[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
| |
ラジオドラマ 『 Dawn of the Hero 』
1
:
Dragon_DJ
:2011/06/05(日) 22:01:41 ID:e8/nsmv2
Dawn of the Hero
第一話
一、
俺はもう、新聞記者という仕事について10年になる。刺激的と言えるほどドラマティックな
毎日を送っているはずもなく、基本ルーティンワークみたいなもんだ。
人間はなんにでも慣れてしまう生き物だとつくづく思う。刺激にも、退屈にも…
全てがありきたりな「日常」へと埋没してしまう。
取材先の、嘆き悲しむ遺族の横顔にすら、今はもう何の感情も沸かない。
子供が叫ぶ、父親の名前の物悲しい響きさえ、俺の中では取材対象の一つに過ぎない。
人の嘆きを見つめるたびに、自分の心が鈍くなっているのが判る。
分厚い脂肪に囲まれた、メタボリックなメンタリティ・・・とでも言おうか・・・
昼休みと適当に決めた飯の時間の後、公園のベンチに座って缶コーヒー片手に一服を
決めている。タバコの煙の向こうに、木々の葉が照り光りしているのが見える。
「こんな世界、滅べばいいのに…」
退屈紛れの独り言を、通りすがりの子供を連れた母親が怪訝そうな目つきで訝しんだ。
「へっ…」
照れ笑いしても収まりが悪い。
気を持ち直して仕事しよう…。俺は短くなったタバコを携帯灰皿にしまうと、ベンチから
重い腰を上げた。
遠くから拡声器の割れた声と大勢の怒号が聞こえる。今日はデモ行進がある日だ。
潮月通りから松陰町通りへと向かう、都心の大通りを抜けて左の三沙公園を
曲がる21キロの道のりを、平日の昼間から雁首そろえて練り歩く大行進だ。
事なかれ主義でナアナアに済ます俺には、彼らのモチベーションは理解しかねる。
これを取材するのだ、と思うと憂鬱だ…。つまり、これが俺の今日の仕事なのだ。
連れのカメラマンでもいれば退屈しのぎに駄弁ってもいられるのだが、あいにくと
経費削減の煽りを受け、ポケットの中の、俺に手渡された小さなカメラが今日の連れである。
最近のは機能が良すぎてコンパクトカメラさえ馬鹿に出来ない。おまかせ自動設定で前時代の
一眼レフを軽く圧倒するほどだ。
「アンティークに惹かれる人間の気持ちも、分からなくもないな…」
そうつぶやくと俺は、喧噪の鳴り響く通りへと向かって歩き出した…
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板