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百物語改め四十四話ラジオ

162名無しの百物語さん:2009/08/31(月) 20:07:32 ID:hOWhKWDY
17/藁人形

今は昔。頃は春。甲(かぶと)山へピクニックに行った時の事。

西宮に甲山という、ファミリーハイクにはもってこいの小さなかわいい山がある。
付近には六甲山系を水源とする川と、飯盒炊爨(はんごうすいさん)の出来る河原があった。
俺が小学1年、弟が幼稚園へ上がる前の事だ。
俺たち兄弟は母親に連れられて、そこへ来ていた。
メニューはご飯とすき焼。だが、ご飯が出来なければ次が始まらない。
俺たちは母に火の番を任せ、河原で遊んでいた。
ふと、川の方に目をやった弟が声を上げた。
「あ、人形。ほら」
弟の指さした先の浅瀬に、ワラ人形が足をこちらに向けて流れ着いていた。
現物を見るのは初めてだったが、本などで見るものとまったく同じで、きっちりと
束ねられており、大きさは15センチくらいだったと思う。しかし、釘などが
刺さっていたような形跡はどこにもない。

(なんでこんなものが?)
訝しむ俺に構わず、弟はそれを拾おうとして一歩踏出した。すると、
「だめよ」
いつの間に来たのか、母が俺たちの真後ろにいた。
「そんな物、拾っちゃダメ」
静かだがドキッとするほど鋭い母の言葉の響きに、弟が思わず後ろをふり返った。
その時、弟の後ろでワラ人形が体を起した。
そして、眼無き顔で母と俺をさも悔しそうに睨め付けると、自ら仰向けになり、
川の深みへ入ってそのまま流れて行ってしまった。

あれはいったい何だったんだろう。
母に後で聞いてみた。
家の母方の人間はわりと霊感が強い人間が多く、中でも母はずば抜けてそれが強い。
その母をしてよく分らないと言う。
ただ、川の方から弟に向って厭な視線が向けられているような気がしたので、
そっちを向くと、真っ黒な小人が蛙のようにうずくまっているのが見え、
慌てて駆け寄ったのだと言う。
瞬間、弟が捕られると思ってゾッとしたそうだが、
その時、小人が俺の方をずいぶん忌々しげに睨んでいたので、少しほっとした、と母は言った。
俺には全然そんな物は見えていなかった。
ヤツは一体どこへ流れて行ったのか。
それともあそこで繰返しああしているのだろうか。


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