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型月とジョジョの奇妙な冒険 第十二部 ファンタズムブラッド
1
:
僕はね、名無しさんなんだ
:2013/09/25(水) 13:41:59 ID:H9NOPUr60
型月とジョジョをいろんな意味で混ぜるスレです。
セリフ改変やクロスーバーなど、大ネタ小ネタ大歓迎。
考察の類も兼ねてますので、ジョジョ全般はここで。
■前スレ
型月とジョジョの奇妙な冒険 第十一部 ジョジョーリ・オン!
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1354678066/
■過去スレ
型月とジョジョの奇妙な冒険 第十部 アルトリアによろしく
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1259428632/
型月とジョジョの奇妙な冒険 第九部 騎士王さまは働かない
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1197618774/
型月とジョジョの奇妙な冒険 第八部 シロー贋作者
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1176636905/
型月とジョジョの奇妙な冒険 第七部 スティール・ハート・ラン
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1167728413/
型月とジョジョの奇妙な冒険 第6部 ざぶーん・オーシャン
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/995/storage/1164466217.html
型月とジョジョの奇妙な冒険 第五部 金ぴかの旋風
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/995/storage/1136270071.html
月姫とジョジョのキャラが同じ学校にいたら 第四部 妄想は砕けない
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/995/storage/1124460681.html
月姫とジョジョのキャラが同じ学校にいたら 第三部
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/995/storage/1097485089.html
月姫とジョジョのキャラが同じ学校にいたら その2
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/995/storage/1092561834.html
月姫とジョジョのキャラが同じ学校にいたら
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/995/storage/1069332914.html
886
:
イリヤの奇妙な冒険24
:2016/10/08(土) 20:05:49 ID:LOCSebxQ0
【Fate/kaleid ocean ☆ イリヤの奇妙な冒険】
『24:Xover――交差』
【聖堂教会の一資料より】
冬木のセカンドオーナー、遠坂家は、聖堂教会から派遣されている言峰璃正との関係が深い。数百年前、聖堂教会が日本において禁教とされていた頃、遠坂家が聖堂教会の信徒であったことを縁とし、5代目当主遠坂時臣と言峰璃正も友人関係である。
言峰璃正の息子、言峰綺礼もまた、遠坂時臣と関係が深い。言峰綺礼は聖堂教会の代行者として動いていた人物。聖遺物の管理・回収を使命とする第八秘蹟会に席を置いていた。彼は聖堂教会から魔術協会に派遣され、時臣の弟子として魔術を学んでいる。
聖堂教会は、世界を乱す可能性のある聖杯を、何を考えているかわからない魔術師に渡すよりは、親交があり、根源を目指すことのみを目的とした遠坂時臣の手に渡す方がいいと考え、遠坂家に全面的に協力した。
しかし、第4次冬木聖杯戦争の中で、言峰璃正は死亡。言峰綺礼は行方不明となり、死体も見つかっていない。
遠坂時臣は生き残ったが、戦友の死が堪えたのか、早々に娘に当主の座を譲り、隠居している。
なおこの時、聖堂教会からは聖杯戦争を監督するための人員が多く派遣されたが、運命の嵐のように凄まじい、英霊同士のぶつかり合いに巻き込まれ、命を落とした者も少なくない。
後日収集された情報も、あまりの危険と混乱の中では、どうしても抜けが多く、不正確である。それでも第4次冬木聖杯戦争についての情報は魔術協会よりも我々の方が多く集めている。これは、我々が所有しているの資料の半分以上を持ち帰った、エンリコ・プッチ神父の功績が大である。
◆
《申し訳ありません、美遊さま。私が姉さんに連絡したのです》
カレイドステッキには電話のように無線連絡を行う機能もある。それを使ってサファイアはルビーに救援を乞うたのだ。
「サファイア……イリヤには言わないでと……ううん……きっと、これで正解だから、いい」
イリヤに仕事をさせたくなかった美遊は、文句を言おうとしたが、助かったのは事実なので責めるわけにはいかない。
「? なんでサファイアが謝ってるのか、よくわからないけど……」
美遊とサファイアの会話の内容がよくわからず、首を傾げるイリヤ。そうしている間に、
「…………」
モンスターは何事もなかったように立ち上がる。
傷はなく、その顔には怒りをはじめとした表情は何一つない。ただ静かに、新たな敵を見つめていた。
「えっと……カッコつけて来たのはいいけど、私、何すればいいのかな?」
《しまらないですねー、イリヤさん》
イリヤは美遊に向かって、恥ずかし気にたずねる。美遊はそのいつもと同じ様子のイリヤに、少し気が抜け、そしてとても安堵した。
美遊は、持って来ていた3枚のうちの1枚、セイバーのクラスカードをイリヤに渡し、
「もう少し、私が時間を稼ぐから、セイバーを『夢幻召喚(インストール)』して。あれは、通常の魔法少女のままで戦える相手じゃない。『夢幻召喚(インストール)』したら、今度はイリヤが、私がいいと言うまで、モンスター相手に時間を稼いでほしい」
「『夢幻召喚(インストール)』って、ええっと、どうすれば……」
「申し訳ないけど、なるべく急いで。正直、1分持ちこたえられるか自信がない」
「あっ、ちょっ、ええっ?」
最初に『夢幻召喚(インストール)』を行ったのはイリヤだが、その時のことは夢の中のようで、自分でやったという気がしない。どうすれば『夢幻召喚(インストール)』できるのかわからないのだ。
《一度できたんですから、またできて当然と思うんですよ。美遊さんの飛行訓練の時、ご自分で言ったじゃありませんか。『考えるな! 空想しろ!』って》
「ううーん、我ながら、いい加減なこと言ったもんだなぁ」
887
:
イリヤの奇妙な冒険24
:2016/10/08(土) 20:06:43 ID:LOCSebxQ0
そうは言っても、イリヤにはやる以外ない。既に美遊はモンスターに向かっていってしまったのだ。その足取りは、先ほどよりも機敏で、力強く踏み込んでいた。
「よぉし……」
イリヤは、セイバーのカードを手に取る。
そして、飛行訓練の時の、アヴドゥルの言葉を思い出す。
(『息を吸って吐くことのように、アルミ製の空き缶を握り潰すことのように』……『できて当然』……)
そして、かつてセイバーのカードで『限定展開(インクルード)』した時より、もっと深く、カードに魔力を浸透させ、カードの奥にある力を手繰り寄せるイメージで――
「『夢幻召喚(インストール)』!!」
ゴウッ!!
魔力を注ぎ込んだ瞬間、イリヤは美しい鎧をまとい、ルビーが聖剣へと変身する。
これこそは、アーサー王。過去の王にして、未来の王。ブリテンに最後の輝きをもたらした、誉れ高き騎士王。
聖杯戦争において最優のクラスとされる『セイバー』に当てはめられ、クラスカードとなった英霊の中でも、バーサーカーと並ぶ戦闘能力を誇る、大英雄。
この力でなら、モンスターにも対抗できる。いや、このくらいの力でなければ、対抗できない。
「やった! 成功した!」
《さすがはイリヤさん! 頭の作りがシンプルなのは強いですね!》
「……今の、褒めたの? けなしたの?」
《それより、気をつけてください、イリヤさん。あの眼は、それだけで英霊を超える力を持っています。魔眼のクラスで言えば、『宝石』を超えた最高位の『虹』――もしかしたら、あれは魔眼というカテゴリーにさえ収まらないシロモノかもしれません》
イリヤには魔眼のことなどわからないが、ルビーが真面目であるという時点で、相手が途方もない存在であることはわかる。
《下手に剣を打ち合わせたら、剣を斬り殺されるかもしれません。つまり、この場合、私が斬り殺されるということになりますので……セイバーの身体能力を活かして、逃げ惑う方向で時間稼ぎしてくれると、その、とても助かります》
ルビーの声はちょっと怯えている。今までも凛によく叩きのめされて、英霊相手にもしぶとく耐えてきたルビーだが、今回ばかりは本気で破壊されるかもしれないのだから無理もない。
「うん。私も怖いから、その方向でいいよ。相手が、許してくれればだけど……」
イリヤは聖剣を上段に構える。同時に、聖剣を中心に風が渦を巻く。魔力を伴い、激しく咆哮をあげる。
それは聖剣に施された風の加護――【風王結界(インビジブル・エア)】。本来は、風を纏うことで光を屈折させ、剣身を見えなくするために使うもの。だが、風を凝縮するという特性を利用し、凝縮した風を一気に解き放つことで、一度だけ、攻撃に使うことができる。
「【風王鉄槌(ストライク・エア)】!!」
烈風がモンスターに向けて叩き付けられる。
888
:
イリヤの奇妙な冒険24
:2016/10/08(土) 20:08:10 ID:LOCSebxQ0
「っ!!」
対して、モンスターは見えざる風を、鋭く見据え、短刀をかざす。
小規模の嵐に等しい攻撃に、モンスターはスッと短刀を突きつけ、クイと手首を捻る。それだけで、風の槌は急速に力を失い、そよ風となって消えていく。
「……やっぱり」
《空気を斬る……いえ、殺す、ですか。アヴドゥルさんの炎を殺せた時点で、これくらいはできると思っていましたが、いやはや、これじゃどんな攻撃も届きませんよ》
モンスターの『直死の魔眼』の前には、どんなに威力のある攻撃も殺されてしまう。
たとえ、セイバーの最強の宝具【約束された勝利の剣(エクスカリバー)】を放ったとしても、あの膨大な光の奔流に、小さな短刀を少し当てるだけで、切り裂き、無効化してしまうに違いない。
あの、幾度殺しても蘇ったバーサーカーでさえ、その蘇生の力ごと一度に殺されて、復活できないようにされてしまうだろう。
全ての息の根を絶つ最強の『矛』にして、あらゆる攻撃を無に帰す無敵の『盾』。『死』という名前の完璧な『矛盾』を持つ者――それがモンスターだ。
しかし、【風王鉄槌(ストライク・エア)】が無意味であったわけではない。
モンスターの碧い眼は、美遊から離れ、イリヤの方へ向けられていた。
「あとはミユが役目を果たすまでの時間を稼ぐ、と……どれくらい?」
《サファイアちゃんによれば、3分あれば充分とのことです……極めて長い、3分になるでしょうけれど》
恐ろしい。だが、やるしかない。
「ええい! やってやるぅッ!!」
◆
イリヤが前に出て、モンスターに斬りかかると同時に、美遊が後ろに下がる。
「はあっ、はあっ!」
美遊としては実に良いタイミングだった。あと数秒遅れていたら、美遊の身に、刃が届いていただろう。
(今までのサーヴァントに比べ、際立って身体能力が高いわけではない……ただ、本能が、感じているんだ。『死』を)
あの魔眼に見られ、自身の『死』が浮き上がっていることを、理屈ではなく感じ取ってしまっている。それが、身をすくませる。心を怯ませる。今までのサーヴァントとの戦いよりも、恐ろしい。その恐怖が動きを鈍らせている。
(それに純粋な戦闘力も向上している気がする。これ以上強くなったら、手が付けられない。早く、対策を見つけないと)
美遊は、クラスカードを手にし、
「『夢幻召喚(インストール)』!!」
カードから光がほとばしり、赤い外套をまとう、弓騎士の力が呼び出される。
最初にイリヤが『夢幻召喚(インストール)』して見せた英霊の力。
(アーチャーの力。実際に使っているのを見た。イリヤが『夢幻召喚(インストール)』したのを見た。あの武器を次々と出現させる力の本質は『投影魔術』)
ルヴィアやサファイアの考えであるが、アーチャーの使っていたのが投影魔術であるとすれば、それは既存の物体を解析し、それとそっくり同じものを魔力によって構成する魔術。本来は、効率が悪いうえに、長続きせず、すぐに消滅してしまうもので、とてもアーチャーのようには使えないものだ。
アーチャーのそれは規格外なのであろう。流石に英霊となっただけのことはあるということだ。しかしそれは今、重要なことではない。重要なのは、『投影魔術』には『投影』の前段階に『解析』があるということ。
889
:
イリヤの奇妙な冒険24
:2016/10/08(土) 20:09:03 ID:LOCSebxQ0
(アーチャーの力を得た今なら、モンスターを解析できるはず! 召喚されたサーヴァントは無理でも、核となっている聖杯ならば!)
そしてアーチャーと同化した美遊は、解析を行う。せいぜい百と数十秒の時間であったが、友の命がかかっている美遊には、酷く長く思えた。
モンスターの、その内部に秘められた聖杯の構成を見通し、そして、一番重要な、モンスターがなぜ動かないのか、理解することに成功する。
「……わかった」
知るべきことを知ったら、美遊はすぐに『夢幻召喚(インストール)』を解いた。イリヤに無理はさせられない。すぐに離脱しなければ。
(彼のことが分からなかったのは、少し残念だけれど)
英霊化した時は、英霊の人生や想いが、微かに見えたり、感じ取れたりするようなのだが、それを見る暇も余裕もなかった。
美遊にはそれが心残りだ。何か、少し、アーチャーからは奇妙な既視感を感じていたのだが。それも悪くはない何かを。
(今は、それどころじゃないか)
美遊は後ろ髪を引かれる気分だったが、もっと大事なことに意識を集中させる。
「イリヤ! 終わったよ!」
「わかった!」
イリヤは内心、安堵した。
モンスターの動きがみるみるうちに、良くなっているのがわかるのだ。
成長というのではなく、本来の動きを取り戻しているのだろう。昨日は魔眼で見る『死』を、ただ狙って斬りかかるだけの、単調な動きだったが、今は短刀の振り方も多様になり、技を使ってきている。時折、拳や蹴りを使い、フェイントも混ぜ、イリヤの神経をすり減らしてくる。
いかにセイバーを『夢幻召喚(インストール)』しているとはいえ、限界は近かった。英霊の力を借りているとはいえ、所詮、使っているのは小娘にすぎない。
「で、でもどうするの? 昨日はランサーの宝具でやっと逃げたのに……」
「モンスターは宝具を出していない。そして私たち二人だけなら逃げられる……多分」
「えっ、今、多分って、ひいっ!」
聞きとがめるイリヤだったが、モンスターの短刀が鋭く突きつけられたので、問いただす余裕はなくなった。
魔眼に関係なく必殺の威力を持つであろう突きを、セイバーのスキルである【直感】を駆使してかわすイリヤを見守りながら、美遊は新たなカードを出す。今回、持ってきたカードは、3枚。
解析のためのアーチャー。
モンスターと渡り合う接近戦能力を持つセイバー。
そして、逃亡用のカード。
「『夢幻召喚(インストール)』」
鮮やかな速度で『夢幻召喚(インストール)』を行う美遊。『夢幻召喚(インストール)』を行うための魔力もそろそろきつい。カレイドステッキで無限に供給されるとはいえ、美遊が使い続けられる魔力には限界がある。
早く逃げ延びねばならない。
美遊は床を蹴り、イリヤへ体当たりするように抱き着く。
「え!?」
美遊に抱き着かれ、戸惑ったイリヤは、足を止めてしまう。その隙を逃さず、モンスターの刃がイリヤの顔目がけて迫る。悲鳴をあげる間もなく、迫る死の切っ先がイリヤを貫く前に、
シュバァッ!!
桜の花が散るように、イリヤと、そして美遊の姿がばらばらに弾け、その場から消え去った。
「…………」
モンスターは空間を抉るにとどまった刃を、無感情に降ろす。そして、いったん周囲を見回し、イリヤたちがいないことを確認した。
ただ、広間に何匹か、使い魔がいるのを視認し、
ダッ!!
床を蹴って跳びまわり、使い魔を一匹残らず斬殺した。
どうやら、この戦いによって警戒レベルが引き上げられたらしい。そして、誰も見る者のいなくなった広間で、モンスターはまた静かに佇む体勢に戻った。
彼女は、静かに時を待つ。
◆
890
:
イリヤの奇妙な冒険24
:2016/10/08(土) 20:09:52 ID:LOCSebxQ0
「え? あれ? こ、ここは?」
イリヤは気が付けば、地下から日の当たる地上にいた。どうやら無事に逃げられたらしいとわかり、ほっとして、いまだに抱き着いている美遊を見る。
美遊は紫色のローブをまとっていた。
「それ……キャスター」
「そう。魔術でここまで逃げてきた」
瞬間移動。神代の大魔術師であるキャスターのカードを『夢幻召喚(インストール)』したからこそ可能となった、魔法に近い大魔術。空間を超えての逃亡には、流石にモンスターの眼も追いきれなかったようだ。
「凄い……! 私まで連れて瞬間移動できたんだ!」
「私の力じゃ、多分これが限界だけど……それに、モンスターが前に使った宝具が相手では、逃げきれないと思う。あの宝具は、きっと空間も斬り殺して追ってくる。ランサーの、逃がすことに特化した宝具だからこそ、逃げきれたんだと思う」
イリヤは感心するが、美遊は自分の使った魔術の限界を感じ取っていた。今回は逃げられたが、手の内を知られた以上、次もモンスターから逃げられるとは期待できない。
「おかえり、美遊くん、イリヤくん」
ともあれ、無事に帰ってきた二人に、地上で待っていたアヴドゥルが声をかける。
「ふっ、まあ礼を言ってあげてもよろしいですわよ、イリヤスフィール。いっそ遠坂凛から私の陣営に移りませんこと?」
傲慢ではあるが、それが妙に映える態度でルヴィアが言う。イリヤは苦笑する。そして、イリヤを追ってきた凛が、ルヴィアをジト目で見ている。
「勝手に勧誘するんじゃない! それより勝手に私のクラスカードを持っていったことを謝りなさいよ!」
「そもそも全部私の収穫になる予定だからいいのですわ。それより美遊。上手くいったのですか?」
ルヴィアの問いかけに、美遊は頷く。
「わかりました……なぜモンスターが動かないのか。そして、結論から言えば、タイムリミットは、明日の日の出までです」
◆
冬木の郊外に、黒ローブの怪人と、血生臭いメイドがいた。
深夜の町では、多くの人々は寝静まり、自動車の数も少ない。その数少ない自動車のうちの一台が、二人の前で停まる。『ドレス』が調達した、町を出るための自動車だ。黒い色の、どこにでも走っている国産の乗用車。『ドレス』の構成員はもう皆、脱出済みなので、運転手は魔術で洗脳した一般人である。
「残念ね。折角待っていたのに、結果を見れずに出ていくなんて」
「コレ以上ハ、無理ダロウカラナ。使イ魔モ消サレテシマッタ。ソレデモ、凛タチノ話ハ聞クコトハデキタ。アノ話ドオリナラ、今日ノウチニ決着ハツク。奴ラガ敗レタラ、コノ町ハ滅ブダロウカラナ……」
ミセス・ウィンチェスターの声は、むしろ滅びた方が面白いと感じているとわかった。それがわかるくらい、楽しそうだった。
「仕方ないか……」
セレニケは残念そうだった。イリヤたちが無残な屍をさらすところを見れないのが、実に無念であった。
「行クゾ」
ミセス・ウィンチェスターが自動車のドアを開けた時、
「まあ、そう焦るなよ」
背後から声がかかった。
891
:
イリヤの奇妙な冒険24
:2016/10/08(土) 20:11:26 ID:LOCSebxQ0
「誰!?」
「…………」
セレニケは動揺して振り返る。彼らの姿は、魔術によって、誰の関心も引かないように防御されているはず。常人であれば、声をかけるなどありえない。
一方、ミセス・ウィンチェスターは落ち着いたものだった。隙を見せぬ動きで、振り返る。
「よぉ、さんざんやってくれた挙句、自分たちだけ尻尾巻いて逃げるなんて、興醒めな展開じゃないか。こんなのちっとも面白くないね」
現れたのは男だった。まだ20代の若さだが、自信に満ちた様子である。
「まあお前らに面白さなんか期待していないから、別にいいさ。とっとと情けなく逃げていいぜ。主役は別にいるんだしな」
「……外側カラ見テイタダケデ、動カナカッタ男ガ、ヨク煽レルモノダ」
先ほどまでの楽し気な様子は消え、ミセス・ウィンチェスターは苛立たし気に、男と向かい合う。
「なんだ、そのキンキン甲高い声は。本当の声で話せよ。僕はもう知っているんだか、いいだろ?」
「……ふん。なぜここにいる? いや待て……そうか、セイバーが敗れてから、すぐに間桐の土地にたどり着くことができたのは不思議だったが、それは……」
ミセス・ウィンチェスターの声が、偽物のものから肉声へと切り替わる。その声は『男』のものだった。
「それに、アーチャーを召喚するはずだったサイコや、ランサーの元マスターが記憶をいじられていたこと……なるほど、貴様ならばできる。貴様が、アーチャーのマスターになっていたのか!」
「気づくのが遅かったな。所詮、実験……勝利が目的ではないため、わからなくても重要ではないと切り捨てていたんだろうが、わかっていたのなら、この機会に僕を殺していたんじゃないか? 折角、サーヴァントという手駒もあったのに」
「……うぬぼれるな。貴様を殺すのはいつでもできる。ただ貴様は表社会で多少、有名であり、殺した後で騒ぎにならぬよう揉み消す手間がかかる。その手間をかけてまで殺さなければいけないほど、貴様に危険性はない。取るに足らない小物だから、見逃しているにすぎない」
その男――アーチャーのマスターは、ミセス・ウィンチェスターに侮辱されても涼しい顔であった。確かにミセス・ウィンチェスターの言う通り、『ドレス』はアーチャーのマスターを小物だと思っているだろうが、ミセス・ウィンチェスターは違う。
アーチャーのマスターのことを、非常に忌み嫌い、即刻殺したいと思っている。だが、『ドレス』の所属である以上、『ドレス』が『揉み消す手間をかけたくないから殺すな』と言えば、ミセス・ウィンチェスターは従わなくてはいけない。聖杯戦争中であれば、敵マスターであるという理由で殺せただろうに、今からでは殺しても無駄な殺しになり、『ドレス』の意志に反するがゆえに殺せない。それが悔しく、非常に面白くないのだ。
そして、アーチャーのマスターは、ミセス・ウィンチェスターが悔しがっていることを、とても小気味よく思っている。
アーチャーのマスターも、ミセス・ウィンチェスターのことを非常に忌み嫌っているのだ。
「勤め人は辛いな。まあ趣味を楽しむにも仕事はしなくちゃいけないからな」
「……朝、アイリスフィールが日本に戻ったという報告があったが、アイリスフィールに聖杯戦争と、娘のことを教えたのも貴様か」
「ああ、アイリスフィールとは、10年来の知り合いだし、娘が無茶していることを教えるくらいの義理はあるさ」
10年前。ミセス・ウィンチェスターも思い出す。
あの頃に、ミセス・ウィンチェスターも、アーチャーのマスターと出会った。あの戦争の中で。
892
:
イリヤの奇妙な冒険24
:2016/10/08(土) 20:14:48 ID:LOCSebxQ0
「そう殺気立つなよ。ここでやり合う気はない、とっとと逃げていいって言っただろ? 僕だって、別にここでお前をどうこうできると思っちゃいない。一人ならまだしも二人じゃな。けど、一人なら相打ちに持ち込む自信はある……試すか?」
「くだらない挑発には乗らない。だが貴様、一体なぜアーチャーのマスターになった?」
「この聖杯戦争に参加することになったのは偶然さ。この町には別の目的で来たんだ。蝉菜マンションの怪談という噂を調べに。そちらはそれなりに調査したけどね」
しかし、たまたまサイコ・ウェストドアーのアーチャー召喚を目撃して、口封じに殺されそうになったために返り討ちにし、サーヴァントと令呪を譲渡させ、サイコの記憶を消した。
ランサーの元マスター、マナヴ・ソービャーカの放ったコウモリを操り、根城を突き止め、マナヴもまた操って警察に突き出した。
セイバーと戦うアーチャーを支援し、最後にはセイバーを止めて、アーチャーにとどめを刺させ、情報も奪い、オンケルの居場所を突き止めた。
イリヤスフィールが何に巻き込まれているかを、母のアイリスフィールに教えた。
これらのことは、全てその場の流れで行われたことで、アーチャーのマスターにとってはボランティアに過ぎない。教会も協会もスピードワゴン財団も、関係ない。
「まあ、お前が参加しているってわかったから、ちょっと邪魔してやろうという悪意はあったがな」
「……そもそも、なぜここにいる。なぜ、私の前に姿を現した」
そうすれば、ミセス・ウィンチェスターはアーチャーのマスターの正体を知らぬままで、情報を得られずに終わっただろうに。
「お前たちが意気揚々と脱出するのがムカついたから、嫌な気分にしてやろうと思ってな」
純粋な嫌がらせであった。
「ち……好奇心を抑えることも、身の程を弁えることもできないようでは、私が手を下すまでもなく、破滅するぞ」
「そうかい? 破滅するか……それはそれで、いい経験になりそうじゃないか」
アーチャーのマスターは本気だった。本気で破滅しても、それはそれでいいと考えている。たとえ身を滅ぼすことになっても、彼は滅びっぱなしで終わりはしない。
「……つくづく、嫌な奴だ。どれほどその身と心を痛めつけようが、己の醜さを腑分けされてさらけ出されようが、貴様は蘇ってくる。与えられた苦痛も屈辱も糧として、自身の邪悪も醜悪も貪り喰らって、より大きく、より強くなる。決して潰れぬ。10年前の聖杯戦争で、あの時のこの町で、貴様を殺せなかったのがつくづく悔やまれる。全く不愉快で、忌々しい奴だ」
ミセス・ウィンチェスターは、殺意を込めて睨む。
「僕もお前が嫌いだ。お前が生まれついての悪なのか、ミセス・ウィンチェスターのように呪われた人生を送った結果なのか……お前なりの悲劇や葛藤があったのかもしれないが、そんなことは僕の知ったことじゃない。だがお前は道を外れた。快楽のために人を殺すことを受け入れたお前が、僕は大嫌いだ」
アーチャーのマスターは、嫌悪をこめて吐き捨てる。
「漫画家如きが」
「外道神父め」
不倶戴天の二人は、
「いずれ……貴様を殺すのは私だ。岸部露伴」
「お前に……できるものならな。言峰綺礼」
互いの名を呼んで、会話を終えた。
ミセス・ウィンチェスターこと、言峰綺礼は、セレニケと共に自動車に乗り込み、冬木の町を去っていく。
アーチャーのマスター、岸部露伴はそれを見送りもせず、冬木のホテルに戻る。結果を見届け、漫画のネタにするために。
「魔法少女ものか……ちょうど連載中なんだから、いいネタになってもらいたいものだ」
◆
893
:
イリヤの奇妙な冒険24
:2016/10/08(土) 20:15:48 ID:LOCSebxQ0
イリヤたちは、間桐の地下室に戻ってきた。
相変わらず、モンスターは静かに佇んでいる。手には短刀と、クラスカード。何も変わっていない。だが、内部では少しずつ、変化が進んでいるはずだ。
モンスターはまだ完全ではない。ランサーを取り込みきっていないのだ。
(ミユが解析したモンスターの内部……モンスターは聖杯と一体化していて、倒したランサーを取り込んでいる。けれど、ランサーが抵抗している)
普通だったら幾ら英霊とはいえ聖杯に吸収されるのを、抵抗することはできない。だが、モンスターと一体化したことで、聖杯の機能が歪んだため、抵抗の余地ができた。ランサーが精神の化身であるスタンドを操る能力を持っていたことも理由の一つだ。
アヴドゥルの話によれば、彼の仲間は、夢の中から攻撃してくるスタンド使いと戦ったことがあるという。夢を通じて、他者の精神を自分のつくった『悪夢の世界』に取り込み、攻撃する。悪夢に取り込まれた精神は無防備状態で、スタンドを出して抵抗することもできない。だが、最初からスタンドを出したまま眠りにつけば、戦える状態の精神で夢の中に入ることができるのだという。
それと同じように、スタンドを使いながら倒れ、聖杯に吸収されたランサーは、無防備ではなく戦える精神であった。だから聖杯とも戦い、吸収に抵抗できているのだというのが、アヴドゥルの推測だ。
(推測が当たっているかはともかく……ランサーはまだ戦っている!)
それでも、聖杯に勝つことはできない。最後には吸収される。抵抗の限界は、朝日が昇る頃。そしてランサーが完全に吸収されれば、モンスターが完成する。
能力は数倍に跳ね上がり、何より宝具の力が飛躍的に上昇する。一目で町全体の『死』を見つめ、その全てを切り裂けるだろう。冬木の町を滅ぼすのに、数分程度であろうか。その力で暴れられれば、本気で日本が壊滅しかねない。
(その前に、倒すしかない)
イリヤはクラスカードを取る。
これが最後の、決して負けられない戦いの幕開けであった。
……To Be Continued
894
:
メランザーネ
◆m2nIThBwKQ
:2016/10/08(土) 20:17:06 ID:LOCSebxQ0
今回は以上です
895
:
僕はね、名無しさんなんだ
:2016/10/08(土) 20:18:34 ID:JzOGu6Z20
乙です
岸辺露伴は動かない
896
:
僕はね、名無しさんなんだ
:2016/10/09(日) 12:35:08 ID:tv.4NfCo0
投下乙です
どういう経緯でドレスに入ることになったんだろうか
897
:
メランザーネ
◆m2nIThBwKQ
:2016/10/15(土) 16:54:00 ID:ZN/EP8xc0
投下します
898
:
イリヤの奇妙な冒険25
:2016/10/15(土) 16:55:08 ID:ZN/EP8xc0
【Fate/kaleid ocean ☆ イリヤの奇妙な冒険】
『25:Yarn――織糸』
【ある魔術師のノートより】
この数十年、聖杯戦争という儀式の仕組みが流出し、数えきれないほどの亜種聖杯戦争が行われてきた。
百の聖杯戦争のうち、九十五は準備段階で頓挫、残りの五つの内、四つは魔力を注ぎ込んでいる段階で聖杯が爆発。最後の一つが本家の冬木聖杯戦争より遥かに劣化した形で、何とか儀式として成立する。
そんな下手な鉄砲数撃てば当たるという言葉で評価される、これらの儀式であるが、中には本家にも匹敵する儀式を成功させたこともある。
太平洋戦争末期の日本で行われた『帝都聖杯戦争』。
かのアルカトラスの第七迷宮を舞台とした『迷宮聖杯戦争』
夢と悪夢の競演『スノーフィールド聖杯戦争』
魔術と異能の混然一体『杜王町聖杯戦争』
世界を終わらせる黙示録を達成させかねなかった『東京聖杯戦争』
これらは本家以上の規模で行われた聖杯戦争であるが、聖杯を完成させ、儀式が達成できたかと問われれば、ほぼノーである。
結局、どれほど有望に見えていようと、聖杯戦争は参加に値する賭けではないと結論するしかないのだ。
それでも、聖杯戦争を行う者、参加する者は後を絶たないだろう。そもそも、魔術師という生きざま自体が、根源に到達できるか否かという、ほぼ勝ち目の無いギャンブルであるのだから。
◆
「【魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)】!!」
まず攻撃を仕掛けたのはアヴドゥルであった。10個の炎の十字が放たれ、モンスターを囲み、逃げる隙間をなくす。だが、あらゆる方向から襲い掛かる炎を睨んだモンスターは、短刀を一閃する。モンスターから見て右側の炎が全て殺され、揺らいで消える。炎の檻の中に空いた穴を抜け、アヴドゥルの攻撃を切り抜けたモンスターは、攻勢に移る。
床を蹴って一瞬で間合いを詰める。狙いはアヴドゥル。
「フンッ!」
だがアヴドゥルはひるまず、スタンドで蹴りを放つ。確かにモンスターの速度は目にも止まらぬものだが、彼女より遥かに速いスタンドとも戦ったことがあるアヴドゥルにとって、とらえることは容易い。
モンスターは再度床を蹴りつけ、天井近くまで跳んで【魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)】の、炎をまとったキックをかわした。そして、跳んだモンスターは、当然落下する。落下地点にいるのは、イリヤ。
「ランサーのカードを、渡してっ!」
イリヤもまた勇んで攻撃を仕掛ける。極大の魔力砲が、空中で動きの自由がないモンスターに、叩き付けられる。
「…………」
モンスターは短刀ではなく、カードを持った方の手を、魔力砲へ突きつける。すると、魔力砲もさきほどの炎同様、炎で炙られた雪のように、形を失って消える。
《やっぱり、短刀であろうと拳であろうと、『死』に触れさえすれば、対象を滅ぼすことができるようですね》
ルビーが冷静に分析する中、モンスターが頭上からイリヤを襲う。魔力砲を、短刀を持つ方の手で殺さなかったのは、イリヤの方をより確実に殺すために。鋭い切っ先は、素手よりも正確に『死の線』をなぞり切れる。
「…………」
無言のままに、モンスターはイリヤの前に降り立ち、流れるような動きで短刀を振り下ろし、
「……?」
イリヤを切り裂く前に、動きを止めた。
ギシギシと、油の切れた玩具のように、四肢の動きが鈍い。いや、動かない。
「……!」
モンスターの表情に驚きの色が、微かに混じる。獲物を前にして、体が固定されたモンスターは、その原因を探す。まだかろうじて動く首を、ゴリゴリと無理矢理動かし、周囲を見据える。
そして見つけた。
魔力を秘めた、四角い瞳。
ただ見るだけで奇跡を起こす、堂々たる反則。すなわち、『魔眼』。
「魔眼には魔眼……!!」
神話伝説の中に語られる中でも、特に有名なもの。
ギリシア神話に語られる、メドゥーサの『石化の魔眼(キュベレイ)』。
その眼差しをモンスターに投げかけるのは、肩を露出したドレスと、長い手袋とソックスを身にまとった少女。ライダーを『夢幻召喚(インストール)』した美遊であった。
899
:
イリヤの奇妙な冒険25
:2016/10/15(土) 16:56:38 ID:ZN/EP8xc0
「やったよ美遊!!」
イリヤは戦友に声をかけながら、ルビーを振りかぶり、至近距離から魔力砲を放った。
ゴゴウッ!!
初めて、モンスターにまともな攻撃が当たる。衝撃で宙を舞うモンスターに、
「駄目押し……!」
「行きますわよ!!」
凛とルヴィアが、宝石の魔力を開放する。灼熱と烈風が、モンスターへの追撃となって襲い掛かる。
ボボボボボォォォォオオッ!!
並みのサーヴァントならそのまま消滅する威力を持った、更なる爆風に煽られ、モンスターは高く打ち上げられた。
イリヤは、この機を逃さず更に魔力砲を放とうと、ステッキを振りかぶる。
これが、イリヤたちの最初の作戦。アヴドゥルやイリヤの攻撃でモンスターの注意を引き付け、その隙に、美遊がライダーの力を『夢幻召喚(インストール)』する。
モンスターの魔眼は強力だが、魔眼で浮かび上がった『死の線』を攻撃する手段が封じられれば無力。つまり、動きを封印すればいい。
けれど、凛たちの魔術で封印するのはタイミングを合わせるのが難しい。だが、手持ちのカードには、一睨みするだけで、動きを封印できるものがあったわけだ。
ライダーの『石化の魔眼』はイリヤの魔力砲を殺した直後から、モンスターに向けられており、徐々にその動きを鈍らせ、イリヤが殺されかけるギリギリで完全に静止させることができた。
ギリギリで静止させられたのは完全に運であり、あとちょっとでイリヤは死んでいたところだ。モンスターが止まった時には、全員が心から安堵した。イリヤに至っては泣きそうだった。
ともあれ、
「砲射(シュート)ッ!!」
極大の魔力砲が再び、放たれる。だが、またも魔力砲が当たる前に、
キュガッ!!
モンスターを覆っていた爆炎が切り払われた。そして、再度振るわれた短刀により、魔力砲が両断される。爆炎で、『石化の魔眼』がモンスターの姿を正確に捉えられなくなり、わずかながらも効果が弱まってしまったのだろう。
美遊はもう一度、モンスターの動きを止めようとするが、対するモンスターは空を短刀で薙いだ。
「痛ッ!」
美遊が目を抑える。両目に鋭い痛みが走り、モンスターの姿が視界から弾けるように消えた。もう一度モンスターを見るが、白い霧がかかったように、ぼやけて見える。他の物は普通に見えているのに、モンスターだけがはっきり見えない。
視線を殺されたのだ。
(物理的に存在しないものを殺せるというの……?)
見ることにより発動する魔術である以上、魔術的に存在しているといってもいいのだろうが、常識外れなことに違いない。
美遊は今更ながらに、『直死の魔眼』の力が恐ろしくなる。
だが恐ろしがってばかりはいられない。まだ戦いは始まったばかりだ。
「『石化の魔眼』を破られた! 次の作戦を!」
「わかったっ!」
900
:
イリヤの奇妙な冒険25
:2016/10/15(土) 16:58:19 ID:ZN/EP8xc0
美遊が叫び、イリヤは頷く。
落下したモンスターは、猫のように軽やかに身を捻り、着地する。その身に傷はない。サーヴァントでも無事では済まない、相当な威力の攻撃であったはずだが、まるで堪えた様子もない。
だが、この結果は予想されたことだ。モンスターは、聖杯にくべられた6体のサーヴァントを贄として召喚された。一番単純に考えても、サーヴァント6体を殺しきるだけのダメージを与えなくては、倒すことはできない。
(でも6回分やっつければ済むなら、バーサーカーよりはまだマシだね!)
あの鉛色の巨人は、もはやイリヤにとって若干トラウマになってしまったようである。
(クラスカードを……)
美遊が使っているライダー以外の、5枚のカードはイリヤが持っている。
一番強力な戦闘能力を得られる、セイバーのカード。
分身と気配遮断を行える、アサシンのカード。
様々な魔術を行使できる、キャスターのカード。
多くの武器を投影できる、アーチャーのカード。
まだ『夢幻召喚(インストール)』をしていない未知数の、バーサーカーのカード。
(作戦に有効なカードは……)
しかしカードを選ぶ前に、モンスターが動く。
「っ! ミユっ!」
今度の狙いは美遊。『石化の魔眼』を煩わしく思ったか、先に潰す判断をくだした。
美遊は、ライダーの武器であった、鎖付きの杭剣を取り出し、投げ放つ。ジャラジャラと鎖が音を立てて振り回され、遠心力で速度と威力を増した杭剣が、モンスターへ突き付けられる。
「…………」
杭剣は美遊が鎖を動かして操作し、蛇のようにうねって、死角である背後から迫った。背中に眼はついておらず、『死の線』を見ることもできない。だが、
「…………」
背後からの一刺しを、モンスターは杭剣を見ることもなく、紙一重でかわした。完璧な見切り。そして外れた杭剣は、モンスターの短刀の一撃を浴び、破壊された。
美遊は狙いが外れたことを、悔しがりながらも、一方でやはりと思う。
(彼女の魔眼は強力。だけど、魔眼に頼り切ってはいない。武術を体に染み込ませている……モンスターは、眼が無くても、強い)
美遊は今、英霊の戦闘能力を身に着けている。だからこそ、いつも以上に相手の強さが感じ取れた。美遊の頬を冷や汗が伝う。
一方、モンスターは緩やかな動きで足を動かし、美遊の視線の死角に回り込んでくる。『石化の魔眼』は回復しているが、これでは使えない。
(下手に視線を巡らせたら、イリヤたちまで石化させてしまう……!)
魔眼は強力だが、そこまで自由に使いこなせるものではない。見た物を選んで石化させることはできず、敵味方区別なく、全員束縛してしまう。
「この! 砲射(シュート)!」
見かねたイリヤが魔力砲を放つも、モンスターは数歩動くだけで、それらをかわす。アヴドゥルの炎のように自在に動かせるものならともかく、放たれた後は真っ直ぐ飛ぶだけの攻撃など、魔眼で見るまでもないということだ。
「なら……!」
イリヤはクラスカードを取る。
「『夢幻召喚(インストール)』!!」
イリヤは、紫のローブをまとい、長い杖を持った姿へ変わる。
それは、神代の魔女の姿。ランサーが、セレニケから奪取したキャスターのクラスカード。
イリヤは、自分と一体となった魔女の記憶を感じ取り、その能力を汲み上げ、行使する。
「竜牙兵――!!」
901
:
イリヤの奇妙な冒険25
:2016/10/15(土) 17:00:07 ID:ZN/EP8xc0
イリヤの周囲に、5体の影が現れる。剣を持った、骸骨の兵士。神話の時代から伝わるゴーレムの亜種。かつてはイリヤたちを襲った、魔術の産物だ。
ザッ!!
5体の竜牙兵が、一斉にモンスターへ襲い掛かる。前後左右から囲んで斬りかかる傀儡に対し、モンスターもかわすばかりではいられない。
ヒュパッ! ズタッ!
モンスターは一瞬で竜牙兵2体を斬り裂いた。骸骨の剣士は、積み木細工のように、ばらばらに崩れ落ちる。この調子では、竜牙兵が全滅するまで3秒も持てばいい方だ。
だがそのわずかな時間が稼げれば、勝機をつかめるかもしれない。
「来て――」
美遊がその手に光り輝く手綱を出現させる。そして同時に、白く輝く獣が召喚される。
一度はバーサーカーを屠った、幻獣の疾走が再び放たれようとしていた。
(これで当たれば、モンスターを倒せるかもしれない。けれど)
モンスターの魔眼は、あらゆるものの『死』を見る。
だが、魔力砲より遥かに高速で動く物体の『死』を正確に捉え切れるか?
目で捉えられたとしても、正確に『死』を突き刺せるか?
(おそらく……突き刺せる)
まだ、足りない。
ライダーの宝具だけでは、モンスターに対抗しきれない。イリヤが横から攻撃しても、大きな隙をつくるには至らない。
(だから……頼みます。ルヴィアさん、凛さん、アヴドゥルさん!)
三人を信じ、美遊は手綱を握り、ペガサスを地より離す。浮かび上がったペガサスは、モンスターから距離を置き、狙いを定める。だが、それはモンスターも同じだ。竜牙兵と戦いながら、視線はペガサスから外していない。
ペガサスの突進が、いつかかってきてもカウンターで殺しにかかる準備をしている。
このまま突進しても返り討ちだ。だがそれでも、
「――【騎英の手綱(ベルレフォーン)】!!」
美遊は、勇気をもって、突撃を決意する。ペガサスの力が開放され、黄金の光が弾け、地下に太陽が生まれたようだった。
そして、その閃光が生まれると同時に、
「『クロス・ファイヤー・ハリケーン・スペシャル』!!」
アヴドゥルは十個の炎の十字を放つ。十字一つ一つが、身の丈ほどもある。
しかし、その程度では無論、モンスターは怯みもしない。冷静に炎の動きを見極め、最も効率の良い動きでもって、炎を殺そうとする。
だがその刃が、炎の一つを殺す直前、
パチリ
アヴドゥルの指が鳴り、炎全てが搔き消えた。
アヴドゥルの力は、『炎を操る能力』。自在に炎を生み出し、操り、そして消すこともできる。そして、消えた炎の中から、
「Anfang(セット)――!!」
「Zeichen(サイン)――!!」
宝石を手にした、凛とルヴィアが現れた。炎に包まれていたというのに、肌には火傷一つ無い。
アヴドゥルの力は、『炎を操る能力』。自在に対象を焼き、そして焼かないこともできる。
短刀を空振りさせたモンスターは、炎を着ぐるみのようにまとって目くらましとしていた、魔術師二人への対応が一瞬遅れる。その間に彼女たちは、強力な魔術を行使する。
「「『獣縛の六枷(グレイプニル)』!!」」
902
:
イリヤの奇妙な冒険25
:2016/10/15(土) 17:02:02 ID:ZN/EP8xc0
柔らかに見える薄布が幾つも生み出され、モンスターの五体を拘束する。一見、清潔なリボンにも見えるその帯は、しかしサーヴァントの力でもびくともしない。
かつて北欧神話で、世界を滅ぼすことを運命づけられた最強の魔獣、フェンリル狼を縛った封印の名をつけられた大魔術。あのバーサーカーの怪力でも押さえつけられる。
「更にッ」
だが、まだだ。指一本動けば、封印を殺して自由になるかもしれない。だから、凛は『本命の切り札』を持ち、モンスターに近づき、その碧い双眸に幅のある帯状の物を巻き付けた。
「…………!?」
眼を覆われ、隠されたモンスターの驚愕が、その場にいる者たちにまで伝わってきた。
外から見れば、今のモンスターは、顔にバイザーをつけているようであった。その眼を覆う物は、ただの目隠しではない。そんなもので『直死の魔眼』は遮れない。遮るとしたら特別な――そう、宝具でもなければ。
「ふっ……【自己封印・暗黒神殿(ブレーカー・ゴルゴーン)】、ですわ!」
なぜか自分のことのように誇らしげに、ルヴィアが言い放つ。
ともあれ、その目隠しこそは美遊がカードで呼び出したメドゥーサの宝具。『石化の魔眼(キュベレイ)』を封印していた、魔眼封じ――【自己封印・暗黒神殿(ブレーカー・ゴルゴーン)】である。
魔眼を抑えるのに、これ以上のものはあるまい。
「無駄に威張ってないで、退くわよ!」
凛に急かされ、ルヴィアはちょっとムッとした顔をしつつも、モンスターの傍から離れる。
そして、魔眼と戦闘術――全ての武器を奪われたモンスターに向かい、ペガサスの突進が執行される。
ガオンッ!!
有翼の白馬があまりの速さに一条の線となり、金色の矢のように、まっしぐらに滑空する。空間を貫き、大気を引き裂き、一秒の間もなく、モンスターとの距離を零にする。
そして、天馬の前足の蹄が、モンスターを撥ね飛ばした。
モンスターを縛る『獣縛の六枷(グレイプニル)』があまりの衝撃に引きちぎられ、その身は飛んで、壁に叩き付けられる。壁が砕けるほどの衝撃が響き、骨が砕け、肉が潰れる。
「こふっ!」
モンスターが口を開き、呼気と共に血を噴き出す。初めて、彼女にダメージらしいダメージが通った。
(よし! もう一撃!)
美遊は手綱を引き、ペガサスを動かす。白馬は一度いななくと、再び翼を力強く羽ばたかせ、モンスターに鼻先を向ける。
そして突進を始めた時、美遊の身をおぞましい寒気が襲った。
「ッ!?」
ペガサスもまた、同じおぞましさを感じたらしく、手綱を通して震えが伝わる。だが、今更突進はやめられず、モンスターに向かって突き進む。
(これは……昨夜の)
美遊は本能でその寒気の意味を悟る。
『死』が浮かび上がっているのだ。『直死の魔眼』によって。
(けど、魔眼は【自己封印・暗黒神殿(ブレーカー・ゴルゴーン)】で封印されているはず)
惑う彼女の目の前で、鮮血が舞い上がった。
「ペガ――ッ?」
天馬の首が斬り落とされた。ガクリと脚が折れ、転倒する。美しい獣は、無惨に血を噴き出し、存在を維持できずに消えていく。
倒れたペガサスから投げ出された美遊は、、床に落ちるより前にそれを見た。自分にとどめを刺そうとしている、モンスターの姿を。
その碧い眼を覆う物は無く、十数の破片に斬り裂かれた【自己封印・暗黒神殿(ブレーカー・ゴルゴーン)】が、モンスターの周囲を漂っていた。
(信じられない――)
あの宝具は、強力な結界であり、いわば小さいながらも一つの世界そのもの。魔眼に対し、一つの世界をぶつけることで封印している。それを破壊したのなら、モンスターは世界を一つ殺したようなものだ。
903
:
イリヤの奇妙な冒険25
:2016/10/15(土) 17:04:46 ID:ZN/EP8xc0
「…………」
大それたことを成し遂げたモンスターは、ただ冷たく美遊を見つめ、静かに手にした獲物を振りかぶる。その手の武器は、既に短刀ではなく、長い日本刀に変わっていた。天馬の突進で受けた全身の傷を、全く気にかけていない素振りだ。
(宝具――!!)
より精密に、より高次元に『死の線』を見ることで繰り出される、全体攻撃。たとえ剣が届かないところであっても、距離という概念を『殺し』、空間を超えて、『死』に触れることができる。それが生前から持っていた力なのか、バロールとして召喚されたことによって変質したものなのかわからないが、目の届く場所にいる限り、避けようがない。
顔につけられた【自己封印・暗黒神殿(ブレーカー・ゴルゴーン)】を、目隠しの内側に現れた『死の線』を、空間を超えて斬り裂き、破壊。その後、反す刀でペガサスの首を撥ねた。
今度は、美遊の番だ。
「――――ッ!!」
動けなかった。筋肉が、恐怖にすくんでいる。
蛇に睨まれた蛙のように、『死』に飲み込まれていく。そのうえペガサスから落ちた美遊は、鎖付きの剣となっていたサファイアから手を離してしまう。カードの効果も切れ、ライダーの姿から、ただの少女に戻ってしまう。もう身を護る術はない。
「ミユっ!! こ、こいつでっ!」
友達を護らんがため、イリヤはキャスターの魔術により、空間を超越し瞬間移動を行う。美遊の目の前に現れると、美遊に触れて、再度瞬間移動しようとする。しかし、それよりも早く、モンスターの刀は振り下ろされていた。
「きゃあっ!!」
「!! イリヤっ!!」
イリヤの背が斬られ、血が流れる。キャスターの『夢幻召喚(インストール)』が解け、その身は倒れる。倒れた拍子に持っていたクラスカードが零れ落ち、床にばら撒かれる。突如現れたイリヤは『死の線』を狙われたわけではなかったため、致命傷ではなかったのが救いか。
《イリヤさん! 早く別のクラスカードを使ってください!》
「イリヤっ!」
ルビーと美遊が必死で呼びかける。モンスターはその必死の声を聴き流しながら、刀を動かす。その刀はイリヤではなく、降りかかってきた炎と魔術を斬り裂いていた。
「くうっ!」
凛が無傷のモンスターに対し、悔し気に唸る。凛とルヴィアの魔術、アヴドゥルの炎、どれもちょっとした邪魔にしかならない。
だが、そのちょっとした邪魔が、一瞬の猶予をイリヤに与える。
「――『限定展開(インクルード)』!!」
痛みで霞む意識で、目についたカードをステッキで突く。『夢幻召喚(インストール)』よりは楽な『限定展開(インクルード)』を選択したのは、傷を負った体で『夢幻召喚(インストール)』できる自信がないためだ。
だが、ルビーはその行為を、
《まずっ!》
失敗であると焦った。
なぜなら、『限定展開(インクルード)』を行うために選んだカードがアーチャーであったからだ。
魔術協会が事前に回収したカードであったアーチャーは、『限定展開(インクルード)』した時の効果が既にわかっていた。
アーチャーのカードで出現するのは『弓』である。だが、それだけだ。矢は造り出せない。武器として完全に役立たずなのだ。
《ああもうっ! イリヤさんっ! せめてブン投げて牽制してから、次のカードを使って!!》
弓を投げつけた程度で怯むような相手ではないが、逃げることもできないのでは、それくらいしかアドバイスできない。ルビーは天に祈る気持ちであった。人ならぬステッキが、いったい何に祈るのかはわからないが。
「――えいっ!!」
イリヤは、ルビーのアドバイスに従って、出現した物体を思い切りモンスターに向けて投げつけた。
「っ!!」
モンスターの血が滴った。
《えっ》
「あ……」
ルビーが驚きに思わず声をあげる。
アーチャーのカードを『限定展開(インクルード)』して現れたのは、『弓』ではなく、二振りの中華剣――干将・莫耶であった。
904
:
イリヤの奇妙な冒険25
:2016/10/15(土) 17:05:40 ID:ZN/EP8xc0
イリヤが投げつけたのは、そのうちの一方、莫耶であった。その鋭い刃は、モンスターの剣を持つ腕に突き立ち、動きを止めることに成功する。
イリヤのまとう空気に殺気が感じられなかったために、モンスターはまさか自分を傷つけるほどの攻撃が来るとは思わず、対抗できなかったのだ。イリヤ自身、攻撃ではなく牽制にすぎないつもりだったのだから、無理もない。
それでも、美遊から受けたダメージが無ければ、通用しなかっただろうが。
「ハッ!!」
アーチャーの持っていた剣。それを自分が持っている。
その事実が、イリヤに傷の痛みも忘れる勇気を与える。掛け声とともに、彼女は残された剣、干将を振り抜いた。狙うは、モンスターの、日本刀を持たない方の手。
研ぎ澄まされた剣は、驚くほど鮮やかに、モンスターの手首を切り落とした。その手は、床に落ちる前に、咄嗟に手を伸ばした美遊によって受け止められる。
ランサーのクラスカードと共に。
「イリヤっ!」
「うわわわっ、手っ! 手っ!」
手ごと渡されて、イリヤは慌てふためくが、何とかカードを取り、手の方は床に落とした。
対するモンスターは、イリヤに剣を振るいはしなかった、タンと床を蹴って跳び、イリヤたちから離れ、凛たちを含めて、全員の姿が目に映る場所に着地する。
イリヤたちは悟った。昨夜、最後に見せた宝具を、今こそ使おうとしているのだと。
「ルビー……行くよ。最終作戦っ!!」
《どんと来いですよー!!》
ライダーの石化の魔眼を使った、動きを封じる作戦。
ライダーの宝具を使った、魔眼を遮る作戦。
そして3つ目。ランサーのクラスカードを使う作戦。
(お願いランサー……!!)
ランサーの力が、想定していたものではなければ、作戦は失敗する。だが、賭けるしかない。
「『夢幻召喚(インストール)』!!」
そして、イリヤの姿が変わる。
髪は編まれ、両側頭部で球状の膨らみをつくる。腕には蝶とナイフを象ったタトゥー。
四角い鋲を打ったズボンに、ブーツ。腕のタトゥーと同じデザインを胸部にあしらったタンクトップ。
そして、首の背中の付け根に現れた、星型の痣。
ランサーという存在が、イリヤスフィールと一体になった瞬間であった。
「【運命の石牢に自由を求めて(ストーン・フリー)】」
イリヤは、すぐにランサーの魂の像――糸のスタンドを出現させる。
そして、ランサーの宝具を展開する。
(ランサー……貴方の夢を見たよ)
イリヤが見た、ランサーの生きざま。
『アナスイが自分を犠牲にして父さんを守ってくれたから、あたしは今……かろうじて生きている。エルメェスが神父を攻撃してくれたから、ロープを伸ばしてイルカを捕まえる間が出来た』
『一人で行くのよ、エンポリオ。あんたを逃がすのは、アナスイであり……エルメェスであり、あたしのお父さん、空条承太郎……。生き延びるのよ。あんたは《希望》!!』
彼女の最期は、二つの宝具を生み出した。
一つは、自分自身を犠牲に、仲間を逃がす宝具――【運命の荒海に希望を託して(ストーン・オーシャン)】。
そしてもう一つ、
「みんな!!」
スタンド、【運命の石牢に自由を求めて(ストーン・フリー)】から糸が伸びる。
宝具の力を発揮するために。
糸の数は、6本と4本。
6本は、イリヤの手にあるクラスカードに伸びる。
セイバー。
アーチャー。
ライダー。
キャスター。
アサシン。
バーサーカー。
苦闘の末に手に入れた、6体の英霊。
そして4本は、仲間たちへと伸びる。
905
:
イリヤの奇妙な冒険25
:2016/10/15(土) 17:07:45 ID:ZN/EP8xc0
美遊・エーデルフェルトが、伸びてきた糸を自ら手に取る。
もう一方の手には、先ほど拾い上げたサファイアがある。
「イリヤ……私の友達」
美遊は過去を想う。過去が不幸であったわけでは決してない。
むしろ、胸を張って幸福といえる。愛されていた。優しくしてもらった。孤独ではなかった。
だからこそ、それが失われたことは、臓腑が掻き毟られるような苦しみだった。
幸福であったからこそ、傍にいてくれた人がいたからこそ、独りになった悲しみは耐えがたかった。
だから、サファイアが現れた時は、遮二無二すがった。ルヴィアに求めた。自分の居場所を、役割を。失われたものを埋めるように。進んで力を示し、報酬を求めた。そうして、自分の力だけで、やってきた。
だけど、
『イリヤスフィールじゃちょっと堅苦しいから、イリヤでいいよ。友達はみんなそう呼んでるから』
向こうから、与えられたのは初めてだった。
「初めての、友達」
美遊は微笑みを浮かべる。不安はなかった。
遠坂凛が、伸びてきた糸をつかみ取る。
「貴女なら勝てるわ。何てったって、貴方はこの私のサーヴァントなんだから、最強じゃないわけがないわ!」
ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトが、伸びてきた糸を、胸を張って迎え入れる。
「フッ、これも貴族の義務……力を貸して差し上げますわ!」
二人はどこまでも自分勝手で、迷惑で、けど、楽しかった。
このおかしな二人がいたから、この聖杯戦争は楽しかった。
モハメド・アヴドゥルが、伸びてきた糸に、己がスタンドの炎を纏わせる。
「イリヤ君。熱くなりやすい私は賭け事が苦手なのだが、この勝負には自信がある。君に賭けよう」
そして、今はいないランサーにも、心の中で呼びかける。
(ランサー……実を言えば、感じるものはあった。君に流れる血はおそらく……いつ、どの時代にいたのかわからないが、君も『彼ら』の血統なのだろう。ならば、私に君を信じないという選択はない)
アヴドゥルは、自分で見た彼女の戦いから、彼女の宝具の力を推測していた。
オンケルを殴り倒した、炎の拳をつくり出した宝具。
自分と仲間の力を、融合させ、より強い力へと昇華する宝具。
人と人の『出会い』という名の『重力』を、一つの力へと変える宝具が――完成する。
「【運命の重力に世界を繋げて(ホワット・ア・ワンダフル・ワールド)】!!」
4人の仲間と、7体の英霊の力が、イリヤの中で一つとなった。
906
:
イリヤの奇妙な冒険25
:2016/10/15(土) 17:08:45 ID:ZN/EP8xc0
空気が変わるのが、明らかに分かった。英霊一人でも、人の眼を引き付け、魅了してやまない存在感がある。
その特別が重ね合わされば、もはや物質的圧力さえ感じさせる。空間が唸りをあげ、世界が雄叫びをあげる。
英霊を超えた力を持ったイリヤを前に、モンスターはやはり、何も変わらなかった。
静かに、ただ静かに、『死』を見つめ、刀を構え、
「【無垢識】――」
初めて、モンスターの声を聴いた。おそらく、ランサーも聞いた声だ。
良い声だと思えた。
「【空の境界】」
戦国の英雄も手にした名刀が振るわれ、モンスターの宝具の真価が発揮される。
時間と空間を超え、いかなる防御も回避も無駄になる、根源からの襲撃が、イリヤに、そしてこの場にいる全員に襲い掛かる。
だが、イリヤは絶対の死を与える刀を、死を見据える魔眼を真っ直ぐ見つめ返す。そして背後で、スタンドが動き、
「【運命の石牢に自由を求めて(ストーン・フリー)】――ッ!!!」
幾度もの勝利をつかみ取った拳を、繰り出した。
しかし、モンスターの宝具は単純な物理攻撃では相殺できない。強度に関係なく、触れれば殺される。
そもそも、『直死の魔眼』の本質は、全ての魔術の悲願、この世界の全ての源である『根源』である。モンスターの魔眼はこの根源に通じている。この世界に存在するものである限り、この世界の全てを生み出した根源の力には、敵わない。一度見られたら、もう逃れられない。空間を、距離を、殺して刃が追いかけてくる。
セイバーであれ、バーサーカーであれ、この聖杯戦争に召喚された強大なサーヴァントたちでさえ対抗できない、必殺――無敵。
世界をも滅ぼす魔王の力は、慈悲無くイリヤに斬りかかり、
バギィィィィッ!!
根源より放たれた、神をも殺す刃を、圧し折られた。
907
:
イリヤの奇妙な冒険25
:2016/10/15(土) 17:10:00 ID:ZN/EP8xc0
「…………!?」
初めて、モンスターの表情が変わる。愕然と、自分の必殺が否定された有様を見つめていた。
「刀が砕かれて悔しい? けど、気にすることはないよ」
イリヤは強い声で言い放つ。強敵に対して、毅然としたその様子は、まるでランサーのようだった。
「これからもっと砕かれるんだから……貴方の中の聖杯が!」
「…………!」
モンスターの身が僅かながら退いた。
モンスターは知ったのだ。
目の前の少女には、自分を倒せる力がある。自分に通じる力がある。
今、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは、『根源』と繋がっている!!
「貴方を倒すのは、私であり、ランサーであり、ミユであり、凛さんであり、ルヴィアさんであり、アヴドゥルさんであり、アーチャーさんでもある……」
《誰か大切な名前をお忘れでないですかー?》
「……あとルビーとサファイアも」
本来、聖杯戦争は、七つの英霊の力を束ね、その力を一度に放出することで、根源への道を生み出す儀式。
ならば、七つの英霊の力が重なっている今のイリヤの力もまた、根源に届く力となる。
そう、イリヤ自身気づいてはいない。彼女は今、根源に繋がっていた。
だが、英霊の力を束ねたのはランサーの宝具だとしても、それで根源に通じるものか?
イリヤ以外が使って、同じことができたかどうか――何も知らずに。
同じように、英霊の力を一つの体で飲み込み、根源に繋がることなど――まるで、『そのための機能』が、もともと備わっていたかのように。
彼女が持つ力――普通人にはありえぬことを引き起こした力。
それはそもそも何なのか?
そもそも彼女は――否。
彼女は、今はただ、友のために戦う魔法少女。今はそれだけでいい。
ゆえに、ただ彼女は力を恐れず、歓迎する。
「みんなで、貴方に勝つ!」
死さえ覆し、神をも超える、力を振るう。自分の力を受け入れ、立ち向かう。
「…………!」
宝具を破られたモンスターは、折れた日本刀を放り捨て、古武術の構えを取る。
最後まで戦う気のようだ。いやそもそも、荒ぶる魔神として召喚されたモンスターに、戦い以外の発想など無いのだろう。
イリヤとモンスター。どちらも、7体分の英霊の力を内部に秘めているが、モンスターの方は、まだランサーを取り込みきっていない。
更に、イリヤにはもう4人分の力が上乗せされている。
数の差を考えれば、イリヤの勝利は必然であった。
「オラオラオラオラオラオラァ――――ッ!!」
全ての力を合わせた拳の連打が、機関銃よりもなお激しく放たれ、モンスターの身を撃ち抜く。モンスターが拳を撃ち放つ隙も無く、無数の拳がモンスターを蹂躙する。
バッグオオオオォォォォォッ!!
その身の内にある聖杯が砕け散り、存在を維持していた力が流出する。
「…………――――」
魔王として召喚されたサーヴァントは、やはり最後まで静かな表情のままに、この世から消滅する。
微かな光の粒子を残し、後には砕けた器の欠片が残るのみ。
こうして、イリヤたちの聖杯戦争は、幕を下ろしたのだった。
モンスター『バロール』――完全敗北……消滅(リタイア)
◆
908
:
イリヤの奇妙な冒険25
:2016/10/15(土) 17:11:16 ID:ZN/EP8xc0
【CLASS】ランサー
【マスター】マナヴ・ソービャーカイリヤスフィール
【真名】空条徐倫
【性別】女性
【属性】中立・善
【ステータス】筋力D 耐久C 敏捷C 魔力D 幸運E 宝具A+
【クラス別能力】
・対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
【保有スキル】
・黄金の精神:A
人間として、正しい道を歩もうとする精神の在り方。
常に十全の精神状態で戦うことができ、本来の実力以上の能力を発揮させることができる。本人以外にも影響を与え、周囲の味方の精神状態を安定させる。
・凄味:A
研ぎ澄まされた強靭な精神力によって生み出される、理屈抜きの超感覚。Aランクともなると、【勇猛】、【直感】、【心眼(偽)】の効果を兼ね揃える。
・心眼(真):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
・気配遮断:C
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく下がる。
・スタンド能力:EX
スタンド能力の保有。スタンドは特殊な才能であり、ランクは全てEXとなる。
【運命の石牢に自由を求めて(ストーン・フリー)】
破壊力A スピードB 射程距離C 持続力A 精密動作性C 成長性A
糸が集まってできた塊のようなスタンド。人型の時は、力は強いが、本体からの距離は2メートルが限界。また、糸状になれば遠い距離まで行けるが、その分、力は弱くなり、ダメージも受けやすい。
【宝具】
◆運命の荒海に希望を託して(ストーン・オーシャン)
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:10〜40 最大捕捉:100
己を犠牲として、仲間を逃がした逸話が宝具となったもの。
己が危機の中、一人残ることで、他の仲間全員を安全地帯に逃がすことができる。
宝具の形はイルカの形で表され、仲間はイルカに引っ張られてその場を離脱する。無限大の速さを持つ敵を相手に、最終的に仲間を『次の宇宙』にまで逃した、まさに最速の『槍』である。
◆運命の重力に世界を繋げて(ホワット・ア・ワンダフル・ワールド)
ランク:E〜A++ 種別:対人宝具 レンジ:10〜40 最大捕捉:100
自分と仲間たち全員の力を合わせて、強敵と戦った逸話が宝具となったもの。
自分と仲間を糸で繋ぐことで、自分に仲間の力を上乗せすることができる。
……To Be Continued
909
:
メランザーネ
◆m2nIThBwKQ
:2016/10/15(土) 17:12:36 ID:ZN/EP8xc0
以上です
910
:
僕はね、名無しさんなんだ
:2016/10/15(土) 21:51:36 ID:E/3Uiskc0
投下乙です
大団円も近いか
911
:
メランザーネ
◆m2nIThBwKQ
:2016/10/19(水) 21:06:55 ID:wUkee6kg0
最終回、投下します
912
:
イリヤの奇妙な冒険26
:2016/10/19(水) 21:08:31 ID:wUkee6kg0
【Fate/kaleid ocean ☆ イリヤの奇妙な冒険】
『26(終):Zero――可能性』
【とある漫画本より抜粋】
『無』から『有』は生まれない、という表現がよくなされる。
だがそれはかつての話だ。現代の物理学では、まったくなにもない『無』=『絶対真空』の中で、『素粒子』という超とてつもなく小さい粒子が、突然発生することが証明されている。
そしてその『素粒子』はエネルギーに変身、化ける事ができる。エネルギーになって突然発生したり、突然消えたりするそうなのだ。
この『素粒子』は宇宙の彼方の理論や話ではなく、この地球上の日常でも満ち溢れるように行われている出来事だ。
『引力』とか『質量』もこれが原因らしい。
つまり『無』から『有』は生まれ、『無』とは『可能性』の事だというのだ。
◆
「これは……なんだ?」
雀花の問いに、イリヤは答えられない。
「やー……なんだと言われても、私にもよくわからないんだけどさ」
日本育ちスキルの代表格、曖昧スマイルを浮かべるイリヤの右腕には、少し頬を赤くした美遊がコアラのようにしがみ付いていた。
「な、なんというデレっぷり……! これは……」
「イリ子のやろー! 俺たちの知らないところで美遊ルート攻略しやがったのか!!」
那奈亀が戦慄し、龍子がハンカチを絞り上げて唸り声をあげる。
「ま……まぁ仲がいいのはいいことじゃない」
今にも興奮に身を任せて襲い掛かりそうな龍子を宥めながら、美々が曖昧スマイルをイリヤに返す。
学友たちの疑問は当然である。ついこの間まで、決してクラス内でなれ合わず、孤高を貫いていた転校生が、ある日いきなりご覧の有様だ。
「う、うん……」
イリヤは髪の毛をいじりながら、自分でも悩む。
一体何があったのか?
◆
913
:
イリヤの奇妙な冒険26
:2016/10/19(水) 21:10:01 ID:wUkee6kg0
「ライダー、アサシン、セイバー、アーチャー、バーサーカー、キャスター、そして……ランサー」
昨夜、モンスターを討ち果たしたイリヤたちは、地上に上がって地面にカードを並べていた。
「はあああああああ…………すべてのカードを回収完了。これで……コンプリートよ」
盛大に息をつく凛。そしてイリヤも美遊も、全員が、全てを終わらせた後の深い息をついていた。
全員、ようやく生きている実感が湧いてきたのだ。まだ朝日が昇るには遠く、冷えた夜の空気に満ちていたが、死に晒されていた寒気に比べれば、非常に暖かく感じられる。
「終わったんだ……」
息を尽き終えたイリヤは、ランサーのカードと、アーチャーのカードを見つめる。
(ランサー、アーチャーさん……終わったよ)
嬉しそうでいて、どこか切なさを含んだイリヤ。そんな彼女の顔を、母が子を、もとい、姉が妹を慈しむような眼で見つめながら、凛とルヴィアは、
「イリヤ」
「美遊」
声をかけられ、二人の魔法少女が振り向く。
「……勝手に巻き込んでおいてなんだけど、貴方たちがいてくれてよかった」
「私たちだけでは、おそらく勝てなかったでしょう」
舐めていたつもりではなかったが、できない任務ではないと思っていた。だが、それは慢心であったのだろう。
仮にも英霊を敵とした戦い――これほど厳しいものになるとは思わなかった。
「最後まで戦ってくれて……ありがとう」
「私からも、お礼を言わせていただきますわ」
だから凛とルヴィアは、心からの感謝を口にする。命を賭した聖杯戦争になど、参加する義務はなかった、それでも戦い抜いてくれた小さな子供に、プライドの高い魔術師二人は、尊敬さえ込めて頭を下げた。
イリヤはもちろん、美遊もその真正面からの感謝に、むず痒そうに照れた様子であった。
「それじゃ、このカードは私がロンドンに……」
そして、束ねた7枚のカードを掲げた凛であったが、
ヒョイ
「ん?」
凛の手からカードが消える。
ババババババッババババッ!!
直後、盛大な音が響き渡り、凛が頭上を見上げると、
「ホ―――ッ、ホッホッホ!! 最後の最後に油断しましたわね!!」
ヘリコプターから降ろされた縄梯子に手足をかけ、高笑いするルヴィアがいた。もちろん、縄梯子を掴むのとは逆の手には、しっかりとカードがあった。
「ご安心なさい! カードは全て私が大師父の元へ届けて差し上げますわ〜〜っ!!」
「んなああああああッ!!」
どうやら、事前に魔術で音を消したヘリコプターを待機させていたらしい。
「ちょ、ちょっとあんたっ!! 手柄独り占めする気かコノォォォッ!!」
「ホ―――ッ、ホッホッホ!!」
天高く飛んでいくヘリコプターをすぐさま追いかけ、魔弾をズギュンズギュンと撃ち放ちながら追いかける凛。
最後まで仲の悪い二人は、朝日が昇る前の暗い町を駆け抜けていった。
◆
914
:
イリヤの奇妙な冒険26
:2016/10/19(水) 21:11:42 ID:wUkee6kg0
(……そのままルヴィアさんは逃走。朝まで二人はおいかけっこをしていたそーな。そして、今朝になったら突然この状況なんだよね……)
あれから一度、疲れ切った体を休めるために家に戻り、朝になったら美遊が玄関まで迎えに来ていた。
それから一緒に学校に来たわけだが、通学路でもずっと引っ付きっぱなしなのだ。正直恥ずかしいが、振りほどくほど迷惑というわけではない。
ただわけがわからないだけだ。
(何がなんだか……や、別にいいんだけど)
イリヤの葛藤に気づいているのかいないのか、美遊はベタベタと離れない。
「まーいいや! ミユキチも丸くなったってことで! 今後とも仲良くしていこーぜっ!!」
細かいことを考えるのをやめた龍子が、能天気な笑い声をあげて、美遊にベシベシと親愛を込めて、軽いチョップをベシベシと入れる。
が、
「は? どうして貴方と仲良くしなくちゃいけないの?」
美遊は、そんな気安い龍子の手をはじき、冷酷に言い放った。
氷の針のような眼差しが、龍子を、クラスメートたちを突き刺す。
「私の友達はイリヤだけ。貴方たちに関係ないでしょう? もうイリヤには近づかないで」
殺気さえ感じさせる冷たい声に、雀花たちは血の気が引いた。本気だとわかった。
「う……うおおアアアアアアッ!!」
「な……泣かせたぞーッ!!」
龍子がギャーギャー泣き出し、雀花が慌てる。しかし、誰より慌てたのはイリヤだ。
「ちょ、ちょっとミユ〜〜ッ!?」
「?」
ガッと美遊の肩を掴んで迫るイリヤに、美遊は自分の行動にまるで疑問を持っていない様子で小首を傾げる。
「何を怒ってるの……? 私の友達は生涯イリヤだけ。他の人なんてどうでもいいでしょ?」
「何それ重ッ!? ていうか友達の解釈ヘンじゃない!?」
困惑の色を浮かべ、イリヤの方こそおかしいと言わんばかりの美遊に、イリヤは頭を抱える。
(わっ、わからない……っ! イヤ、結構前からそうだったけど、この子が何考えているのかわからない……っ!! 誰か助けてっ! ルヴィアさんは……駄目だっ!! ア、アヴドゥルさんっ……戻ってきてぇっ!!)
胸の奥で、真剣に呼びかけるが、それは無理である。
唯一の常識人、モハメド・アヴドゥルは、もう日本を出てしまったのだから。
◆
凛とルヴィアが去ってしまった後、ポカーンとしていたイリヤたちに、アヴドゥルは声をかけた。
「あー……それでは、私もこの町を去るとしよう。君たちには世話になった」
決戦を終え、強敵を倒したハッピーエンドの空気とは思えぬ、コメディチックな空気の中で、少し言いづらそうであったが、アヴドゥルは真摯に感謝の言葉を述べる。
「セイバーにバーサーカーに、モンスター……私の炎が通用しない相手があれほどいるとは。補助程度の役割しかできなくてすまなかった」
申し訳ないと謝罪するアヴドゥルであったが、その3体はサーヴァントの中でも規格外の輩だ。むしろそれら以外のサーヴァントになら正面から戦えて、勝ち目もあるというのが恐ろしい。
補助にしても、彼の炎が注意を引き、時間を稼いでくれなければ詰んでいた局面は幾つもあった。
「い、いいえっ、私こそ、お世話になりましたっ!」
「ミスター・アヴドゥルには、助けられました」
イリヤが慌てて頭を下げる。美遊もまた、クールに礼をする。
「ふふ……いつまでも仲良くするんだぞ? また縁があったら会おう」
赤き炎を操る、褐色の戦士――モハメド・アヴドゥル。
最後まで、頼れる大人のイメージであった。
◆
915
:
イリヤの奇妙な冒険26
:2016/10/19(水) 21:14:25 ID:wUkee6kg0
エジプトに帰ってしまったアヴドゥルが、ジャジャ〜〜ン、待ってましたと助けにきてくれるはずもなく、混迷は深まっていく。
「オギャアアアアアアァァァ!!」
「いかん! タッツンがマジ泣きだ!」
「ちょっとイリヤ! なんとかしれー!」
「わ、わたしー!?」
教室中がざわめき、パニックは収まらない。
(ああ……戦いは終わったけど……もしかしたら本当に大変なのかこれからなのかもしれない……)
日常に帰ってきたはずのイリヤは、別種の戦いに身を投じるのだった。
◆
カツカツと音を立て、男はユグドミレニア家の館を闊歩する。
背は高く、逞しい体格。やや長い後ろ髪。まとっているのは、教会の神父が着用する立襟の祭服、カソック。
イリヤたちに、ミセス・ウィンチェスターと名乗っていた男である。
彼は、一つのドアの前で立ち止まり、ノックをする。数秒後、
「開いているわ。入っていいわよ」
ドアの向こうから許可を貰い、彼は入室する。
「やあ、その後どうだね? セレニケ」
中にいた女性、セレニケに声をかけると、彼女は頬に飛んだ鮮血を拭いながら答えた。
「別に? いつも通りよ」
セレニケは物言わぬ肉塊に成り果てた生贄から、ナイフを抜き取る。
「もうメイド服は着ていないのかね? 似合っていたのに」
「殺すわよ? あんなものは、任務だから着ていただけ」
クックッと笑う男にナイフを向けるセレニケの眼には、殺意があった。
「仕方なかろう、クラスカードで『夢幻召喚(インストール)』したときと、同じ衣装を着こむように言われたのだから。ドレス製クラスカードに適正があったのは、魔術師としての力が増えるという点で喜ぶべきではないか?」
「ちっ……確かにそれなりに使えはするわ。癪だけど。生贄によって力を得る、私の黒魔術において最も注意すべきは、負の力や、他者からの怨恨を貯め込みすぎて、暴走や自滅を起こさないこと。その点で、己が身に死病を抱えて、自分だけ生きながらえた者――他者からの呪いを受けながら、己を曲げなかった女――『腸チフスのメアリー』は、手本にすべき存在と言えなくもない」
セレニケが所持していたクラスカードは『腸チフスのメアリー』。クラスはイレギュラークラス、『使用人(サーヴァント)』のサーヴァント。
ステータスは全く大したものではないが、逃げ続けて賄い婦の職に就き続けたという逸話から、逃走能力は中々のものだ。また、チフス菌を持ちながら発病しなかった逸話により、病気をもたらす呪いなどの魔術は通用しない。冬木市民会館で戦った後、凛にガンド魔術で攻撃されて、無事でいられた理由がこれである。
916
:
イリヤの奇妙な冒険26
:2016/10/19(水) 21:17:03 ID:wUkee6kg0
「けどメイド服は私に似合わないわ……見るのはいいけど。そうね、今度、生贄に着せたうえで儀式をしてみようかしら」
ちなみに、セレニケが人間を生贄とする場合、彼女が好みとするのは美少年である。
「ああでも……あの小娘に着せて、儀式をしてみたいものね。生き延びたんでしょう? イリヤちゃんは」
イリヤの名を口にするとき、彼女の口からは同時に瘴気が放たれたように感じられた。よほどの執着をしているのだろう。
「ああ。あのモンスターに打ち勝ったらしい。その時に見せた力もさることながら、『ドレス』研究陣は、クラスカードが聖杯戦争以前より強化されていることに関心をもったらしいな。アーチャーのカードが、聖杯戦争前は役立たずの弓した『限定展開(インクルード)』できなかったのに、サーヴァントの核となった後では、二振りの中華剣を『限定展開(インクルード)』してみせた」
そう言われ、セレニケは不思議に思った。最後の戦いにおいて、使い魔の類はモンスターによって始末されており、セレニケたちも脱出していた。一体、誰がその情報を持ってきたのか。
(魔術か、サーヴァントか、それともスタンド使いか。私たち以外にも、送り込まれた実力者がいたってことかしらね? あいつら、何を隠しているのか……)
秘密があることは不満だったが、魔術師は隠すことが基本である。仕方がないと諦め、セレニケは続きを聞く。
「クラスカードは根源にアクセスしてサーヴァントの力を降ろしているが、そのアクセスをする力が、サーヴァント召喚を経て強化されたのだろうというのが、研究陣の推測だ」
「へえ……つまり、ドレスが造った弱いクラスカードも、それを使って聖杯戦争をすれば、もっと強いカードになるかもしれないって?」
「まあな。だが、冬木にばら撒かれたカードの正体や、誰が造ったのかはわからずじまいだ。しばらく、あの町には監視が向けられるだろうな」
眼鏡の魔女は、ナイフの血を拭き取りながら話を聞き、
「ふぅん……じゃあ、まだ機会はあるわけね」
何の機会かなど、聞くまでもなかろう。その、血に酔い、残酷な死を想ってうっとりとほほ笑む彼女の様を見れば。
「ああ……魔法少女を愛でる機会は、まだあるさ」
同志に向かって男――言峰綺礼は頷く。その顔は、未来に胸をときめかせ、とても愉しそうだった。
◆
917
:
イリヤの奇妙な冒険26イリヤの奇妙な冒険26
:2016/10/19(水) 21:18:08 ID:wUkee6kg0
「はい……?」
携帯電話を耳に当てる凛は、嫌な汗を流し、死んだ魚のような目をしながら聞き返した。
「どういう……意味ですか。大師父」
『言ったままの意味じゃ』
電話の向こうで言葉を返す男――魔道元帥キシュア・ゼルレチッチ・シュバインオーグは、聞き違いであってほしいと願う凛を、絶望させた。
『カード回収はご苦労じゃった。約束通り、お前たちを弟子に迎えるのはやぶさかではないが……』
魔術の世界で最高峰に立つ男は、残念な事実を口にした。
『魔術を学ぶ以前に、お前らには一般常識が足りておらん』
「なっ……」
凛は反論しようとしたが、客観的に見て、宝石翁の言うことはもっともである。
『幸い、日本は《和》を重んじる国じゃ。留学期間は一年。喧嘩で講堂をブチ壊すような性格を直してこい。弟子にするのは……これからじゃな』
言うべきことを言い終えると、無慈悲に電話を切る。いや、条件付きにせよ弟子入りは許可したのだから慈悲はあるのだろう。
けれど、凛の立場では、散々苦労して得られた権利を、直前で反故にされたに等しい。
バキィッ!!
携帯電話を片手の握力で握りつぶし、
「ふッッッざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」
墜落し燃え上がるヘリコプターと、顔面から大地に叩きつけられて眠るルヴィアをバックに、吠えるのだった。
◆
騒動の多々あった学校から帰る途中に、憤懣やるかたないという様子の凛に会い、まだしばらくこの町にとどまることになったという話を聞き、イリヤは正直、嬉しかった。
凛には悪いが、クラスカードがもう一年だけでも近くにあることが、嬉しかった。
(私はランサーの夢を見た)
イリヤは回想する。ランサーの生涯を――そして、知っている。ランサーが、いつどこで生まれ、どこで育ったか。断片であるが、知っている。
(ランサーは、今この時間なら、まだ生きている)
彼女が、未来から来た英雄であったことも、知っている。
(もしかしたら、今から準備して、彼女の手助けをすれば……彼女は死なずにすむかもしれない)
ランサーの願いは『敵と戦うため、戦場に戻ること』。けれど、イリヤの行動によっては、その願いを、願わなくてもよくなるかもしれない。
ランサーが、戦場で死ななくてもよくなるかもしれない。
彼女が育ったのは、アメリカということしかわからない。広いアメリカで、一人の子供を探すなど、どれだけ難しいかはわかっている。
でも、非日常を知ったイリヤには、『可能性』はあると思えた。
(ミユにも相談……していいのかな?)
今日の態度を見ると、ちょっと怖いが、ランサーには美遊も世話になっていたし、多分大丈夫だろう。
(でも少し、様子を見ながら相談しよう)
ルビーにせよ凛にせよ、どうも真剣な相談をするのが、ちょっと怖い相手しかいない。イリヤは頭を悩ませる。
その歩みはまだまだ鈍く、いつ辿り着けるかわからない。
それでも、イリヤが立ち止まることは、無いだろう。
(今、ランサーは私と……同い年)
だからきっと、また会える。
【Fate/kaleid ocean ☆ イリヤの奇妙な冒険】――完
◆
◆
◆
918
:
イリヤの奇妙な冒険26イリヤの奇妙な冒険26
:2016/10/19(水) 21:20:55 ID:wUkee6kg0
エジプト、カイロ国際空港。
エジプト航空の拠点であり、アフリカで2番目に搭乗客の多い空港である。
その空港にモハメド・アヴドゥルの姿はあった。
「やはり、故郷に帰ると落ち着くな」
しみじみとアヴドゥルは呟き、時間を確認する。この後、スピードワゴン財団の人間と会う予定であるが、それまでまだ1時間ほど間がある。
「カフェででも時間を潰すか……」
そうして歩き出したアヴドゥルの視界の片隅を、一人の女性が横切った。
(…………)
無意識に、アヴドゥルはその女性を目で追う。
短髪の赤毛、皮の手袋にスーツ。顔立ちは凛々しく、美しい。まるで物語の中の女騎士のように颯爽としていながら、同時に重々しい落ち着きを兼ね備えている。
目で追うのも致し方ない美女であるが、アヴドゥルの注意を引いたのは美しさだけではない。
(強い……な)
アヴドゥルは女性の姿勢、歩き方から、その力量を看破する。
重心がブレることのない、武術を心得た者の歩き方。どの方向から襲われても対応できるようにしている。
顔の広いアヴドゥルは、武の達人たちも何人か知っているが、そんな中に入れても彼女はトップクラスだろう。
女性は、ロンドンにあるヒースロー空港行きの飛行機の、搭乗口に向かっていった。
(何者……あの雰囲気は、傭兵か……?)
ふと思い立って、アヴドゥルは荷物から商売道具を取り出す。占いに使う、タロットカード。カードの束を幾度か切った後、束の中から一枚抜く。
そして表を見ると、獅子を屠る大男が描かれていた。
「【力(ストレングス)】……タロット8番目のカード。暗示するのは、『挑戦』、『強い意志』、『秘められた本能』……か」
それがあの女性を意味するカードなのか、あの女性と関わる誰かの方を意味するのかわからないが、このカードを抜いた時、なぜか、あの赤い短髪の女性ではなく、つい昨日まで共にいた少女の姿が脳裏に浮かんだ。
「あるいは、これは君のカードなのか? イリヤくん」
『秘められた本能』――彼女の中に眠っている力。
「ふむ……どうやら、彼女の冒険は、まだこれからのようだな。だが、彼女たちなら、負けはしないだろう」
窓からヒースロー行きの飛行機を見つめながら、アヴドゥルは予言するのだった。
……To Be Continued?
919
:
イリヤの奇妙な冒険26イリヤの奇妙な冒険26
:2016/10/19(水) 21:23:34 ID:wUkee6kg0
・ドレス製クラスカード:ステータス
【CLASS】キャスター
【真名】サラ・パーディー・ウィンチェスター
【性別】女性
【属性】中立・中庸
【ステータス】筋力E 耐久E 敏捷D 魔力B 幸運D 宝具C
【クラス別能力】
・陣地作成:C+
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
彼女は、『工房』とは異質な『迷宮』を形成することが可能。
・道具作成:C
魔力を持つ道具を作り出すスキル。
悪霊避けの礼装を作ることを得意としている。
【保有スキル】
・交霊:B
良き精霊からお告げを聞くことができる。戦術、戦略を組み立てるのに役立つ。
・黄金律:B
身体の黄金律ではなく、人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。一生金には困らないが、それが幸せとは限らない。
【宝具】
◆我が愛と逃亡の日々(ウィンチェスター・ミステリー・ハウス)
ランク:C 種別:対陣宝具 レンジ:50 最大捕捉:300
彼女が生前建設した『ウィンチェスター・ミステリー・ハウス』を、魔力によって再現したもの。再現と言っても、改変することもできる。
自分の心象風景を具現した異界を一時的に世界に上書きして作り出す、固有結界とは似て非なる大魔術。
対象を自分が逃げ切るまで、建物に閉じ込めることができる。この建物の中では幻想や神秘は弱体化してしまう。脱出するには、館の迷路を解き明かすしかない。
◆
【CLASS】サーヴァント
【真名】メアリー・マロン
【性別】女性
【属性】混沌・悪
【ステータス】筋力D 耐久C 敏捷C 魔力D 幸運E 宝具C
【クラス別能力】
・単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクCならば、マスター不在でも1日間現界可能。
【保有スキル】
・自己保存:B
マスターが無事な限りは殆どの危機から逃れることができる。
・死病保菌者:A
病気になる条件が整っても、その身が病気になることがない。病気になる呪いなども通用しない。
【宝具】
◆生きた究極の選択(ギルティ・オア・ノットギルティ)
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
多くの人間を死に追いやっても、それが罪であるか否か、誰にも答えを出せない彼女の存在そのものが宝具となったもの。
自身への危機を、無傷で回避することができる。危険が大きいほど回避確率は下がるが、最低でも五割の確率で回避できる。
920
:
メランザーネ
◆m2nIThBwKQ
:2016/10/19(水) 21:25:23 ID:wUkee6kg0
これで【Fate/kaleid ocean ☆ イリヤの奇妙な冒険】は終了となります
今回の投下をもって、このスレでの投下は最後にしようと思います
以後、小説を書いた際は、
>>817
にもあるとおり、『web小説投稿サイト・ハーメルン』にてペンネーム『荒風』名義で発表するつもりです。長年、お付き合いいただき、ありがとうございました
よろしければ、またいつか書く物語に、お付き合いください
921
:
僕はね、名無しさんなんだ
:2016/10/19(水) 21:38:42 ID:l0GQV0yI0
乙です
922
:
僕はね、名無しさんなんだ
:2016/10/19(水) 23:59:45 ID:SFPYoLuQ0
乙です
長いこと楽しませていただきました
メランザーネ氏改め荒風氏の作品も追わせていただきます
923
:
僕はね、名無しさんなんだ
:2016/10/20(木) 18:47:55 ID:hnXC3m9Q0
乙
ハーメルンのアカウントを登録してやると思ったときにはスデに登録しているんだッ!
924
:
僕はね、名無しさんなんだ
:2016/10/20(木) 19:50:26 ID:8llfmJKg0
乙でした
SEEDのころから読ませてもらってました
次はハメでお会いしましょう
925
:
僕はね、名無しさんなんだ
:2016/10/28(金) 18:51:17 ID:.VnjYzCE0
いつの間にか900越えてる
次スレは「FSO(Fate/Stand Overdrive)」でいいかな
926
:
僕はね、名無しさんなんだ
:2017/01/02(月) 20:39:24 ID:5454nXRY0
ここも潮時かな
927
:
17分割
:17分割
17分割
928
:
僕はね、名無しさんなんだ
:2019/06/26(水) 22:18:12 ID:XBtgLWuw0
ハサン連中で呪腕先生、百貌さん、静謐ちゃんは5部の護衛チームと暗殺チームのどっちの所属が映えるかな?
個人的に能力的には後者だけど本人らの性格考えると前者のほうが適任臭いんだよな
静謐ちゃんとか能力的にはフーゴ、性格的には新生フーゴチームにいたジョルノを崇拝してる女の子と似てるし
929
:
僕はね、名無しさんなんだ
:2019/06/27(木) 18:53:18 ID:Vv/3le1k0
静謐はいいけど呪腕や百貌がジョルノチームなのはちょっと
930
:
僕はね、名無しさんなんだ
:2019/06/27(木) 20:28:05 ID:muu8wqTI0
呪腕と百貌ってやっぱ敵のほうが映えるのか?
931
:
僕はね、名無しさんなんだ
:2019/06/28(金) 11:48:23 ID:8FL.MK3Y0
どっちかというと味方では映えない、という感じ
932
:
僕はね、名無しさんなんだ
:2019/08/09(金) 19:13:37 ID:6WBjNuW20
ところで協会&協会的にはスタンド使いってどうなんだろ?
933
:
僕はね、名無しさんなんだ
:2019/08/26(月) 20:33:20 ID:.Y3r3xJQ0
>>931
FGO6章みたいに味方でも映える可能性あると思うけどな?
敵のほうがいいのか?
934
:
僕はね、名無しさんなんだ
:2019/08/26(月) 21:47:13 ID:luCGfV9Y0
呪腕が心臓潰してもジョルノなら心臓を生み出して難を逃れそう
静謐の毒もジョルノなら蛇から血清を作れそう
百貌は・・・ひたすら無駄無駄ラッシュを叩き込む!
しかしまあ間違って板クリックしたのにえらいタイミングで返信来てたの見つけたわ
実に2ヶ月ぶりにこのスレ見たよ
935
:
僕はね、名無しさんなんだ
:2019/08/27(火) 18:28:24 ID:3orDX8hU0
魔術回路というのはジョルノの生命を生み出す能力で増やすことができるのだろうか?
柱の男たちは魔術刻印が入った腕を魔術師から切断して継げ変えたら
魔術回路や魔術刻印を使用できるのだろうか?
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