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百物語改め四十四話ラジオ

78その:2009/08/31(月) 17:38:36 ID:KUA7elBk
6/連続写真

まだ有名ではないながらも、その才能を高く評価されている写真家がいた。
彼は主に、海や湖などの水をモチーフにした風景写真を得意としていた。

ある日、知人に美しい景観を持つ湖があると聞き、早速撮影に向かった。
聞いていた通り、そして予想以上に、確かにそこは美しい湖だった。
インスピレーションの沸いた彼は、時間を忘れて湖を撮りまくった。
そしてそろそろ日も傾きかけ、用意したフィルムもわずかとなったので、
その場所を最後と決めて、切り立った崖を配した構図でシャッターを切った。

翌日、彼は暗室の中で昨日のネガを現像していた。と、不意に彼の手が止まる。
「…な…何だこれ……」
それは彼が最後の場所で写したものだった。
撮影中は気がつかなかったが、そこには崖から飛び降りる女が写っていた。
連続撮影だったために、まるでコマ送りのように湖面に落ちてゆく。
そして着水の瞬間の写真に、彼は我が目を疑うような光景を目にした。
女が湖面に触れたとたんに、湖面から伸びる無数の白い腕、腕、腕。
まるでその腕が女を引きずり込むかのようにまとわりついていた。

それから数日後、彼は自宅で遺体になって発見された。
暗室の中、現像液の中に顔をつけた状態での溺死だった。
現場検証の結果自殺ということになりはしたが、床にぶちまけられた現像液、
散乱した写真など、ずいぶんともがき苦しんだような形跡が見受けられた。
ただ誰かが侵入した痕跡もなく、他殺という判断はなされなかった。

それからしばらくして、彼の遺族や友人などが遺品を整理するために集まった。
友人たちも自殺写真や白い腕の写真を気味悪そうに眺めていたが、
そのうちの一人が何枚かの写真を前にしてブルブルと震えているのに気がついた。
震えていたのは昔馴染みの友人の一人で、聴覚障害のAという女性だった。

Aの見ていた写真は7枚あって、なぜだか自殺する女の部分を引き伸ばしてあった。
そして皆がある異常に気付く。女の視線が全てカメラの方向を向いているのだ。
それはたまたまだろうと誰からともなく声がかかったが、Aがそれを否定した。
Aは聴覚障害であるために多少の読唇術を身につけており、その7枚の写真の
女の唇を読んでしまったのだった。
その7枚の写真を女の落ちてゆく順番に並べると、こう言っていた…

「つ」 「ぎ」 「は」 「お」 「ま」 「え」 「だ」


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