したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | メール | |

リレー小説 第二部

1ノートン:2012/12/25(火) 22:14:13
それは、今から20年前の話・・・

「うぉぉぉーー!!力が漲るーーー!!」
邪悪な力が目覚めつつあった・・・
それは108の凶星と別れ、人里へと降り注いだ。

しかし、その中でも”夜の王”として君臨する夜神星は自我を保ち、残り107の凶星の成長を待っていた。

25ノートン:2013/01/04(金) 21:18:45
カロは立ち上がり、近くの客に話を聞いた。
「ちょっといいですか?色 赤という人物をご存じありませんか?」
「不知道的 剥皮机」
「・・・やはり言葉が通じんか」

すると、定食屋のカウンターに座っていた男が話しかけてきた
「君たち、旅の剣客かネ?今、色赤といったアルか?」
片言でこちらの言葉を話してきたその男は、30代前後で、ガリガリの体つきだった。身に着けていた服は、ボロボロで所々に穴が開いていた。
「あんた、俺たちの言葉が解るのか?」
「もちろんだヨ。私の名はリー。色・赤の情報を知りたいのなら、教えてあげてもいいヨ」
「ほんとか!?ぜひ教えてくれ」
「いいヨ。ただし情報料として1000万よこしなヨ」

26キャプテン:2013/01/04(金) 23:30:10
カロはカウンターテーブルに手をつき、ニッコリとして見せる。
「そうか、そりゃ残念だな。」
テーブルにヒビが入り、ピキピキっと音をたてる。
「…兄ちゃん、面倒事は良くないヨ。」
周りの客達が立ち上がる。腕に特殊な機械を取り付けており、矢が数本装填されていた。
「…ここの方々は客であると同時に用心棒でもアルヨ。」
瞬時にカウンターの下にリーが隠れる。カウンターに向かって客達が一斉に矢を放つ。ヒュペルがカロを押し倒す。
「カロ、悪い!!」
辺りが光に包まれる。周りの人々が瞼を閉じる。ヒュペルはカロを客達の方へ両の手で押す。カロは加速し、ビュンッと風切り音を起こし客達にぶつかる。
「ぐわああああああああああ?!」
客の何人かが押し倒される。ヒュペルがカウンターに刺さった矢を何本か抜いて取る。
「…少しは俺もなまった体を動かさないとな。」
カロは脚を上にして壁に寄りかかる。ポカンッとした表情でヒュペルを見ていた。

27ノートン:2013/01/05(土) 09:09:16
「まっ・・待ってくれヨ!宿星持ちを相手にするつもりはないよ!」
リーが慌てふためいていた。
「先に仕掛けてきたのはあんたらだ」
ヒュペルは目を細めて言った。
「悪かった!情報はやるヨ!場所を変えようじゃないか」

28キャプテン:2013/01/06(日) 00:05:33
「…で言われた料亭はここか。」
上までそびえる高層建築、料亭と呼ぶより塔である。
「さあ、行くか…?!」
ドゴドゴッと音がし塔が横に二つになり繁華街に倒れていく。
「走れ?!」
繁華街に塔が倒れ、ヤンの町を土煙が覆う。町の人々は理解できないだろう、ある二人を除いて真実に触れられずに…

…十分前、料理の残骸があちこちに散らばり二人は対面していた。
「何の冗談ですか色・赤さん、助っ人にこんな扱いするなんて?」
赤いチャンチャンコの男の子がタキシードの男性に話しかける。
「…あんた等のやり口も読めてるさ、だから先ずはアイル・トゥーテゥー、あんたを捉えて聞き出すのさ。…水墨鳥の居場所…そしてなぜデスポワールが宿星持ちをそんなにたくさん集めれたのかをな。」
色・赤はまたネクタイを緩める。トゥーテゥーが口を開く。
「…どちらも知らないよ。…どうするの?」
トゥーテゥーが尋ねる。色・赤が答える。
「ならば、貴様を人質に取るまでだ!!」

29ノートン:2013/01/06(日) 17:01:22
色・赤の掌が真っ赤に染まっていく。トゥーテゥーは身構える。
「いいか小僧、命までは奪わん。だから無駄に足掻くなよ」
色・赤はトゥーテゥーに向かって突っ込む。その赤く染まった巨大な掌で、トゥーテゥーの顔面を掴もうとした。
しかし、トゥーテゥーは少年。その柔軟で俊敏な体を活かし、色・赤の突進からひらりと逃げた。
色・赤はそのまま部屋の柱を掴んだ。掌に掴まれた柱は、みるみる潰れていった。
「すごいですね・・・握力強いんですか?」
「黙れ。デスポワールがなぜ貴様のような餓鬼をチームに入れているのか知らんが、逆に好都合。恨むなら、貴様をこの色・赤の元へ送った上司を恨め」
トゥーテゥーは少し呆れた表情で色・赤を見た。
「色・赤さん。あんた少し僕を舐めすぎてるよ」

30キャプテン:2013/01/06(日) 19:47:29
「ファングリッド、牙の格子の異名はだてじゃないですよ。」
大口を開ける。頬より首筋から肩まで裂け、そこから真っ白な
牙が生え、巨大な顎となる。
「シキリャああああああああ」
初々しい少年の顔が、幼さを残しグロテスクな口と合間って狂気を思わせる。
「…成る程、子どもにしては歯が生え変わるのが早いな…」
トゥーテゥーは口を閉じ、頬を膨らませる。
「プププププププププププ!」
口先から牙を吹き出す。すかさず色・赤は巨大化した赤い手で柱を壊し、盾にする。
「シキリャー!!」
盾にしている柱にトゥーテゥーが噛み付く。
「ぐぐぐぐぐぐぐぐ…」
柱が砕け、色・赤に噛み付く。間一髪で逃れ、色・赤はもう一つの柱に手をつける。
「まともに戦う気はないさ。」
赤い手が柱を握り潰す。建物全体が揺れだす。色・赤が窓から飛び出す…

…現在、色・赤は両の手で別の建物の壁を無理やり握り飛び移っていた。塔が崩れる様を眺めながら。

31ノートン:2013/01/06(日) 22:27:32
料亭は崩れ、厨房があった所から炎が噴き出した。
「火事だぁぁ!!」
駆けつける消防隊。辺りは一瞬にして地獄と化した。

「この惨劇、色・赤と見て間違いないな」
カロが崩れた瓦礫を見渡して言った。
「あぁ。もしかするとまだこの近辺にいるかもしれない。手分けして探してみよう」
「分かった。もし色・赤を見つけたら携帯で知らせてくれ!」

一方、壁をつたい移動していた色・赤は、トゥーテゥーの安否を確認するために料亭近くの高台に来ていた。
その時、色・赤の電話が鳴る。
「もしもし、リーです。あなたの耳に入れておきたい情報が・・・」
「・・・そうか。奴らの方から来るとはなんと愚かな。そのクリーナー2人も殺してやるさ」

32キャプテン:2013/01/07(月) 02:10:14
塔の瓦礫の山がガランッと音をたてて崩れる。大口が現れ、トゥーテゥーが体を起こす。
「ギュるるるるるる…」
周りを見渡す男の子、二人の青年がこちらを見つめていた。
「…一応、リーの言っていた通りだな。信じられないが、コイツが色・赤だ。」
ヒュペルが口にする。
「ああ、この姿を見れば一目瞭然だな。コイツは宿星を持っている。」
二人が身構える。トゥーテゥーが心する。
「(色・赤、はめたな。ここまで読んで僕を…。」

「グアアアアアアアアア!!」
トゥーテゥーが空を向いて雄叫びをあげる。怒りと狂気を交えて…。
「(牙の格子を…ナメるなよ!!」

33ノートン:2013/01/07(月) 21:30:50
「アクセル・ワールド!」
ヒュペルの体から光の円がほどばしる。トゥーテゥーも完全に円の範囲内に入っていた。
「お前が壊した建物の瓦礫、いい弾丸になるぜ」
ヒュペルは落ちている瓦礫を次々と投げる。トゥーテゥーも生えている牙を次々と飛ばし、瓦礫と牙の激しい衝突が続いた。

「駄目だ、奴の牙の数が多い!!」
衝突をすり抜け、鋭い牙が2人を襲う。スピードはそこそこだが、牙の1本1本に重さがあった。
牙が、ヒュペルの右肩をかすった。しかし、鈍器で殴られたような激しい痛みが残る。
「確実に避けるんだ、カロ!!この牙もろに食らうと危ない!!」
「分かってる!」
そう言いながら、カロは地面に手を置く。ヒビがトゥーテゥー目掛けて走る。

34キャプテン:2013/01/07(月) 22:59:06
ヒビが瓦礫の下の地面を辿る。地面が裂け、トゥーテゥーの足場を崩す。
「グルああああああああ!!」
トゥーテゥーは瓦礫を足場に利用し飛び回り、カロのヒビから逃れる。
「加速しろ瓦礫!!」
ヒュペルは瓦礫を次々と放つ。トゥーテゥーがそれに向かって大口を開く。
「ガブ!!」
一気に瓦礫を噛み砕く。ヒュペルが険しい顔をする。
「ぐぎぎぎぎぎ!!」
トゥーテゥーの大口の両の端に巨大な象牙が生える。そしてヒュペルにそれを向けて突っ込んでくる。
「…クソ…」
ヒュペルは目の前の瓦礫に向かって瓦礫を放つ。互いに瓦礫がぶつかり砕け、破片がトゥーテゥーを襲う。
「(…僕は…お前らを倒す!!)」
トゥーテゥーは象牙を抜き片手ずつに握り、盾にして飛んできた瓦礫の破片を防いだ。
「…ぐらああああ(まだ僕は終わらない…?!)」
目の前の盾にしている象牙にヒビが入り砕け散る。目の前にカロが現れ、右手で拳打を加えようとしていた。
「グロおおお(噛み砕く!!)」
カロの右手にトゥーテゥーが噛み付く。
「カロ?!」
ヒュペルが叫ぶ。…たがトゥーテゥーは口を開いていた。口内に瓦礫の破片が刺さり血だらけになっていた。
「口の中で瓦礫にヒビを入れ弾き飛ばした。…右手には瓦礫が握ってあったんだよ!!」

35ノートン:2013/01/08(火) 15:59:41
トゥーテゥーはとっさに後ろへ退いた。カロが追撃をしようとした瞬間、ヒュペルから制止の合図があった。
「待てカロ!ここは人が集まり過ぎてる!」
繁華街での激しい戦闘。野次馬の群れがカロたちを取り囲んでいた。
「これ以上ここで戦うのは危険だ!」
「でも、今あいつを仕留めないと・・・!?」
トゥーテゥーはこの隙を逃さなかった。全速力で瓦礫の山を駆け上がり、逃走した。
「しまった・・・!?クソ!!」
カロが追う。ヒュペルも続いた。

繁華街から離れた、人気のない地区。ヤン町にある、スラム街。そこにトゥーテゥーがいた。
「はぁ・・はぁ・・奴らを撒いたか!?次会ったら殺してやる・・・!!」
その時、目の前にタキシードの大柄の男が現れた。
「貴様・・・色・赤!?」

36キャプテン:2013/01/08(火) 21:04:08
色・赤は上まで閉められたネクタイを緩める。
「僕が苦労している間、あんたは高みの見物か?」
トゥーテゥーの頬が裂けはじめる。すかさず色・赤の拳が真っ赤になり手を伸ばす。
「グロアアアア…グッ?!」
トゥーテゥーが口を開こうとするが、真っ赤で巨大な手が顎を掴み開かせようとしない。
「…生物の大半は顎の力が以上に高い…唯一の武器にして最強の攻撃手段…だが人類は手に高度な動きを可能にした…どちらが勝つかは明らかだな?」
そう言いもう片方の腕でトゥーテゥーの首を閉める。頸動脈が塞がれ、次第に目の前が霞み、やがて意識を失った…

…トゥーテゥーは目覚める。横向きに寝転がされ、後ろ手にネクタイ…両足首にベルトが締られ…口の中に何か詰め物がされていた。
「お目覚めかな、いつも通り噛み砕こうとすると毒のカプセルの中身が口内から胃へ流れ込むぞ。」
目の前に色・赤がいた。身につけていた物で縛ったらしくラフな格好になっていた。どうやら何処かの倉庫の中らしい。
「しばらく食事はチューブで胃に直接送らせてもらう…あんたとは長い付き合いになるからな。」
倉庫は静まりかえっていた。今までの事がウソだったかの様に。

37ノートン:2013/01/08(火) 22:09:05
「見失った・・・!!」
カロは若干苛ついていた。
「ヒュペル、あの時止めなければ色・赤を仕留めれた!」
「でも・・・一般人を巻き込むわけにはいかないだろ!」
奴を倒す事が第一か、一般人を守ることが第一か・・・ヒュペルの中で、どちらが正しい選択だったのか、答えが出ずにいた。

「ほっほっほ、青年よ、おぬしの判断は正しかったぞい」
杖を持ったよぼよぼの老人が、突如話しかけてきた。
「何者だ?」
ヒュペルは身構えた。カロも地面に手を置いて戦闘態勢に入った。
「ほっほっほ。お前たちの戦闘をずっと見ていたぞい。お前たち、色・赤の顔も知らずにようここまで来たもんじゃ」
「顔なら知ってる。さっき戦っていたじゃないか」
「あの少年がか?ほっほっほ。ありゃ別人じゃ」
2人は動揺した。自分たちはリーという男に騙されたのか、それとも目の前の老人に騙されているのか・・・
「何者かという質問じゃったな。とりあえずわしの事は『老師』と呼びなさい。そして、お前たちを鍛えてやってもよいぞ。見たところ、今のお前たちでは確実に本物の赤には敵わん」

38キャプテン:2013/01/09(水) 00:52:25
カロが老師を注視する。さすがのヒュペルもこの人物に対しては睨みをきらした。
「…さすがに信用できんか、下準備はしてある。」
老師がノートパソコンを取り出す。ヒュペルが受け取り開く。
「久しいなヒュペル、状況は大体聞いてる。」
画面に男性が映っていた。
「フランさんどうして?!」
ヒュペルが疑問をなげかける。
「…すまない、幽からはノーコメントだ。一応幽の信用を得ている様だ…俺も知らない人物だが…。」
連絡をきる。老師が満足した様にこちらを見る。
「すまないがそういう事だ。付き合ってもらうぞ、老人の戯言に…

…俺の生存がバレたらしいな、仕方ない。」
色・赤が受話器を置く。
「しばらくはデスポワールとの交渉だな。…まあイイさ。こちらには『過去の遺物』があるんだ。いざとなればコレを使ってやる。」
色・赤がトゥーテゥーを見下す、疲れきり眠っていた。
「水墨鳥、フラン…裏切り者め!!…ブラックペインの意志は俺が引き継ぐ!!」

39ノートン:2013/01/09(水) 10:09:30
群町、病棟の一室にて・・・
「俺には理解できません、幽さん。カロとヒュペルを色・赤の所へ送るなんて・・・。幽さんはあいつの恐ろしさを知らないんですよ!」
フランは幽に訴えかけた。
「今回の任務で、2人には実力をつけてもらう必要があるわ。デスポワールのメンバーは恐らく1人1人が色・赤に匹敵する実力を持っている。逆を言えば、色・赤を攻略できればあの2人も十分な戦力になるわ」
「しかし・・・2人が色・赤に殺されてしまっては・・・」
「大丈夫よ。すでに対策は打ってあるわ。本人の望みで、今は詳しいことは言えないけどね」

ヤン町郊外のスラムにて・・・
「さて、お前たちも切羽詰まっておるようじゃし、さっそく始めるかの」
「・・・」
2人は口を詰まらせた。急な展開に付いていけていないようだった。

40キャプテン:2013/01/09(水) 17:47:35
…砂嵐の中、辺境の砂丘にて紛争は激化していた。
キャプテンエジプトが最後の力を振り絞り、身に纏う包帯を男へ向けて伸ばす。男は剣を腕にて回転させ包帯を切り裂いていく。
「…貴様からは宿星の意志を感じない…貴様は何者だ?!」
水墨鳥が横たわる。キャップはそのまま手足を斬りつけられ、倒れこむ。
黒い衣を頭から身にまとい、口元に白いマスクをつけて身元を解らなくしている…だがその剣の動きは特徴的だった。
「お前が…ホーン・キースか、強いな。」
男はエジプトから離れ水墨鳥を背に担ぐ。男が言葉を発する。マスクのせいで声がこもっていた。
「すまないが、ジイ・サンはコイツに用があるんだ。…貴様は伝言役だ、本部に伝えといてくれ。」
そう言い、男は砂嵐に消えていった…

…数日後、夜中のヤンの町の港、倉庫街にて剣を武装した複数のタキシードの団体がうろついていた。
老師が遠くの高台からそれを眺める。
「今夜、囚われた水墨鳥とトゥーテゥーが交換される。目的は不明だが、コレが水墨鳥を連れ戻す最後の機会になる。」
カロとヒュペルの二人はマジマジと話を聞く。
「情報の出処はアルゴシティの内通者だ、まだヤンの町との関係は切れないらしい。…今回、群町との貿易を条件に協力してくれた。」
二人が頷く。
「…修行の成果は実行して初めて成果と呼べる。…行ってこい!!」

41ノートン:2013/01/09(水) 20:40:45
カロ・ヒュペルは修業を思い出す。それは、1週間前の話・・・
「1週間、儂に時間をくれんかの。それでお前たちを今の倍以上の実力に鍛えてやるわい」
老師は2人を見据えていった。しかし、カロ、ヒュペルは気持ちが入っていなかった。
「あんた、何者なんだ?それさえ秘密なのか?」
老師は深く溜息をつき座り込んだ。
「この事実はあまり言いたくないのじゃが・・・」
2人は真剣な表情で聞いた。

「儂は、フレッシュ・ナタデココの弟じゃ」

「!!??」
「何だと!?」
フレッシュ・ナタデココ。数年前、老婆を撃破し、キャップたちに希望を託した英雄である。その彼に弟がいた事実は誰も知らなかった。あのキャプテンエジプトでさえも・・・
「儂の本名はヘルシー・ナタデココ。じゃが何十年も昔にフレッシュとは縁を切った。ゆえに儂は旧姓を語らず自分を”老師”と名乗っておる」
「あなたは、あの伝説の・・・」
「そして、今回、色・赤討伐の依頼をクリーナーに申し入れたのはこの儂じゃ」
「!!??」
「今回お前たちを鍛えることで、兄に少しでも償えるのなら・・・さぁ、もういいじゃろう、はじめるぞい。お前たちに必要なのは能力ではない!体術じゃ!」
老師は杖を放り投げて、憲法の構えを取った。
「さぁ、かかってこい!」

42キャプテン:2013/01/10(木) 00:53:28
…老師との修行による筋の疲労がまだ痛みとして残っていた。
「…よし…行くぞ!!…

…海風が吹き荒れ、船が港に停泊していた。タキシードの男二人は巡回しながら倉庫を外から見張っていた。
「ウチの大将も無理をする。クリーナーとデスポワールを敵にまわすなんて…?!」
男性二人をカロとヒュペルで首を締め意識を落とす。そして二人は倉庫に近づく。…

…中では亞甲とシャドウ、色・赤が人質を互いに床で横にさせていた。そして二組はお互いの人質に近づく。
「トゥーテゥー…大丈夫か…トゥーテゥー…?!」
亞甲がトゥーテゥーの脈をとる。脈がうたないのが解る。
「…まさか、貴様?!」
亞甲とシャドウが色・赤をみる。色・赤は片手に光る球を持ち、もう片方の手に身の丈程もある鎌を持っていた。
「老婆様が遺した『過去の遺物』、その最初の犠牲に小僧の宿星を使わせてもらうぞ!!」

43ノートン:2013/01/10(木) 17:45:19
トゥーテゥーの宿星、暴食星を老婆の鎌に取り込む。
「キシャァァァァアアアア!!!!」
鎌は激しく振動し、夜を纏い始めた。大きなうねり声をあげて・・・

「この鎌は夜の原点!こいつに宿星を吸収させれば、より多くの夜を発生させることが出来る!俺は、今一度夜で支配した世界を作るのだ!!」
「人質交換というのは初めから嘘の話だったのね・・・」
亞甲の表情は、怒りに満ちていた。
「いや、嘘ではない。そこの死体と、水墨鳥は交換させてもらう。ただし、貴様らを殺してな」

亞甲が両の手を合わせる。水が噴射される。しかし、色・赤は鎌で能力を無効化した。
「バカな!?」
刹那、巨体が亞甲の首を掴み、そのまま窒息死させた。
「2つ目の宿星だ・・・ククク。あとはシャドウ、お前と水墨鳥の宿星をいただくぞ」
すると、シャドウは水墨鳥の首に刀を突きつけた。
「こいつを殺す。」

瞬間、倉庫のガラスが破れ、2人の男が突っ込んできた。
「ヒュペル、水墨鳥さんを頼む!」
「ああ!カロ、色・赤討伐は任せたぞ!!」
カロ対色・赤、ヒュペル対シャドウの誇りをかけた戦いが始まった!

44キャプテン:2013/01/11(金) 21:09:43
三人は見合わせている。色・赤の持つ鎌が生き物の様に蠢いている。
「…水墨鳥の宿星を返せ…この鎌はあの女の凶星を欲しがっている。」
そう言うと、鎌をおもいっきり振り放つ!!
シャドウが可憐に避ける。カロはその鎌を脇腹で受け止め腕とで挟む。
「…ディスサンよ…ヒビ割れろ!!」
鎌にヒビが入る…だがなかなかヒビは広がらない。
「…クソ…入れ…ヒビよ…入れよ!!」
…だがヒビは続かず鎌が腕をかすめる。上体を反らしてそれを逃れる。
「…クソ…(老師さんに避け方を教えてもらえてよかった。)」
…するとシャドウが何かを投げつける…それは何と亞甲の死体だった?!
「小賢しい…?!」
色・赤が真っ赤で巨大な掌で鷲掴み、死体を握りつぶす。途端に空気中に妙な臭いがプシューッとたちこめる。
「カロ、この臭いは亞甲の水素だ?!」
ヒュペルの脳裏に亞甲がうかぶ。
シャドウが色・赤に目掛けてライターを投げ入れる。
「スイソ…バクハツ」
途轍もない轟音がなり、倉庫が弾け飛ぶ。…カロとヒュペルは
何とか水墨鳥の体をともに抱え、海に飛び込んでいた。
「…亞甲…最後にシャドウに託したのか。」
ヒュペルが呟く。カロは濡れたまま火炎に近づく。
炎の中には、二つの影が揺らめいていた。

45ノートン:2013/01/12(土) 23:09:34
「水墨鳥さんを守るぞ!」
カロとヒュペルは海から上がり、脱出を図ったが、目の前に色・赤が現れた。
さらに、後ろからはシャドウが攻めてくる。
「こいつらの狙いは水墨鳥さんだ。背中を任せたぞ、ヒュペル!」
カロが色・赤に突っ込む。色・赤の手は赤く染まり、カロの目の前に立ちはだかる。

一方、シャドウはゆっくりとこちらに歩いてくる。しかし、その殺気は凄まじく、見た者を委縮させる程だった。
「成程な、相当な化け物だ。だが、殺気で怖気づく俺じゃないぜ!」
ヒュペルは腰から鞭を取り出す。それを振り回し始めた。
「加速し続ける鞭は巨大なカッターになる。貴様はもう近づけない」
すると、シャドウが右手を上げる。ヒュペルが宙に浮き始めた。
「・・・死ね」

46キャプテン:2013/01/13(日) 02:04:09
シャドウがヒュペルに向ける掌が天へと向けられる。
「…天へ…オチロ」
ヒュペルは驚愕し、天空へと飛ばされる。
「…胸くそ悪いが…奥の手だ!!」
ヒュペルのまわりが光で覆われ、上昇が少しずつ遅くなる。…そして地に足をつける。
「(落下に対しての加速だ…身体にかかる負担が半端無いが…)」
ヒュペルは耐えながらも、鞭をシャドウに振り放つ…だが何度やっても鞭が逸れてしまう。
「…加速した鞭でさえ…浮かしてるのか…」
落下の加速に耐えられなくなり、遂に膝をつく。シャドウが突然、手を下に下ろす。
「…上か?!」
ヒュペルが天をあおぐ。爆発で散った大量の倉庫の破片が降り注ぐ。
「…クソ?!」
ヒュペルは鞭をしならせ加速させれる。破片を切り裂き、弾き飛ばす。先にはシャドウがいた。
「………」
沈黙したまま地べたに手を付ける。コンクリートの足場が砕け宙を漂う。シャドウの盾となり、飛んでくる破片が無惨にコンクリートに刺さる。
「…やっぱり強いな…あんた」
ヒュペルが口にする。周囲を光に覆いながら…。

47ノートン:2013/01/13(日) 09:24:59
「奴は物を浮かせるとき、必ず右腕を上げる。まさか、奴の右腕がコントローラーになっているのか・・・!?」
ヒュペルは鞭を再び回転させ、ゆっくりとシャドウに近づく。
シャドウは右腕を上げ、ヒュペルを持ち上げる。ヒュペルは空中に浮き始めた。
「これでもくらえ!」
ヒュペルは回転させた高速の鞭をシャドウに向かって投げた。アクセル・ワールドから飛び出した鞭は加速がストップし、減速しながらシャドウに向かっていく。
「円の外に出れば速度は落ちるが、それでも威力は絶大だ!」
シャドウは減速した鞭を避ける。その時、右腕を下げたことでヒュペルにかかったグラビティ・ベアが解除された。
ヒュペルは地面に着地したと同時に、機敏な足のステップでシャドウの背後に回った。
「老師から学んだ歩方の一つだ。走るより早く、歩くステップ!俺はもう能力だけの木偶じゃない!」
ヒュペル、シャドウの周りを光の円が覆う。
「死ぬのは貴様だ!・・・!?」
その時、ヒュペルの膝に激痛が走る。
「・・・」
シャドウは手に拳銃を持っていた。弾丸が、ヒュペルの膝を打ち抜いた。

48キャプテン:2013/01/13(日) 21:24:59
シャドウがヒュペルを見下す。ヒュペルがシャドウを見上げる。
…感情を露わにしない男にヒュペルは銃創をおさえて立ち上がる。苦悶しながらも、何かを訴える様に。
「…しょせん、やってる事はお互いに同じだ…人を殺してるにすぎない…だがその先に信じるものがあるから…」
自分に言い聞かせるようにして意識を保つ。
…光の領域内で鞭がしなり加速する。コンクリートの瓦礫を撒き散らし標的をズラす…シャドウは左手で銃を構え、右手で撒き散らされる瓦礫を空へと追いやる。
…少しずつ…少しずつ…ヒュペルの姿が露わになる。シャドウが銃口をヒュペルの頭へと定める。

49ノートン:2013/01/13(日) 23:12:40
瓦礫を空中へ浮かせる。舞う砂埃を気にも留めず、銃口をヒュペルの眉間に合わせた。
ドンッ!と音がする。銃口から出た弾丸は、火花を散らした。その火が砂埃に触れ、砂埃は小さな爆発を引き起こした。
爆発の勢いで、シャドウとヒュペルは倒れこむ。
シャドウの弾丸は、爆発の衝撃で軌道が逸れ、ヒュペルの肩を打ち抜いた。
「・・・なぜ爆発が・・・!?」
シャドウは体の自由が利かなかった。全身に砂埃を被っていたため、服は焦げ、火傷によるダメージが大きかった。
一方、ヒュペルは銃弾を受けたものの、加速していた残り少ない瓦礫がヒュペルを守る鎧となり、爆発のダメージは少なく済んだ。
「・・・砂埃の中に”黄リン”を混ぜておいた。着火すると爆発する物だ」
ヒュペルは足を引きずりながら、ゆっくりとシャドウに近づく。アクセルワールドの内側にシャドウを入れた。
「悪いな・・・。今度は俺があんたを打ち抜くぜ」

50キャプテン:2013/01/14(月) 02:15:21
…紅蓮の業火が辺りを照らす。横たわる女を背に、一人の男は真っ赤な手と蠢く鎌を目の当たりにしていた。
「…見たところ、お前も夜側だな…なぜ夜を拒む?」
巨大な手がのたうち回る鎌を抑え込み、周りの物を切り裂き、そこから夜が漂う。
「…自分を見失わないため…だな。」
地に両の手をつき、そこに亀裂が走る。枝分かれしていき、自らと背にする女をひび割れたフィールドの内に留める。
「そんな物が…まかり通ると思うなー!!」
色・赤が疾走する。鎌が掌で変化し、カロに向けて喰らいかかる。
「…ヒビが入る。」
カロが言葉にし、亀裂がカロと水墨鳥の足場を砕く。姿勢が崩れ、鎌の切っ先がカロの頭上をかすめる。
「…その程度なら死んでいいぞ。」
赤が口にし、一気に接近する。左手を鎌から離し姿勢を崩しているカロに真っ赤な手が覆ってくる。
「…割れ目はまだ…生きてるぞ!!」
「?!」
赤の右足に痛みが走る。即座にその場から離れる。
右足に深くヒビが入り、血が流れ出ていた。
「…まだだ。」
カロの掌から伸びる割れ目がヒビを成して赤に迫る。

51ノートン:2013/01/14(月) 09:09:41
「私は見ていた。テューテューとの戦闘で、お前の戦い方を・・・そして今の戦闘で確信した。お前はヒビを生み出す能力。その掌に注意すれば、ただの雑魚だ」
色・赤は持っていたナイフをカロに向かって投げる。避けるカロ。掌は、大地から離れた。
「ヒビの進行は止まったぞ!」
再び大地に手を置く。しかし、真っ赤な掌が、カロの腕を握っていた。
「足を砕いたはずだ!なぜそんなに早く動けれる・・・!?」
「ヤン大陸は”拳法の国”。少林寺等、古来より伝わる様々な拳法を身に着けられる国だ。足の怪我など、カバーできる!」
鈍い、骨を砕く音が響いた。

52キャプテン:2013/01/14(月) 20:09:42
痛みをこらえ、唇を噛み血が地面へと滴る。
「そうだな…雑魚と言えば雑魚さ…」
カロの足の上皮がわれる。
「雑種の魚に価値は無い…適応していくだけさ!!」
真っ赤な巨掌に亀裂が走る。一瞬にして血潮が上がり、腕が砕ける。
「力いれすぎだ。」
カロの全身の表皮をヒビが伝う。
「…割れろ」
赤の全身を蛇の様にヒビが進み、木の枝の様に別れていく。
「…バカ…ヤメろ…ヤメロ!!」
鎌に亀裂が入る。
「グギ〜〜〜?!」
悲鳴をあげる鎌、のたうち回り夜が噴き出し動かなくなる。
「ぐあああああああああ?!」
赤の体が砕ける…真っ赤な血が全身を染める。赤の身体が肉塊となりドボリッと落ちる。
「…もう…むちゃくちゃだ。」
カロは天を仰ぎ…血の海に膝をつく。

53ノートン:2013/01/15(火) 20:42:20
絶望するカロ。その側で、引き金を引くことの出来ないヒュペルがいた。そんなヒュペルに対して、シャドウが重い口を開く。
「・・・引き金を引け。お前が首を突っ込んだのは、そういう世界だ」
「何なんだよ・・・クソッ!!」

その時、鎌が、大きなうねり声を上げる。
「ギャアアアァァァァアアアアア!!!!!」
色・赤の肉片から、赤手爆星が出現し、鎌に吸収される。
「な・・何だ!?」
カロは動揺する。ヒュペルも同じ感情を抱いていた。
「ウゴォ・・・ガァ・・アァ・・」
鎌が、形状を変化させていく。噴き出した夜はその『生物』を取り囲み、人の形へと形成していく。
しかし、人と呼ぶには程遠い。人間の骨格が黒く染められた、黒い骸骨となり、手にはあの大きな鎌を持っていた。
「し・・・死神・・か!?」
「逃げろっ!!あいつヤバいぞ!!」
ヒュペルは叫ぶ。カロは残された腕で水墨鳥を担ぎ、ヒュペルも弾丸をくらった足を抑えながら逃走する。
「何だあいつ!?」
「分からない!ただ、危険だってことは一目でわかる!」

一方、死神はシャドウを見つめる。髑髏に瞳はないが、シャドウは強烈な視線を感じた。
「何者だ、貴様・・・」
シャドウの言葉を遮るように、シャドウの心臓に鎌が振り下ろされる。宿星ごと、シャドウは鎌に取り込まれ、後にはシャドウの骨だけが残った。

54キャプテン:2013/01/16(水) 15:23:22
…その後、ヤンの街は郡町との貿易により直ぐに活気を取り戻していった。
「…まだ…あの坊主のヒビの跡が残っとるの」
老師が、ボーッと空を仰ぐカロを見ながらヒュペルに話しかける。
「正直、怖いです。あの戦い以来、…時々、ああして冷めた…少し殺気を含んだイメージに変わる…」
ヒュペルが心配そうに顔を曇らせる…

…キャプテンエジプトは砂漠はずれのオアシスの都市で荷物を整えていた。
「…ホーンヒース…あの剣、何かおかしかった。…もしかして?」
重い扉を開き外に出る。強い日を避け、白いフードを被る。

55ノートン:2013/01/16(水) 19:12:08
「いったい何者なんですか、あの生物は?」
「さぁの。儂にも見当がつかんわい」
ヒュペルの問いに、老師も戸惑いを隠せなかった。
「老婆も、色・赤も、鎌を化け物に変えるつもりは無かったはずよ。大量に宿星を取り込んだことによる異常発生かもしれないわね」
水墨鳥も奴の正体を知らずにいた。唯一分かったのは、過去の見聞録に『デヌス』と呼ばれる悪霊が存在しており、その生物に酷似しているという事だった。
「黒い、骸骨だった・・・。俺は目の前で見たんだ。あれには近づいちゃダメだ・・・」
カロは怯えていた。デヌスに見入られたとき、死をも覚悟した。そんな存在だった。

その時、幽から連絡が入る。
「ヒュペル、幽よ。みんな揃ってるかしら?」
「揃ってますよ、隊長。突撃の時ですね」
「キャップも今群町に帰還したわ。デスポワールに行き、スーを奪い返す。大至急こちらに合流して頂戴」
しかし、老師が口をはさむ。
「ちょっと待ちなされ。まがいなりにもこの2人は儂の弟子じゃ。この怪我で行かせる訳にはいかんわい」
ヒュペルは肩、足を拳銃で撃たれ、爆発に巻き込まれた怪我が尾を引いていた。
「ヒュペルは足をやられてるから無理だ・・・でも俺なら行ける」
カロは強気だった。自ら、戦いに身を投じようとしていた。

56キャプテン:2013/01/16(水) 22:13:21
「自分の右腕はくっつきかけてる。あっちに着く間に完治するだろ。」
カロが下を向きながら言う。
「…解ったわい。数は多い方がイイじゃろうて…カロは行かせる。合流の手筈を頼むわい。」
老師に対して幽が了解をし、連絡がきられる。
「…ムリは…しないでくれ。」
ヒュペルの言葉に対し、カロは苦笑いながらもそれに応えた…

…砂漠の夜、星が辺り一面を照らし出す。
白い衣の女は息を切らし、横に倒れていた。
「…貴様、何者だ?!」
女がいう。
「自らの作品をご存知無いのですか…神?」
神は胸に手を当て、白く清らかな宿星を出そうとする。…瞬間、男が拳を神の頭に突き立てる。頭が卵の殻の様に砕ける。
「宿星は頂きますよ。貴方の記憶が必要でね。ダイスに頼んで読み取ってもらおう。」
宿星を手のヒラに置く。
金色夜叉…
金色の髪が風でなびき、空と見間違うかの様な絵の施された着物が波打つ。…ソレは夜に君臨する王に相応しいものだった。

57ノートン:2013/01/17(木) 13:01:54
「老師、修業ありがとうございました。ヒュペルの事、頼みます」
スーは深々とお辞儀をした。
「おぬしも気を付けるんじゃよ。行って来い」
「はい!」

カロと水墨鳥は船に乗り込んだ。群町へと帰り、スーを救うために・・・
「老師、いつか教えてください。あなたがなぜ俺たち2人に協力してくれるのか。フレッシュさんとの間に何があったのか・・・」
「・・・分かっておるよ。だが、お前が怪我人だからと言って甘やかすつもりは無い。儂の全てを叩きこんでやるわい」
「怖いですね」
ヒュペルは苦笑いした。カロの無事と、クリーナー全員の無事を祈って、老師とヒュペルは船を見送った。

60キャプテン:2013/01/20(日) 00:01:26
…船に揺られ、塩っぱい大気を味わう。
今回は客船に乗り込む事ができた為、客室も広く楽な航海になるだろう。
「…自分は過去の事についてあまり知りません。スーさんの過去に何があったんですか?」
カロが甲板の椅子にて海を眺めるフランに話しかける。
「…ゴッドパーキンソン、宿星を創造し神として崇めたて祀られていた存在。…奴は…まだスーの中で生きながらえている。」
フランが言う。
「…奴等が何をしたいのかは解らん…だが、宿星持ちをアレだけ揃えれたのも何か関係が…」
客室の一室にてキャップと水墨鳥が地図を広げる。
「…アレだけの戦いをしたのに、砂漠から奴等は動こうとしないわ。」
水墨鳥が地図に指差して言う。
「やっぱり、目的にはこの砂漠一帯の何かが必要なのかな?」
キャップが頭をさすりながら言う…

…記憶、だいたい読み取れたわよ。」
日が落ち始め、屋敷の影が長くなる。
黒く短髪の若い女性が、眼鏡をクイッとさせてジイ・サンに話しかける。
「…そうかい、でダイスや…王
は今どこに?」
ジイ・サンが暗くなる外を窓から眺めながらダイスに問いかける。
「…“アレ”がかなり先になると言った途端、どっかへ行っちゃったよ。」
金色の髪をなびかせる男
夜が更に濃くなる。屋根に座り星が現れるのを眺める。

61ノートン:2013/01/20(日) 00:41:58
砂漠の廃墟、そこに今、デスポワールの総戦力が集まろうとしていた。
「ウィーハァー!!お呼びかボス!」
「此処にはおらんぞ、シャークよ。相変わらずお前は声がでかいのぅ」
ジイ・サンは耳を抑える。筋肉質でかなりの大柄。その男の名はシャーク。戦闘を好む性格である。
「何人かおらんようだが、到着はまだかの?」
「・・・シャドウとトゥーテゥー、それにマリーも死んだわ。殺されたといった方が正しいかしら」
ダイスの顔に影がかかる。ダイスの親友マリーも先日殺されたという連絡が入った。
「マリーは鎌を持った骸骨に殺されたらしいわ。シャドウも同じ化物に殺されたという情報よ」
「マリーの人に化ける能力は便利だった。惜しい人物を失ったのう」
ジィ・サンは言葉とは裏腹に、ニヤリとした表情を見せた。
「その死神の話は何度か聞いた。解剖して調べてみたいのう。ヒッヒッヒ・・・」
「ウィッハーー!!!ダメだ!!!俺がぶっ殺してやるぜ!!!」

その時、奥の部屋の扉が開いた。ホーンが部屋に入る。
「全員召集とは急な話だ。何事だ?」
ダイスが顔を上げる。
「みんなに紹介するわ。新しい仲間、スー・グラウンドよ」

62キャプテン:2013/01/20(日) 10:38:19
廃墟の時間が一瞬、止まる。ダイスが眼鏡をクイッとさせて言う。
「彼はもう同志よ。キャプテン・エジプトと水墨鳥を倒した。王のお墨付きよ!」
だが、周りは反応の対処に困っていた。
…突如、天井より黒き浴衣、コガネの髪をなびかせ五人の円の中央へと舞降りる。
「無有(ムウ)…王よ…」
ジイ・サンが感情に満ちた言葉で発する。
「ジィ=サン、ダイス=アバウト、シャーク、ホーン=キース、スー=グラウンド…皆ご苦労だった。」
ホーンに目をやり、袖より腕を通す。
「すまないな、ホーン、貴殿の剣技をスーに伝えてもらった事、恩に切ている。」
全員に顔を向ける。皆が一瞬にして胸のわだかまりが溶けていく。
「…一ヶ月後、ここで全てが始まり…集結する…犠牲が大き過ぎたが…これでデスポワールが世界を平定する。」

闇夜に凍てつく廃墟にて、小さな夜が動き始める。

63ノートン:2013/01/20(日) 21:16:07
キャップ、カロ、フラン、水墨鳥の4人は砂漠の廃屋の目の前に来ていた。
突入の直前、キャップが激励の言葉を発する。
「相手が何人いるかは分からない。だから深追いはするな。目的は、スーの救出!分かったか!」
メンバーの誰一人として欠けてはならない。キャップの切なる願いだった。
「はい!」
「了解です、キャップ」
「分かったわ!」

一方、ジイ・サンは一言、王に報告する。
「顔合わせの途中で申し訳ない、王よ。ネズミが4匹、この廃屋の内部に侵入しましたぞ」
「何者だ?」
「クリーナーのやつらですな。目的は恐らく・・・」
王がスーを見る。
「・・・群町襲撃の復讐、という訳では無さそうだな。この男の奪還か」
「ウィーーーー!!!仲間を取り返しに来たってことか!!上等じゃねーか!!」
「せっかくここまでコントロールしたのよ。スーは渡さないわ」
刀を握りしめ、ホーンは無言で部屋の出口へ向かう。
「さぁ、行って来い、デスポワールのメンバーよ!奴らを叩きつぶしてこい!」

王の一言で、全員が動き出す。スーを巡る、クリーナーとデスポワールの戦いが始まる!

64キャプテン:2013/01/20(日) 23:22:36
「(…何処もかしくも、穴だらけになっている。窓も一応あるな。)」
キャップの指示で、主だった壁の穴と窓の位置にカロ、フラン、キャップ本人が留まり、水墨鳥が正面から入り込む。
両開きの扉が開かれ、水墨鳥が中を伺う。…暗がりの中央にスーの倒れている姿が伺える。
「(…罠か…さっきまで気配がしていた…何処だ?)」
ゆっくりと周りを見やる。倒れこむスーに近づく。
「グアアアアアアアア!!」
外からカロの叫び声がする。その声に一瞬、意識をとられる。
「…甘いな」
黒い剣が水墨鳥の腹を切り裂く。…攻撃してきたのは紛れもなくスーだった。
「…やっぱり、あの時のは…」
水墨鳥の脳裏に砂漠でのホーン・キースだと思っていた相手の顔が思い浮かぶ。
「…あの『剣舞』は好かないな。…お前達の隙をつくるためとはいえ」
スーが黒い剣を身構える。軽く浮いた様に…。

外では、カロがホーン・キースと相対していた。右腕を浅いながらも、斬りつけられていた。
「…疑問は最もだ…水墨鳥は扉を開いた、暗転の瞬間を見逃したのだ、表から堂々と出れたよ。すれ違いにな…お前は、壁ばかりに気を取られたから楽だったよ。」
カロが地面に手を当てる。
「砂漠の砂は流動体だ。…ヒビは入らんよ。」
カロと建物との間にホーンが立ちふさがる。

65ノートン:2013/01/21(月) 10:02:32
「うぅ・・・!?」
倒れこむ水墨鳥。その音を聞きつけ、キャップが扉の前に走る。
「・・・スー・・・なのか?」
刀を持ったスーが、倒れた水墨鳥の目の前に立っている。刀からは、血がしたたり落ちていた。
「お前、まさか水墨鳥を・・・」
混乱するキャップ。その時、目の前にシャークが現れる。
「ウィーーハァーーー!!!ちょっと俺と遊ばねーかぁー!!!」
キャップにタックルをかまし、外へと吹き飛ばされる。倒れこむキャップ。お構いなしに、シャークはキャップに殴り掛かる。
「邪魔だ・・・!」
「何!?聞こえねーぜぇ!!」
キャップの体が鋼鉄のアーマーで覆われる。まるでマーベル映画『アイアンマン』のような、機械人間に変身しシャークに向かう。
「邪魔だ!!!どけぇぇぇぇぇ!!!!!」

一方、フランの目の前に、ジイ・サンが立っていた。
「ヒッヒッヒ・・覚えておるぞ。貴様の顔!」
「俺もだ。あの時の屈辱、晴らしてやる!」

66キャプテン:2013/01/21(月) 15:25:39
向かい合う老人と鍵の番人、更に夜が濃くなる。
「お互い、夜側じゃな。存分に力を発揮できるわい!!」
ジィが喜びに満ちて言う。
フランが南京錠を取り出し、ジィに向かって投げつける。ジィはソレを後方にさがりかわす。
「(…ク…やるわいて。)」
ジィは何時の間にか廃墟の壁に追いやられていた。
「…ウィルスの勉強、めんどかったがしてきたぜ。」
風が吹き荒れ、壁際のジイに向かっていた。
「(成る程、空気感染は風の影響を受けやすい。…コレではワシのスロウウィルスは届かん!!)」
ジィはポケットより何かを取り出して口に咥えて吹く…すると、廃墟の穴から犬が十匹現れた。
「…ウィルスは、鳥類から哺乳類へと段々と移りやすい対象を増やすよう変異していく…勉強したかのう。」
犬達がフランの方を睨む、凶暴性を剥き出しにして。

67ノートン:2013/01/21(月) 18:57:55
ウィルスの感染により強化された犬。顔が真っ二つに裂け、中から新しい首が出てくる生物、手足がおかしな方向に曲がり、新たな足が生えている生物。そのグロテスクな外見からは、もはや犬と呼べる生物ではなかった。
「そういう趣味かよ、あんた・・・」
南京錠を胸から大量に出す。犬を次々とロックしていく。
「アウト!」
犬が爆発する。飛び散った肉片を振り払い、ジィ・サンに向かう。その時、突如フランの動きが止まる。
「・・・体が・・動かない・・!?」
「ひっひっひ。犬の肉片、血、爆風!そのすべてにワシの『スロウ・ウィルス』は潜んでいるのじゃよ」
ジイ・サンは不敵な笑みを浮かべながら、ゆっくりとフランに近づいていく・・・

68キャプテン:2013/01/21(月) 21:58:40
フランの身体が焼けたように熱くなり、だるくなる。
「そうだな…ところで俺も忍ばせてたんだが…そろそろ五分くらい…だな」
ジィの背後で轟音がうなる。廃墟の外壁が飛び散り、ジィとフランを襲う。
砂埃が辺り一面を覆う…

…あっちの壁は、フランの方か」
水墨鳥が崩れた壁の方を見て言う。スーが瓦礫に黒い剣をさしこむ…瓦礫は黒く染まっていき、剣へと吸い寄せられていく。
「フル・ネス(全ての岬)…岬の向う側の夜の世界、その力だけは敵に回したくなかったわ。」
そう言う水墨鳥は地面を蹴り上げる。足は地面と周りの瓦礫とを溶け込ませ、波を創り出す。
「…面白い力だな。“初めて”見たよ。」
スーが口にすると、黒い剣を波に突き立てる。…地面の波が黒く染まっていく。
「……ク?!」
水墨鳥は即座に脚を波から切り離す。波が黒い剣に吸い寄せられ、消失する。
「…どうする…オバさん?」

69ノートン:2013/01/21(月) 23:59:39
もはや、別人。自分の事は、何も覚えていないのか。
混乱する頭を切り替え、目の前にいる”敵”を認識する。
「あなたはもう、スーではない。このままでは、あなたに殺される」
水墨鳥は傷口を抑えながら、自分の体を床へ浸透させる。
「あなたを殺すわ、スー」
全身が床に入り込む。水墨鳥の姿を見失い、焦るスー。
「あの女、どこに消えた!?あいつの能力か!?」
部屋の中央にいたスーは、死角を無くすため壁際へと移動する。背後の壁に、水墨鳥が潜んでいると知らずに・・・
短剣を握りしめ、スーの背後から出現する。首に短剣を突き付け、スーを拘束する。
「貴様、浸透が能力か!背後を取られたな・・・。どうした、殺せよ」

水墨鳥の瞳から、涙が零れ落ちる。言葉では虚勢をはっても、行動に移せない。スーを殺せなかった。
「お願い・・・目を覚まして、スー・・・」
「悪いな。とっくに覚めてるさ」

スーはこの隙を逃さなかった。黒の剣は、無情にも水墨鳥を大きく切り裂いた。

70キャプテン:2013/01/22(火) 00:56:07
水墨鳥は腹部をザックリと斬りつけられる。しかし波紋が生じるだけで、水を斬った様に元に戻る。
「…く…グハ?!」
しかし水墨鳥は突如、吐血し倒れこむ。
「…無駄だったね、オバさん。液体だって分子の塊、斬れれば夜世界へ送れる。」
水墨鳥が腹を抱えてもがき苦しむ。
「(…身体の…中身を…くっ!!)みんな…ゴメン」
そう言うと水墨鳥は身体を地面へと浸透させていき、姿を消した。

「…逃げたか…はっ?!」
スーの腕が黒く透ける…やがて元に戻った。
「これ以上は…俺も夜に飲まれるな…」
そう言うとスーは自分に剣を突き立てる。
スーの身体が黒く染まり、剣に吸い込まれる。剣も形を失い、やがて消えていった。

71ノートン:2013/01/22(火) 09:38:05
「ウィーーッハッ!!!」
アーマーをお構いなしに、キャップの顔面を殴りつける。しかし、アーマーの防御力は大きく、傷一つ付けられなかった。
「固いな!面白れぇ!!」
キャップは肩から多連装式の銃を出し、シャーク目掛けて放つ。
「死ね!!」
「うをぅ!?」
シャークの全身が被弾する。シャークは吹っ飛ぶが、倒れずにこらえる。
「痛ぇじゃねーか・・・なぁ!!」
シャークの服の内側に、防弾チョッキが隠れていた。顔は手で覆っており、無傷だった。
「顔を守らなけゃ危なかったぜぇ!!!」
キャップはゆっくりと起き上がり、シャークを見据える。
「頑丈だな。だがすぐ終わりにしてやる」
「嫌だね!!もっと楽しもうぜ!!!」

シャークの手から凄まじい音がする。血管が浮き出て、不気味なオーラを放ち始める。
「もう一度パンチが当たったら、あんた死ぬぜ!!」

72キャプテン:2013/01/22(火) 13:03:00
シャークが片腕を大振りする。筋が軋む音がする。
「グルアアアアアアア!!」
わけの解らない叫びとともに、拳が鋼鉄のスーツにめり込む。ヒビが入り、砕ける。
「へへっどうするよ兄ちゃん、俺様のウェイトハンドは貴様を粉々にするぜーーー!!」
倒れこむキャップ、意識を何とか保とうとする。
「はあ…はあ…くそ…」
頭を振り、目の前の敵を見据える。両の拳が地面にドシリッとつく…血管が浮き出て、途轍もないオーラを放つ。
「さあ、俺の拳は重いぜー!!」
よろけるキャップの身体に更に追い討ちが加わる。ドシリッドシリッと何度も拳を食らう。
「しねーーーー!!」
シャークの叫びとともに、右腕の大振りがキャップの顔面を直撃する。意識が消し飛び、キャップは壁にぶつかり、地面に転げる。…スーツのヒビの隙間から血が流れ出ていた。

73ノートン:2013/01/22(火) 18:35:36
「ウィーーーーハッハッハ!!俺の拳は重いだろう!!今の拳は50トン。トラック5台が一気に顔面にぶち当たったんだからなぁ!!」
パワードスーツはもはやボロボロ。砕けた破片が体に刺さり、大惨事を引き起こしていた。
「こいつはもう駄目だなぁ!せめて俺の拳で楽になれぇ!!」
シャークの血管が激しく脈打つ。激しい音と共に、さらなる重さを拳に蓄える。

ドクン・・・ドクン・・・

血管が脈打つ。体が緑に変色していき、スーツを破り体が巨大化していく。
『ランダムタイム』。血清を打つことなく変身が可能な、キャップのランダム血清の最終形態である。
まるでマーベル映画『ハルク』のように、全身を緑で覆う怪物となり、シャークの目の前に立ちふさがる。
「ヴヴオォォォォァァァァアアアアア!!!!」
「変身しやがったーーーっっ!!??」
キャップが拳をシャーク目掛けて振り切る。シャークも負けじとパンチを繰り出す。
拳と拳が交わる。辺りには爆音が鳴り響いた。

74キャプテン:2013/01/22(火) 20:11:30
打撃の押収にとまらずさがるシャーク。そこに更に体当たりが飛びこむ。
緑の巨体がシャークの剛腕にのしかかる。
「…へへ…俺にうってつけの相手だぜ!!」
シャークが言うと、横にかわして巨体をはらう。巨体が壁に激突し、壁の瓦礫にキャップが埋もれる。
シャークは腕を体の前に構えガードのポージングをとる。
「さあ、行くぜ!!」
緑の巨体が瓦礫から飛び出し、頭上からキャップが拳を打ち付ける。
「グオオオオオオ!!」
咆哮が廃墟にコダマし、ドシんっという音がなる。…キャップの一撃をさけ、真横から拳を浴びせる。
「グロおおおおお!!」
腕でなぎ払うキャップ、しかしワキに入られシャークに懐に飛び込まれる。
「…こっちも、メインディッシュだ!!」

75ノートン:2013/01/22(火) 21:59:26
キャップの脇腹に、強烈なパンチを入れる。同時に、メキメキと音がする。肋骨が数本、折れた音だ。
「グ・・・グゥゥゥァァ・・・」
膝を付くキャップ。その横で、シャークの拳が、激しく振動を始める。
「300トン・・400トン・・ハッハァ!!こいつを食らったら、貴様の肉片が飛び散るぜ!」
シャークが腕を振りかざす。肋骨を押さえ、苦しむキャップ。そんなキャップを見て、シャークは”倒せる”と油断した。その隙を、キャップは逃さなかった。
「ブゥルルゥゥァァァアアアア!!!」
痛みを堪え、キャップの素早い右ストレートがシャークの顔面を捕える。
「痛ってええぇぇぇえええ!!??」
今度はシャークがもがく。キャップは立ち上がり、苦しむシャークも見つめてニヤリとした。
「アアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

殴る。殴る。殴る。シャークの顔、腹、足、全身をまんべんなく殴り続ける。
シャークの周辺の床はひび割れ、シャークは地面へとめり込む。最後の一撃は、渾身の力で、シャークの心臓を打ち抜いた。
シャークの肉片が散らばる。そんな状況を見ながら、キャップは大声で勝利の咆哮を上げた。

76キャプテン:2013/01/22(火) 23:21:44
「オレの仲間に、酷い事をしなさる。」
背後で声がする。緑の巨体が振り替える。
二十歳ソコソコの金髪、星空の描かれた着物の男性
十五歳くらいのショートカットのヘアースタイルに膝までのスカート、眼鏡をかけた女性
男性は丁寧な、女性は冷やかなイメージを受ける。
「オレは無有(ムウ)と言います。…一応、『夜の王』を名乗らせてもらっている。」
男が丁寧に説明する。
「ダイス=アバウトです。」
女がメガネをクイッとさせて言う。
「…グルううううう…」
緑の巨人が強烈な視線を向けて身構える…

…回転する剣を青年は見極め、何とかかわしていた。

77ノートン:2013/01/23(水) 20:40:45
砂の上では、ヒビを発生させることが出来ない。この不利な状況から脱出するため、カロは屋内へと移動する。
「どうした、逃げるのか?」
ホーンが行く手を阻む。剣を起用に回転させながら、カロの表情を伺う。
「逃げるつもりは無い!」
「そうか、仲間が気になるのか。安心しろ、お前の仲間はもう殺されてるはずだ」
「黙れ!みんなそう簡単にやられるものか!」
カロは体にヒビを生やして近づく。しかし、ホーンは剣を回転させカロと一定の距離を保つ。
「死んだトゥーテゥーや亜甲からお前の情報は聞いている。触れたものにヒビを生やせるらしいな」
カロは焦る。手の内がばれている能力者ほど、脆いものはない。

「お前もすぐ送ってやるよ。仲間の待つあの世へ・・・」

78キャプテン:2013/01/23(水) 23:10:36
剣がブンッブンッと回転を加速させ空をさく。一瞬にしてカロの目の前に立ちはだかる。
「…悲痛な姿だな…」
ホーンがそう言うと、腕を伸ばす。腕のまわりを回転し、カロに斬りかかる。
「(斬り込んだ瞬間、ディスサンで剣に亀裂を…?!)」
…一瞬の出来事だった。
カロはその身に深い切傷を幾重にも施されていた…ホーン=キースの手によって。

剣は腕を旋回しながら、プロペラの様にカロに向かっていく。
剣の放物線は特殊な起動を描いていた。
…まるで、腕から枝が何本も生えたかの様な、不思議な光景だった。
唯一の目撃者であるカロは、その美しい剣の軌道を見る事を許されずに…その身に枝が何本も突き刺さったように、身を切られ、血しぶきが花のように咲き乱れる。
…一つとしてヒビには触れる事なく。
「乱れ咲き鹿角流(ミダレザキカカクリュウ)…アントラ(鹿角)…」
ホーンがそう呟くと、カロが倒れこむ。…真っ赤な血が砂を赤く染めていった。

79ノートン:2013/01/24(木) 09:41:48
砂が、血で染まる。カロは倒れたまま動かない。
「死んだか。呆気なかったな」
ホーンが息を確認する為に近づく。一歩、一歩、カロに向かっていく。カロの目の前に立つ。その時!ホーンの靴からヒビが生える。
「何!?」
ホーンは下がる。と同時にカロが立ち上がる。
「俺の血を踏んだだろ…血で砂が固まればヒビも生える」
血まみれの体でふらつきながらも、血の染み込んだ砂に手を置く。
「この血のテリトリーに入った瞬間、貴様は死ぬ!」

80キャプテン:2013/01/24(木) 12:50:44
…『血染めの砂にて地塊り、龍たる亀裂は底を泳ぐ。』
ヒビが大地を疾走する…蛇のように伸び、そして頭を幾重にも枝分かれさせる。
「ディスサン…黒き底を覗かせろ!!」
ヒビがホーンを襲う…
「…小細工程度で、アントラは…止まらん…」
ホーンが声にすると、上着のポケットに手を入れる。…そのままカロに走り寄る。
「…阻め…」
ホーンの身体のまわりを剣が不思議な軌道を描き、加速し旋回する。…ヒビが入る前に、ヒビに切れ込みを入れていく。
「…ウソ…過ぎる?!」
カロが驚愕する。
「…筋繊維を運動、感覚ともに上位に高めたからこそできる技…スーに教えたのは基本」
恐怖するカロ、眼前まで剣が迫る…

…「“足手まといには…なりたくないからな”…ヒュペル」…
口にした事にカロ本人も驚く。大地の亀裂がさけ、大口を開く。

「…スナップ(噛みつけ)」

81ノートン:2013/01/25(金) 18:39:26
「何だと!?」
大地は割れ、ホーンを襲う。逃げるホーン。しかし、亀裂はまるでホーンを飲み込むかの如く、果ての無い暗黒の世界へと誘う。
「くっ・・クソ・・」
大地が、ホーンを飲み込む。激しい音と共に、割れ目は再び一つの大地となり。何事もなかったかのように元の姿を再現していた。
「これが・・・俺の力!?」
カロは興奮と共に、激しい疲労に襲われていた。
「もう・・歩く力もねぇ。この技は1度きりか・・」

カロは、その場に倒れこむ。

82キャプテン:2013/01/25(金) 20:04:23
…穴だらけになった廃墟、その暗がりの中に炎が辺りを黄色く灯す。
「…ダイス、貴殿はオレに用事があるようだ。」
手に黄色い炎を灯すダイスが、無有の言葉を聞き、仕方なさそうに腕を振り炎を消して後ずさる。
「さて、キャプテン=エジプト殿、理解しているとお思いかもしれぬが、貴殿らの仲間であったスー殿は今、我々の同志である…貴殿らの目的は失せたと思うのだが?」
そう言うと、無有がキャップに近づく…緑の巨人と化しているキャップが言葉を返す。
「…貴様らは…何かを…隠してる…その時点で…敵。」
太いガラガラの声でそう言うと、キャップは大きく吼え、無有に鉄拳を突き立てようとする。
「貴殿がその気なら、オレもその気にならざるを得ない。」
…キャップがピタリッと動きを止める。いや、身体が動かない…表情が濁る。
「…オレが何故、神を殺せたのか、貴殿には多少、理解が必要かな。」

83ノートン:2013/01/25(金) 21:07:47
キャップは足元を見る。なんと、キャップの足と床が同化していた。
「ヴァアアアァァァアアア!!!!」
渾身の力で地面から足を離そうとする。しかし、離すどころか、足に激痛が走った。
「止めた方がいい。床と貴殿の足はもはや一心同体。自分の足を引き千切る事になる」
無有はキャップに近づき、その巨体の胸に手を置く。
「今から貴殿と同化して、心臓を握りつぶす。俺の仲間を殺した罪、償ってもらいましょうか」

一方、ジィ・サンとフランは瓦礫の下敷きになっていた。
「クソ・・・こんな瓦礫、ロックアウトが使えれば・・・」
フランの体は『スロウウィルス』によって浸食されており、指一本動かせる状態ではなかった。
「た・・・助けい!儂の力じゃ瓦礫は動かん!!」
ジイ・サンが叫ぶ。老人の力では、瓦礫をどかすことは不可能だった。
その時、ジイ・サンの目の前にスーが現れた。

84キャプテン:2013/01/26(土) 02:03:17
「…おお、スー、頼む助けてくれ…」
スーが黒い剣をジィの背に乗っている瓦礫に突き立てる。瓦礫が黒く染まり、やがて剣に吸い寄せられた。
「…少し痛むぞ。」
スーが特殊な注射器をジィにさしこむ。血が吸い出され、血清が生成されていく。
「…なぜ…じゃ。」
スーがそのまま血清をフランに注入する。
「夜の王は、宿星の消滅を望んでない。…出来るなら賛同してほしいらしいぞ。」
スーがジィを担いで言う。
「…ふざけてろよ、裏切者が」
フランが口にする。
「…それは主自身への皮肉かの?」
ジィが呟き、スーが自分に剣を突き立てる。二人は黒く染まり、姿を消した…

…無有の手にヒビが入る。やがて全身にヒビがつたわっていく。
「…カロ殿か…久々に驚かせて頂いた。」
壁に手を当て、ヒビを伸ばすカロの姿が背後にあった。
無有は振り返り、カロの方を向く。無有のヒビ割れた顔がくっついていく。

85ノートン:2013/01/26(土) 21:34:22
無有はカロに向かい手を伸ばす。大地が、カロと同化し、みるみる無有の元へ寄せられた。
「ホーンを殺したか。貴殿にも”罪”を償ってもらう必要がありそうだな」
疲労、ダメージ、無有の能力・・・様々な理由で、2人は指一本動かすことが出来ない状態だった。この強大な敵を前に、もはや死を覚悟する他なかった。

「キャプテンエジプト殿、カロ殿。御二方にチャンスを差し上げる」
無有の一言に、衝撃を受ける。2人は硬直したまま話を聞かざるをえなかった。
「俺の仲間を殺した罪は重い。だが、別の道で償いをして頂こう。俺の仲間になれ。俺の目的は、この世の宿星を手中に収める事。そして、夜の王として君臨することだ」
「ふざけるな・・・!誰がお前なんかの仲間に・・・!!」
カロは必死で口を開く。キャップの瞳も、同じ思いを抱いていた。
「今すぐに答えは求めていない。貴殿方に、2週間の考える時間を差し上げる。その結果、断るのならば、我々は貴殿方を殺す」

86キャプテン:2013/01/26(土) 23:10:26
廃墟の暗がりからスーが、水墨鳥を担いで現れる。
「…奥で倒れていた。内臓の損傷はジィが応急処置をしてくれたよ。」
水墨鳥を身動きのとれない二人の前に横にして寝かせる。
「では貴殿方、良い返事を待っています。」
三人は砂漠の彼方に小さくなっていく。そして見えなくなった…

…やっとの思いで身体を動かすカロとキャップ、直ぐ様倒れこみ四つん這いになる。
「(…夜の王…あの力、一体なんなんだ?それにスーさんのあの態度、俺たちを見ても、まるで別人のように振舞っていた。…奴らの中に人を操るような能力者がまだいるのか?)」
疲れきった身体に更に思考が巡り、気絶するカロ。

87ノートン:2013/01/27(日) 10:56:48
群町のクリーナー本部にて、カロが目覚める。
横のベッドには、ランダム血清の副作用で1ケ月は目覚める事のないキャップがいた。その横には・・・
「重傷ね・・・これは、スーの能力だわ」
幽が水墨鳥を見て口にする。心では理解できなくても、頭では理解していた。スーは、敵に回ったのだと。
「隊長・・・ここは?」
「クリーナー本部よ。フランがあなた達3人を砂漠から救い出してくれたのよ」
フランが後から現れる。スロウウィルスは血清により除去されていた。
「目覚めたか、カロ。お前も生きていたという事は、2週間の猶予を・・・?」
「はい。無有という男に、命を救う代わりに仲間になれと・・・。隊長、いったい奴は何者なんですか?」

88キャプテン:2013/01/27(日) 15:13:20
「…それに関しては、私が説明します。」
冷やかな声が扉の外から聞こえてくる。カロが壁に手をかける。
「やめておきなさい、ジィが待機している。私に手を出せば群町全体にウィルスが流行する。」
扉から少女が入ってくる。
「(夜の王と一緒にいた…ダイス)」
カロが手を離す。幽も身構える。
「夜の王は、宿星の星暦の始まりの時、106の凶星と白世界の神が自らの宿星を生み出した時、その反動により、神とは逆のコンセプトの凶星として産み出された。」
言葉を区切り、少女は壁にもたれ掛かる。
「そして、神と同等ではあったが“ある理由”により、しばらくの間肉体を得られなかった。」
眼鏡をクィッとさせる。
「その後肉体を手に入れ、宿星の所持者達の争いを見てきた王は、デスポワールを結成し、全ての宿星を手にする事で、戦いに終止符をうとうとしている。


89ノートン:2013/01/28(月) 08:36:03
「その為に、お前たちの目的に賛同しない罪もない能力者を殺してきたのか!」
カロは睨みを利かせた。
「必要な犠牲よ。無有様は私達“異端者”を導いて下さる」
「そんなことの為にスーさんを・・・。貴様ら、スーさんに何をした!」
部屋がシンとする。重い空気の中、ダイスが口を開く。
「スー・グラウンドの記憶を消したわ」

90キャプテン:2013/01/28(月) 08:56:45
「彼の宿星は神にも対抗できた代物、考える余地は無かったの。」
幽がダイスを怒りの目で見据える。
「貴方達には酷な話ね。伝える事は伝えたわ。」
ダイスが扉から立ち去ろうとする。
「待ちやがれ!」
カロが地べたに倒れこみ、手をつく。その瞬間、黄色い炎がダイスの胸より手に燃え移る。
「…内容を思い出せる様に、弱火にしといてあげる。」
炎が放たれ、幽とカロに燃え移る。不思議と熱くはないが、頭の中が焼ける様な感覚を覚える…

…幽とカロはハッとした。
「何で自分は…床に寝そべってるんですか?」
その後、十五分くらいしてやっと、二人は何が起きたのかを思い出した。

91ノートン:2013/01/28(月) 20:09:56
―それは、3週間前に遡る。

ヤン町の船着き場にて、カロはスーの救出のため、ヒュペルは治療のため、2人は別々の道を歩んだ。
それと同時刻、ヤン町から数キロ離れたある森では・・・

「貴様・・・騙していたのか!俺の父ではなかったな・・・!!」
男は息絶えた。男の”父”を演じていた人物の体が、男性の体格からみるみる女性の体格へと変貌していく。
「悪いわね。私の名はマリー。あなたの父じゃないわ」
マリーは男の死体を見ながら、デスポワールに連絡する。
「ダイス、私よ。今ターゲットを始末したわ。今からもど・・・」

マリーの目の前に、不気味な化物が立っていた。鎌を持った骸骨。その名も、デヌス。
「きゃぁぁぁぁ!!!???」
マリーは叫ぶ。が、時すでに遅し。デヌスは鎌を振り上げる。
鎌は、黒いオーラを放ちながら、逃げるマリーを真っ二つに裂く。噴き出す血しぶきの中から、『偽人星』が出現した。鎌が、宿星を吸収する。そして、デヌスは森の中へと消えていった。
「マリー!?どうしたの!!??」
後には、ダイスの声が鳴り響く携帯を残して・・・

そして現在。傷が癒えたヒュペルは、老師のもとで修業を積んでいた。

92キャプテン:2013/01/28(月) 21:16:27
「…あのドクロの輩、目立つ格好をしている割に、情報がまるで集まらぬ。」
老師が拳をヒュペルに浴びせながら言う。
「…そう、ですね。…」
何とか、身体を捻り、しなやかにかわしながらヒュペルが受け答える。更に続ける。
「…奴は宿星を欲しがっている。宿星持ちで奴に一番近いのは我々のはず。」
老師が答える。
「もしくは別の…こちらから仕掛けるかの。」
老師が組手を決めて言う…

…ワシ一人で扱っとる寺でな、オンボロじゃが、身を隠せる場所は多いじゃろうて。」
寺の門が開く。人気がなく、古い木造があちこち虫に食われていた。
「ヤンの繁華街に“ワシらがここにいる”と情報を漏らしておいた。待ち伏せには良いじゃろうて。」

93ノートン:2013/01/28(月) 22:38:05
寺の部屋の一室に、老師とヒュペルは身を隠していた。
「本当に、こんな単純な手で奴は来るのでしょうか?」
「さぁの。じゃが、奴が『人の場所を探る能力』でも無い限り、儂らの位置を把握することは不可能じゃて」
「いくらデヌスが”死神”でも・・・ですね」
「うむ。デヌスが来ずとも、何かしらの情報は得られるかもしれぬ」

1時間、2時間・・・時間だけが過ぎてゆく。夜の暗闇の中、2人は神経を研ぎ澄ませていた。
「リンゴでも食うか?少し休憩じゃ」
老師が、ヒュペルに語りかける。
「ありがとうございます。・・・老師、先ほどカロから連絡がありました。複雑な事情があるみたいですが、とりあえずあいつは無事です」
「そうか、無事で何よりじゃ」
「はい。それで、俺・・・」
ヒュペルは言葉を詰まらせる。老師は、そんな弟子を見抜いていた。
「分かっておる。この戦いが終わったら、儂とお前はお別れじゃ。カロにはヒュペル、お前さんが必要なのじゃ。あの小僧を助けてやれ」
「老師・・・」
「まだ教えたいことは山ほどあるが、お前はよう頑張った。じゃが、お別れ会はやらんからな」
老師がニヤリとする。ヒュペルは深々とお礼をした。

その時!ガタッと音がする。老師とヒュペルは身構える。
「老師・・・老師はいないアルか・・?」
寺にやってきたのは、傷だらけのリーだった。

94キャプテン:2013/01/29(火) 23:51:11
傷だらけの身体、血が後ろに続いていた。
「…ドクロの、化け物が…頼む、助けてくれ。」
しかたなく、応急処置をする二人。
「助かったアル、あの鎌で私もシャドウやテゥートゥーの様に吸収されかけたアル。」
それを聞いて老師が蹴りをかます。リーの顔と老師の脚の間で摩擦が生じ、光が飛び散る。
「オツムの方は、まだ弱い様じゃの…戦いを見たものでなければそんなに詳しくなかろうて。」
ヒュペルがムチを取り出す。リーの顔が剥げ、眼前には、あの忌わしいデヌスのドクロの顔が不気味にこちらを睨む。

95ノートン:2013/01/30(水) 19:31:25
老師の蹴りはデヌスの顔面に命中し、顔の半分を吹き飛ばした。周りの皮膚は剥がれ落ち、骨が剥き出しになる。
「やったのか・・・?」
デヌスはその場で静止する。ヒュペルはデヌスに近づく。その時!
「近づいちゃいかん!!」

デヌスは急に動きだし、ヒュペルの腕を掴んだ。デヌスの腕が赤く染まっていく。
「この技は・・!?ヤバい、腕がっ!!」
ヒュペルの腕が怪力により締め付けられる。老師はデヌスの腕を殴る。光が散り、赤く染まった腕を削ぎ落とした。
「大丈夫か!?」
老師とヒュペルは一歩下がる。ヒュペルは腕についていた骨の残骸を取り払った。
「大丈夫です!老師、あの技は色・赤の『レッドハンド』!なぜ奴があの技を・・・!?」
「疑問はそれだけじゃないようじゃ」
デヌスの体がみるみる元通りになっていく。復活した腕を二人に向ける。
「何っ!?」

老師とヒュペルの体が宙に浮き始めた。

96キャプテン:2013/01/30(水) 22:36:45
「これはシャドウの?!」
床から足が離れるヒュペルと老師、ヒュペルがムチを取り出し周りが光に包まれる。
「掴まってください。」
ムチが加速し、地面にめり込む。空に引っ張られながらも必死にムチを掴む。
「ぐわっ!!」
デヌスの口から肩まで骨が裂け開く。牙が大量に生える。
「お次はテゥートゥーかの。」
口を閉じ、牙を吹き飛ばす。
「現役を離れた身にはキツいのう。」
飛んでくる牙に蹴りをかます老師、摩擦で光が生じ削れて砕け散る。
「(…話に聞いたフレッシュ=ナタデココの力に似てる。)」
ヒュペルの頭の中に過去の戦いの想像が浮かぶ。
「シャーベット・テイストと言う。シュガー・アーツには負けるが、破壊力はこの通り抜群じゃ!!」

97ノートン:2013/02/03(日) 00:18:50
「ギャアアアアァァァァァ!!!!!!」
デヌスの鎌が叫び声を上げる。まるで、目の前の”食事”を楽しみにしている少年のような、歓喜の混ざった歪な叫び声だった。
「鎌は叫ぶ、骨は再生する、まったく奇妙な生き物じゃな」
老師はトーン、トーンと軽快なステップを踏むと、目にも止まらぬ速さでデヌスに突撃する。デヌスは鎌を振り応戦するが、それを華麗に避けデヌスの腹部にシャーベット・テイストを喰らわせる。
「!!??」
デヌスの上半身が空中に吹き飛ぶ。その時、空中に舞ったデヌスの上半身を赤い光が覆う。
「レッド・アクセル!」
ヒュペルは空気を掴み、自分の周りを”円”を作るように回転させる。回転する空気は竜巻のように激しくヒュペルの周りを回転し、中にいたデヌスの上半身を跡形もなく吹き飛ばした。
「これがアクセルワールドの進化版、レッドアクセルだ!」

粉々になったデヌスの上半身は空気と共に夜の空へと消えていった。後にはデヌスの下半身、そして鎌が残った。
「頭を吹き飛ばせば、こやつも終わりかの」
「・・・まだ終わってないみたいですよ、老師・・・」

デヌスの下半身が激しく動き出す。なんと、上半身の再生を始めたのであった・・・

98キャプテン:2013/02/03(日) 14:50:07
骨がメキメキと各部の先端まで伸びていく。鎌が怒号の雄叫びをあげながら。
「だったらチリにしてやる。」
赤い光がデヌスを覆う。ヒュペルが鞭を振るい、石造りの床を壊す。砕けた石が加速し、デヌスに向う。
「…ぐぐぐぐ…」
デヌスが右手をかざし、寺の灯りのロウソクを左手に掴む。
「…まさか?!」
老師がヒュペルを覆う様にする。デヌスの右手にロウソクの火が燃え周りの水素を焼き尽くし広がる。

辺りは焼け野原とかす。老師の背中には光がまだ散っていた。
「…亞甲の水素爆発まで。」
爆風に対して空気摩擦により、何とか衝撃を和らげていたが、老師は気を失いかけていた。
背後でデヌスの体がまた生え始め、次第に元の姿に戻っていく。

99ノートン:2013/02/03(日) 19:49:49
「老師!?」
「大丈夫じゃ・・・じゃがあの技を何発も打たれたら、身が持たんの」
よろけながら老師が身を立たせる。その時、黒煙の中、老師の目の前に現れたのは意外な人物だった。

「おぬしは・・・フレッシュ!?」

死んだはずのフレッシュ。にこりと微笑み、老師に近づいた。
「元気じゃったか?ヘルシーよ」
老師は一瞬動揺した。その隙を、デヌスは見逃さなかった。赤く染まった両手が、老師の両腕を掴む。
「罠です!老師ーーーーー!!!!」

ヒュペルの叫び声をかき消すように、グシャっと鈍い音がする。握りつぶされた老師の両腕は、千切れ、地面へと落ちた。

100キャプテン:2013/02/03(日) 22:15:14
両手を失い痛みで叫ぶ老師、血が川のように流れ出て横に倒れこむ。
「…くそ…こいつ!!」
ヒュペルがデヌスに向き直る。けたけたと笑みを浮かべる。
大口を開き、掌が真っ赤になり、そこから蒸気を噴き出し、掌をかざし石が浮かぶ、そして周りの影が異様な形をなしていく。
「(力を盗み、自由に使い、再生もできる…勝てる気がしない。)」
少しずつデヌスがヒュペルに近づいていく。
「…なめるない。」
老師が立ち上がる。地面と足ををこすりあわせて摩擦が産まれ、両の脚が光に輝く。…途轍もない勢いでデヌスを背後から蹴り続ける。骨が削れ砕けていく。鎌にも蹴りが当たり、鎌が強烈な叫をする。
鎌がカランッと落ち、骨は光に輝き、チリになって床に落ちた。

101ノートン:2013/02/03(日) 23:34:24
再び倒れこむ老師。出血が酷く、意識がもうろうとしていた。そんな老師の渾身の一撃も虚しく、再び再生を始めるデヌス。しかし、デヌスの放つオーラは怒りに満ちていた。
「ろ・・老師!!」
ヒュペルが駆けつける。すでに虫の息の老師を見て、判断を下す。
「ここは一旦逃げましょう!あんな化物、俺たちじゃ敵いません!」
ヒュペルは老師を担ごうとする。しかし、老師はそれを止めた。
「諦めが早い・・・それがお前の・・欠点じゃ・・ヒュペルや」
老師はヒュペルに耳打ちする。
「でも!俺はあなたを失いたくない!」
「今逃げても・・奴は殺すまで・・追ってくる・・それに・・儂の事は気にするで・・ない」
怖い。逃げたい。師を、失いたくない。様々な恐怖がヒュペルの頭をよぎる。そんな精神状態のヒュペルの背中を押したのは、老師だった。

「奴の・・鎌を砕け・・ヒュペルや・・・お前は儂の・・一番弟子じゃ・・・必ず出来る」
その一言を残し、老師は口を閉じる。

「老師!?逝くなーーーーー!!!」
叫ぶヒュペル。そんなヒュペルをよそに、デヌスの鎌は、老師の肉体を貫いた。
「ぎゃああああああぁぁぁあぁ!!!!」
鎌が叫ぶ。老師の宿星を手に入れたデヌスは、ヒュペルに襲い掛かる。しかし、ヒュペルの目に迷いは無かった。
「貴様を殺す、デヌス!!!」

102キャプテン:2013/02/04(月) 20:01:33
老師の体が膝から崩れ落ち、倒れる。
「…グギャアアアアアア」
デヌスが加速して接近してくる。
「…壁で土下座しろ!!」
赤い光がデヌスを包む。デヌスがさらに加速し、寺の壁に向う。
「ぐぎぎぎぎ」
デヌスの足と床の間で摩擦が生じ光を放つ。ブレーキの役割をし、デヌスの加速が止まる。
「…こいつ…」
頭を振り、怒りを冷ましデヌスに向き直る。デヌスが振り返りざまにヒュペルを見据える。

…デヌスの骨の姿が赤いスポットライトを浴びたように毒々しくヒュペルの目に映る。

103ノートン:2013/02/06(水) 23:27:44
デヌスは徐々に人間の姿に変貌する。
「俺だよ、ヒュペル・・・カロだよ」
カロに姿を変えたデヌスは、ゆっくりと、殺意をもってヒュペルに近づく。
「これでお前との戦いも終わりだ。老師・・・行きます」

ヒュペルはレッドアクセルを放つ。円の中には、カロと化したデヌスはいなかった。
「!?」
カロの表情が曇る。
「俺の”レッドアクセル”は、円内にあるものならば、触れることなく加速させることが可能だ。空気すらもな!」

赤い円の内部の”空気”が加速を始める。空気は激しい音と共に鋭い刃となり、ある物質を襲う。
「ギィャアアアア!!!」
「今頃気付いても遅い!」
円の内部には、鎌があった。空気の刃が、鎌を粉々に砕く。デヌスは、もがき苦しみながら消滅していった・・・

104キャプテン:2013/02/07(木) 20:43:21
老師に近づくヒュペル、血はもう流れておらず天上をただひたすらに眺めていた…

…数日後、群町の広場、ヒュペルはアスレチックで明るく元気に遊ぶ子供達をベンチに座り眺めていた。
「…探したぞ…ヒュペル。」
背後で聞き慣れた声がする。
「…カロ…俺…強くなったんだぜ。」
ヒュペルが目をこすってカロの方を振り返る。少しだけ赤くはれている目をこちらに向ける。
「…ああ、自分が居てれば…いや…何を言ってももう遅いか。」
ヒュペルの隣にカロが座る…

…キャップは血清の副作用、水墨鳥は臓器の損傷、フランはウィルス感染から一命は取り留めたがかなりのダメージを受けたらしい。」
カロがヒュペルに今まであった事を説明する。
「幽さんは反対するだろうが…動けるのは俺たちだけだ。」
ヒュペルが身体中包帯まみれのカロを見てクスッと笑う。
「…そのなりで…よく言えたもんだな。」
ヒュペルが立ち上がる、それに続いてカロも…

…『早見表』が完成したわい。コレで、砂漠の一帯のどこで…いつ…“アレ”が起こるかが…」
屋敷が燃え上がる中、四人は砂漠でその光景を眺める。
「…ああ…やっと…貴殿らの物語が…始まる。」

105ノートン:2013/02/09(土) 01:32:36
カロはヒュペルと共に荒れ果てた荒野へと向かう。目的はただ一つ。夜の王を、倒すために・・・
「隊長には何も言わなかったが、大丈夫か?」
「後で一緒に怒られればいいさ。だろ、ヒュペル?」
「そうだな・・・傷だらけのみんなを巻き込むわけにはいかないしな」

砂漠から少し離れた荒野。そこに、無有たちはいた。
「ジイよ。今日が期日だったな」
「ええ、そうです。ひっひっひ。ノーと言った瞬間、クリーナー全員の首が飛びますぞ」
不気味な笑い声を上げるジイ。その傍らで、スーが剣を強く握りしめていた。
「俺が直接行く。奴らの返事が聞きたい」
「俺も行こう。直接対決となったら、貴殿だけでは心配だ」
無有とスーの2人が動く。答えを導き出した2人、答えを問う2人。カロ、ヒュペル、無有、スーの4人は、約束の地、エンドスポットへと今、集まる!

106キャプテン:2013/02/09(土) 13:47:06
太陽が少しずつ砂漠に沈み、陽光を地平線越しに残す。
「そろそろ…か…」
カロとヒュペルがエンドスポットで周りに目をやる。
「…何だ?」
ヒュペルが天を仰ぐ。空でちらほらと光の筋が通る。
「流れ星か?」
背後でドサッと音がする。
「流星群です…凶星の。」
二人が身構える。無有とスーが立っていた。
「生み出された百八の凶星は、幾つかの流星群となり、その一部が二十年前に降り注いだ。」
砂が固まり、椅子の形をなしていく。
「オレは神の記憶を引き継いでいたため、どの流星群がいつ、どこに降り注ぐかを知っていた。
だからこそ宿星の所持者がいつ、何処に産まれ、誰を仲間にすべきかを知っていた。」
椅子に座り腕を組む無有。
「…しかし、記憶は完全では無かった。故に必要だったのだ。スーの中の神の記憶が!!」
空が一気に明るくなる。幾重にも光の線が川のように流れる。
「オレの話はコレで全てだ。さあ、貴殿らの返事を言いなさい!!」

107ノートン:2013/02/10(日) 23:48:18
カロとヒュペルに、迷いは、無い。
「答えは、ノーだ」
「成程・・・それなら貴殿らは死ぬしかない」

カロが大地に掌を置く。
「・・・ヒュペル。あいつは俺たちを、いや、クリーナーの仲間全員を殺す気らしい。ここで食い止めなきゃ」
「分かってる。幸い、向こうも2人だ。夜の王を任せていいか?カロ」
「ああ。お前はスーさんを頼む。かなり手ごわいぞ」
「知ってるさ。この目で、スーさんの活躍は見てきたんだ」

ヒビが、大地を走る。エンドスポットの中心に大きな亀裂が出来、カロと無有、ヒュペルとスーに分断された。
ヒュペルの目の前には、スーがいた。スーが剣を握りしめる。黒いオーラが、剣を覆う。
「もう容赦はしない。全力で行きます、スーさん」
「いいだろう。かかってこい」

108キャプテン:2013/02/12(火) 12:31:22
カロの放つ亀裂が脈をなし、毛細血管のように枝分かれする。無有の足元に迫る。
「スティック…フェイス…」
無有が言葉にし、大地に手をつく。無有の足元で亀裂が止まり、ヒビがくっついていく。
「く…裂けろ!!」
ヒビが応戦する。カロと無有の真ん中でヒビがギギギッと音をたてて進もうとする。

ヒュペルから赤い光がほとばしり、やがて半球をなしていく。
「…いくか。」
スーが胸に手を当てる。黒々とした剣が抜かれる。狂気の眼でヒュペルを捉える。
ヒュペルが先行する。スーが剣を振る。剣から黒く巨大な塊が現れる。次第に色が灰色がかり、巨大な塊がその正体を表す。
「…岩?!」
ヒュペルがすかさず向かってくる岩を横に交わす。すると今度はヒュペルのいる足場が黒く染まっていく。
「…くそ!!」
ヒュペルが大気を赤い光の中で加速させる。その風に飛ばされ天高く飛びスーから距離をおいて着地する。
もともと居た足場にはポッカリと穴が空いていた。
「フル・ネス…。」

109ノートン:2013/02/16(土) 21:56:51
「お前、確かヒュペルという名だったな。お前の能力、その円の中に俺を入れないと、攻撃できないわけか」
「俺の名前まで忘れてしまったんですか・・・スーさん!」
ヒュペルの周りを赤い閃光が走る。
「レッドアクセル!」
ヒュペルの周りの空気が加速し、竜巻となる。
「円に入らなくてもいい。この竜巻に触れただけで、あなたの体は粉々だ!」
ヒュペルは竜巻を纏いながら、スーに近づく。スーは剣を構える。
「分かってないな、ヒュペル。俺のフル・ネスは、竜巻だろうとなんだろうと、別世界に飛ばせる」

スーは竜巻に向かって剣を振るう。切られた空間は黒く、ぽっかりと穴が開いた。
「このまま切り進んでいけば、お前の首元まですぐに剣が届くぞ、ヒュペル!」
ヒュペルは竜巻を止め、スーを見つめた。
「本気で俺を殺す気ですか・・・!?」
「悪いな。殺す予定だ」
フルネスがヒュペルを襲う。ヒュペルは落ちていた石を加速させスーの腕を狙った。

110キャプテン:2013/02/17(日) 20:13:14
飛ばされた石が加速し、スーへと向かう。スーが振るいきった剣を自らに向ける。
「夜世界の深淵を魅せてやる。」
剣がスーに刺さる。スーの体が黒く染まり消えていく。石が空をさき、遠くへ飛んでいく。
「(…あの剣さえ奪えれば、スーさんは戦えなくなる。何とかするしか無いか…)」
ヒュペルの周りで大気がうごめく。砂が音をたてて荒れる。
「さあ…どこからくる!!」
ヒュペルの胸が黒く染まる。胸を突き破る様にして黒々とした切っ先が顔を覗かせる。
「…まさか?!」
ヒュペルが胸を抑える。ヒュペルの体が人型の影の様になり、やがて形を無くした…

…ヒュペルはかろうじて意識を保っていた。真っ暗闇の世界にただ一人、ポツンと立たずんで。

111ノートン:2013/02/17(日) 21:57:31
ヒュペルは歩いた。暗黒の世界。そこが道なのか、空なのかも、分からない。
「クソッ!助けてくれ!出してくれ!!スーさん!!!」
ヒュペルは正気を失いつつあった。時間も、平衡感覚も、徐々に自分の中から消えていく。
その時、目の前にスーが現れた。
「俺のフルネスへ、ようこそ」
「貴様!!」
ヒュペルはレッドアクセルを発動した。が、赤の閃光は現れなかった。
「無駄だ。この世界は俺の中にある。お前は何もできない。永遠に閉じ込めるだけだ」
「何しに俺の前に現れた!」
「お前をここで殺すこともできる。だがもう考え直す一度チャンスをやろう。無有の仲間になるかどうか・・」
「・・・どうかしてるよ、あんた」

ヒュペルは絶望した。打つ手がない。この男の、命令に従うしかない・・・
その時、暗黒の世界に、また一人新たな男が現れた。
「・・・どうして?なぜあなたがここに・・・!?」
ヒュペルはその男を見つめる。スーは後ろを振り向く。
「・・・俺!?」

なんと、現れたのはもう一人のスーだった。

112キャプテン:2013/02/18(月) 18:51:13
もう一人のスーが最初に現れたスーの所へ歩み寄る。最初のスーが頭をかかえる。
「…まただ、クソ、夜に飲み込まれる。」
最初のスーがたじろぐ。
「どういう事だ?」
ヒュペルが率直な意見を言う。
「オレは、干潟 國であり、スーグラウンド。人の記憶は燃やせても宿星の意思は変わらない。」
最初のスーがもう一人のスーとヒュペルの前で立ち止まる。
「消えろ、お前にようは無い。」
スーが黒い剣を振るう。後から来たスーが斬られ、夜に消えていく。
「ヒュペル…物体へ斬り込みを入れられなければ…夜への入口は開かない…剣は…空を泳ぐ…だけ…だ」
言葉が途切れ、スーが切り裂いたもう一人のスーの斬り込みから、デッドスポットの景色が顔を覗かせる。

113ノートン:2013/02/24(日) 18:53:54
「さぁ、返事を聞こうか」
スーは再びヒュペルの方を向く。しかし、また新たなスーの幻影が出現した。
「またお前か。邪魔をするな!」
何度も、何度もスーは自分を切り裂いた。しかし、その度に復活する自分の幻影。スーは息を切らし始めていた。
「はぁ・・はぁ・・何度邪魔をすれば、気が済む!!」
スーは幻影に向かい剣を突き立てる。ヒュペルは気付いていた。幻影のスーは、どんどん若返っていた。これは、宿星が見せているスーの記憶。頭から記憶を消しても、宿星には、しっかりと記憶が刻まれていたのだった。
「スーさん、答えを出すのはあなたです。このまま記憶を失いモンスターとなるか、真の自分を取り戻すか!」
ヒュペルの言葉に導かれるように、スーは幻影の元へ寄っていく。
「お前は、俺なんだな」
若いスーの幻影が頷く。スーは剣で自らを切り裂く。幻影は消滅し、黒の世界が消えていった。
ヒュペルは目を覚ます。目の前には、エンドスポットの大地が広がっていた。
「戻ってこれたのか。スーさんは!?」
ヒュペルは辺りを見回す。すると、スーは砕けた剣の柄を握りしめていた。
「スーさん!」
「・・俺の地魅星と引き換えに、記憶を取り戻した。フルネスの能力は消滅してしまったが、元の俺に戻れたよ。また干潟さんに助けられたな・・・」
スーはヒュペルの方を向く。
「ただいま、ヒュペル」

114キャプテン:2013/03/02(土) 10:46:48
…パキパキ…パキパキ…パキパキ!!!
大地が悲鳴をあげる。まるで宝石の様に輝き、固まりだす。
カロのまわりだけがヒビ割れしているが、次第にそれもくっつき始める。
「オレは、どの様なものであっても、我が体に接する面に接してさえいれば、くっつける事ができる。」
無有のその言葉を聞くと、カロは大きくため息をつき、地面に転がる手頃な大きさの石を拾う。
「説明どうも。」
カロが石を無有に向かって投げる。石は無有の目の前でヒビが入り、広がり、砕けて破片が弾ける。
「済まんな…」
無有は微動だにせず顔に破片をくらう。しかし、カキンッという硬い金属音の様なものが聞こえ、破片は無有あたり、跳ねて落ちた。
「何…だ…?」
カロがまた無有を見やる。
「だから『済まんな』と言ったのですよ。オレの体は分子結合を100%まではねあげてある。」
無有の歩き出す。パキパキと音をたてて体が和らいでいくのが解る。
「切る事も…ヒビを入れる事も…叶いはしませんよ…カロ殿」

115ノートン:2013/03/02(土) 17:24:22
「俺との相性は最悪だな・・・いや、他のどの能力と比べても強いな、あんたの能力」
「お褒めの言葉、ありがとう」
そう言うと、鋼鉄の肉体と化した無有がカロに近づく。
一方、カロは大地に手を置き、再びエンドスポットを割る。しかし、今回はかなりの数のヒビを生やした。
「20、いや30!これだけの数のヒビ、あんたに対処できるか!?」
「ふふ・・・面白い。望むところだ」

116キャプテン:2013/03/10(日) 10:26:06
ヒビが川の流れの様に別れ、無有の足元へと迫る。
「スティックフェイス…双璧をなせ!!」
無有が口にすると、砂を巻き上げ始める。空中で砂と砂がくっつき始め、蜘蛛の巣の様に網目をなし幾重にも壁を作る。
カロの放ったヒビは、その壁にぶつかり壁にヒビを広げる。
「(…これじゃあ、ヒビが届かない。何よりヤツの位置が壁で解らなくなった。)」
ヒビを更に広げていき、壁を壊していく。
「『硬さは凶器』…理解してもらおうか。」
カロの腹部に激痛が走る。グシュッという鈍い音がする。冷たい感覚が膝から足元までつたう。
無有が帯を剣の様にして分子同士をくっつけ固めていた。それがカロの腹部に刺さっていた。
「コレで終わりですかな?」
無有は浴衣をはだけさせ、上半身を露わにし、腰から下には薄い衣をまとっていた。
「(…身動きが…とれない?!)」
腹部に刺さる帯から、体の分子同士がくっつき、体が動かなくなっていた。

117ノートン:2013/03/10(日) 11:33:07
「さぁ、あとは貴殿の首をゆるりと刎ねるだけだ。何か言い残すことはあるかな?」
身動きの取れないカロが、重い口を開いた。
「動けなくたって、出来ることはあるさ」
カロの体にヒビが生えていく。そのヒビは、分子結合で体が繋がっていた無有にまで届いていった。
「何だと!?」
「粉々に砕けろ!!」
カロの腹部が粉々に砕ける。その先にある、無有の体も大量のヒビが入り、無有の全身は粉々に砕け散った。

118キャプテン:2013/03/30(土) 09:06:35
「…はあ…はあ…チリに帰れ!!」
腹をおさえながらカロが膝をつく。空が星々の軌跡を残し、光に溢れ満ちていく。
「…瞬間移動の原理をご存知かな、その物体を構成する分子同士を切り離し転送、別の位置にて再度結合させる事だそうだ。」
顔面を横殴りされ、カロが大地に横たわる。側に無有がたたずむ。
「オレの体は常にスティックフェイスで分子同士をくっつけてあるだけで、実際にはもうバラバラの状態です。…コレを使うのは神との戦い以来ですかな。」
瞬間、無有の身体が消え去り頭上に現れかかと落としをくらうカロ、すぐさま無有の身体が消え去りカロの背に現れ体重を乗せた拳打をくらう。
「ぐ…がは…!!」
カロがまたしても倒れこむ。無有が更に追い討ちをかけようと拳を詰める。
しかし、その前にカロの身体に全身を貫く巨大な縦のヒビが入る。
「…スナップ(噛みつけ)!!」

119ノートン:2013/03/31(日) 16:09:41
大地がひび割れ、分離し、巨大な口となった。
「何!?」
大地の怪物が、無有を襲う。無有に逃げる隙を与えることなく、彼を飲み込み、その巨大な口を閉じた。
「はぁ・・・はぁ・・・」
カロは両膝を付き倒れこむ。腹部の出血、全身のダメージ、能力の多用・・・。カロは、立つことすらままならない状態だった。

120キャプテン:2013/04/11(木) 18:33:25
「…オレの『歯ごたえ』は、どうでしたかな…貴殿!!」
地面からメギメギと亀裂が入り
着物がボロボロに破け、半裸の姿で無有が現れる。全身にかすり傷ができていた。
カロがすかさず無有との間に亀裂を走らせ、狭間を作る。
…ガキ…ガキガキガキ!!!
無有の全身と金色の髪…服に至るまでが、まるで磨いた石のように鋭く、星々の光を反射し、光沢を帯びる。
「…スティック・フェイス(接着する外観』…スティックには『くっつく』ともう一つ、意味があります。」
…メギメギっと音がし、一蹴りで無有はカロの目前までたどり着く。
「スティック・フェイス…『外観に鋭利に突き刺す!!』」
強烈な筋の収縮音がうなり、硬く鋭い拳をカロの腹にめり込ませる。
後ろに飛ばされるカロ、深い切り傷が腹部にクッキリと残る。
「(筋の収縮を『くっつく力』で強化した…しかもあの表皮の硬さは今までより異常だ…何より…研いだ石のように鋭い!!)」
無有が更に追い討ちにかかろうとする…だが何故か距離をとりだす。
「…こっちは…すんだよ」
カロの周りが赤い光に包まれる。

121ノートン:2013/06/23(日) 21:23:36
群町のクリーナー本部。幽は、深い眠りに落ちたキャプテンエジプトを看病していた。
「カロもヒュペルも、どこをほっつき歩いているのかしら・・・」
幽はここ数日、激しい悪寒を多々感じていた。もしかしたら、感じているのかもしれない。
2人が、激戦の渦中にいることを。2人が、命を賭して、敵を倒さんとしている”覚悟”を・・・

「遅いぞ・・・相棒!」
苦痛に耐えながらも、笑みを浮かべるカロ。その後ろには、ヒュペルがいた。
「すまない。さぁ、もうひと踏ん張りだ、カロ!」
「ああ。ヒュペル!」
カロとヒュペルは最後の力を振り絞る。
「雑魚が2人に増えようと、私の敵ではないっ!!」
最後の戦いが始まる・・・!!!

122キャプテン:2013/06/23(日) 22:34:12
ダイスは丘の上よりエンドスポットを見下ろす。
巨大なドーム状の空間、赤々とした光が加速し、強烈な風切り音をたてる。
「…王が王足らしめる…唯一絶対の…力」

…『レッドアクセルの結界』に閉じ込められながらも、無有は強烈な筋力と頑固な肉体で風を薙ぎ払い動く。
カロが蹴りを突き、手のひらよりヒビが足まで伸び、無有の表皮へ着く…しかし、それ以上ヒビが伸びない。
「…貴方は大地に伏せていろ!!」
拳打を見切る事なく、カロは結界の外へなぎたされる。ヒュペルが鞭を取りだし、加速させて無有に放つ。
「哀れだぞ…貴殿!!」
無有に触れた瞬間、鞭は硬直し、砕ける。ヒュペルはすかさず離すが、手のひらより血が噴き出す。
「身動きをとるな…『永遠に止めてやる』」

123ノートン:2013/06/30(日) 16:05:55
無有はヒュペルのレッドアクセルをものともせず突き進む。標的は、ヒュペル。無有の肉体が一瞬でもヒュペルに触れれば、死ぬ。
「空気の加速じゃ、あいつを倒せない・・・!!」
ヒュペルは後退するが、ここはエンドスポット。後ろには崖が広がっており、これ以上は下がれない。まさに、背水の陣。
「動くなと言っただろう。大人しく死ぬがいい」

一方、カロが体を必死に動かしながら、ヒュペルに近づいていた。
「ヒュペルッッ!!俺のヒビを加速してくれ!!!」
カロのヒビが、レッドアクセルの範囲内に入る。ヒビは、徐々に速度を上げて円の中を砕き始める。

124キャプテン:2013/06/30(日) 17:40:42
「ギギ…バギャン!」
大地は叫び、イナズマ状の隙間を魅せる。
その線上の無有の肉体は、隙間をなし、真っ二つとなる。
「き…貴殿ども…」
…が、無有の肉体は、その裂け目にそって…繊維をつなぎ止めようとする。
ヒュペルが呟く。
「もうお前は…自らを繋ぎとめれない…。」
切り離された肉体を、ヒュペルの風が吹き離す。
「…ディスサン」
「レッドアクセル!!」
カロが無有の肉体を切離し、
ヒュペルが肉片を薙ぎ払う。
無有の肉体は、次第に痩せていき、脆弱に…ひ弱に…その姿を変えていく。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板