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高専武闘伝記

1武士さん:2014/08/24(日) 18:16:20
嘗ての栄光を思い出しながら綴るファンタジー

59武士さん:2014/09/27(土) 15:49:13
第54話 町田への永い旅

刀を得て町田に行く決意をした武士だが思わぬ障害に阻まれた
交通手段である
町中の暴動が一気に激しくなる
十日月関連施設が次々と焼け落ちていく
正面にある十日月タワービル本社は私設軍が周りを固め
ビル自体にセキュリティーが張り巡らされ全く動じていない
工業高校周辺の学生や寮住まいの学生が続々と集まってきた
もはや、道路は破壊され鉄道が動くわけもない
ラジオによればどうやら"げんかい高速鉄道"も名前の通り限界を超え
運行していないようだ
「どうすれば・・・」

「お困りのようだね」
武士たちが一斉に振り向くとそこには機械油で汚れた吉葉先生がいた
「町田に行く手段がないと?ははっ、そんなこともあろうかと用意しておいた」
吉葉先生が地下へと武士たちを連れていく
そこにはミニ鉄道がレールの上に置かれていた
トンネルの先は漆黒の闇
吉葉先生が言うには町田直通らしいが途中に駅はなく、
何かあって崩れれば命の保証はしないということだ
鉄道には機関士を含め4人分の椅子が用意してあった
つまり王道の4人パーティー
「この列車を使えばメンバーチェンジも可能!」
「すげww先生ぱねぇっすww」
鈴沢が興奮気味に言った
「いやいや、4人で行き、1人戻りまた3人連れて行くほうが建設的でしょ」
西園の一言が皆を現実に引き戻した
「ぐ・・・この列車は片道切符なのだ」
吉葉先生が言いなおす
「いやいや、メンバーチェンジ機能否定しちゃったよ・・・」
岡島のつっこみが決まった
「さて、人選でござるが・・・」
「一旦職員室で他のメンバーとも合流しよう」

「へぇ、こんなとこにこんなもんがあったんですねぇ。」
階段の上から独特なイントネーションのしゃべりをした男が降りてきた

60武士さん:2014/09/28(日) 18:44:47
第55話 ナシス三羽烏

コツコツコツ
階段をメガネをかけたオッサンが一段一段降りてくる
「柿本くんでしたねぇ。私を疑っていたのは。」
「あなたがここに居るってことは・・・まさか!」
「山名先生でしたっけぇ。私も英語担当がやりたかったんですけど彼が先任で目障りだったんですよぉ」
徐々に灯が照らされ顔が顕になる
そこには武士達が予想していなかった人物が居た
「小滝・・・先生?」
そうドイツ語の小滝先生だった
「まさか、吉葉先生までそっちがわでしたとはねぇ」
「貴様、他の先生たちをどうした!」
「生きているんだか死んでいるんだか。山名先生ならこの世にはいませんけどねぇ」
ぽりぽりと頭をかきながら
「ま、あなたたちもここで死ぬんですけどねぇ!」
威圧
瞬時に空気が変わった
ビリビリと肌に伝播する
しっかり気を持っていないと気絶しそうなほどに

ブクブクブクドシャッ
鈴沢が泡を吹いて倒れてしまった
「みんな倒れてくれればよかったんですけどねぇ」
「口数が減りましたねぇ。私は伊豆大島君たちとは違い正規軍ですから」

言葉のひとつひとつでも気が飛びそうだ
武士は歯を噛み締める
桁が違う
これが市民を縛り、弓坂を死に追いやった”敵”なのだ
ビリビリビリ
「(声が・・・でないでござる・・・)」
「ほかのお仲間は無事ですかねぇ」
「・・・くっ、俺たちを見くびるなぁ!」
柿本が金縛りを解き小滝に襲い掛かる
「頭の悪いあんたにゃ考え付かない手を打ってあんだよ」
「賢い子は嫌いですよぉ」

地下工業高校ターミナルの戦いが始まった

主人公
「武士」「柿本」「西園」「鈴沢」「岡島」「吉葉先生」
VS
ナシス
「小滝先生」

62武士さん:2014/09/28(日) 20:21:26
第56話 ナシス三羽烏パート2

一方
笹塚と横川は寝たきりの小竹を連れ学校の校門で矢潮と船戸と合流していた
保健室に入り、小竹をベッドに載せた
「ちょっと俺は様子を見てくる」
笹塚が保健室を出て行った
「いててて・・みんな大丈夫か?」
韮崎が目を覚ました
「起きなくていいぞ。無理すんな」
船戸が韮崎を再び寝かせる
「病院のほうはどうだった?」
「ひどいもんだ。本気で爆破しやがった」
横川が肩をすくめた
「十日月が居なきゃ今頃どうなってたか想像したくもないな」
「なぁ、お前らこの戦いをどう思う?」
船戸が不意に問いかける
「日本人のために戦うとか、正直ね・・・」
「逃げるというのか?」
保健室の奥から声がした
先ほどの戦闘の傷を治療していた赤木だった
「俺たちが命を賭ける事じゃないと言ってるんだ」

どかっ!
「ぐわぁ・・・」

扉が切り裂かれ人間が飛び込んできた
「二浦先生!」
血だらけで飛び込んできたのは情報の二浦先生だった
「すまん、やられた・・・」
「先生、まず手当てを・・・」
「ヘイ、ボーイ。ちょっとオイタがスギマシタネ」

保健室に小柄な男が入ってきた
「あなたは・・・」
「サットゥン先生・・・」
船戸と矢潮が呆然となっていた
普段優しい先生が返り血を浴び普段では考えられない狂気に満ちていた
「船戸・・・コレが答えだ。覚悟を決めろ」
赤木が船戸の方見る
船戸は諦めたようにうなずいた
「オーケー。俺らが逃げても追われるわけね」

保健室の戦い

主人公
「赤木」「横川」「船戸」「矢潮」「韮崎」「小竹」「二浦先生」
VS
ナシス
「サットゥン」

66武士さん:2014/10/01(水) 18:41:16
第57話 ナシス三羽烏パート3

5階ナシス対抗本部(専攻科室)
「おう、お帰り。小竹は無事だったか?」
笹塚が入ると有住が声をかけてきた
「小竹はな・・・ただ表は酷いもんだよ」
「だろうな、ここの窓から見るだけでも酷そうだ」
そういうと有住はカーテンを開ける
あちこちで火の手が上がり収拾がつかないようだ
「だいぶここもやられたな・・・」
笹塚が寂しそうにいう
「おそらく、この戦いが終わったらここは廃校だろう」
PSPをやっていた沖田が会話に加わった
「いろいろ楽しかったな・・・あのころは」
「まだ死んだわけじゃないだろ諦めるな」

カシャ。カシャ。

写真を撮る少年
「おい、吉敷。写真ばっか撮ってないでちったぁ手伝え」
「お前らが勝手にやってることだろ。俺には関係ない」
吉敷はレンズに向き直り写真を撮り始めた
笹塚は有住に向き直る
「武士たちは地下へ向かった」
「この学校に地下なんてあったのか?」
「吉葉研と深尾研に入り口があるんだ」
「た、たいへんだぁ!」
本部に加堂が飛び込んできた
「加堂さん、どうした!?」
「吉葉研の地下扉が破壊されてる!!」
「なんだとっ!」
有住が立ち上がった
「深尾研に行こう」
「扉は俺たちが何とかしよう」
二人の男が立ち上がった
梅田と石和田
「梅田、石和田・・・いいのか?」
「有住。お前と組むのは最初で最後だぞ」
「戦いを終わらせようぜ」

「そんなことはさせませんよ」

いつ、扉が開いたのか
どこから入ってきたのか
誰もわからない
いつのまにやらその人はいた

「もっとも、私を捉えることは不可能ですけどね」
「青濱先生!!」

主人公
「笹塚」「沖田」「有住」「加堂」「梅田」「石和田」「吉敷」
VS
ナシス
「青濱先生」

67武士さん:2014/10/01(水) 18:41:50
第58話 十日月タワービル

十日月タワービルにはいくつものラボがある
その一つの医療ラボより十日月が出てきた
「あーあ。鉄道予約しなくちゃ」
つかつかと廊下を歩きながら歩行を妨げないようにじいが召物を変えていく
エレベーターに乗る15mの距離内で白衣から私服へと変わった
エレベーターに乗り振り返る
「じい、ここでよい。僕は行く所がある」
「御意」
おもむろにエレベーターのボタンを押す
目的地は屋上

屋上に到着するとそこには珍しい人物が居た
「やぁ、『人がゴミのようだ』とか言わないでくれよ?」
「まさか。好きだけどさ。あの人は」
「会いに来たんだろ?彼女に」
「さっき見てきたの。綺麗だった。君のおかげでね」
十日月はその人物の横に並ぶ
「どう思う?今の状況を。」
「厳しいね。ニュースは見たかい?」
「新兵器の噂だろ?ありゃぁ・・・」
「サンプルを持ってきたんだ。」
十日月がぎょっとして身構える
「ああ、苗だから死にはしないよ。気絶するぐらいさ」
冷凍カプセルに入った新兵器を十日月に託す
「梨か?」
「見た目はね。実のところは音響兵器さ」
「音か・・・こりゃまたやっかいだあね」
十日月はクスクス笑った
「にしても、コレを見ているとあいつを思い出す」
「元気にしていたよ。ただ生きて帰って肩身は狭そうだったけどね」
「反政府側にも刺客が来て体勢が変わったからな。それより新兵器持ってきて足はつかないかい?」
「政府側は裏切り者の処罰には厳しいからね。彼と足がつかないように慎重を喫したから遅くなったのさ」
「さながら世界大戦だね」
十日月は屋上から身を乗り出しながらそう呟いた
「そろそろ行くよ。デートに遅れる」
「加勢はしていかないのかい?今ピンチだよ」
その人物は少し悩んだ顔をした
「まだ刺客に顔を見せたくはない。諜報員の鉄則って奴さ。んじゃまたさいなら」
そういうと階段を下りていった
「無茶するなよ・・・島野・・・」

68武士さん:2014/10/01(水) 18:42:39
第59話 ナシス三羽烏パート3

バンッバンッ
堰を切ったように沖田がショットガンを放つ
弾が目標を捉える頃には何も無い空間が広がる
机や椅子がはじけ、ホワイトボードに穴が開く
「まったく、野蛮ですね」
ドシュッ
教室のどこを探してもいなかった青濱が突如加堂の後ろに現れナイフを突き立てた
「ぐああぁ。」
「加堂さん!」
笹塚が畳針を瞬時に投げるも虚しく壁に刺さった
静寂が生まれる
倒れた加堂から鮮血が流れる
早く治療しなければ間に合わない
「くそ!」
石和田が当たり構わず暴れだした
机を蹴りロッカーを倒し椅子を投げつけ
「野蛮なのは嫌いだといったはずですよ」
石和田の巨体が宙に浮く
ピアノ線を首にかけられ宙吊りになる
間一発手を入れたがズブズブとピアノ線が食い込む
梅田が線を切ったが手の指の骨まで食い込みほぼ戦闘力を喪失した
「わりぃ」
「気にすんな」
「他人を気にする余裕があるんですか」
梅田が飛び込んだ真下に青濱が構える
掌底のアッパーがあごに入り天井まで弾き飛ばされ倒れる
梅田は動かなくなった
どうやら脳震盪を起こしているらしい
ほんの数分で4人を戦闘不能にした
沖田と笹塚が背中を合わせる
「どうする?」
「相性は最悪ときた」
「どうにかs−−−−」
青濱の回し蹴りが沖田のわき腹に直撃する
メキメキメキ
嫌な音とともにロッカーに激突した
吉敷があることに気が付いた
目で見ても青濱が捕らえられないが写真には写っていた
しかし、撮影し、写真を確認する頃には殺されているだろう
そう考えると吉敷はうかつにしゃべる事が出来なかった
ドシュドシュドゴォォォン
笹塚は両肩に傘が刺さり壁に磔の状態になった
「たいした事無いですね」
「お前らの稼いだ時間。無駄にしない」
そこには有住が立っていた
襲撃されて間もないのに罠を張り巡らせた
仲間がやられているのを涙を呑み見守った
唇は血が出るほどかみ締めた跡がある
ワイヤートラップは無理だった
光学レーザートラップの嵐
すると青濱は自由に動き出した
「ばかな・・・トラップは完璧なはず」
「私の影の薄さには機械といえど気付きません」
改めて笹塚に向き直り最後の傘を彼目掛けて投げた
「ちくしょぉぉぉ。」
笹塚が目を開けた瞬間、眼前に迫る傘が見えた
その時だった

「えっつぉ、わり、おくれたぜぇ」

69武士さん:2014/10/01(水) 19:41:21
第60話 ナシス三羽烏パート2

二浦先生は電撃戦を得意とする速攻派
戦闘力も低くは無い
しかし赤子の手を捻るが如くサットゥンは弄り尽くした
南斗水鳥拳のような業を使う
華麗な舞で敵を切り刻むまさにそれである
矢潮が瞬時に背中からイングラムMAC-10を引き抜く
引き金に指をかけた瞬間、サットゥンは二浦先生を楯にした
「アマイアマイヨボーイ」
二浦先生を楯にしたまま矢潮に突進する
「避け切れない!ならっ」
「矢潮!離れろ!」
「えっ!?」
ドシュ
二浦先生越しにサットゥンの手が矢潮身体を突き抜ける
突き抜けた手をグーパーグーパーしてみせ引き抜く
「ツギハダレダボーイ?」
「あんただよ!」
サットゥンお得意のポーズをとる間もなく横川が平手突きをお見舞いする
病室においてあった名刀「永峰」武士が使って刃毀れしているが刺突系ならまだ戦える
しかし
「(刀がうごかねぇ・・・)」
両手の甲と甲で刀を押さえている
しかし肝心の手が触れていない
船戸がここぞとばかりにライフルを放つ
キュイン
刀を払い上げサットゥンは右手を振りかざすと刀は4つに切れた
「くっ・・」
そのまま横川の横をすり抜けるように腕を切り付け蹴りをいれ吹き飛ばす
飛んできた弾丸を左手で払いそのままへ船戸のライフルごと腕を切って見せた
ドシャドシャッ
横川と船戸が吹き飛ばされる
横川は右腕、船戸は左腕を切り込まれていた
「透き通るような透明な薄刃、鋼鉄に刃形を残しても刃毀れしない硬さ、
 大した筋力も無いのに振り回せる軽さ。魔法金属ミスリルか」
赤木がやれやれと立ち上がった
横川が顔を上げるとカーテンが切れ光が差し込む
サットゥンの両の腕に鉤爪が現れた
「アチラガワノニンゲン。ハイジョスル」
サットゥンが薬を飲み込み飛び掛ってきた
「ちっ。」
赤木は舌打ちしながら楯で防御する
横川、韮崎にはその速さは見えなかった
「コレハ豪水トカ超神水トカイワレテルモノデース」
※豪水:ワンピース/超神水:ドラゴンボール
赤木は素早さの水薬を飲む
身体はもう悲鳴を上げている
そんなことはわかっていた
「ピリオム、ヘイスト、速度増加!!」
魔法での補助ブースト
「キミハゲームノ世界ヲ渡レルヨウデスガ、ワタシハアニメデース」
「うそつきやがれ、エセ外人!」
ギャッギャッギャッギャアアアアン
楯で斬撃を防ぎ受け止める
「!?」
何かに気が付いた赤木がばっと距離をとる
サットゥンも慌ててその場を離れる
先までいた場所に電撃が走った

「ったく・・・お前ら、俺が寝てる間に何しやがってんですか」

70武士さん:2014/10/01(水) 20:05:31
第61話 ナシスパート1

小滝は酔拳のような怪しげな格闘術を繰り出してきた
紙一重で避わそうにも手や脚が不思議な方向に曲がり打撃を食らう
武士は刀を抜かず鞘で受け止める
柿本と西園はギリギリの範囲を見極め攻撃を繰り出す
岡島と吉葉は見守っていた
「長期戦はこちらには不利でござるっ!」
「わかってる、しかし・・・」
まさに結界
小滝の範囲3メートには近づけない
あたりは薄暗く足場も悪い
敵にとっては最高のコンディションといえる
「グハッ・・・」
西園が一発食らう
何とか離脱し体勢を立て直す
蜘蛛の巣に入るように一度捕らえられれば連撃をくらい生きて出る事は不可能
そう悟ったのか
西園が動力ケーブルを切断した
「おやぁ?」
電気が消える
武士と柿本は何者かに突き飛ばされ尻餅をつく
非常電源が入ると列車の車両に跨っていた
西園が加えて鈴沢を列車に放り投げる
「指導者失格です」
そうこちらに呟いた
「バイバイベイビー」
岡島が手を振る
プシューガショガショガショ
3人を乗せ列車が進む
吉葉先生がアクセルを入れ固定したらしい
「お前ら、!!」
「待つでござる!」
列車に跨った状態でトンネルの天井は座高の高い武士の頭スレスレ
立つ事など到底出来なかった
列車が闇へと包まれる
ゴリュゴリュ
人間の骨が砕かれるような音を聞きながら武士たちは町田へと出発した

71武士さん:2014/10/02(木) 12:06:22
第63話 地下道

ゴトンゴトンゴトン
闇の中を列車が進む
頭の中は真っ白だった
「・・・」
「・・・」
武士と柿本は終始無言だった
無理もない
彼らは仲間を見捨ててここにいるのだ

ガタンゴトン
どれくらい経っただろう
このまま死んでしまうんじゃないかとさえ思える
ただただ、今は吉葉先生を信じるしかなかった

プシュー

電車が止まる
天井に手が届かないところからするとどこか開けた場所に出たようだ
携帯のライトをつける
「柿本殿…」
「あぁ、前に進もう。あいつらのためにも」
「拙者達が進まねば報われぬ」
鈴沢を背負い立ち上がる
足元は砂利道で明かりがなければ躓きそうだ
遠くに明かりが見える
武士は刀を握り柿本は臨戦態勢
徐々に近付く人影
すると大きなバックパックを背負った初老の男性だった
「おや、うちの学生だね」
「拙者、武士と申す。名乗られよ。」
「ばか、武士!この方は…」
「いいよ、気にしないで。私は荒金。工業高校の元校長だよ」

72武士さん:2014/10/02(木) 19:48:12
第64話 地下道

武士たちは荒金に導かれて地下道を進んだ
地下道と言うよりも廃坑のようだ
時より水の滴り落ちる音が木霊する
「荒金殿。ここは一体」
「今は昔、町田帝国と呼ばれる強大な軍事国家だったようだ」
松明を掲げると辺りが照らされる
中世と言うに相応しい石造りの家々が立ち並ぶ
落石でつぶれている家、根っこに閉ざされている家と様々だが
大方の形は保っていた
「いつからここに眠っているのかわからないが・・・殆どが水に沈んでしまってね」
荒金が水に松明を向けると信じられない透明度の水の先に街が見えた
「年々、水位はあがっているからいずれはここもなくなるよ」
「しかし、荒金殿はどうしてここを?」
「好奇心だったのさ、ここを知っているのはいいちこ先生とバーミヤン先生だけだよ」
歴史いいちこ先生、本名伊原先生。
地理バーミヤン先生、日藤先生。
「かつて、この帝国は空に浮いていたそうな。ただその動力源が解析できないのでね」
「いつの時代にこんなものが・・・」
「宇宙人なのかはたまた、神の悪戯か。君たちにいいものを見せてあげよう」
荒金が松明を消す
辺りは闇と静寂に包まれた
すると
ポゥ ポゥ ポゥ
微弱ではあるが少しずつ明るくなってきた
徐々に周りが明るくなり荒金や武士、柿本の姿が映し出される
空を見ると地下とは思えない満面の星空となった
「すげぇ・・・」
「荒金殿、これは?」
「ほっほっほ。ここら辺の梨には飛行梨が含まれているんだよ」
「飛行梨?聞いたこと無いな」
「どれ、見せてやるかな」
荒金が手元にある梨を取るとトンカチで割って見せた
コーーーーーン
割れた梨の断面から発行する液状のものが滲み出るのが見えた
しかしすぐに暗く梨へと変化する
武士や柿本が触っても濡れている感触はしなかった
武士の胸元が突然光り輝く
手にとって見ると光っているのは小竹から夢でもらったお守りだった
「こいつは・・・すごい・・・」
荒金が驚いたようにお守りを見る
武士はお守りの封の中から光っている梨を取り出した
「おまえさん・・・こいつは、飛行梨の結晶だ。私も見るのは初めてだ・・・」
「どおりで梨たちが・・・騒ぐわけだ・・・」
「その昔・・・町田人だけが結晶にする業をもっていたと・・・」
「荒金殿。これには一体どのような力があるでござるか」
「梨たちが騒ぐとき、真の継承者が近づいているとされる・・・」
「眠りから醒めたがっていると?」
柿本の問いかけに荒金は少し黙った
「その梨には強い力がある。力のある梨は人を幸せにもするが、不幸をまねくこともあること。」
「ましてその梨は人の手が作り出したもの・・・。・・・その・・気になってね・・・。」
「これは拙者宛ではござらんよ。ある人物に宛てた届け物でござる」
「もう、しまってくれ。私には・・・その・・・強すぎる・・・」
「すまぬでござる」
武士がお守りにしまうと同時に松明に火をつけた

73武士さん:2014/10/03(金) 11:58:50
第65話 キャンプ町田

「荒金殿はなぜこの様なところに?」
「どうもこのところ梨達が騒いでいてね。こう言うときに地下に来るのは大好きだ」
「そういう話じゃありません」
柿本が話題を戻す
ポットからコーヒーを入れ武士と柿本に渡し
荒金はしばらく考えたがようやく決心をしたように話始めた
「以前から我が校の技術力がナシスの標的となっている事が度々あった」
「確かに、いち工業高校にしては不自然なくらいの設備でしたね」
「もともと現代の技術に加えて遺失文明の技術に未来文明の技術を研究する施設だったのさ」
「ホログラフィックや融合炉、刀鍛冶などもその一環なんですね」
「そうだ。そして日本中からその技術を吸収、運用できる素質を持つ原石を集め磨くための教育機関が工業高校なのだ」
「拙者達が…」
「もともとは国の援助もあり私を含めた創設者4人の理想的な環境となった」
荒金は手を頭に当てる
「ただ、一人だけ物足りないと感じていたのだろう。そう一村だけが」
一村正義、現町田政府総統
「今や町田政府のスパイが日本の政府高官に数多くいる。それに政治家のバックであるパトロンとしても」
「腐っているでござるな」
「やつは独自の研究を行い、ついに完成させてしまった。音響兵器を…」
「人類に絶望したあの事件。奴の全てが変わってしまったのだろう」
そういうと荒金は口を閉ざしてしまった

74武士さん:2014/10/04(土) 18:33:38
第66話 町田上陸

「ここから出られるよ」
荒金が指し示した先から光が漏れる
肌に風を感じ乾いた空気の匂い
「かたじけないでござる」
「なんだ?このおっさん」
鈴沢が起きたようだ
「荒金さん・・・」
「大丈夫だよ、君達がいいたいことは分かっている。あの学校には私が信頼を置く世界最強の男がいるからね。連絡しておこう」
「すみません・・・仲間をよろしくお願いします」
柿本が頭を下げる
「君達も大切な生徒だからね。そうそうどこだったか」
荒金がポケットや鞄をごそごそと探し始めた
「あったあった、この場所を尋ねなさい。きっと君達の力になる」
武士が受け取った紙を柿本が覗き込む
「こ・・・ここは」
荒金が武士に手招きしている
「武士君、君は悩んでいるようだね。己が力の使い道を」
「いや、怯えているのかね。力に支配されるあの感覚に」
「拙者!怯えてなど!」
「今のままでは君はずっと中途半端だよ」
「ぐ・・・」
「何も護れないどころか足を引っ張るばかり」
「少し脱皮しないとね。大丈夫だよ。君は凄い潜在能力をもっている」
「永平先生が君にその刀を託した。だから私も君に期待したい。護ってくれ、この世界を・・・」

洞窟から表へ出ると日差しが差し込む
少しの立ちくらみの後、見えた光景は
「ジャングル?」
生い茂った草木が無法地帯のように所狭しと並ぶ
鳥の声、虫の歌、風のささやきに混ざり花の香りと・・・ほのかな鉄錆に油の匂い
よく観ると葉に隠れた朽ちた自動車や戦車が転がる
最近のものではない
町田は第二次大戦後から内紛絶えず秩序がない状態だった
そんななかナシス党を率いた一村一派が町田を纏め上げ一つの枠を作った
最初、国民たちは平和に喜び憂いたが
それが間違いだった時がついた頃にっは手遅れだった
町田は強大な軍事都市国家となっていた
戦わざるものは食うべからず
弱肉強食の食物連鎖の世界だった

75武士さん:2014/10/04(土) 21:22:51
第67話 風雲町田

ジャングルを少し歩くと開けた高台に出た
そして一同は絶句した
今まで歩いてきた緑のジャングルとは打って変わって
一面が茶色の世界
そこは砂漠と言っても過言ではない
廃墟のような町にパオと呼ばれる天幕が張ってある
武士達が集落へ下りていくと子供たちが群がってきた
「なっ、何でござるか!」
「武士、大丈夫だ。コレが彼らの仕事なんだよ」
「乞食」それは紛争地域では当たり前の職業なのだ
天幕地帯を抜け廃墟街へ入る
破壊しつくされた町並み、焼け焦げた炭が散らばっている
電気すら通っていない商店街の中に一軒だけきらびやかな店があった
「柿本・・・」
「ああ、鈴沢・・・ここだろう・・・」
「これは・・・」

★★★黒美人★★★
〜ピンクサロン〜

「誰から入る?」
「お前行けよ武士」
「いや拙者は・・・」
「いや、俺が行く。可愛い子は俺が・・・」
すると中から女性が出てきた
「あら、お兄ちゃん達。おはいりよ安くしとくわよ」
30代後半のおばちゃんだった
「鈴沢!よく見ろ」

★★★黒美人★★★
〜ピンクサロン〜
▽▽喘ぐ熟女▽▽

「やっぱ、武士!お前だ!」
「なんでそうなるでござる」
「見た目が釣り合うんだよ!」
柿本と鈴沢に押される形で店に入る
中は銭湯のような受付が見え写真が一杯飾ってある
右から30代後半〜左80代まで
ただ受付のお姉ちゃんは20代前半ぐらいの可愛い子だった
「いらっしゃいませ〜☆」
「やぁ、君は僕とデートにいくべきだね」
いつの間にか鈴沢が受付の女の子手を握っていた
「きゃはは〜☆ありがとうございますぅ」
「貴方達はこっちですぅ〜☆」
受付の案内する扉から3人が入るとその先には古いアメリカのバーみたいな雰囲気だった
「よぅ、お前ら、こっちへこいよ」

76武士さん:2014/10/04(土) 22:08:57
第68話 協力者

「未成年に酒なんかだしゃーしねーよ」
「たっ、高田先生!」
「ま、くつろいでくれ」
武士と柿本が驚く
「けちぃな、酒くれ酒、あと肉な3秒で持って来い」
「どんどんふてぶてしいよ、君」
鈴沢がナイフとフォークを持ってカウンターに既に座っていた
「ここは俺の副業の店だ」
「あっちのピンクいのも?」
「モグモグ、おっさんの趣味だろ」
「はっはっは、熟女好きだからなぁ」
高田は豪快に笑い飛ばして見せた
「疲れたろ。ここは安全地帯だ。ゆっくり休んでいけ」

夕食のあと風呂に入り鈴沢は酒を飲んで寝てしまった
武士はベッドに横になる
ここのところ満足に寝ていない
瞼が石の様に重い
「(トイレに・・・)」
武士は意識を失った

バーのカウンターで高田と柿本が話していた
「表の集落はブラフさ、子供たちもここで預かっているよ。孤児院もかねてる」
「あの店の外観のセンスは・・・」
「ああすりゃ、若い馬鹿共は躊躇するだろ?来たら来たで物好きなおばちゃんたちが相手するよ」
町田でもやはり子供に影響が出ている
大人達は戦場へ駆り出され子供たちが無意味に死亡していく
「食料とかはどうしてるんです?」
「普段は地下菜園で自給自足。他の物資や発電機の燃料は十日月ルートで入ってくる」
柿本はもうひとつきになっていた
地下にあった大量の武器
一個大隊ほどある物資に疑問を抱いていた
「じゃあ、あの武器は?」
「ここが笹塚武器商店本拠地ってとこだな」
「あ、納得した」
そんなこといっていたなと
「ここにナシスは?」
「たまに巡回に来る。反政府軍も武器を買いにくるよ」
「梨澄の居所を知りませんか?」
「あいつ、有名人だからな・・・ま、ちょっと調べてみるよ」
「しばらくここに居ろよ。子供たちの相手をしてくれ」
「しょうがないですね」
「3人じゃどうしようもないだろ。仲間も調達してやるよ」

77武士さん:2014/10/04(土) 23:24:52
第69話 孤児院

久々にぐっすり眠った武士
AM2時・・・
やはり町田でも辺りはまだ暗く。
一瞬で目覚ましを止める武士。
「・・・朝か・・・」
なにか吹っ切れた
そんな感じだった
「ハァ!!ハァ!!ハァ!!ハァ!!ハァ!!ハァ!!ハァ!!ハァ!!・・」
素振りを始める武士。
すると不意に後ろから殺気を感じた
何かしらの刃物が振り下ろされ武士は鞘で受けきる
まだ薄暗く相手の顔まで見えない
「何者でござるか!名乗られい!」
まごうことなくここは敵地
敵が名乗るはずがない
武士は気持ちを切り替え戦闘体制にはいる
投げナイフの猛襲
武士は細かに弾いていくが鞘を被った刀
その若干の重さで動きが追いつかなくなってくる
防ぎきるのは無理だと判断し横に飛んで避ける
その先に刃物が襲う
間一髪刀の柄で防いだが意識が刀に向きすぎていた
スパァァァン
思いっきり足を払われ転倒する武士
起き上がろうとしたその時、胸に足を置かれ眼前に刃物が迫った
「刀を抜くことに躊躇いがあるなら今すぐ帰れ」
「なに・・・を・・・」
その声には聞き覚えがあった
「村上さん!!」
「よっ久しぶり。師匠も来てるぞ」
「訓練は欠かさないようだが・・・この馬鹿弟子がっ!」
「師匠(せんせい)」
村上先輩。武士の兄弟子。剣術ではなく柔術使い
第16代目 藤原 清水。本名:小山 厳正。普段は体育教師をしている有名な柔道家
ひとたび刀を持てば秘剣将清水流現継承者
武士の師匠である
「話は聞いたよ。辛い思いをしたな」
「武士、連絡が着たけど。学校の方はひとまず落ち着いたらしい」
「村上!俺が話してるんだろう。まったく」
「あ、すんません」
「古木田先生から連絡が来たよ。敵味方及び周辺地域に甚大な被害が出たと」
「死者が・・・でたでござるか?」
武士が一番恐れていた
西園や岡島が心配だ
ほかのみんなも・・・
「詳しくは3日後ぐらいにむこうから応援が来るからそいつらに聞くといい」
「・・・・」
「それで、俺はお前に1週間訓練をつけてやろうと思って来た。ついでに奥義の伝授もな」
「師匠・・・」
「お前は俺の禁を破った・・・だが身をもって知ったはずだ。その理をな」
「拙者・・・」
「だから刀が抜けないんだろう?意識のどこかでブレーキをかけちまってる」
そう、あの日以来、刀が抜けない
刀の柄を持っても力を入れても
まるで接着剤でくっついているかのように刀が抜けない
「みすみすお前にまで死んで欲しくない。荒金先生から頼まれたんだ」
「基礎体力は俺が見る、早朝と夕方、日中は先生と剣術の稽古だ」
「拙者・・・負けるわけにはいかんでござる・・・」
地獄の1週間が始まった

78武士さん:2014/10/05(日) 00:22:08
第70話 兵隊の悩み

一通の電報が届いた
なぜ今頃モールスだの電報だのを通信手段とするのか男は不思議に思っていた
携帯電話や無線の発達によりすばやくクリアな音声が届けられるこのご時勢に
そのすべてはこの作戦のためであったのだろう
男は手元にある封筒に手をかけた。閲覧禁止の封書である

[スカイ・ナシ・ハリケーン作戦]
作戦内容はナシスの秘密工作員達が第二次大戦後各国の宇宙開発研究機関に紛れ込み
戦後から今までに打ち上げられた衛星すべてに小型核弾頭を装備させてきた
といっても大きさは梨そのものの大きさで爆発しても広島の原爆ほどの威力はない
しかし、この衛星をジャックし、一定の高度で爆破、四散させるととてつもない広範囲で
電波障害が起こることが判明している
これを攻撃・防御ともに自由に扱えるようにするための作戦である

コーヒーメーカーからマイカップにコーヒーを注ぎ一口飲んでため息を吐いた
封筒をポンっと書類棚に投げ鍵をかける。果たしてここまでする必要があるのだろうか
胸に秘めた疑問と葛藤しながら今後の作戦スケジュールを見ていく
代わり映えのしない作戦スケジュールを見ていたほうがどれだけ良かったか
このところ士気が上がり反政府軍やそれに組する日本国の要所を襲撃破壊する作戦が多い
一村総統は何を考えているんだ?
一言でも呟けば自分に明日がないことすら分かっていても口から出そうになる
そういうときはグーッとコーヒーとともにその言葉を飲み込むようにしている

新しく届いたばかりの報告書を読む
従卒の割には綺麗に読みやすく内容をまとめるのがうまい
報告書に目を通し思わず苦笑してしまった。ここには盗聴器があるかもしれないけどたまには
こういうのも良いだろう
報告の内容では工業高校を襲撃するもレアメタルに関する資料は発見できずと
はじめからこうなることは分かっていた。向こうにも自分が信頼できる軍師やそれを実行できる
人物達が多くいるからと。こちらの戦力はほぼ壊滅。ナシス三羽烏が壊滅したのが痛手だな
襲撃以来、湾岸の方で地震が頻発しているとの情報を聞き、大変な人を怒らせてしまったと感じているのは
政府内にも何人もいない
まだ工業高校監視部隊として[星を継ぐ者]が残っている。今、総統命令が出れば彼らとてただではすまないだろう

報告書を読み終えたところで丁度コーヒーがなくなった

「はいります」

従卒が入ってくる
以前は許可なくずかずか入ってきていたが今や軍人らしくなってきた
戦争というものは実に怖い。技術を加速するだけでなく恐怖という記憶を人々に植え付け
人間の成長も促進するというのだろうか
書類を置いて出ようとするとコーヒーカップが空であることに気づき淹れようとコーヒーメーカー
に向かった

「ああ、もういいんだ。それより・・・」

手話
盗聴されているかもしれない部屋で一番有用な会話手段
従卒もこくっとうなづき失礼しますとテントを出て行った
外は砂埃が舞うため軽いコートを着て男も後を追った
このキャンプ地はオアシスに近い
といっても20mほど歩けば大きな池に着く。そこに従卒はいた
「ご苦労様です。大佐。」
「何か聞きたそうな顔をしていたのだがどうかね?」
「・・・隠せませんね。実は・・・」
陽が落ちあたりは暗くなる。風の音と水の音が男達の会話を虚無の彼方へと追いやった
数十分話したところで男は従卒に促した。このまま戻っても門限破りで処罰されかねない。
テントから従卒に直筆のメモと良い酒を持たせ寄宿舎へと帰らせた
「久々に一杯呑むか・・・」
カップを取り出し中身を注ぐ
その中身がコーヒーだと飲むまで気がつかなかった

79武士さん:2014/10/05(日) 08:49:12
第71話 梨澄レポート

ナシス党政府のやり方には余りにも酷いものがある
そう一人の男が提唱し反旗を翻した
奇しくも反政府組織立上げは華々しいものとなったが
現状を鑑みても最善の策だったとは思えない
もはや反政府組織は駆逐どころか掃討対象に成り下がっている
戦力的にはまだあるものの、これ等をまとめる軍師がいない
ゲリラ戦法とはよく言えたものだ。中身は無差別テロといっても過言ではない。
敵の衛星兵器により連絡網を寸断された状況において、井の中の蛙という言葉の
意味そのままだろう。そして敵の新兵器は舌を巻くほどすごい。
本町田を流れる恩田川には原潜がいた。我等が攻撃できないと知ってか姿を晒し
続けている。津田町にある池には空母が配備されている。ステルス系の他国では
見た事も無い形の奴だ。搭載機もなにやら凄そうだが近くで見た事は一度も無い
MBTには何度か遭遇した。自衛隊の一○式に似たような形状だったことから
日本政府関係者の中にもナシスのスパイが潜り込んでいると考えるのは容易だった
一度だけソ連のKV-2に似た戦車で砲塔に梨が乗っているのを見た
あれが指揮官車両だったのだろうか
生体コンピュータや軍用アンドロイドの噂も聞く
ましてや毒ガスや音響兵器でさえ登場してしまった
やつらの軍工場を破壊するしかない
次の作戦・・・というより次の俺の行動は決まった

80武士さん:2014/10/05(日) 10:37:58
第72話 ハードメニュー

武士が師匠と村上との稽古に入って3日がたった
どしゅっ
「ぐああああ」
「てめぇ、さっき言ったこともう忘れてやがんな」
バキッ
「ゲホゲホ」
「勘に頼るな。お前の筋力じゃその刀は裁ききれないぞ」
ザシュッ
「ぐ・・・もう一度お願いします!」
「(最初よか反応速度が上がってきている・・・ま、昔ほどじゃないがな)」

早朝から深夜までの稽古で武士の疲労もピークに達している
宿の部屋に戻るや否や体が動かなくなり泥のように眠る日々が続いた
ある朝、武士が目を明けるとそこには受付の女の子がいた
どうやら洗濯物やら食事を運んできてくれていたらしい
「すまぬでござる。拙者が自分で出来れば苦労をかけぬのだが・・・」
「いいえ、とんでもないです。私には・・・コレしかできませんから」
そういうと武士に一礼して部屋を出て行った
武士は始めてあったときから違和感を抱えていた
「(恋・・・とは違う・・・これはいったい・・・)」

柿本と鈴沢が談話していた
「うっす」
「これから稽古?」
「うむ、村上さんの稽古を終え、膳を食したら師匠の稽古へ行くでござる」
「そういやwww昨日受付ちゃんと話しちゃったww」
「話しただけで嬉しいとはめでたい頭だな。小学生かよ」
「うっせww」
「高田先生も出かけてしまって紹介を受けなかったな」
「名前聞こうぜww」
すると受付の女の子がやってきた
「お食事の用意が出来ました。暖かいうちに食べてくださいね」
「ねぇ、受付ちゃん!名前聞かせて!」
鈴沢が飛びつく
「あ、あの・・・えっと・・・実は、私名前わからないんです・・・」
「えっと・・・わからない?」
「はい、高田さんに拾われる前の記憶が無いんです」

81武士さん:2014/10/05(日) 13:52:18
第73話 偽りの迷い

今朝の出来事が頭を離れなかった
受付の女の子の告白
彼女もまた、町田事件の被害者なのだ
『恩田川の橋のふもとに流れ付いているのを高田さんに拾われました』
『両親の顔も自分の名前さえも思い出せない私を引き取り育ててくれました』
『高田一穂って名前で白女に通ってるんですよ。今は休学中ですけど』

ビシッ
師匠の剣の小手が決まる
「今日はいつにもまして腑抜けてやがるな。剣に迷いが出ている」
師匠は刀を鞘に納める
「大方、自分の剣で何でもかんでも救おうなんざでかい事考えてたんだろう。この馬鹿が」
「少し昔の話をしてやろう」
「幕末の動乱、飛天御剣流を扱う人斬りがいた。彼は混沌の中、己が剣で時代を斬り開いた」
「だが、明治が始まってみれば、自身が振りかざした力のせいで歴史に捻れが生じ」
「数多くの亡霊を生み。自身の手で片付ける事を余儀なく要求された」
「挙句、身体はボロボロ。過ぎた力の代償とでもいうのだろうな」
「今のままではまったく同じことを繰り返すぞ?」
「人々を動かすのは剣ではない。よく考えろ。午後まで休憩だ」
「ぐ・・・しかし師匠」
「午後からお前に秘剣将清水流 拾ノ型及び奥義 零ノ型の伝授を開始する」

一旦お店に戻ると受付(今後一穂と記載)が洗濯物を干していた
「武士さ〜ん。お帰りなさい。ボロボロの袴はアチラに脱いでおいてください」
「すまぬ。一穂殿」
「洗った後、お裁縫しときますからね」
一穂の動きを見ていると何か違和感を感じる
何か・・・他とは違うような
「あ、そうだ。十日月さんの車で救援物資と援軍の方がお見えになってますよ」
「ぬ?本当でござるか?」
「今日は豪華なお食事を用意します☆」
「営業スマイルになってるでござるよ・・・」
十日月の車のほうへと向かった

82武士さん:2014/10/05(日) 14:27:34
第74話 少ない救援

武士が脚早に店の前へ行くと十日月印の車両が一両止まっていた
一穂が車とはいったが・・・そんな生易しいものではなかった
「すげぇ・・・」
「これは・・・なんでござるか・・・」
「十日月工廠製造、大型機動戦闘車両ですよ。型式まで言いましょうか?」
振り向くと赤いカーペットの上を十日月が歩いていた
「十日月殿・・・」
弓坂の一件が頭をよぎり、武士は素直に喜べなかった
「十日月!学校のほうは大丈夫か?」
「賊は撃退したけど、被害は甚大だね。特に人的な・・・」
十日月がリストを見せる
柿本と鈴沢が上から読んでいきガクッと肩を落とした
「死んだ人間も死んだほうがマシだった人間も数多いよ」
「てめぇ・・・そんな淡々と」
「僕だって大切な人を置いてきてまでここに着てるんだ。この馬鹿げた状況を打破する為に」
武士は見回した。かつての師であるじいの姿が見えない
「じいは今でも本社で指揮を執っている。液状化でいつ沈むかわからない本社ビルで」
十日月の頬に一筋の涙がこぼれる
「まともに戦える人員も、物資も運んできた。止めてくれ・・・この状況を・・・」
十日月はそう言ったが、車両から降りてきたのはたった3人だった
一人目は吉敷。二人目は赤木。そして三人目は予想しえなかった人物だ。
機動戦闘車のステップをヒョイヒョイヒョイと降りてきた
「三枝・・・殿?」
「武士。しばらくぶり」
「三枝殿も戦うでござるか?」
「冗談。後方支援と柿本君のサポート」
「よぉ武士。三日ぶり。」
「変わりないな赤木殿」
赤木がこちらに手を振ってきた
顔や首筋、手に何本もの傷があった

83武士さん:2014/10/05(日) 20:57:53
第75話 奥義


一週間が早くも過ぎ去った
己がそれぞれ休息を取る者・作戦を考える者・上達を望む者
全ては明日の作戦に掛かっている
今まで多くの人々が犠牲になったそんな彼らが報われるために成功させねばならぬ
後は・・・拙者の奥義完成を待つのみであった
今日は村上さんはいない拙者と師匠の二人のみ
「秘剣将清水流拾の型は奥義伝授のための足掛け技。何でも良い、拾の型を破ってみろ」
ドサドサドサ
工業高校の教員用ジャージを脱ぎさる
中には拘束具のようなものが装備されていた
「さすがに重さ40kgのジャージを脱ぐと軽くて良いな。さて・・・」
師匠が武士を一睨みする
ズズズ
全身の毛が逆立つ
さっきまで鬱陶しかった砂嵐が止み静寂が訪れる
大気の呼吸が止まる
日差しの照りが暗く感じる
これが第16代 藤原 清水の真の姿
ビビビ
手足の筋肉が痙攣する
「ほう・・・腰からの抜刀術か」
「秘剣将清水流自体騎馬体勢からの背負い太刀の型が基本でござる。背負いから初撃のまでの時間にロスが出る」
「正解だが、俺の太刀から放たれる拾の型。お前の両峰の刀で神速の先の超神速に追いつけるか?」
「・・・」
「まだだな・・・まだ迷いがある。半日俺はここで待つ。すべて終わらせて来い」
「師匠!?」
「時間ねぇぞ」

武士は一礼し黒美人に戻ってきた
師匠が感じた迷いとは・・・
自分に問いかけても答えは出てこない
すると受付のほうで声が聞こえた
「ここで武器を売ってるんでしょ!?お金なら幾らでもある」
「だあからここは風俗のお店だってお嬢ちゃん」
「知ってます。一穂さんが言ってました」
「あの野郎・・・」

「あ、あなたは・・」
「お主・・・」
いつぞやの忘れていた感情が湧き出してきた
最近メールを送ることすら忘れていた
武士の勇気の源
すべては黒髪の少女から始まったこの物語
『すべて終わらせて来い』
師匠の言葉が響く

ゲシッ
『いたぁっ』
『あっ、すまんでござる』

『がんばんなさいよぉ、まだあなたは、若いんだから』
老婆の声も響く

「拙者、お主の事が好きでござる!」
「えっ!?」

「えっ!?」
「あ・・・」

84武士さん:2014/10/05(日) 22:23:25
第76話 真の想い

ヒソヒソヒソ
誰かのヒソヒソ話が聞こえる
顔が真っ赤になる
拙者の目の前にはベッドで横になった”彼女”がいた
「まさか武士君の意中の人がさおりんだったなんてねぇ」
「驚愕。」
「市民に相談してたのはそれか・・・」
「君の心にテイルチェイサーさ」
三枝が赤木の方の見る
「質問。RSやってるでしょ」
「おう、やってるぞ」
「何鯖?」
「青鯖だよ」
「ヴィスケスでしょ」
「む、君は?」
「私、板前」
「ずっと前から好きでした」
「うん、私も」
ふたりはぎゅっと抱きついた
「おおうおう・・ドイツもコイツも・・・」
「まったくですね」
柿本と一穂が呆れる
「拙者、行って来るでござる」
「あぁ、彼女のためにもかえって来いよ」

師匠の待つ結界へと入る
「心が決まった目をしている。良い目だ・・・いくぞ」
「ぐ・・・」
秘剣将清水流拾の方
パワータイプの突進術
力と力で押しのけるには分が悪い



その一文字が頭に浮かぶ
だが背景は真っ白ではなかった
市民殿・・・小竹殿・・・柿本殿・・・・・弓坂殿・・・沙織殿!!

「死」のむこうの「生」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ダン ギュウイィィィィィン!

ドシャ
「ぐはっ・・・」
「師匠!」
吹き飛ばされた師匠のもとに駆け寄る
師匠の刀は真っ二つに切れていた
しかし師匠の身体には刀傷はなかった
「ゴホゴホ・・良い刀だ・・・行け、皆が待っている」
「しかし、師匠は?」
「村上がいるから大丈夫だ。いけぇ!」

85武士さん:2014/10/07(火) 23:25:53
第77話 記念写真

武士は駆け足でピンサロへ戻る
途中、不思議な感覚に囚われていた
「(あのとき・・・最初は死を覚悟した)」
「(ただ・・・皆の声が聞こえてきて生きたいと思った)」
「(師匠の刀を倒さねばならない敵と思ったら拙者の名刀さながらに変化した)」
「(その先の師匠の鼓動で、敵じゃないと思ったら両峰の刀に戻った)」
「(まるで、意志があるかのように・・・)」
武士は考え事をしながら長谷部の部屋を開けた
「長谷部殿!」
「きゃああああああああああああ」
そこには着替え中の長谷部が居た
「すまんでござ・・」
しゃべる前に長谷部に張り飛ばされる
廊下に吹き飛ばされるとそこには顔面を腫らした赤木が居た
「わが・・・人生に・・・悔いなし・・・」
「あ、赤木殿!戻って来るでござる」
「情状酌量の余地なし」
そこには三枝が仁王立ちしていた
それを横から見た一穂と柿本がケタケタ笑う
「あのっ・・・さ、皆で写真撮らない?」
唐突に吉敷が言った
「皆が戦ってるのも知ってる。誰よりも傷ついてるのも・・・」
「だけど・・・僕さ・・・戦うことも出来ないし皆の手伝いも出来ないけど」
「こういう真実って絶対に後に残さなきゃいけないと思うんだ・・・」
吉敷は言葉を重ねた
「この戦いの真実を紡ぐことこそ僕の闘いだと思ってる・・・」
そう、彼も4年間ともに戦ってきた仲間の1人だった
自分に戦闘力がないことに苦悩し苦しんできた
それを見てみぬ振りしてきた
「わかったでござる。撮ろう」
こうして「武士」「柿本」「鈴沢」「吉敷」「一穂」「三枝」「長谷部」
の写真をとることが出来た
しかし今後このメンバー集まることは二度となかった
そう・・・あんなことになるなんて

86武士さん:2014/10/08(水) 13:35:52
第78話 ラ・フランスプロジェクト

最近司令部内が静かすぎる。そう感じざるを得ない
このところ上層部から発案される作戦はパフォーマンス染みた陽動の一環ではないかと思うときがある
音響兵器での自衛隊の牽制、新型戦車による反政府軍の制圧、空母艦載機による絨毯爆撃
机に腰掛けコーヒーを飲みながらパソコンに向き合う
大佐の俺ですら開けない作戦ファイル『ラ・フランスプロジェクト』
これがいったい何を意味するのか音響兵器を開発した禿げ頭のジジイの姿を見ないことも気がかりではある
探りを入れたところでメリットはない
下手に手出せば逆に噛まれる危険性がある
関係があるのかここのところ発掘部隊が地下に向かうことが多い
地下に何があるのか…
迷いを降りきるためにも射撃場に向かうことにした
射撃場につくと幹部の1人がいた
緻密で計算高く冷酷な作戦立案により『氷心の女王』と噂される17、8の女性士官だ
さながら秋葉原のアイドル的な雰囲気で取り巻きがいつもたくさんいる
強気で冷淡な物言いと失態をした部下や捕虜の扱いは非道と揶揄されていた
ただそんな女が俺の前では後悔しているだなんだと慈悲の言葉を口にする
任官したばかりの俺を疑っているのだろう
毛頭そんな女の言葉を信じる理由もない
ましてや今時『私の足をお舐め』なんて一部のM男にしか受けねぇっつの
「珍しいわね。何しに来たのかしら」
「軍人なんだからいつでも鍛練しとくのは当たり前でしょう」
女王に声をかけられ一目をおかれていると噂だち後ろにいる取り巻きどもから殺意の視線が送られてくる
「それもそうね。なら、勝負しましょう。同じハンドガンで標的を少しずつ遠くしてく。はずした方が負け」
「負けたら罰則でも?」
「貴方が負けたら私の傘下になる。忠誠も誓ってもらうわよ」
「俺が勝ったら?」
「美味しいお酒をご馳走するわ。美女つきで」
あまりメリットないな
「」

87武士さん:2014/10/09(木) 10:05:59
第79話 ガンシューティング

どうしてこうなった
勝っても負けても取り巻きどもに狙われる
男はそう思っていた
ターゲットを至近距離にセットする
使用する銃はトカレフ
有効射程は50m
4mの位置から2m刻みで下げていく
「最初はどっちから?」
「レディーファーストで」
バン
一発の銃声と共に勝負が始まった
ビシッ
女王の撃った弾丸は的の真ん中を正確に射抜いた
バン
男も的の中央に穴を開ける
「なかなかやるわね元民間人の割には」
「この距離じゃあな」
二人はひたすら撃ち続けた
正確無比に的の中心を撃ち抜いていく
40m地点で勝負が動いた
「貴方、童貞?」
ビシッ
女王の唐突な質問に対し手元が狂う
中心から僅かに右側に流れた
「何か関係あるのですか?」
「その年まで童貞なんてね。私なんか」
「ビッチ?」
「な、な、なんですってー!!」
ビシッ
女王の弾丸は的の中央より左上に流れた
取り巻き連中が真っ赤な顔しておこっている
「そう言うことですな。幹部殿はさぞ淫乱生活をお楽しみなのでしょう」
ビシッ
的の中心を撃ち抜く
男は平静を取り戻した
「上官侮辱罪で処罰するわよ?」
ビシッ
真ん中より右上に当たる
「ご自由に」
ビシッ
中心を射抜く
50m地点でお互い辛うじて的には当たっていた
もう二、三発で勝負は決まるだろう
「貴方はなぜ町田に来たの?」
女王が問う
バン
ターゲットをかすめた
命中判定が反応しない
「あ、」
バン
チュイーン
男の弾丸もかすめたがこちらは命中判定が反応した
「あらら、負けちゃった」
「久々にいい訓練になりましたよ」
「さっきの問い、今度のディナーまでに考えておいて」
「イエス・マム」
負けたらどうしよう
男は一瞬頭をよぎったがとりあえず勝ったことに胸を撫で下ろした

88武士さん:2014/10/10(金) 19:21:39
第80話 新兵器開発研究所襲撃大作戦

政府軍の兵器開発速度が速すぎる
ここ数週間であらゆる反政府軍の拠点が制圧された
町田民族は優秀な戦闘民族
今の政府は女性兵士の訓練
子供のゲリラ教育と見過ごせない部分が多々ある
新兵器開発研究所は政府の最重要施設
残された我らに出来ることは
「双頭銃騎を差し向けよう」
「しかし、奴等の守備隊には伝説の傭兵が…」
しばしの沈黙が降りる
「素直にしたがってくれますかね」
「寝返る可能性も…」
「大丈夫です。彼は従わざるを得なくなる」
「何か秘策でも?」
中年のオヤジがニヤーっと笑う
「この町田に一台しかないウォシュレットを爆破すると伝えよ」
「な、なんだと!?」
「国宝をなんだと思っている!」
「こいつ、狂ってやがる!」
罵声や怒号が飛んだ
「ついでに奴の妹も人質にする」
「しかし、今は工業高校の別動隊に保護されている」
「工業高校の周辺の爆破のおかげで奴ら、政府軍と勝手につぶしあいをしやがった」
「別動隊とはいえかなりの戦力だ」
「目には目をだよ。君たち、入りたまえ」
「「はっ!」」
「お前たちは…!?」

89武士さん:2014/10/11(土) 18:53:23
第81話 戦う理由(ワケ)

市民の所在がわかり、武士たちは翌日の朝、出発を決意した
そのため黒美人にて慎ましやかに宴会の準備が行われていた
もしかすればこの中の誰かが命を落とすかもしれない
高田が配慮してくれたのだ
「俺、意外と料理上手いんだぜ」
赤木を含めた女性人が皆で料理を作っていた
武士はその間、少しでも鍛錬を積むため素振りをしていた
「ハッハッハッハッ!」
時間を忘れ汗を流しているといつしかそこに長谷部の姿があった
どうやら素振りを見られていた武士
そっと頬を染めた
「あっ、ごめん。邪魔になっちゃた?」
「そっそんなことは無いでござる」
慌ててタオルを首に掛け、袴を着なおす
長谷部がそっと岩から降り武士の近くに来た
「宴会の準備が出来たから呼びに来たの」
「すまんでござる。すっかり時間を忘れていた」
「結構自信作なんだぞ」
「それは楽しみでござる」
バサッとバスタオルを頭から被せられる武士
目の前の長谷部がくるっと反転して黒美人に戻っていく
空は夕焼け空
心地よい風が流れる
「あの・・・さ」
「ん?」
「とし・・・市民さんに会ってどうするの?」
「どうもこうも、拙者が聞きたいでござるよ」
「へ?」
長谷部がこちらに向き直る
「拙者だって、今の事態がどうなってどうすればいいかわからないでござる」
「急に巻き込まれたのはここにいる皆同じなのでござるよ」
武士は続けた
「戦いたい人などおらぬ。拙者たちはまだ学生なのだから」
「とし・・・市民さんを殺したり?」
「まさか・・・一発ぐらいはぶん殴ってやるかもでござろうが。殺しはせぬよ」
ホッとした表情を見せた長谷部
武士には何がなんだかわからなかった
「あのね、私、市民さn−−−−−−−−−−−−−−−−−−−」
ザザザザザz
黒い影が一瞬にして目の前で話していた長谷部の身体をさらっていく
「武士さんっ!武士さん!」
「長谷部どn−−−−−−沙織ぃー!」
その声を妨げるように不気味な笑い声が響いていく
「フハハハハハハ!!この小娘は預かった。」
「返してほしければ、新兵器開発研究所まで来い!武士よぉ!」
声を聞いて凍りつく武士
瞬時にして長谷部の姿が見えなくなった
さっきまで長谷部がいた場所に『おくのほそ道の旅』と書かれた冊子が一冊落ちていた
「ぐ・・・ぐおおぉぉぉぉ杉野ぉぉぉぉぉ!」
武士は吼えた

90武士さん:2014/10/12(日) 11:27:29
第82話 僕たちの戦争

黒美人に戻るとそこは惨憺たる有り様だった
家は焼け落ちおばちゃん達が倒れていた
一穂を見つけ近くによる
一穂が座って泣いている先には高田先生がいた
見るからに致命傷といった傷が見受けられる
高田先生は力のない手で武士を呼ぶ
「すまない…警戒していたはずだったが…まさか反政府軍の刺客が来るとは…」
「市民殿の」
「いや、今となってはナシスが反政府軍に差し向けたスパイだ」
ガフッと血を吐き出す
「頼む武士、一穂を…皆を守ってやってくれ…」
「高田先生!」
「お、おとうさん!!」
「一穂…強力な援軍を呼んでおいた…」
そう言い残し高田先生は息を引き取った

「拙者たちにも戦う理由ができたでござる。今までは見て見ぬふりをしてきたが、もう我慢出来ぬ」
いまだ戦線は拡大しつつあった
もはや関東全域で自衛隊と国連の連合軍相手に町田民族は戦っている
「私もいくよ。戦力がほしいでしょ?」
「しかし一穂殿には戦う理由が…」
「あるよ。復讐だ。こう見えても私の強いんだよ?」
そういうと一穂は武士を片手で軽々持ち上げて見せた
「お、お主!」
「私、両手足義肢なんだ。工業高校の加東先生と大小野先生の自信作」
「それに俺たちもいる!」
柿本を筆頭に仲間達が並ぶ
「俺と三枝がバックアップ。鈴沢が背中を守る。武士と赤木に高田がフォワードだ」
「それと、吉敷。お前はこなくていい。お前はお前にしかできない戦いがあるだろう?」
吉敷は頷いた
「今日は寝て、明日出発。」

91武士さん:2014/10/16(木) 22:02:13
第83話 町田政府新兵器開発研究所

「フハハハハハ」
研究所の1ブロックで不気味な笑い声がこだまする
「ついに完成したぞ強化外骨格のアームスーツが!」
「加東博士。くれぐれも我々の協力があったことをお忘れなく」
取り巻きの研究者達が取り囲む
「分かっている・・・それに」
加東の視線の先には銃を向けられた青年と初老の男性が居た
「君は非常に優秀な学生だったよ岩口くん」
すると青年…岩口は
「僕はあなたを見損ないましたよ」
と吐き捨てた
「やれやれ・・・それに協力感謝しますよ小橋先生」
初老の男性…小橋は
「ナシスの犬に話す言葉もない・・・」
半ば呆れた口調で問いに答えた
「小橋先生、そうですね。久々に筋肉勝負をしましょう」
加東は強化外骨格で小橋の手を掴む
「ぬううぅぅぅぅぅん!」
「ぐあああああああ」
小橋の手を赤子のように捻る
「ハッハッハ。今となっては私の方が強いようですね」
「小橋先生!加東先生、あなたの恩師じゃないんですか!」
岩口が食って掛かる
「恩師だからこそ、筋肉組織の研究に使って生かしてあげたんですよ。」
「魂も売ってしまったんですか」
「さてね。小橋先生に1日考える時間を与えましょう。僕の部下になるか2人で死ぬか」
「・・・」
どさっと小橋を放り投げた
「くさってるよ!あんたは・・・」
小橋と岩口は兵隊につれていかれる
「このスーツは貴方を研究して数倍強い。その研究成果から作られた檻。脱獄など考えないことです
加東の笑い声だけが響いていた

地下牢
小橋と岩口は同じ牢に入れられた
見張りは脱獄できないと知ってかさっさと退散していった
小橋は倒れたまま動かない
「小橋先生・・・どうすれば・・・」
「脱獄すればいいよ」
「俺も同じ意見だね」
岩口が目を凝らすとそこに居たのは
「小日出先生?遠条先生?」
流体力学コンビの2人の先生だった
「やつらに捕まって、永遠と流れのけいさんをせられたよ」
「とんでも兵器だぜありゃ」
「脱獄ったって・・・小橋先生がこんな・・・」
「一理ある」
そこに立っていたのは小橋だった
「脱獄したってここじゃ・・・逃げ切れないですよ」
「大丈夫だよ。我々には内通者がいるんだよ」
小日出がそういうと1人の兵士が階段からやってきた
「お前ら、飯だ」
「うるせぇ、バレバレなんだよ」
遠条が叱咤する男を岩口がみると・・・島野だった
「よっ、鍵もってきたぜ?」
「早くしてよ。荒金先生に報告しなきゃいけないんだから」
「わかりましたよ・・・」
小日出と遠条が牢から出る
「小橋先生と岩口も」
すると小橋先生は鉄格子を両手で掴む
「ぬううううぅぅぅうぅぅぅんん!!!!」
ぐにゃり
粘土のように鋼鉄がゆがむ
「ば・・・ばかな!」
岩口と遠条が驚く
「加東先生が思いやられるよ・・・」
小日出先生が嘆く
「ご自慢の牢屋がこれなら・・・アームスーツも大したことないな・・・」
島野が呆れた
「奴に研究されたが、全力を見せた覚えはないぞ」
小橋先生が高らかと笑った
「さて、反撃だ」
このころ、武士と市民が研究所に着いていた

92武士さん:2014/10/19(日) 09:18:51
第84話 対峙

「おやまぁ、面白い状況になってきましたね」
アームスーツを駆った加東が見る先には
現代最後の侍こと武士
反政府軍の双頭銃騎こと市民
反政府軍の三狂人こと杉野・山外・松田
そして山外と松田に抱えられた一人の少女
「さぁ、双頭銃騎。彼女を帰して欲しければ、武士を殺せ。剣道部で私に恥をかかせた恨みだ」
ドーーーーン!
誰もが凍りついた
「いやっ・・・」
山外や松田でさえ引いている超々個人級の恨み
「(要はあの少女ということですか)」
加東は冷静に分析していた
おそらくここで武士と双頭銃騎が激突すれば覚醒の最終フェイズが始まる
人類最強へのシフト
小橋先生とは違った形に顕現するのか
研究者として非常に楽しみだった

「市民殿!」
「武士、悪いが死んでもらうぜ」
市民が弾丸を放つ、武士は鈍刃刀の制御を会得し、弾丸を切り払っていく
「市民殿!長谷部殿とはどんな関係なんでござるか!」
「俺の、大切な人なんだよ!」
その言葉に武士が揺らぐ
長谷部殿は二股をかけていた?
いいやちがう・・・
そんなことを考えている間にこめかみに銃弾が抜ける
市民は本気で殺しにかかっている
「市民殿・・・一つ聞く。お主はこの戦争、どう思う」
「極悪非道の政府を倒すための聖戦と思っている。あの時賛同してくれただろっ」
「あの時は、学校のことしか見ていなかった。ただ殻を破れば、反政府軍も同じに思えるでござる」
「なにを・・・」
「現に長谷部殿をさらった奴らは、店を焼き討ちにし、多くの人命を奪い、高田先生も殺したでござる」
「なっ・・」
「これこれ、言葉が過ぎますよ。双頭銃騎、貴方は彼女を救いたいんでしょ?」
杉野の不気味な声が闘いの間に入る
「貴方がここで武士と戦い、そして倒れることで武士の内なる力が覚醒するのです」
「俺が武士に勝てないとでも言うのか!?」
「そうです。私の【おくの細道の旅】を買わなかった君では解らないでしょうが」
長谷部に銃を突きつける
「やめろぉ!」
「レディーとギルメンは大切にな」
三狂人の中に突如として割り込んだ人影
光学迷彩装備の赤木だった

93武士さん:2014/10/19(日) 09:43:56
第85話 外野の戦い

赤木と山外・松田が対峙してた
長谷部は杉野が抱えている
「赤木君、君は優秀とは行かなかったがなかなかのものだよ」
「うるせぇよ。俺は今幸せMAXなんだよ!」
二人に切り込む
山外は赤木に語りかける
「時に、君は純度100%のお酒を飲んだことがあるかい?」
「酒は飲まねぇ!未成年だからな!」
「そりゃ残念だ」
赤木が山外の打撃を避け着地するとその床は濡れていた
足元から酒の臭いと気化熱でいやな寒気がした
「はぁぁぁぁ!」
松田がライターを投げ込む
とっさに赤木は避け跳んだ
一瞬にして炎に包まれる
「赤木君、君はドイツ人の金髪の女性を見たことがあるかい?」
「それと何の関係がある!?」
「金髪の女性は秘部の毛も金色なんだよ」
「なっ・・」
同人誌を読んでいる赤木にとってたやすく想像が出来た
少し頬を赤らめ視線を外した瞬間を山外は見逃さなかった
猛打が極まり赤木がぶっ飛ぶ
「これぞ童貞戦術」
酒に弱いエロに弱いお子様向けな戦術
赤木の判断力は著しく低下していた
ここからは山外・松田の一方的な攻撃が続いた
「そろそろおわりにしようか、赤木君」
血だらけの赤木の前に一人の男が立ちふさがった
「童貞虐めはそれぐらいにしとこうか」
そこに立っていたのは鈴沢だった
「厄介なのがでてきたね」
山外が距離をとる
「赤木、そこで寝ていろ。三枝がポーション取りに行ってるから」
「わるい・・・そいつらは・・・」
「大丈夫、こいつらの戦術は俺には効かねぇ。もっとハードなプレイだからな」
赤木から見た鈴沢の背中は大きく見えた
三枝が到着した頃には鈴沢が二人を倒した後だった

94武士さん:2014/10/20(月) 19:05:38
第86話 大混戦

目を開くと手足は縛られ吊るされていた
そして頭に入ってくる光景を否定したかった
そこには武士と市民が殺しあっている
やめてっ
そう叫ぼうとしたが猿轡を噛まされていることに気がついた
涙が出てくる
するとフッと浮遊感に包まれた
「よっと」
誰かに抱きかかえられた
「彼女はもらってくよ」
柿本だった

「覚えてるよ、君は私から『おくの細道の旅』を借りて暗記し買わずに単位を取った小僧」
「あんたとは出来が違うんでね」
スラッ
刀を引き抜く

「拙者がお相手いたそう」

杉野と柿本の間に武士が舞い降りた
武士VS杉野

「アームスーツ部隊、奴らを囲め」
加東が周辺を囲む指令を出す
アームスーツが200程姿を現した
「く・・・」
赤木がもがく
「諦めが悪いね君も」
ひょこっと小橋先生が現れた
「貴様!なぜここに!」
「重要区画に木造じゃだめだよ」
小橋VS加東

「加東君なにをやっているんだい?」
「おやまぁ、天然鍵(メインキー)と人工鍵(サブキー)までいるじゃないの」
二人の人影がやってきた
「(メインキーにサブキー?)」
建物の影から島野はその言葉を聞いた
「あれは・・・伝説の傭兵・・・」
高田の声が震えていた
「小早先生と藤校長・・・」
柿本はその迫力におされていた
小早と藤の前に立ちはだかる二人の人間
「分身の術は」
「お前達の専売特許じゃないんだよ」
ドーーーーン!
市民と小日出だった
梨澄・小日出VS小早・藤

「そんなとこで何ねてんだ?単位いらねぇのか」
「なっ・・・何でこんなとこ居るんだよ!」
「師弟だから」
赤木・遠上・三枝・高田・柿本・長谷部・鈴沢VS200体のアームスーツ

95武士さん:2014/10/24(金) 23:20:32
第87話 結末

ガシィ
加東のアームスーツと小橋が取っ組み合う
「ひとつ聞きますけど、君はここで死ぬのと私の子分に戻るのとどちらが良いです?」
「死ぬのは1人、貴方だけです。何度言ったら・・・」
「残念ですよ。観ていなさい岩口君」
「ぬぅぅぅぅぅぅん!」
連打乱打猛打
ドドドドドドドドドド
アームスーツが圧砕していく
加東が投げ出され動かなくなった
「加東君の目が覚めたら補修です」
小橋が圧倒した

200体のアームスーツ相手に女性3人を護りながら戦うのは骨が折れる
「ぐあああああああ」
「鈴沢!」
鈴沢の体が軽く吹き飛ばされる
遠上先生と赤木がケーブルで繋がれ中心のパソコンで三枝がパラメータをセットしている
奴らの狙いは明らかに長谷部だ
天然鍵(メインキー)と何か関係あるのか
今はそれどころじゃない
柿本が出来ることは時間稼ぎだ
「しまった!」
一瞬の不意を突かれて1体のアームスーツが長谷部に襲い掛かる
ドン!ドン!
高田の右手がある位置から煙が出ている
アームスーツに二つの大穴が開いていた
「おまえ・・・」
「私は義手義足なんだ。四肢には様々な武器が仕込まれてます」
左手からのブレードでアームスーツを引き裂く
「遠上先生のデータインストール完了、赤木!」
「おうよ!」
赤木が再起動し一本の剣を持ち198体のアームスーツの真ん中に突き抜ける
「赤木!無茶するな」
柿本がそういうと
「ノーさんきゅ」
赤木に向かって複数のアームスーツが突き進む
目を閉じフゥーっと息を吹く
遠上先生の流体制御コマンドをインストールした赤木の敵ではなかった
「ドラゴン・ツイスター!!!!」
蒼白い龍が現れ次々とアームスーツを食い殺した
198体を葬るのに5分と掛からなかった

分身対決は小早と藤に軍配が上がった
小日出は重傷、市民も奮闘したが最強の傭兵には敵わなかった
「模倣は完璧だったのに・・・なぜ」
「君達の模倣は完璧だよ、ただ模倣する相手の戦闘力を考えていないことだ」
そう小日出は戦闘職じゃなかった
「メインキーは頂いて行くよ」
そういうといつの間にか長谷部を担いだ藤が後ろに現れた
「しまった!」
「次は世界の絶望の中で会おう」
そういうと小早と藤は姿を消した

96武士さん:2014/10/27(月) 22:27:00
第88話 未熟

勝負は一瞬だった
神速の抜刀術
互いが交差し停止する
数刻の間の後、先に動いたのは杉野だった
「松尾芭蕉が隠密だったという説がある。一般人じゃ到底踏破出来ない道のりが『おくの細道』だ」
つかつかと歩き武士のほうに向き直る
「私は同じ道を同じ時間で踏破出来た。なぜだか分かるかな?」
杉野は刀を鞘にしまう
「君が最期の侍であるように私は最期のお庭番衆の1人なのだよ。アディオス」
そういうと杉野は手を振って小早たちが消えていった方へ歩き出した
「武士!」
市民と赤木が駆け寄ってきた
ポンっと肩に手を置くと武士はガクッと崩れ落ちた
柿本が近寄り脈を確かめる
「脈はあるし、息もしているが・・・」
武士の目に光がなかった
赤木が見やると鈍刃刀が真っ二つに折れ地面に刺さっていた
「今の武士は次元の迷宮、すなわち自分が何者だか分からなくなってしまっている」
声のする方向には島野が居た
「てめぇ!今まで何してやがった!」
市民が島野の胸倉を掴む
「逃げてた!俺はお前らみたいにデタラメ人間じゃないんだよ!」
「お前ほどの戦闘力があってよくいう!」
市民が殴り飛ばした
「たとえ仲間が殺されようとそれを助けることなく、仲間が危険な状態であろうと警告を発する程度でそれ以上の支援は一切しない」
「なんだそれ?」
柿本の呟きに赤木が反応した
「武士を救うには夢渡る能力者が必要だ。手助け出来るな!皆を・・・頼む」
「知った風な口を!」


グラグラグラ
不規則な地震に体の自由を奪われる
「この国は・・・いったいどうなっちまったんだ・・・」
柿本が空を見上げる
天が真っ二つに割れていた
「ここにいたのか!」
十日月があわててやってきた
「どうした?」
「角鬼から連絡が来た!ラ・フランスプロジェクトの全貌!このままじゃヤバイ!」
十日月が手持ちのタブレットを見せる
「こ・・・これは!!!」
一同が驚愕した

97武士さん:2014/11/04(火) 21:48:31
第89話 真実

『ラ・フランスプロジェクト』
それは人類に課せられた最初で最期の罪
かつて祖先であるアダムとイブは禁断の果実「林檎」を手にした
「林檎」を食べた彼らは英知を授かることとなる
しかしこのとき「梨」の存在には気がつかなかった
「梨」はひとより英知を奪い去る禁断の果実
ナシスが作りし果実はこの「梨」そのものであった
音響兵器とは名ばかりの副産物でしかなかった
「梨」の地に根を張る異様なスピードが気になっていた
ここまで来る間に何人もの人間の頭の上に「梨」が乗っていた
気がつくべきだった
彼らこそ「梨」に食われた人間なのだ
自分で考えることを失い、命令に忠実な人形なのだ
そして一村の考えた『ラ・フランスプロジェクト』
人類全員を奴隷化し支配下に置くそんな作戦なのだ
確かに力による無気力人間の統治
飢餓も疫病も殺人でさえ無くなるのかもしれない・・・・
しかし・・・

この世界には童話で「ジャックと梨の木」が存在する
ジャックが梨の木を上り巨人から拝借した宝で幸せになる話だ
一村は巨人になろうというのだ
巨大な禁断の果実の木を使い全世界に梨を降らそうというのだ
地面に落ちた梨を動かせば即死し、人体に当れば一瞬にして頭から梨が生え無気力人間に
もはや助かる見込みはなかった


「基地司令はいるか!」
角鬼は町田を脱出し自衛隊対策本部へと駆け込んだ
止める手立てはそれしかない
「貴様は誰か!」
「角鬼国連大佐だ」
手前に居る若い中尉が何かを照合している
奥から銃をもった兵士と少佐相当官がやってきた
「角鬼大佐、君は、謀反を起こし亡命した嫌疑がかけられている」
「なんだと・・それより今は司令にあわせてくれ!」
「ダメだ!ひっとらえろ!貴様にはっこの戦争の責任をとってもらう」
「わかった・・だが今は話を聞いてくれ!」
少佐が聞く耳を持たずに角鬼を捕らえたそのときだった
「そのお話聞かせてもらおうか。隊きっての秀才将校のお話を」
「閣下!」
少佐の敬礼した先に1人の男が立ってた
それはかつての恩師であり上官だった
角鬼に一筋の希望が差し込んだ

98武士さん:2014/11/14(金) 19:31:27
第90話 決意

十日月の話を聞いた一同は絶句した
『ラ・フランスプロジェクト』の真実
「く・・・俺たちは・・」
赤木は地面に拳を立てた
「今、十日月財閥総出で政府に働きかけジオフロントに人々を避難誘導させていますが」
十日月はうなだれる
「結構な人間が侵食されています・・・頭の梨を取れば死亡し、ヘタを切るとアンテナが圏外になるように暴走を始めます・・・」
「ワクチンとかはないのかよ・・・」
市民が声を荒げていう
「間に合うか・・・どうか」
十日月を責めても始まらない
「そういや、奴ら。沙織をメインキーとか一穂をサブキーと言っていたが」
柿本が尋ねる
「それは・・・」
十日月が一穂に目をやる
「私・・・何があっても驚かないから・・・お願い」
十日月は少し考えたようだが話し始めた
「長谷部さんは・・・梨の木を制御するための生体端末・・・いわば人語を入力するための翻訳機。おそらく一穂さんも」
「・・・」
「今、梨の木を開花させれば間違いなく暴走、無差別攻撃となる。それを制御するための生贄」
市民が黙っていなかった
十日月に掴み掛かる
「てめぇ!それを知ってて!」
「知ったからって何か出来るのかよ!俺だって悔しいんだよ・・・」
十日月は泣き始めた
「梨の木の成長には莫大なエネルギー源がいる・・・」
「まさか・・・」
「工業高校の地下核融合炉・・・」
「今・・青柳先生が戦ってはいるが・・・何分SSの数が多くて・・・」
柿本は周りを見た
かろうじて立ってはいるが、皆激戦で疲弊していた
「小橋先生、すみません。皆を頼みます」
「おまえら・・何も言わん。こいつらは無事逃がそう」
「ありがとうございます」
柿本は駄目かもしれないが救援部隊を組織し工業高校へ向かうことを決意した

選抜隊
柿本・赤木・市民・高田

見送り
小橋・遠上・三枝・十日月・岩口・島野

脱落
武士・鈴沢・小日出

「高田さん、いいのか?」
高田は手をひらひらさせて笑顔で言った
「梨の木の暴走を止めるには私の力がいるっしょ」
「すまない・・・」
あっちでは三枝が赤木に泣きついていた
「いやだー!!私もいく!!」
「だめだ。お前はここで待っていて欲しい。ヒーラーが前線に出るなんてもってのほかだ」
「だって・・・」
赤木は顔を真っ赤にし照れくさそうにポケットから小箱を出した
三枝が受け取り箱を開けると中からマイクロチップ付きの指輪が出てきた
「これ・・・」
「あーなんだ。俺のバックアップだ。大事に持っておいて欲しい」
三枝の顔が真っ赤になる
頭から湯気が出てそのまま気絶した
市民が寝ている武士に話しかける
「お前と一緒にいれて楽しかったよ。俺も変わったよ。ナルホド・ザ・ワールド」
「次会うときは平和な世界でな」
各々が別れを告げ出発する
柿本が島野を呼び止める
「やられっぱなしは癪だから何とかするさ」
「無茶するなよ」
「そうだな・・・角鬼を支援しにいくさ。死ぬなよ?」
「モンハンとジャンプが待ってるから死なないさ」

そういうと男たちは出発した

99武士さん:2014/11/14(金) 20:09:42
第91話 工業高校

少し時を戻し
工業高校
「一村総統。工業高校制圧完了致しました」
「うむ。地下融合炉は?」
「深尾教授を捕らえ準備中です」
「放して!」
一村の前に長谷部が引き出される
杉野たちが片膝を付く
「おうおう鍵の到着だな」
「あなた、正気!?」
バシン
一村は長谷部の顔に蹴りを入れる
長谷部は人形のように吹き飛んだ
髪を掴み顔を上げさせる
「鍵が喋るな。鍵じゃなきゃ今頃、慰み物にするとこだ」
兵士たちが敬礼する中、一村は校長室へと向かった
「捕虜はいかが致します?」
「奴らは人柱だ。監禁しておけ」
「はっ!」
「しかし・・・あっけないな」
「は?何をおっしゃいます。われわれ親衛隊の実力と言うものです」
一村は校長座に座りにやーっと笑った
「そうかな?なら奴を止めてみせろ」
「我々に勝てない敵など・・・」
ビリビリビリ
地面が細かく揺れる
「来たぞ?」
一村が屋上へと歩く
階段や校舎側には親衛隊が5000人近くいた
かなり先の校庭の隅にポツンと一人の男を確認した

「おおぉい。一村先生。私の同僚や愛する生徒たちは無事なんでしょうねぇ」

周囲の空気が振動する

100武士さん:2014/11/16(日) 15:03:51
第92話 戦い

ナシス軍は動揺した
「ば、ばかな!奴は振動研究シンポジウムで日本にはいないはずだ!」
司令官らしき人が声を荒げて言う
無理も無い
ここに居るはずの無い男が立っているのだ
秘書官らしき人物が長谷部を抱え奥へ非難しようとした
「ちょっと待ってな、お嬢さん」
「青柳先生!」
「こりゃあ、またえらくたくさんいるねー」
校庭の端にいる小柄な男が辺りを見回す
「先生・・・どうして・・・私が梨の木の制御回路になれば人類は死滅しなくて済む。こんな私でも出来る事がまだあるのに・・・」
「・・・」
「助けて欲しくない!これ以上武士君たちに迷惑をかけたくない!私が犠牲に・・・」
「・・・はぁ?勘違いしてませんか?貴女が犠牲になることはない。だって、私が潰しに来たんだから!」
青柳が5〜6歩前に進むと腰を落とし両の拳を握り締め左右へと一気に開いた
ビシビシビシ
大気にひびが入り割れる
周りの建物や草木が皆倒れていく
「青柳は振動界の王子(プリンス)と呼ばれた地震人間だ!!こちらが数で有利だと思うな。奴は世界を滅ぼせる力をもつ男だ!!!!』

長谷部は涙を流しながら青柳を見ていた
「先生・・・私が勝手にしたこと・・・なのになんで助けになんて来たの・・・」
「勝手?貴女は優しい生徒だから。こういう行動は予想できてました。生徒の尻を拭うのも教師の役目でしょう」
1mの定規を一村の方向に構え振り下ろす
「強制振動!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
校庭を振動が這いナシス軍をなぎ倒していった
「まだまだこれから」
にやっと青柳が笑う
司令官が再び
「青柳・・・地震を自在に操る男・・・あの歳でまだこれほどの力を秘めているとは!一瞬も油断するな!奴はこの世界を滅ぼす能力を持ってる男だ」
部下を叱咤する
振動は校舎を貫き大きな金属音がなった
「くそ・・・なんだったんだ!?」
司令官や幹部たちが机の下から出て辺りを見回す
すると兵士の一人が司令部に駆け込んできた
「司令!大変です!工場棟の分厚い金属扉が先ほどの地震で吹き飛びました!」
「ばかな!あそこには抵抗派の捕虜を閉じ込めていたのだぞ!」
「さすがは青柳。司令。地上は任せる。私はこの女と地下へ向かう」
「ハッ!」

101武士さん:2014/11/16(日) 17:09:10
第93話 振動

「な・・・なんだ!?この異常な地震は!?」
幹部が慌てふためく
すると奥から一人の男が出てきた
「貴様は・・・!?」
「ほら来るぞ。奴が仕掛けた強制振動が自由振動に変わってくる」
すると校庭が先ほどとは違った波打つ
そして地面が割れ始め何人もの兵士たちが亀裂に落下していった

「く・・勢力で上回ろうが勝ちとタカをくくるなよ!!」

「最後に迎えるのは我々かもしれんのだ…あの男は」

「世界を滅ぼす力を持っているんだ!!!!!」

ナシス対青柳の一戦が幕を開けた
銃や爆弾で攻撃するも
一歩一歩近づく青柳をとめることは出来なかった
「なんですか?歓迎の花火ですか?」
「く・・・なんて奴だ!」
「まったく派手に点火して・・・もっとスマートに灯しなさい」
「スキを見せたな青柳!よそ見している暇は無いぞ!」
情報工学の松園先生が飛び出してきた
「ウィルス・トロイの木馬!」
「んー?」
トロイの木馬を片手でやすやすと捕まえ中の松園ごと一撃で葬った
「幹部の松園さんが・・」
ナシス党員が乱れ始めた

「うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ」

割れた地面から一両の鉄道が飛び出してきた

「沙織ぃぃぃぃぃぃ!!」
「うるせぇ市民!」
赤木が市民に怒鳴る
「きゃあああああスカートが」
「なるように・・・なれだ」
市民・赤木・柿本・高田が戦場に舞い降りた

102武士さん:2014/11/27(木) 12:38:14
第94話 阻止限界点

一村と長谷部が地下へ続く階段を降りる
最初は土壁のような造りであったが途中から見たことのないような金属の空間となった
「こここはかつて地球に飛来した高度な文明を持つ異星人の残した土産みたいなものだ」
冷たく透き通った金属を見れば地球の物でないことは確かだ
「なぜ私をここに?」
「この先にあるブラックボックスに入る最後の部品がお前なんだ」
階段を降りると木の根に囲まれた大きな空間に到着した
木の根が守る中心に心細く光る大きな梨が浮いていた
周りには様々な機械や配管、配線などがかき集められ異様な空気が漂う
よく見ると透き通った梨の中に種のようなものが見える
徐々に近付くと形がはっきりしてきた
「あれは…人間?」
「そうだ。一村一穂。私の娘だ」
「ッ……あなたっ!なんてことを!」
長谷部が食って掛かると一村は怒りを顕にした
「そうだ!これが奴らの!荒金や政府要人のなれの果てだ」
「!?」
「莫大なエネルギーを持つ梨を制御するために生体端末が必要だとわかった」
「それもとりわけ種子の成長を見守り優しく包み込むような性質を持つ女性がね」
「だから、奴らはこの計画に携わった私の娘を使った!私の娘には適性が少なかったからエネルギー注入中に制御不能になったがね」
「それ以来、私の娘はあそこで眠ったままだ」
近くによって見るとどこかで見たことがある気がした
「この子」
一村は長谷部に銃を突き付けた
「さぁ、入ってもらおう」
長谷部は恐る恐る梨に近付くと
何やら声が聞こえた
無意識のまま手を伸ばし
梨の中へと吸い込まれていった
「ハッハッハ、勝ったぞ荒金!」
暗く広大な部屋に不気味な笑い声が木霊した

103武士さん:2014/11/28(金) 19:39:41
第95話 敗北

そのころ市民たちはピンチを迎えていた
連戦に次ぐ連戦で疲労はピークに達し
ナシスを裏切り古谷先生がこちらに付いたものの多勢に無勢
「アンタは老いた。女の子一人守れないほどにな」
校舎の屋上から幹部が言い放つ
「ぐっ・・・」
青柳が膝を付く
「目がかすんできました。年は取りたくないものです」
何千という兵士にあっという間に囲まれてしまった
「なぁ、市民。」
「ん?」
赤木が覚悟を決めたように市民に問いかける
「俺がハウリングブラストで退路を作るからお前らだけでも逃げてくれ」
「なっ!俺にまた仲間を見捨てろというのか!」
「しかし・・」
幹部が言葉を遮った
「残念だな。青柳と双頭銃騎は捕らえよ。後は殺せ!」
「市民、また来世でな」
赤木がドラゴンの心臓を口に入れようとした瞬間
突如足元を揺るがす大きな地震に見舞われた
青白い閃光とともに轟音が鳴り響く
すると目の前の校舎を引き裂き1本の大木が現れた
すさまじい勢いで伸びていき一瞬にして空の、太陽の無い暗黒の世界が広がった
「これは・・・」
「まさか!」
赤木と柿本が空を見上げる
「沙織!」
「ッ・・・」
市民が吼え高田が肩を震わせた
「やった・・・ついにやった!これからは俺たちの時代だ!」
幹部が高らかにガッツポーズをした
振り上げた拳の先
上空1万メートルほどから何かが降ってきて地面に落ちた
「梨?」
サーチライトで見上げると無数の梨が降ってくるのが見えた
「な!?」
「今です!」
青柳が地面に拳を突き立てる
すると地面にひびが入り崩落した
「逃がすなー!」
市民たちは奈落の底へと落ちていった

104武士さん:2014/11/28(金) 20:04:14
第96話 絶望

世界は暗闇に飲み込まれた
核融合炉のエネルギーにより世界の半分を梨の木が覆い尽した
一部の人間たちは地下シェルターに避難したが殆どの人間が梨の木から降ってきた梨に当たり
頭の上に梨がくっついた
無理に取ろうとすると音響兵器化し取った人、取られた人は死亡した
全世界に向け放送が流された

私はこの世界の王である一村だ
諸君ら愚民どもは私の管理下にある
頭の上の梨を取ろうとしても無駄だ
周囲の人間を巻き込み待つのは死だ
梨には管理タグが付いている
私に対する敵意や反乱を企てようものならば
爆破するのみだ
おやおや、こいつはいけないな
私を殺したいと思った者1千万人を爆破した
ハッハッハ
梨に葉っぱが付けばそれは私への忠誠を示すものである
50人の梨の無い人間に梨をつければ葉っぱが一枚付き
爆発におびえる事のない生活を保障しよう
また爆発直前には梨の色が赤・・・つまり林檎に変わる
林檎の周囲50mは音響兵器の範囲となる
林檎をつけてる人間を見つけたら直ちに殺さねば自分が死ぬ事になる
さぁ、私に忠誠を誓え奴隷ども

こうして一村は世界征服を成し遂げた

105武士さん:2014/11/28(金) 20:28:15
第97話 世界

東京品川区で発芽した梨の木はぐんぐん伸び、上空3万mまで到達した
南米・アフリカの一部・南極を除き漆黒の世界となった
人口60億のうち50億人もの人々が統治され
いつ殺されるか分からない恐怖に怯えていた
支配地は地獄絵図だった
葉っぱによる階級制度
1枚葉市民
無葉市民
その差は大きかった
1枚葉市民になるべく
あるものは仲間を売り梨をつけ
あるものは女を捕らえ強姦のすえ出来た子どもに梨をつけ
あるものは逃げおおせた人間を捉えに出た

そのおかげで人身売買・奴隷オークションが横行
影で人攫いや性的暴行が急増した
無梨市民や子ども大人問わず女が高値で取り引きされた

略奪・殺人・強姦
もはや世紀末である

逃げ延びた10億の市民は南米・アフリカ・南極に別れ細々と生き延びることとなる

106武士さん:2014/11/28(金) 20:51:54
第98話 国連

一村帝王に対する最後の砦、国際連合
本部ビルは破壊され南極を中心に構えることとなる
彼らとてこの事態をただ見ていたわけではない
少し時を戻し角鬼大佐の懇願により
米軍機動部隊と国連空軍が東京へと侵攻した
任務は焼夷弾による空爆
迎撃機による梨の迎撃

そして当時の通信記録が残っている

「こちらイーグル1間もなく房総上空。真っ暗だ」
「シャドウ1よりイーグル1、こちらも何も見えない」
「シーホークよりシャドウ1現在位置を知らせよ」
「まもなく東京上空。地上では火の手が上がっている」
「なんだ!ありゃ!?」
「どうしたシャドウ3」
「大木が!一本の大木が立ってます」
「木!?」
「シーホークより全機、武器を使用許可。そいつが光を奪った原因だ」

世界各地から戦闘機、迎撃機、爆撃機が出発
東京上空に数千機がいたと考えられる

「FOX2!FOX2!」
「命中!火災発生」
「いけるか?」
「効果なし!」
「編隊長!上空に星空が!」
「なんだと!?」

夜空にちりばめた宝石のように満点の星空
ではない
木に実っている梨が発光していた
やがて空が落ちてきたように
数億・・・いや、無数の梨が彼らに降り注いだ
「うわ!被弾した!」
「ぎゃーぎゃー」
「たすけてくれー」
「・・・・・」
「回避行動!駄目だ!」

ものの数十分で殆どが墜落した
「こちらフューリー3作戦は失敗した」
「全機離脱!」
「死ぬな!」

決死の航空作戦は失敗に終わった

107武士さん:2014/11/28(金) 21:16:11
第99話 最終兵器

人類に残された最期の矢
そう、核弾頭である
日本近海に配備された各国の原子力潜水艦
アメリカ・イギリス・ロシア・中国・フランス・インド
原潜保有国すべてのSSBNが配置された
「最早、ほかにありません」
「ご決断を、大統領」
「我々はあなたの決断を支持いたします」
世界の魁として
アメリカ大統領を国連が、世界各国大統領が支持
「我々の未来のため、この決断が状況の好転に繋がることを願う」
日本に向け3度目となる核ミサイルを発射した
太平洋にて発射した弾丸は成層圏まで飛翔
しかし上空の木々に阻まれ爆発
一瞬光が差し込んだがあっという間に闇の世界に逆戻り
梨爆雷と根っこによりほぼ撃沈され
もはや人類はなす術を失った

108武士さん:2014/11/28(金) 21:44:49
第100話 武士としての生き様

-----------くん-----------
-----し------ん-------

声が聞こえる
起きねば・・・
体が動かないでござる・・・

-----ぶしくん---------

さおり?

目を開けると白い空間の中に寝ていた
武士を呼ぶ声
それは紛れもなく長谷部沙織だ
「武士君」
「沙織殿」

手を伸ばそうにも体が動かない
「よかった・・・最後に逢えて」
「最後?」
「私はあなたに生きていてほしかった」
「何を言っておる沙織殿」
「最後のわがままを聞いてもらっていい?」

---------お願い
助けて----------------------

「沙織殿!」
がばっと武士は飛び起きた
「君!大怪我をしてるんだ安静にしてないと」
武士は周りを見る
薄暗い部屋に担架に乗せられ
灰色く汚れた白衣を纏った医者らしき人物に制止されていた
「拙者行かねば!」
男の手を跳ね除ける
地面に脚をつくとぐらっと揺れた
武士の力が抜けたわけではない
床が揺れているのだ
「君!」
「放すでござ・・・」
制止する医者らしき男の顔を見た
髪は乱れ眼鏡は割れ白衣に血が滲んでいた
女、子どもの泣き声
狂気の悲鳴
地響き
「なにが・・」
「あ、君!」
武士は人の流れに逆行して扉にたどり着く
そこで見たものは

巨大な木
炎に包まれた東京
空から無数に降る光る梨
船に乗り切れず桟橋から海に落ちる人々

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

武士は吼えた
荒れた海に虚しく吸い込まれていった
こうして行く当てのない旅が始まった


†BUSIDOU†〜武士としての生き様〜





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