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【改訂版】桃李取扱説明書

3桃李:2011/08/18(木) 19:00:18
昨日の放送のネタにした本ですが、以前書いた文章を見つけたので
こちらへ転載させていただきます。


大崎善生 著。「アジアンタムブルー」



映画化されたものも見ましたが、原作がなかなかよかったです。

今読んでる本「イエスの生涯」があと数ページで終わるので、

次に再読してみようと思いました。



病で亡くなるヒロイン、女性カメラマンを表現したものに

「つちふまず」のようなひとだ。という言葉がありました。

あたしはこれが何気に好きで、そういう女性(女性に限らず

人間としてこういう人に)なりたいなぁとずっと思っています。



大人になるってことは、逃れようもなく汚いものを見るってことで

どんなに穢れ無く純粋でいたいと願っても、状況がそれを

許してくれません。だけど、泥だらけの土を踏みしめていても

「その部分だけは汚れない」汚いものの中にいながら、それでも

何物にも侵されずきれいなままでいられる人っていうのは確かにいる。



きっと、強い人なんだろうって思う。



原作の中にこういう描写がありました。

以下は以前もブログで紹介した文章ですが、なんとなくこの

排他的な、だけど自分のささやかな人生をそれなりに

愛している感じ、のびやかで、自由で、軽快な感じ。

それがなんともいえず好きな文章です。



まずは雨のシーン。

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雨で全身がびしょ濡れになっていた。

それもどうでもよかった。何もかもがあきれるくらいに

どうでもよかった。人間はたいした考えもなく万引きをし

文鳥を踏みつぶし、ペインテイィングナイフで手首を切り付け

アスファルトに髪の毛の芝生を植え込み、そしていつかは

白い布に包まれてスープのように裏ごしされてこの世から

消えて行くのだ。


中略。


悲しかったし、惨めだった。

唾液と涙で顔は濡れていた。雨が降っていてよかったなと

僕は思った。空を見上げると小粒の雨が顔に降り注いで来る。

星も月も何も見えない黒ビールのような漆黒の空だった。


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雨にうたれるシーンっていうのは好き。
気持ちよいし、ある意味のいさぎよさが感じられていい。

主人公の山崎は※※本の編集者。
ある女性カメラマンを起用するのだが、彼女の写真が芸術的
にすぎると反論を買う。売上げは良かったのだけど、その時

上司にこう指摘される。






「いいか、山崎君。僕らのやっている雑誌は単なる※※雑誌だ。

文化誌でも芸術誌でもないんだ。粘膜と皮膚のギリギリを

写し出してボッキさせて売る。それで゙マスターベーションをして

捨ててもらう、それだけが役割なんだ。だけど今度の君の

企画のようなものが続けば読者は本を捨てられなくなる。

捨てられない※※本はきっといつかは滅びていく。」
                         (本文より抜粋)



いいですね! 明快ですね。むしろ名言ですね。


  「捨てられない※※本は滅びる」

  「勃たない※※本になど価値はない」


男の性なんて全く理解できないけれども言いたいことは何となくわかる



大量のインクを無駄使いし、眺められそして捨てられていくだけの大量の出版物。
単純で明快。知性など必要とされていない世界。

だけど、この世界は、確かにそれをどこかで必要としている。


この本の中の全体に流れる”ものうげさ”ともいえる独特の雰囲気は

なんとも言えません。



時間と永遠についての概念。

多感期における自分自身への葛藤などもよく描かれていたと思う。

この辺の心理描写は映像では伝えきれないと思います。





そして、ラストシーン。

(映画では外国の美しい光景とともにストーリーが展開していました)




死にゆく恋人を思い、一緒に死のうとまで思いつめた男が

最後の最後に、導き出した答え。

死に怯える彼女に言った言葉。

その一言はあたしの心の中にずっと息づいてます。









その言葉とは・・









(放送で言ったからもう言わないwww)



気になる方は読んでください。


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