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月姫ネタ総合スレ

488月光のカルネヴァーレ:2007/02/22(木) 12:49:24 ID:KrDxbWVk
身体を動かすのは――アンリマユだった。

風が巻く。
聖杯から突き出す幾重もの魔力が、刃となって敵を払う。

桜の意志を無視して、体が動いた。
この世全ての悪は、正義の味方を殺しに宙を舞う。

身体に充填された魔力が、弾ける。
弾き飛ばされた敵に向け、間髪入れず飛ぶ刃。

士郎は体勢低く、前に飛び出す。
放たれた魔力を、さらに機敏な動きで躱す。

地を這う、低い踏み込み。

アンリマユは、魔術回路を起動させる。
襲いかかるその敵を、真正面から迎え撃つ。

(――先輩ッ!!)

桜の想いは、届かない。声は声にならない。
たとえ声になったところで、理性をなくした者には届かない。

必死に、身体のコントロールを奪い返そうとする。

だが、アンリマユの心に迷いはない。
惑うばかりの桜が、奪えるはずがなかった。

為す術がない。

今の桜にできることは、天に祈るだけ――

「――グォッ!」

「――――く」

奇蹟は起こらなかった。

この世全ての悪の刃は、英霊の肩を刺した。
正義の味方の双剣は、肘を砕いた。

鮮血と鮮血が交差する。

カキリ カキリ

身体の中で、神経が軋んだ。
ギアが変わる。回路がつなぎ替えられる。

以前とは違い、遙かに機敏に。

身体が、創り変えられた。
桜の外骨格で、しかし、それは汚染された身体――

英霊を殺すための、身体だった。

「グ、ガァ、グゥ――」

「…………」

傷つきながらも、向き合う両者。

討伐するもの、されるもの。

交わされるのは、言葉でもなければ、心でもない。

殺すか、殺されるか。
ただ、それだけの関係だ。

(――そんなのは嫌です!)

桜は叫ぶ。

意識の奧に、自分の身体が押し込められていく。
その感触に、力の限り抵抗しながら。

だが、桜の願いは届かない。
ほんの僅か、アンリマユの身体を軋ませるだけ。

この世全ての悪は刃を、正義の味方は双剣を。
最早、微塵の躊躇もない。

殺し合う。壊し合う。


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