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ラジオドラマ 『花の咲く丘の上で』
1
:
Dragon_DJ
:2012/01/31(火) 00:32:14 ID:FZt8Jm4M0
花の咲く丘の上で
作戦中に右腕を負傷したダリエラ・ステイル伍長は、傷痍軍人として帰郷することになっていたが、
出発の当日、士官に呼び止められ極秘任務を命じられる。
民間人に偽装して一人の少女を軍の施設まで送り届けること・・・ それが任務である。
小さな少女との汽車での長旅。名はシフォ、十歳にも満たないだろう。
あどけなく車窓を眺めはしゃぐ少女、暇を持て余した旅人たちとの何気ない会話・・・
山間部に咲き色を染める花々の輝き・・・ すべては別世界のような平和さだ。
うずく腕の傷にかいがいしく包帯を巻く少女の指に、人間らしい優しさを見いだし微笑む二人・・・
彼は帰郷の前に婚約者に電話をする。よそよそしく話をする彼女の背中に、男の影がちらつく。
激怒して口論の末、電話を切られ泣き崩れるダリエラを慰めるように、シフォは黙って寄り添う。
妙になまめかしく顔を見上げる瞳の深さに、ダリエラは不覚にも狼狽するのだった・・・
雪の残る山並みを越えつつ汽車は昼下がりの世界に汽笛を響かせる・・・
ふと、旅人の一人に声をかけられる。
その太った中年の男は言う、「あのセクサロイドを売ってはくれないか? 金なら結構な値段で都合を付ける!」
ダリエラは半信半疑で話を聞き流すが、あまりのしつこさに怒り、車両連結部に男を追い出して締め上げる。
「待て! 待ってくれ! ・・・あれはもう生産中止された、しかもプロトタイプの奴でね、機能としてはスペックが
低いんだが、その道の蒐集家にとってはずいぶん値打ちものらしいのさw なに、金なら言い値でいい!
・・・最近は軍のほうからもお声がかかっているらしくてね、引く手あまたってわけさ、ヘヘッ・・・」
次の停車駅でドアが開いた時に男を蹴り落としたダリエラは、所属していた部隊の軍曹に連絡を取り付ける。
上官は盗聴を恐れて場所を変えたうえで、内々の噂で聞いた内容を告げる。
民生品として市場に流通しているセクサロイドの初期型のICチップには、敵対国が最近開発したジャミング兵器の
影響を受けないものが存在する。それが開発時にプロトタイプとして製造されたシフォの型版である。
ただ、製造元が戦前の敵対国側のものであり、そちらでしかプロトタイプは確認されていない状況であった。
しかも軍部がセクサロイド収集などとは絶対に噂になってはいけないし、敵に知られてもいけない。
だからこその極秘任務なのだ、と・・・
そしてダリエラが負傷した森林戦の目的こそが、シフォの身柄を確保することにあったのだ。
言い知れぬ不条理さを感じるダリエラ。座席の前で無邪気に微笑むシフォ・・・
セクサロイドとはいえ、もうすでに情が移ってしまった今では、軍施設で分解されてしまうには余りにも忍びない・・・
右腕の自由を失い、婚約者との未来をも失い、自分にあと何が残されているのか・・・
シフォの手を取り、列車を降りようとするダリエラを引き留めようとする乗客・・・、それは軍の内偵であった。
体当たりの攻防。追っ手を振り払い、駅を飛び出し、降車客をすり抜けて走り去る二人・・・
「いいかい? これから追いかけっこをするよ? 僕が鬼になるから、一生懸命走るんだ、 いいね?・・・」
「・・・、うん・・・」
のどかすぎる風景には、身を隠せるものなど何もない・・・
けなげに走り去るシフォの背中を見守るダリエラの背中に、銃声が赤い花を咲かせる。
銃声に立ち止まったシフォに、内偵たちが走り寄る。
「ねえ、おじさん、ダリエラは? ・・・」
「ああ、向こうで君を待ってるよw さ、いこう?」
「・・・おい、待て! ここは地雷原だぞ!」
「なに!」
「ねえ・・・」
「待て! 動く・・・」
蓄音機のレコードが鳴っている。曲と共にフェードアウト。
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