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18
:
フリーザ
(ワッチョイ)
:2020/10/09(金) 17:58:45 ID:0uKcDC2M00
「こらイー君!また喧嘩してきたの!?」
少女は声を荒げて詰め寄る。
美しい黒髪に透き通るような白い肌。
ほんのりと顔を紅葉させているのは今日の日差しのせいではない。
「仮に喧嘩していたとしても君に説明する義務はないよね」
服についた泥をパタパタと払いながら少年は呟く。
「あーもうこんなに怪我して、こっち来て!」
少女は少年の手を引いて半ば引きずるようにしながら歩き始めた。
「毎度のことだけど、君の動機が理解できないよ、もう僕に構わないでほしいな」
「またすぐそんなこと言う!怪我してる人を見たら治してあげたいと思うのが普通の人なの!」
いつものように噛み合わないチグハグの会話をしながらも、面倒見の良さと頑固さを併せ持つ少女のペースに思わず引っ張られてしまう。
「到着!ちょっと待ってて!」
「いや、もう治った。帰る。」
「ダーメ!」
ドタバタと騒がしい音を立てて救急箱を持った少女が戻ってきた。
「はい、手出して」
「ん」
顔や体に傷はない。
ただ少年の拳には痛々しい傷がついていた。
「今日は一体、誰と喧嘩したの?」
「誰と言ってもね、ただ偉そうに踏ん反り返ってる貴族がいきなり殴られた時の護衛の反応が見たいだけだから」
「はぁ…頭の方が重症ね…」
少女はてきぱきと処置を施し、よし!と手を叩いた。
「はいこれで応急処置完了です!」
無邪気に微笑みかけながらも少女は少年の顔色や発汗、呼吸や動悸に異常がないか静かに最終チェックをする。
「んー、少し顔が赤いかな?」
首を傾げて少年の手を優しく握った。
「いや、もういいよ」
日差しのせいではない。
「良くないよ!傷口からバイキンが入ったら熱が出ちゃうんだよ!?」
「これは、その、君がベタベタくっつくから暑いんだよ」
「な、なによその言い草〜!もう知らない!」
顔を真っ赤にした少女は動揺を隠すように大声を張り上げて「もう喧嘩しても診てあげないんだから!」等々言い放ち少年からプイと顔を背けて家に戻っていった。
「…言えるわけないだろ、可愛すぎるからなんて」
しばらく少女の温もりを抱きしめるようにして胸の前でギュッと手を組み、立ち尽くす少年の頬に汗が流れる。
不純な動機で少女と接点を持ちたがる自分。
激しく脈打つ動悸、説明しきれないけど。
きっとこの汗は日差しのせい。
イフックス「…ちかね」
ちかね「イー君…」
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