わなきゃ。
「郁。あたしさ話したいことがあるんだ。
お願い、少しだけ時間をください。」
あたしの声は自分でもよく分かるくらい震えてた。
「あのさ、郁、前好きな人が出来たって言ってたでしょう?
その子…福沢さんだよね。」
郁が目を見開く。
何で分かったの? って。
「前、福沢さんが来て言ってたから。
良い子だね。あたしなんかよりすっごく可愛い。
素直だし、性格も良さそうだしさ。
郁の好きな人が福沢でよかった。
これでようやく、郁とお別れできる。」
郁は黙ったまま。
「卯月が言ってた。
一歩踏み出したらもう元には戻れないって。
だからさ、あたし、もう郁と幼なじみ止める。
あたし、旭川行かない。吉川にいくんだ。
そこさ吹奏楽部が毎年、全国大会行くくらいの名門なんだ。」
あたしは一呼吸する。
やばい、涙出る。
「あとさ、郁はさ、生徒会のことに時間使いすぎ。
カノジョのことも考えてあげなよね。」
あたしはにっこりと意地悪そうに笑う。
郁は黙ったまま。
ちょっと悲しいけどいいや。
「じゃあ、バイバイ。」
「ありがとう。最後まで話し聞いてくれて。」
あたしは、郁にとびきりの笑顔を見せた。
最後だから、最後だからこそ、
君の中に残るあたしは笑顔でいてほしいから。
「ちょっと待てよ。」
!?
「恋はなにも悪くなんか無い。
俺が悪い。
最近、恋のメールがそっけなくて、
俺嫌われたのかなとか思ったりしてた。
今、思えば俺に無駄な心配させたくなかったからなんだよな。
それで、恋のことが心配になってきて、
そんなときに福沢が告白してきて。
俺、サイテーだ。」
あたしは郁に背を向けたまま。
「こんど、人を好きになるなら、
恋のことを一番に考えてくれる人にしろよ。
あとさ、恋は自分では何でも出来ると思ってるけど、
そうじゃないからな。だからさ、人にも時には甘えろよ。」
あたしがいつも好きだった、低くてなんでか安心できるこの声を、
あたしは涙ながらに聞いた。
「あとさ、いつでも笑ってろよ。
俺はそんな恋の笑顔が大好きだった。」
ぽたぽた
あたしの頬から涙が流れ落ちる。
小さなころからいつも一緒にいた。
テストで100点取ったときも、お母さんに怒られて泣いたときも
いつも隣には君がいた。
「あたしも、郁のことが大好きだったよ。」
この感情は、とても言いにくい物だったんだ。
悲しいんだけど、なぜかとっても清清しいの。
それはきっと、この気持ちを言えたのが郁だったからだろう。
君はあたしの初恋でした。
精一杯恋した。それだけでした。
あたしの頭の中はいつも君、
ただ一人でした。
つづく…
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