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あの作品のキャラがルイズに召喚されましたin避難所 3スレ目

1名無しさん:2016/02/24(水) 22:25:35 ID:ei2Etu0.
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。

(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されましたin避難所 2スレ目
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/9616/1281252605/

まとめwiki
ttp://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/

     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!

     _
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし     内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ    ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l      ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。

.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。

951ウルトラ5番目の使い魔 50話 (5/15) ◆213pT8BiCc:2016/11/02(水) 00:07:28 ID:y0dAWjPE
 だが、ディプラスの接近はガイアとアグルもとっくに気づいていた。アグルはいったん東方号をガイアにまかせると、接近してくるディプラスのほうを向き、指先から白色のエネルギー弾を放った。
『アグルスラッシュ!』
 エネルギー弾はディプラスの頭に当たってスパークし、ディプラスは激しく首を振り動かして苦しんだ。
 しかしディプラスはダメージを受けながらも、まったく躊躇することなく東方号を狙ってくる。アグルとしては、今の威嚇で退散してくれればよいと思ったのだが、そう願えないのであれば是非もないと、さらに強力なエネルギー弾を投げつけた。
『リキデイター!』
 青い光弾はディプラスを今度は粉々に打ち砕き、破片を湖の中に散乱させた。
 すごい、コルベールやファーティマは息を呑んだ。あの怪獣をたった一撃で倒してしまった……いや、このくらいで喜んではいられない。本当に倒すべき敵は、この上にいる。
 ガイアとアグルに支えられて、水面がすぐそこに見えてきた。さあ、いよいよ悪党どもに目にものを見せてやるときだ。
 
 
 そう、すべてをひっくり返すときが来たのだ。
 ラグドリアン湖の湖畔で続く死闘は、アークボガールの完全勝利に終わろうとしていた。
「これまでだな。さあ、我の胃袋がお前たちを待っているぞ。寂しがることはない、すぐにこの星の生き物たちもまとめて後を追わせてやろう」
「まだまだ、勝負はこれからだっ!」
 捕食器官を開いてヒカリとジャスティスを飲み込もうとするアークボガール。ふたりはカラータイマーの点滅が限界に来ながらもなお抗うが、もう数秒も経たずに飲み込まれてしまうだろう。
 もうダメなのかっ? 戦いを船上から見守っていたベアトリスやギーシュたちは、自らの無力を嘆き、始祖と神に祈った。
 この世に奇跡というものがあるなら、それは今こそくれ!
 しかし、神は奇跡を起こさない。奇跡を呼び込むのは、常に人の努力に他ならない。
 そのとき、黒い空を映して墨のような水面をたたえていたラグドリアン湖が、金色のまばゆい光を放って輝き始めたのだ。
「な、なんだこれは!?」
 湖上のギーシュたちだけでなく、輝きに目を焼かれてアークボガールもうろたえる。
 いったい何が? その答えは、水柱とともに彼らの眼前に現れた。

952ウルトラ5番目の使い魔 50話 (6/15) ◆213pT8BiCc:2016/11/02(水) 00:09:04 ID:y0dAWjPE
「ジュワッ!」
「トゥワッ!」
 水面に浮き上がってくる東方号と、それが起こした大波が彼らの乗る小船を翻弄する。
 だが、彼らの誰もが振り落とされそうな揺れも、頭から降り注いでくる水も気にしてはいなかった。そんなものよりも、彼らは東方号に続いて現れたふたつのシルエットに釘付けになっていたからだ。
「ウルトラマンだ!」
 ガイアとアグルのふたりの雄姿。それは、彼らから絶望の二文字を消し去るのに十分すぎる威力を持っていた。皆が空を指差し、声を限りに叫んで喜ぶ。
 東方号は浅瀬に座礁して止まり、彼らの見ている前でふたりのウルトラマンはアークボガールの前へと着地した。激震とともに、ガイアとアグルの足元の土砂が舞い上がり、すさまじい重量感に、まるで大地と大気が呼応するかのようだ。
「き、貴様らは!?」
 想像もしていなかったガイアとアグルの登場に、アークボガールの口から動揺を隠せない声が漏れた。
 ガイアとアグル、このふたりがハルケギニアに姿を現すのはこれが初めてで、当然アークボガールも彼らのことは知らない。もちろんベアトリスやギーシュたちもだ。ヒカリとジャスティスでさえ、見も知らぬウルトラマンの登場に戸惑ったが、ガイアは彼らに対して落ち着いた声色で告げた。
『はじめまして、後はまかせてください』
『君たちは?』
『話は後で、安心してください。僕らも、ウルトラマンです』
 短いが、確かな信頼がガイアの言葉には込められていた。ヒカリとジャスティスは、バトンを渡すときが来たことを悟って後ろへと下がる。彼らが何者であろうと、信じることからすべてが始まる。
 しかし、たったひとり、ウルトラセブンことモロボシ・ダンだけは、彼らを見るのが初めてにも関わらずに既視感を覚えていた。
「彼らは……」
 M78星雲出身のセブンはガイアとアグルを見たことはない。だが、頭のどこかで懐かしいという思いを感じている。
 そうか、メビウスの言っていた、これがそうか。
 ダンは既視感の意味を悟り、うなづいた。そんなダンに、ギーシュが興奮して詰め寄ってくる。
「あ、あれが、あなたの兄弟? ウルトラ兄弟なんですか!」
「いや、違う。だが、違っていない。別の世界の、もうひとつの兄弟たちだ」
「は、はぁ?」
 ギーシュは意味がわからないと戸惑うが、ダンの表情には彼らは仲間だという確信があった。

953ウルトラ5番目の使い魔 50話 (7/15) ◆213pT8BiCc:2016/11/02(水) 00:10:55 ID:y0dAWjPE
 なるほど、詳しいことはわからないが、異世界への門へたどり着いたことは無駄にはならなかったらしい。ダンは、ともすれば自分が彼らを死地に送り込んでしまったのではないかと心苦しさを感じていたのだが、彼らは見事に自分の想像を超えた結果を呼び出してくれた。
 若者たちのパワーはすばらしい。かつてのレオも、ひよっこだったときから見る見るうちに自分の助けがなくとも地球を守れるまでに成長したものだ。
 着地し、態勢を整えるガイアとアグル。そして、ガイアは脇に抱えていたコンテナを放り投げた。セイレーン7500が牽引してきて、ガイアがここまでいっしょに持ってきたのだ。すると、コンテナは空中で変形してXIGの戦闘機ファイターEXの姿となって飛び上がった。
『PAL、具合はどうだい?』
『良好です。我夢、ファイターEX、すべて問題ありません』
『よかった。なら、そっちのほうは君にまかせる。頼んだよ』
『了解』
 ガイアはファイターEXのAIである人工知能プログラムPALに指示を出すと、アグルとともにアークボガールに向かい合った。ファイターEXはジェットを噴射すると、PALによる無人操縦であっというまに飛んでいった。
 あの方角は……ギーシュたちは、ファイターEXが飛んでいった方向を見ていぶかしんだ。あっちに飛んでいって行き着く先といえば、まさか。
 だが思考をめぐらせている時間などはなかった。アークボガールがガイアとアグルに対して、ついに敵意をむき出しにしてきたのだ。
「なんだ、お前たちは?」
「お前の敵だ」
 アークボガールの問いかけをアグルが一言で切り飛ばす。もとよりアークボガールにとって、自分以外の生物はすべて敵か餌かのどちらかなのだ。
 たとえ言葉が通じたところで狼と羊が仲良くすることなどない。ミツバチとスズメバチが隣り合って巣作りをすることなどない。生態としてそうなのだ、ボガールは知性を持った食欲の権化であり、形を持った生存競争なのだ。これを前にしたとき、他の生物がとるべき道は、戦う以外にはない。
 避けることのできない戦いの火蓋は、ついに切って落とされた。
 足元から土砂を噴き上げるほどに荒々しく大地を蹴ってガイアとアグルが駆ける。対して、アークボガールも新たなウルトラマンたちが容易ならざる相手だということを肌で察して、真っ向からふたりを迎え撃った。
「デヤアアッ!」
 正面から激突する二大ウルトラマンとアークボガール。巨大な太鼓を鳴らしたような激震が大気を揺さぶり、見ている者の顔をひっぱたいた。
 組み合う三者。なんと、ガイアとアグルのふたりを持ってしても、アークボガールは押し負けずに受け止めたのだ。
「グフフ、バカめ。その程度のパワーで、我を止められるわけがなかろう」
「どうかな? ガイア、いくぞ!」
「おう!」
 アグルとともに、ガイアはさらに力を込めた。すると、アークボガールの巨体がズルズルと後ろに押されだしたではないか。

954ウルトラ5番目の使い魔 50話 (8/15) ◆213pT8BiCc:2016/11/02(水) 00:12:23 ID:y0dAWjPE
「な、なんとぉ!?」
 自分が力負けしているということにアークボガールは驚愕する。だが、こんなバカなと思っても、ガイアとアグルはアークボガールを押し続け、そのまま掬い上げるようにして地に叩きつけた。
「ぐぅぅ、おのれぇ!」
 地を這わせられた屈辱から、アークボガールは怒りを込めて立ち上がってくる。
 が、ガイアとアグルの攻撃が先手を打った。アグルのキックがアークボガールの腰を打ち、ひるんだところにガイアのパンチのラッシュが決まる。
 やる! あの悪魔のような怪獣を押していると、銃士隊から感嘆の笑みがこぼれた。だが、アークボガールはそんなに簡単に負けてくれるような敵ではない。
「なめるなぁ!」
 アークボガールは叫ぶと、全身から強烈なエネルギーの波動を放射してガイアとアグルを吹っ飛ばした。
「ウワァッ!」
「ヌワッ!」
 弾き飛ばされたガイアとアグルは背中から地面に叩きつけられる。アークボガールは、そこに間髪いれずに赤紫色のエネルギー弾を連発してきた。
 まるで池に次々に石を投げ入れて水しぶきをあげるように、ガイアとアグルの周囲にエネルギー弾の炸裂する火柱が無数に立ち上がる。
「ウルトラマン!」
 炎の中に飲み込むようなすさまじい爆発の嵐に、ギーシュたちから叫びがあがる。
 しかし、ガイアとアグルは確かにダメージは受けながらも、冷静に反撃の機会をうかがっていたのだ。
 爆炎が逆にめくらましになるのを計算して、アグルがガイアの後ろに配置すると、ガイアは手を前に掲げて回転する円状のエネルギーシールドを作り出した。
『ウルトラバリヤー!』
 強固なエネルギーの盾は、ガイアとアグルへの直撃コースの攻撃をすべて受け止め防ぎきった。
 だがむろんそれだけではない。ガイアのバリヤーで安全が確保されたアグルは、アークボガールの虚をついて垂直に高くジャンプすると、そのまま超高速での飛び蹴りを食らわせたのだ。
「テヤアァッーッ!」
 弾丸のようなスピードでアグルとアークボガールのシルエットが交差したと思った瞬間、アークボガールの広げた捕食器官の右半分が粉々に吹き飛んでいた。
「よし、これで奴はもうまともにものを食うことはできない」
 ダンが、アークボガールの能力の半分がダウンしたことを確信してつぶやいた。まだ半分しかつぶしていないと見ることもできるが、どんな食いしん坊でも口の中にでかい口内炎ができていたら満足に食事ができないのと同じだ。
 しかし喜ぶのは早い。アークボガールの戦闘力はまだ衰えていないし、時間をかければ奴はこの程度の傷は再生してしまうだろう。

955ウルトラ5番目の使い魔 50話 (9/15) ◆213pT8BiCc:2016/11/02(水) 00:13:50 ID:y0dAWjPE
 つまり、攻めるなら今だ。ガイアとアグルはアークボガールを挟み撃ちにして、それぞれ額を輝かせ、必殺の一撃を同時に撃ちはなった!
 
『フォトンエッジ!』
『フォトンクラッシャー!』
 
 ガイアの額から放たれる赤白の光芒と、アグルの額から放たれる青白の光芒がアークボガールの前後から炸裂した。
 爆発が起こり、アークボガールから苦悶の声があがる。
「うぬぅ、貴様らぁ!」
 傷の痛みと怒りと恨みの叫び声。だがそれは、奴自身がこれまで食い散らかしてきたものたちの断末魔を自分で再現しているということだ。
 食べるということは神からすべての生命に与えられた権利であるが、暴食は神から禁じられた罰となる。
 ただし神は罰を下さない。罰を下すのは天、そして天とは、めぐりめぐった因果のこと。アークボガールを下すのは、奴自身が招いた敵という因果だ。
 なおも倒れないアークボガールに対して、ガイアとアグルは再度接近戦に打って出た。コンビネーションを活かし、パンチとキックが次々に決まる。アークボガールは、ガイアに対抗しようとすればアグルに攻撃され、アグルを打ち払おうとすればガイアの一撃を食らうという悪循環に陥って、思うように立ち回ることができない。
 だがガイアとアグルは油断してはいない。フォトンエッジとフォトンクラッシャーのダブル攻撃を受けてなお、アークボガールにはまだ余力が十分に見える。まだ形勢はどう動くかわからない。
 戦いはガイアとアグルが押しているように見えて、実はようやく互角の状況といえる。そして、アークボガールはさすがのタフさでふたりの攻撃を耐え続けた上で、ついにふたりの動きを見切ることに成功した。
「食らえ!」
「ヌワッ!」
「ウオワッ!」
 アークボガールはタイミングを見計らって身をよじり、同時に左右に腕を振り下ろすことで一気にガイアとアグルをなぎ倒した。
 重い一撃を受けて、ガイアとアグルは湖畔の木々を巻き込んで倒れこむ。やはり、腕力ではアークボガールのほうに分があるし、奴も戦闘経験から学習する。
「調子に乗りおって、倍返しにしてくれるわ!」
 怒るアークボガールの猛攻が始まった。太い足でガイアを蹴り上げ、巨大な爪でアグルを切り付けて火花を散らさせる。
 ガイアとアグルも抵抗しようとするが、コンビネーションを崩された状態ではアークボガールのパワーには対抗するのは難しかった。アークボガールは、これまでの仕返しとばかりに徹底して痛めつけにかかってくる。
 危ない! と、ギーシュたちは悲鳴をあげた。新しいウルトラマンの力でも、あの悪魔に勝つことはできないのか?
 空腹のアークボガールは、自身の怒りをコンロの炎にして、ふたりのウルトラマンを美味しく調理しようとしているかのように炒め続ける。

956ウルトラ5番目の使い魔 50話 (10/15) ◆213pT8BiCc:2016/11/02(水) 00:16:19 ID:y0dAWjPE
 その様子は、座礁した東方号からでもありありと見えた。立ち上る砂煙、紙くずのように吹き飛んでいく立ち木、それらの中で苦戦を強いられているガイアとアグルを甲板で寒風にさらされながら見て、キュルケやコルベールは歯噛みをしていた。
「なんて強い奴なの……」
 数えればウルトラマン五人分と相手していると同じだというのに、奴にはかなわないというのか。彼女たちは、アークボガールが宇宙大皇帝の側近であったことを知るべくもないが、キュルケだけでなく誰もがこれまで見てきた中でも跳び抜けて強いアークボガールに、畏怖の念さえ抱いていた。
 だが、この中で恐れていない者がひとりだけいる。土佐衛門状態で気絶したまま艦内に置いていかれているドゥドゥーを除けばただひとり、タバサがキュルケの手をつないで言った。
「大丈夫、あのふたりは……あんな奴より、ずっと強いから」
「タバサ……」
 キュルケは、「あなた、いったい向こうの世界でなにを見てきたの?」と問い返そうとして思いとどまった。タバサの目は確信と、ふたりのウルトラマンに対する信頼に満ちている。
 自分がタバサと別れてから今日までの時間、タバサも同じだけ異世界で過ごしていたとしたら、タバサはどれだけのものを見聞きしたというのだろう? そう……きっと、このタバサは自分の知っているタバサとはまるで別人なくらいに成長しているのに違いない。
 少し寂しいわね、とキュルケは心の中で思った。タバサを助けてあげるために強くなったつもりだったが、タバサも天井知らずに成長を続けている。守ってあげる必要などないくらいに。
 でも、きっとそのほうがよいのだろう。タバサが自分の腕などで支えないでもよいくらいに大きくなれば、きっと多くの人たちの助けになるはずだから。
 なら、自分のすべきことはひとつ。タバサの成長を見届け、喜んであげることだ。これから先のタバサとの友情の答えは、きっとそこにあるはずだ。そのためには、タバサの言うとおりに、あのふたりのウルトラマンを信じることだ。
「きっと勝つ、そうよね」
 戦いはまだ終わっていない。希望を託したならば、最後まで勝利をあきらめてはいけない。それがせめてもの責任だ。
 アークボガールの攻撃は容赦を知らず、途切れることなく続いている。だが、アークボガールがガイアとアグルを観察していたように、ガイアとアグルもまたアークボガールのパターンを観察していた。
 生き物である以上、動きにはどうしても癖が出る。まして向こうは怒りで半狂乱だ、パターンを絞り込むのに多くはいらない、そうら……ここだ!
「デヤァッ!」
 奴の攻撃の前の一瞬の溜めを狙って、ガイアとアグルは同時にキックを打ち込んだ。攻撃前の瞬間に一撃をもらい、アークボガールは体勢を崩してよろめき、逆にガイアとアグルは態勢を立て直す。
 だが、アークボガールもそうはさせじと、自身も体勢を立て直すよりも先にエネルギー弾を連打してきた。狙いは甘くても、数を撃てばそんなことは関係ないとばかりの弾幕が襲い来る中、アグルはその身をそのまま使って攻撃を受け止めた。
『ボディバリヤー!』
 肉体そのものを盾とする荒々しい防御技の前に、アークボガールのエネルギー弾がはじかれていく。そしてアグルは攻撃を受け止めながら、胸のライフゲージを中心にしてエネルギーを両手を広げながら集め、それを渦を巻く青いエネルギー球へと圧縮して投げつけた。
『フォトンスクリュー!』
 アグル必殺の超エネルギー弾が正面からアークボガールに炸裂する。だが、驚くべきことにアークボガールはフォトンスクリューのエネルギーさえも我が物にしようと胸から吸収しだしたのだ。
「ファハハ、わざわざ我に馳走をくれるとは、感謝するぞ!」
 強力なエネルギーを手に入れられると、アークボガールの勝ち誇った声が響く。

957ウルトラ5番目の使い魔 50話 (11/15) ◆213pT8BiCc:2016/11/02(水) 00:18:23 ID:y0dAWjPE
 しかし、実はこれはアグルの計算どおりだったのだ。アークボガールといえども、フォトンスクリューのエネルギーを食い切るにはわずかだが時間が必要だ。その隙に、こちらの切り札を見せてやる!
「ガイア、変身だ!」
「おう!」
 アグルの呼びかけで、ガイアはアグルと並ぶと、気合を込めて両腕を頭上に掲げた。
 刹那、ガイアから光がほとばしり、ガイアは腕をライフゲージの前から横に広げ、その全身を金色の光が包んでいく。
 地球からガイアに与えられた光の力。それを最大限に高めることで溢れ出した輝きが見るものを照らし出し、その優しくも力強い光にタバサは勝利を確信して言った。
「ガイアが、変わる」
 輝きの中でガイアの姿がよりたくましく変化し、その身に海の力のシンボルである青い色が加わる。そして変身の完了したガイアは、大地を踏みしめ雄雄しい姿を現した。
 
『ウルトラマンガイア・スプリーム・ヴァージョン!』
 
 パワーを全開にしたガイアの真の姿に、見守るうちから歓声があがった。
 そうだ、ここからが本当の勝負だ。意気上がる人間たちとは反対に、アークボガールは「こけおどしを」と吐き捨てるが、それはこれからわかることだ。
 大地を揺るがし、ガイアとアークボガールが再び激突する。アメフト選手のぶつかりあいを数千倍にしたかのような衝撃が生まれ、両者はがっぷりと組み合った。
「ぐぅぅ、くっ!?」
 一瞬で、アークボガールはガイアの力がこれまでとは違うことを悟った。こいつは見掛け倒しなどではない、こちらも全力を出さなければ対抗できない。
 だが、アークボガールは見誤っていた。ガイアの全力はここまでではない、これからなのだ!
「デヤァァァッ!!」
「な、なんだとぉ!?」
 ガイアの掛け声とともにアークボガールの巨体が宙に浮いた。ガイアのパワーはアークボガールを吊り上げて、そのまま後ろに倒れこむ形で奴を頭から地面に叩きつけた。
 激震、人間だったら確実に首の骨が折れているであろう衝撃がアークボガールを襲う。むろん奴はしぶとく起き上がってガイアへの逆襲を計ろうとしたが、ガイアの攻勢はまだ始まったばかりであった。

958ウルトラ5番目の使い魔 50話 (12/15) ◆213pT8BiCc:2016/11/02(水) 00:20:10 ID:y0dAWjPE
 反撃に出ようとしたアークボガールの胸にガイアのスプリームキックが炸裂してよろめかせ、体勢を崩したところに体をつかんで持ち上げ投げる!
『スプリームホイップ!』
 回転して背中から地面に投げ出され、アークボガールの骨格がきしむ。もちろんそれで終わりということはなく、ガイアは今度は起き上がろうとするアークボガールの首根っこを掴んで放り投げた。
「デエヤアッ!」
「うがあっ!」
 受身をとることもできずに投げ出され、アークボガールは全身を強打して苦悶の声を漏らした。
 ガイアの攻撃は止まらない。起き上がろうともがくアークボガールの後頭部にかかと落としを食らわせて倒すと、首根っこを締め上げながら持ち上げて、そのまま自分の体重も含めて奴の頭を地面に叩きつけた。
『スプリームフェイスクラッシャー!』
 壮絶な力技の炸裂に、ラグドリアンの湖水すらも震えて波打つ。だが波に翻弄されながらも、船上で見守るギーシュたちの顔は明るい。
 すげえ、あの怪物に完全にパワー勝ちしているぜ! 思いっきりやっちまえーっ!
 少年たちは口々に歓声を喉から搾り出し、目の前で繰り広げられるウルトラマンガイアの活躍にしびれた。
 ガイアの攻撃はとどまるところを知らない。強烈な一撃、スプリームパンチがアークボガールの皮膚を超えて内蔵まで打ちのめし、奴の爪とガイアのチョップがぶつかり合って爪のほうが真っ二つにへし折られる。
 パワーとスピード、さらに技法が加わったガイアの攻撃は圧倒的だ。だが銃士隊の面々はガイアの強さに、ウルトラマンだからというだけではない何かを感じ取っていた。
「そうか、彼も私たちと同じ……」
 力に頼るのではなく使いこなすからこその強さ、ガイアの変身者である我夢は任務の合間に地道なトレーニングを重ねてきており、その自信がガイアの強さを支えているのだ。
 ガイアのバックドロップがアークボガールにまたも土をなめさせ、体の内部からダメージを浸透させていく。
 さらに、アグルも負けてはいない。ガイアに投げ飛ばされたアークボガールの尻尾を掴んでジャイアントスイングのように振り回して放り投げると、さらに駆け寄って腕を掴んで投げ飛ばしたのだ。
『アグルホイップ!』
 ガイアのものに劣らずの勢いで投げ飛ばされ、地響きとともにクレーターの底でアークボガールはもう全身砂埃まみれだ。
 強い! 本当に強い!
 キュルケは、タバサの言ったことが間違っていなかったことを確信した。これまでいろんなウルトラマンの活躍を見てきたけれど、あんな豪快な戦いぶりは初めてだ。
「きゃーっ! きゃーっ! タバサすごいすごーい! 見てみて、どっかーんって、ずどーんって!」
「キュルケ、重い……」
 調子が上がるとやや我を失ってしまうのが微熱のキュルケの面倒な性だ。特に今回はタバサが帰ってきてくれた喜びも合わせて、タバサに抱きついて子供のようにはしゃいでいる。

959ウルトラ5番目の使い魔 50話 (13/15) ◆213pT8BiCc:2016/11/02(水) 00:21:29 ID:y0dAWjPE
 さあ、そろそろクライマックスだ。ガイアはアークボガールの巨体を頭上に高々と持ち上げると、もがく奴をこれまでで一番の勢いで放り投げた。
『スプリームリフティング!』
 無造作に地面に叩きつけられ、アークボガールはまだ生きてはいるけれども動きは明らかに鈍っている。
「こ、この我が、こんな奴らに」
 アークボガールも格闘戦には自信があったが、こうまで投げ技の連発を食らうことになるとは想像もしていなかった。特に投げ技はきちんとした受身がとれないのならば衝撃の逃げ場がないためにダメージがまとめて自分に来るので、アークボガールの全身は打撲でボロボロだ。警察官が訓練で柔道を叩き込まれるのはそれだけの実用性があるからなのである。
 よろめきながらも起き上がってきたアークボガールに対して、ガイアとアグルは隣り合って並ぶと合図を送りあって互いに必殺技の構えに入った。
 ガイアが右手を高く掲げると同時にライフゲージが輝き、前に突き出した左手に揃えるようにして一回転させることでエネルギーが集中する。そして重ねた手のひらを上下にスライドさせ、赤色の光線を発射した。
『フォトンストリーム!』
 さらにアグルも両腕を胸の前でクロスさせてライフゲージを輝かせ、高く掲げた右腕をL字に曲げることで青色の光線を放つ。
『アグルストリーム!』
 ガイアとアグルの最強必殺光線。だがそれだけで終わりと思ったら大間違いだ。両者は空中で融合し、果てない威力を秘めた超破壊光線へと変わってアークボガールに襲い掛かっていく。
 
『ストリーム・エクスプロージョン!』
 
 巨大な光の大河が奔流となってアークボガールに直撃した。大地と海の光が合わさった究極のパワーは、いかなる屈強な悪をも粉砕するであろう怒涛の鉄槌である。
 だが、信じられないことにアークボガールはストリーム・エクスプロージョンのエネルギーさえをも我が物にしようとしだしたのだ。
「ぐおぉっ! 我は捕食の王、全宇宙の生態系の頂点。この我に食えぬものなどないぃぃ!」
 アークボガールの腹に光線のエネルギーが吸い込まれていく。
 なんて奴だ! これで決まると思っていたダンは歯噛みした。あの合体光線ならば、直撃すればエンペラ星人でも無事ではいられないであろうのに、奴の胃袋は底なしなのか。
 ガイアとアグルは光線を撃ち続けるが、アークボガールは吸収を続ける。まずい、このままでは。
「ぐわはっはっは、お前たちの光を残さず食い尽くしてくれる。そうすれば、もはやお前たちに戦う術は残っているまい!」
 ガイアとアグルのエネルギーが尽きたら今度こそ本当に終わりだ。ここまで来て、ここまで来て最後に勝つのは奴だというのか。

960ウルトラ5番目の使い魔 50話 (14/15) ◆213pT8BiCc:2016/11/02(水) 00:24:01 ID:y0dAWjPE
 ギーシュやベアトリスたちや、タバサとキュルケたちの顔が歪む。あと一息、あと一息なのに。
 そのときだった。
『ナイトシュート!』
 横合いから飛んできた青色の光線がアークボガールの肩に当たり、その衝撃で奴は体勢を崩してしまった。
「ぐああっ? き、貴様ぁ!」
 アークボガールの視線の先、そこにはひざを突きながらも両手を十字に組むウルトラマンヒカリの姿があった。
「ボガール、貴様だけはこの俺が許してはおかん!」
「こ、この死にぞこないが! っ、しまった!」
 体勢が崩れ、吸収するエネルギーのベクトルが歪んだ。今だ、ガイアとアグルはこの瞬間に全力を注ぎ込んだ。
「藤宮!」
「おう!」
 フォトンストリーム&アグルストリーム、最大出力。その光の圧倒的なパワーの前に、咀嚼が間に合わなくなったアークボガールの胃袋はついに陥落した。
「ヴがぁぁぁ! こ、この我が、この我が食あたりなどとぉ? 光が、光が我を満たして……ふははは、我がフルコースは、宇宙一だったぁぁーっ!」
 最後まで食に執着した言葉を残し、アークボガールは大爆発して完全に消滅した。
 撃破、あの恐ろしい悪魔も今度こそ滅び去った。もはや、二度と蘇ることはないだろう。
 勝利に、見守っていた人間たちから祝う声が高らかにあがる。ガイアとアグルのライフゲージは点滅し、ギリギリだったけれどもとにかく勝ったのだ。
 ガイアはヒカリに礼を言った。あなたのおかげだと。ヒカリは答えた、礼には及ばないと。
 
 しかし、戦いはまだ終わってはいない。アークボガールは倒したが、この異変の根源はまだ残っている。
 だがアークボガールとの戦いで力を使いきり、この場のウルトラマンたちはもう戦えない。ガイア、アグル、ヒカリ、ジャスティスの四人は、残った力で変身解除するために飛び立った。
「シュワッチ!」
 四人のウルトラマンは光となり、やがて人の姿となって降り立った。しかしセリザワとジュリは疲労が激しく、陸にあがってきた銃士隊に肩を貸されてやっと立っていられる有様だ。

961ウルトラ5番目の使い魔 50話 (15/15) ◆213pT8BiCc:2016/11/02(水) 00:25:53 ID:y0dAWjPE
 一方で我夢と藤宮はまだ余力はあるが、再変身して戦うまでは無理だろう。アークボガールは、それほどまでに強かった。
 見れば、タバサの帰還にギーシュたちが沸いている。万歳の声も聞こえるところを見ると、いまいち脈絡はないがタバサを胴上げしようとしているみたいだ。タバサは困惑しているが、キュルケまでもがいっしょになっていることから、彼らの喜びがわかる。
 タバサと面識のないベアトリスたちだけが蚊帳の外で不思議そうに眺めている。エーコたちは疲れ果てた様子のティラとティアを介抱しており、ファーティマも疲れたという風に倒木に腰を下ろしていた。
 
 この場にいるものは皆、やれるだけのことはやりきった。だが、まだ休むわけにはいかない。
 ダンは、藤宮と我夢にこの世界で起こっていることのおおまかを説明した。ダンはコスモスとのテレパシーで、トリスタニアでの死闘を知っている。あそこを何とかしなければ本当の勝ちにはならない。
「残念だが、我々の力では奴らのトリックを暴くことができない。力を貸してもらいたいのだ」
「安心してください。この世界に来たときから、記録にある敵の兆候を見つけていました。そっちには僕の一番信頼するパートナーが向かってます」
 我夢はそう言うと、ファイターEXが飛んでいった方角を見上げた。
 
 
 そしてトリスタニア。ガリア・ロマリア軍の攻撃は勢いを増し、防戦一方のトリステイン軍の潰走はもはや時間の問題に見えた。
 原因は、言うに及ばず天使の存在だ。あれが物理的、精神的にロマリア側を大きく利している状況ではトリステインに勝機はなく、教皇はさらに演説で自軍を煽り立てる。
「信仰深きブリミル教徒の皆さん、あと少しです。異端者たちの軍勢に、もう逃げ場はありません。ですが油断してはなりません。神に歯向かう愚か者たちがまた現れぬよう、異端者たちを残らず刈り取ってしまうのです」
 トリスタニアの半分が敵に制圧され、後退しながらの防御戦ももう限界にきている。
 天使はウルトラマンコスモスがなんとか抑えてはいるものの、いくらエネルギー消費の少ないルナモードとはいえ連続してバリアを使わせられればもたない。
 あの天使の正体を暴かないことには負ける。コスモスだけでなく、王宮ではエレオノールやルクシャナが、街ではアニエスやジルが知識や勘を総動員して考えているが、わからない。
 どうしようもないのか? コスモスのカラータイマーが鳴り始めて、いよいよ時間がなくなったと焦燥に駆られた、そのときだった。
「お、おい空! なんだあれは?」
 突如、ジェット音を響かせてトリスタニアの空にファイターEXが現れた。その甲高い飛行音に人々は気を取られ、動揺が広がる。
 なにせジェット戦闘機を見たことがある者などほとんどいない。人々が困惑するのも当然だが、その姿を見て驚愕した者がふたりだけいた。ヴィットーリオとジュリオだ。
「あれは、まさか! なぜこの世界に!」
 都市上空を旋回するファイターEXを見てヴィットーリオが初めて焦りを見せた。彼らにとって、それはこの場にありえるはずのない存在だったからだ。
 しかしファイターEXは確実にこの世界に存在している。そのコクピットは無人だが、PALによって完璧に制御され、この場で得たデータを正確にラグドリアン湖にいる我夢の端末へと届けていた。
『我夢、分析データを送ります。予測どおり、この街の上空に超空間の発生源が存在しているようです』
「わかった。破滅招来体め、お前たちの卑劣な手段はもう通用しないぞ。PAL、EXに積んである特殊弾は一発しかないんだ。絶対外すんじゃないぞ」
『信頼してください。ターゲットをロック、我夢、合図をお願いします』
 急旋回したファイターEXは街の上空の一角、黒い雲が渦を巻いているような一点に向けて機首を向けた。
 安全装置を解除するPAL。教皇は焦り、天使にファイターEXを撃墜するように指示を出そうとしたが、それより早くPALに我夢の指示が飛んでいた。
「波動生命体、マスカレードはここまでだ。特殊弾頭弾、発射!」
 ファイターEXから一発のミサイルが放たれて黒い渦に突き刺さる。瞬間、女性の悲鳴に似た叫び声が響き、天使の姿が幻のように揺れた。
 
 
 続く

962ウルトラ5番目の使い魔 あとがき ◆213pT8BiCc:2016/11/02(水) 00:31:44 ID:y0dAWjPE
今回は以上です。
ふぅ、ようやくここまで来れました。読者の方々に世代も多いであろう、ガイアとアグル堂々登場です。
ほんとこの話を書きたくて書きたくて、ガイアの話をいろいろ見返しましたが、綿密な脚本や迫力のある特撮は今でもとてもおもしろかったです。
おかげで、自分でも納得のいく出来に仕上がりました。楽しんでいただけると幸いです。

では次回、さらなる衝撃の展開が待っています。乞うご期待。

963名無しさん:2016/11/02(水) 06:58:26 ID:knsdUjlQ
ウルトラ乙。

964名無しさん:2016/11/02(水) 07:04:23 ID:uRzpxStA

ウルトラ待ってた

965名無しさん:2016/11/02(水) 16:45:52 ID:lNeFWbKo
来たぞ我らのウルトラ乙

966名無しさん:2016/11/02(水) 19:44:54 ID:0IycWy.k
「外道照身霊波光線! 汝の正体見たり!!」

967名無しさん:2016/11/02(水) 23:29:50 ID:vbMGebSw
乙っした
流石は投げの鬼スプリーム、ある種の爽快感すら感じる圧倒的パワーだ

968ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc:2016/11/06(日) 22:45:07 ID:H7NMsIvs
こんばんは、焼き鮭です。今回も投下致します。
開始は22:48からで。

969ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc:2016/11/06(日) 22:48:10 ID:H7NMsIvs
ウルトラマンゼロの使い魔
第百二十三話「夜があけたら」
蘇生怪人シャドウマン
精神寄生獣ビゾーム 登場

『……サイト、起きろッ!』
 深夜、寝ついている才人たち三人はジャンボットの鋭い呼び声によって起こされた。
「う、うぅん……どうしたんだ……?」
 目をこすってベッドから身を起こす三人。シエスタが枕元のテーブルからブレスレットを
手に取ると、ジャンボットが続けて告げた。
『異常事態発生だ! 私のセンサーが礼拝堂で侵入者の集団をキャッチした! いや、既に
侵入していたと言うべきか!』
「何だって!?」
 その言葉で才人たちは一気に目が覚め、ベッドから飛び降りた。才人とルイズはマントを
羽織り、それぞれの得物を身につける。
 ルイズがジャンボットに問う。
「やっぱり、あの死体が敵の刺客だったってこと?」
『いや、遺体自体は今も礼拝堂に残されている。恐らくあれらに宿されていたものが、学院を
徘徊しているようだ。今一つ正体が掴めない……気をつけろ、手強い相手になりそうだぞ』
「分かった、ありがとう」
 うなずいた才人はルイズとシエスタに振り返った。
「ルイズたちはテファの無事を確認してくれ。俺はタバサの方を見てくる!」
「分かったわ!」
「サイトさん、ご武運を!」
 二人に言い残して、才人は素早く部屋の扉から飛び出していった。

 才人がタバサの部屋に到着する前に、タバサの方も不気味な気配を鋭敏な感覚で感じ取り、
覚醒して杖を手にしていた。
 更に感覚を研ぎ澄まして、敵の数や位置を探ろうとした。が、どうにも気配ははっきりとせず、
どの程度近づいてきているのかも不明瞭であった。タバサの生存本能が、危険の信号を鳴らす。
「パムー……」
 ハネジローも危険を感じ取ったか、小刻みに震えて怖がっていた。タバサはそんなハネジローを
籠ごとベッドの下に隠した。
「ここにいて」
 そして下手に動かずに杖を構えて待ち伏せしていると……部屋の扉がいきなり軋んだ音を
立てて開かれた。しかし、廊下には誰もいない。風か何かが扉を押したのだろうか?
 タバサはそうではないことを優れた観察眼で見て取った。何もない場所を、人の影が這っているのだ!
 直ちに影に杖の先端を向けるタバサ。すると影が立ち上り、怪しい霧とともに三人の男たちの
霊体……シャドウマンの正体を見せた。
「ッ!」
 目の前にはっきりと現れた幽霊という、常人なら腰を抜かしてしまいそうな事態だが、
闇の世界をくぐり抜けてきたタバサは動じなかった。素早く呪文を唱え、氷の矢を飛ばして
攻撃する。
 が、氷の矢はシャドウマンをすり抜けて壁に刺さるだけであった。実体を持たない幽霊には、
魔法の力も通用しないようだ。
 タバサは分が悪いと見て窓からの脱出を図るが、それより早くシャドウマンは霧を噴出して
タバサに浴びせかけてきた。
「うッ……!」
 一瞬視界をふさがれるタバサ。そして霧が晴れると……自分の身体が豆粒のように小さく
なっていることに気がついた!
「!?」
 幽霊の奇怪な妖術か。さすがに動揺するタバサ。
 シャドウマンは棚から透明のグラスを取り出すと、逆さまにして小さくなったタバサに
覆い被せた。完全に無力化されたタバサは、ただのグラスの中に閉じ込められてしまう。

970ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc:2016/11/06(日) 22:50:41 ID:H7NMsIvs
「……!」
 シャドウマンがグラス越しに、縮小したタバサをじっと見下ろす。そのおぞましい光景に、
タバサも恐怖を覚えて震え上がった。

 タバサの部屋を目指して全速力で向かおうとしていた才人だが、途中の廊下で足止めを
食らっていた。残りのシャドウマンが行く手に現れ、道をさえぎっているのだ。
「この幽霊が侵入者の正体か……! うおおおッ!」
 才人は問答無用でシャドウマンに斬りかかっていくが、デルフリンガーの刃はシャドウマンを
すり抜けてしまった。
「相棒! さすがの俺でも、幽霊は斬れねえみてえだ! 面目ねえ!」
「駄目か……! それじゃあどうすれば……!」
 才人はシャドウマンの放ってきた霧を後ろに跳びすさることでかわした。しかしシャドウマンを
越えないことには、タバサの部屋までたどり着くことは出来ない。
「こうなったらゼロに変身するか……!」
 ゼロアイを出そうとした才人だったが、そこに後ろから聞き慣れた声がした。
「サイト、伏せてッ!」
 ルイズだった。ルイズは掲げた杖を、才人がしゃがむと同時に振り下ろした。
 小規模な爆発が廊下の中央で起こり、シャドウマンは爆発の光にかき消されて霧散していった。
「やった!」
「すっげ……! ルイズの爆発は霊体にも有効なのか……!」
 “虚無”の魔法の威力を改めて知り、感心する才人。
 だが今の爆発の音で、寮塔のあちこちの部屋から動く気配が発生した。生徒たちが目を
覚ましてしまったみたいだ。
 ルイズは手短に才人に告げる。
「サイト、ティファニアは無事だったわ。後はタバサだけよ。ここはわたしが収めておくから、
早く行って確かめてきて!」
「よし分かった! ありがとな!」
 ルイズに感謝の言葉を返し、才人は駆け足でタバサの部屋の前までたどり着いた。壁に氷の
矢が刺さっているので、思わず息を呑む。
「タバサッ!」
 慌てて部屋の中に駆け込むと――タバサの姿はなくなっていた。空のグラスが床に転がっており、
窓は開け放たれて風がカーテンをバサバサ揺らしていた。
「しまった! 遅かったか……!」
 窓に飛びついて外を見回したが、見える範囲にもタバサらしき影はなかった。既に連れ去られた
後だろうか。
「すぐ追いかけないと……! でも敵はどこへ逃げたんだ……」
 才人がつぶやいていると、窓の外からバッサバッサと翼を羽ばたかせて、シルフィードが
彼の眼前に舞い降りてきた。カーテンを揺らす風は、シルフィードの羽ばたきだったのだ。
「パムー!」
 シルフィードの頭の上にはハネジローが乗っかっていた。シルフィードはハネジローが
呼び寄せたようだ。
「ハネジロー、お前はタバサがどっちへ連れ去られていったか知ってるのか?」
「パム!」
 コクリとうなずくハネジロー。
「でかした! すぐ案内してくれ! シルフィードも頼んだぞ!」
「きゅいー!」
 才人は迷いなく窓から飛び降りてシルフィードの背中に乗り移り、シルフィードはハネジローの
誘導の下に夜の森へ向けて飛び立っていった。

 その頃、シャドウマンに捕まり、学院外へ連れさらわれたタバサは、森の中の開けた場所に
投げ出されて解放された。大きさも元に戻される。
「ここは……?」

971ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc:2016/11/06(日) 22:53:48 ID:H7NMsIvs
 辺りを見回して訝しむタバサ。現在地は学院からそう離れた場所ではなく、当然トリステインの
領地。そんな場所にどうしてわざわざ自分を解き放ったのか。それも大きさを元に戻して。何か裏が
あるに違いない。
 そのタバサの読み通りに、夜の闇の中からシャドウマンとは違う、怪しい人影がぬっと出現した。
「わたしの主人の元まで連れていく前に、あなたの心を闇で染め上げておこうと思ってね」
「!」
 振り返ったタバサが杖を向けるが、現れた者の姿を目の当たりにして驚愕で固まった。
「その姿……わたし……!」
 目の前にいるのは、黒衣を纏った自分自身。そうとしか言い表せなかった。
 一瞬だけ唖然としていたものの、タバサはすぐに自分そっくりの相手に杖を向け直した。
「撹乱のつもり?」
 短く告げると、黒タバサは酷薄な笑みを浮かべた。
「そう言うと思った。分かってたわ。何故なら、わたしはあなた自身なんだから。わたしは
あなたの心の闇よ、シャルロット」
「……ふざけないで」
「ふざけてなんかいないわ。アーハンブラ城で怪獣に呑まれたことがあったでしょう? 
実はあの時、わたしがあなたの精神に寄生してた。そして今日、活動を始めたのよ」
 黒タバサの言をにわかには信じられないタバサだったが、自分の敵は常識外の怪物を
次々送り込んできている。精神に寄生する怪物がいてもおかしくはない。
 それにそんなことは問題ではない。やるべきことは、今面前にいる敵を倒すことだ。
 そんなタバサの思考を見通したか、黒タバサが嗤いながら言葉を発する。
「ふふッ、早速わたしに攻撃しようというのね。実にあなたらしい……。親から与えられた
名を捨て、冷徹な人形になったつもりで、人間らしい感情を捨て切れない半端なあなたらしい、
自分が傷つきまいとするばかりにひたすらに牙を剥く、みじめな子犬のような行動」
 長々と挑発めいたことを述べる黒タバサに、タバサは眉間に皺を刻んだ。そして呪文を完成させ、
ウィンド・ブレイクで吹っ飛ばそうとする。
 だが同時に黒タバサが、全く同じ魔法を放ってきた。しかも相手のウィンド・ブレイクは
自分の風をあっさりと押し返し、タバサの方が吹き飛ばされてしまった。
「うッ……!?」
 地面にしたたかに打ちつけられるタバサ。倒れた彼女を見下ろす黒タバサが告げる。
「あえて同じ魔法で打ち破ってみせたわ。どうしてわたしの魔法の方が上回ったか分かる? 
……わたしはあなたの心の闇。あなたの綺麗な部分より、汚く暗い部分の方がずっと大きいと
いうことよ」
「!?」
 心にグサリと来るものを感じ、反射的に黒タバサの顔を見上げるタバサ。
「だってそうでしょう? 自分の目的のために、親の仇にへりくだることを是として、様々な
非合法な行いに手を染めてきたのだから。今までに何人殺して、己の目的の犠牲にしてきたか
覚えてる? 挙句の果てには友達も殺そうとして……その相手を勇者なんて、厚かましいにも
程があるんじゃなくて?」
「……やめてッ……」
 思わず耳をふさぐタバサ。これまであらゆる人間から罵声を浴びて、耐えてきたタバサで
あったが、才人に向ける想いを傷つけられることは耐え難かった。
 しかし耳をふさいでも、黒タバサの声は脳に直接響いてくるかのように聞こえてくる。
「勇者に仕える騎士? 真っ黒に汚れ切ったその身で、よくそんな美辞麗句が唱えられるものね。
このこと、本当は自分がよく分かってるでしょう? 何せわたしはあなたの闇……わたしの言葉は
あなた自身の言葉なのだから」
 違う。そんなことはない。……だが否定し切れない。タバサはお化けを怖がる幼児のように、
うずくまり目を固くつむってブルブル震える。
 お化けなんて怖かったのはずっと昔のことだ。怪物への恐怖も、ファンガスの森で断髪と
ともに振り切った。
 しかし、自分が抱えたほんのりと温かい感情。それを否定されることは、とてつもなく恐ろしかった。
「――そこまでだッ!」

972ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc:2016/11/06(日) 22:56:20 ID:H7NMsIvs
 その時、闇を切り裂くように、あの男の子の声が空から届いた。
 目を開けて見上げると――勇者が、シルフィードの背から黒タバサの面前、自分の盾と
なるように着地した。
「タバサ、無事だったか? 安心しろ、俺とゼロが来たからにはもう大丈夫だ」
 振り返って、力強い微笑みを見せる才人。呆然と彼の背中を見つめるタバサに、シルフィードと
ハネジローが覆い被さった。
「お姉さま、こんなに震えてかわいそう。あいつにいじめられてたのね」
「パムー」
 肌から伝わる二匹の体温が、タバサの身体も心も温めた。
 才人にデルフリンガーの切っ先を向けられた黒タバサは、それでも動じず不敵な笑みを返す。
「勇者さまのご到着という訳ね。けれど……」
 黒タバサの見た目が、一瞬にして才人のものに変わった。才人は姿を変えた相手をきつく
にらみつける。
「やっぱり、倒してはいなかったのか……!」
「そうさ! 言っただろう。俺はお前の心の怪物だと。自分自身の心を倒すことなど出来やしない。
――そして俺は、そのタバサの闇でもある」
 黒才人に指を差され、タバサはビクリと身を震わせた。
「見ろ、今の哀れな姿を。あいつは心の闇に呑まれる寸前だったのだ。そんな弱い女を守る
必要がどこにある? そいつの弱さは、そいつの闇は! いずれお前の足を引っ張り、お前を
破滅させるッ!」
 黒才人の言葉がタバサの心をえぐり、タバサは縮こまる。シルフィードはタバサを苦しめる
黒才人をキッとにらんだ。
「俺には見える! その女は厄災を呼び込むだけだ! お前はそのせいで、故郷に帰ることも
出来ずに闇に呑まれ、その女を、この世界を呪いながら死んでいく! そんな結末をたどりたいのか!?」
 黒才人の突きつける暗黒の未来。それに対して、才人は、
「勝手なことばっか抜かすんじゃねぇッ!」
 思い切り突き返した。
「……!」
 タバサはハッと顔を上げて、才人の背中を見つめる。
「タバサは弱くなんかねぇ! 俺は何度も、こいつに助けてもらった! タバサは勇敢なんだ! 
それを俺はよく知ってるし、タバサの心に強い光があるって分かるんだッ!」
 才人の、タバサを認める言葉が、タバサの弱り切った心を温めていく。
「それに、心の闇くらい誰にでもあるもんだろうが! 俺自身、とても綺麗な人間なんて
言えねぇしな。けど、闇があるから心は光を放つ! 人は闇を抱えて、乗り越えることが
出来る! 俺は信じてるッ!」
 才人の熱い言葉の数々をぶつけられた黒才人だが、冷笑を浮かべたままだった。
「やっぱり、言ったところで分からないか。だったらその身に直接教えてやろうッ!」
 突然、黒才人の周囲にシャドウマンの霊体がいくつも現れ、漂った。
「!!」
「おおおおぉぉぉぉぉッ!」
 それら霊体全てが黒才人に吸い込まれていき――身体がみるみる内に膨れ上がって変貌を
起こしていった。
「グフォフォフォフォフォ!」
 そしてサタンビゾーをより人型にしたような巨大怪人への変身を遂げた。
 才人とタバサの心の闇を写し取って暗躍していた精神寄生獣、ビゾームが真の姿を現したのだ。
『早くお前の光を開放しろ。人間の光など、大いなる闇の力、はるかなる星の叡智には敵う
ものではない!』
 ビゾームは才人を挑発し、変身を促す。あえて真正面から戦うことで、才人の心を折ろうと
いう目論見か。
 才人はその挑戦を真っ向から受けるつもりだ。

973ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc:2016/11/06(日) 22:57:45 ID:H7NMsIvs
「やってやろうじゃねぇか! 後で今のなしって言っても聞かねぇから覚悟しやがれッ!」
 力を込めて、ゼロアイを装着!
「デュワッ!」
 才人が光に包まれ、ウルトラマンゼロがビゾームの正面に立つ。
『テメェみてぇな輩のこすいやり口は許せねぇ! ばっちり引導を渡してやらぁッ!』
 ゼロとビゾームが互いに走り寄り、格闘戦を開始。
「シェアァッ!」
「フォッフォッフォッ!」
 ゼロの拳を差し込まれたビゾームの腕が止め、ビゾームの膝蹴りをゼロが蹴りを当てて止める。
両者一歩も退かない互角の戦いを演じる。ビゾームの戦闘能力はサタンビゾーを超えるものであった。
 しかしゼロは相手の一瞬の隙を突いて、腕を捕らえて高く投げ飛ばした。
『でりゃあぁぁッ!』
「フォフォフォッ!」
 しかしビゾームはクルクル回転しながら綺麗に着地。振り返りざまに右腕から光剣を生やした。
『次は剣の勝負ってとこか……!』
 対するゼロもデルフリンガーを召喚して柄を握り締める。
『行くぜデルフッ!』
『おうよ! あんなナマクラ、へし折ってやんなッ!』
 デルフリンガーとビゾームの光剣が激突し、激しく火花を散らす!
 ビゾームは風を切る剣さばきで、すさまじい斬撃のラッシュを叩き込んでゼロを攻め立てる。
しかしゼロの剣戟も全く劣っておらず、ビゾームの斬撃を全て弾き返した。
「セァッ!」
「グフォフォフォ……!」
 息を吐かせぬ剣戟の後、ゼロとビゾームは鍔迫り合いに持ち込む。
 が、ゼロの腕に一層の力が込められると、デルフリンガーの刃が光剣を粉砕した!
「グフォオッ!」
『今だッ! せぇいッ!』
 ビゾームが押されてのけ反ったところに、その身体をZ字に切り裂いた。
「デァッ!」
 更に後ろに跳びながらゼロスラッガーを飛ばし、ビゾームを縦に両断。ビゾームは八つに
分かれてバラバラになった。
『どんなもんだ!』
 デルフリンガーを下げて見得を切るゼロ。普通ならこれで戦いが終わることだろう……。
 しかしバラバラになったビゾームの破片は、一つ一つが変形して小型のビゾームになって復活した!
『何ッ!?』
「グフォフォフォフォフォフォフォ!」
 八体になったビゾームは一斉に顔面の発光部から怪光線を発射。
『うおあああぁぁッ!』
 集中攻撃にさしものゼロも吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられる。
「あぁッ! ゼロが危ないのね!」
「パムー!」
 戦いを見守っているシルフィードたちが思わず発した。すると、タバサがゼロに向けて叫ぶ。
「立って! 負けないで!」
「お姉さま……!?」
「あなたは勇者なの! この世界を救う……わたしを助けてくれた! 絶対に、闇に負けて
しまっては駄目ッ!」
 タバサの応援の言葉に、ゼロの中から才人が応じた。
『ああ、もちろんだ……!』
「……!」
 才人の声に反応するかのように、ゼロが身を起こす。
『俺は、俺たちは! 闇を照らしてみせるぜッ!』

974ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc:2016/11/06(日) 22:59:37 ID:H7NMsIvs
 ゼロは左腕をまっすぐ横に伸ばし、腕を組んでワイドゼロショットを発射した!
「セェェェェェアッ!」
 光線を薙ぐことで、ビゾームを一気に八体纏めて爆破させる。
「グフォォ――――――ッ!」
 粉々に吹っ飛んだかに見えたビゾームだが、抜け出た魂が一箇所に集い、元の一体の姿に
合体して復活した。
『無駄だ! 闇は途絶えることがない。お前たちは闇に抗おうとする限り、永劫の戦いの
運命に陥るのだ!』
 不死身の肉体を見せつけて、脅しを掛けるビゾーム。
 それでも、ゼロたちは決して屈しなかった。
『上等だぜぇ! 何度立ちはだかって襲いかかってこようとも、その都度ぶっ飛ばしてやるだけだぁッ!』
 拳を握り締め、再度ビゾームに拳を打ち込んでいくゼロ。相手の反撃を払いのけ、ひたすら
打撃を見舞っていく。
 そんな中で才人は叫んだ。
『お前らがどんな手段を用いようとも! 何度襲い来ようとも! タバサは絶対に渡さねぇぜッ!』
 彼の言葉は、タバサ本人に届いていた。
『タバサは俺の大事な仲間なんだ! どこにも行かせねぇぜ! 絶対に守り抜くッ!』
 才人の語ることに……タバサは頭に血が昇りそうな気持ちがした。
 ああ、彼はどうしてわざわざあんなことを言ってしまうのだろうか。自分は騎士になると
誓ったのに……分不相応な想いを抱いてはならないのに……。
 あんなことを聞いてしまっては、この胸の鼓動がどんどん高鳴ってしまうではないか。
『光が高まってきたぜ! この光で、フィニッシュを決めてやるッ!』
 ゼロは右手を固く握り締めると、その拳に強い輝きが宿った。戦う度に昂っていく才人と
ゼロの心の光が、その手に発現しているのだ。
『おおおぉぉぉぉッ!』
 光の拳を振り被って、ゼロはビゾーム目掛け駆けていく。
「グフォッフォッフォッフォッ!」
 ビゾームの方も右手に闇の力を纏わせて、ゼロの仕掛ける勝負を正面から受けて立つ。
ゼロとビゾームがどんどんと距離を詰めていく。
『だぁぁぁぁぁッ!!』
 そして互いの拳が、互いの頬を打った!
「……!」
 激闘の音が一気に静まり、場は一時的に静まり返る。そして……。
 ビゾームの全身が一気に爆散! 光に照らされて霊体も粉々になっていき、霧散して消滅していった。
「やったぁぁぁぁぁ―――――! やったのねッ!」
 シルフィードはハネジローと手を取り合って喜びを分かち合う。タバサは口元をほころばせて、
ゼロとその中の才人を、慕情を乗せた目で見上げた。
 変身を解除した才人はタバサの元まで近づいていくと、口を開いて呼びかけた。
「タバサ、俺たち勝ったぜ。さぁ、学院に帰ろう」
「……うん」
 タバサは熱を込めた目つきのまま、才人にコクリとうなずいた。
 その時、彼らの視界に森の向こうから昇ってきた太陽の日差しが入り込んだ。
「ん、もう朝か」
 才人はまぶしそうに朝日を見やると、タバサに振り返って告げた。
「心の闇が消えることはない……。それは本当のことだろうさ。でも、どんな夜にも朝が来るんだ。
俺たちも、何があってもあきらめることなく朝が来ることを信じて、光り輝いて闇を照らしていこうぜ」
 タバサは無言でうなずき、日差しに照らされた才人の顔をじっと見つめた。
 その眼差しには、ずっとほんのりとした熱がこもっていた。

975ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc:2016/11/06(日) 23:00:51 ID:H7NMsIvs
以上です。
タバサの冒険編はこれで終わりです。

976名無しさん:2016/11/06(日) 23:41:57 ID:nKUtoGtk


これは良い、主人公とヒロインの心の絆をメインにした回でしたね(白目

977ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc:2016/11/12(土) 20:38:01 ID:bys431v2
こんばんは、焼き鮭です。今回の投下を始めます。
開始は20:40からで。

978ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc:2016/11/12(土) 20:40:09 ID:bys431v2
ウルトラマンゼロの使い魔
第百二十四話「近海の怒り」
大ダコ スダール
オイル怪獣タッコング
スクラップ幽霊船バラックシップ 登場

 トリステイン魔法学院の学院長室。ここに呼び出された才人は、オスマンに「あるもの」を
見せられていた。
「これは……!」
 文机の上に置かれた宝箱の中身をひと目見て、才人は思わず息を呑んだ。オスマンはその中身に
ついて説明を始める。
「さる貴族の館から見つかったものなんじゃが……君の世界のものじゃないかね?」
 オスマンの問いに肯定する才人。
「確かに……! でも……一度にこんなたくさん見たの、初めてです。すげぇ……!」
「やはり……! して、その使い方なんじゃが……形から推測すると……」
 オスマンは椅子から腰を浮かして、才人の耳元に口を寄せてヒソヒソと囁きかけた。
 オスマンの推測というものを耳にした才人は、ブンブン首を振って否定。
「いやいや! 確かに、それと似てますけれど……これは……」
 ゴニョゴニョと正しい用途を教えると、オスマンは目をいっぱいに開いて驚愕した。
「水に入る!? これで!?」
 ショックを受けて立ち尽くすオスマン。だが何かを思いついたかのように、ぼそりとつぶやく。
「……その様を、是非とも見てみたい……!」
「実を言うと、俺も……!」
 才人も固唾を呑んで、オスマンの言葉に同意した。
 それからオスマンは、クルリと窓の方を振り向いて外の景色に目をやった。
「……ちょうど、季節外れの暑さが続いておる。またとない機会じゃ。……早速、やって
みようではないか……!」
 窓の外では、日差しによって空気が熱せられて陽炎が揺らめいていた。

 学院の門の外に一本生えている木の幹に背中を預けているルイズたちが、口を開いた。
「あっつ〜……!」
「まだウルの月だってのに、最近真夏のような暑さが続くわね……」
 木陰に入っても軽減されない暑さに、ルイズとキュルケがへばった声を発した。玉のような
汗が肌に浮かび、スカートを軽くパタパタさせたり開いた胸元を手であおいだりして涼を取ろうと
している。同じように木陰にいるティファニア、タバサ、モンモランシーも額に汗がジトッと
浮かんでいた。
 ウルの月は徐々に気温が上がり、汗ばむ日も増えてくる時期ではあるが、数日前から真夏を
先取りしたような暑さが続いてルイズたちは参っているのだった。
「全く、どうしてこう暑いのかしら。またソドムでも出てきたのかしらね?」
「ソドムって何?」
「怪獣。以前学院付近に現れた」
 唯一当時のことを知らないティファニアの質問に、タバサが簡単に答えた。
 そうしていると、キュルケがふとこんなことを言う。
「そういえば聞いた? 連日うだるような暑さが続くからって、急遽明日から一泊二日で、
海に慰安に行くことが決まったって。オールド・オスマン自ら企画したみたいよ」
 それを聞いた途端に、ティファニアが嬉しそうな声を上げた。
「海ですか!? 一度見てみたかったの!」
「テファ、海を見たことないんだ」
「ええ。ずっと森にいたから」
 モンモランシーがティファニアの興味を駆り立てるように告げる。
「海はいいわよー。特に、夜の渚なんて神秘的でロマンチック……!」
「モンモランシー。波打ち際を散歩しながら、ぼくと一緒に星をながめないかい?」
 どこからともなくギーシュがひょっこりと現れ、誘いを掛けたが、モンモランシーはそっぽを向いた。

979ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc:2016/11/12(土) 20:42:24 ID:bys431v2
「ふんッ! 破廉恥隊とはお断りよ!」
「ぐはッ!?」
 にべもなく拒絶されたギーシュは肩を落とし、とぼとぼと帰っていった。
 オンディーヌは女風呂の覗きで株を落とし、女子から破廉恥隊と呼ばれて忌避されるように
なってしまった。特にモンモランシーがギーシュに対しておかんむりの日々が続いているのであった。
 キュルケがやれやれと肩をすくめた。
「いい加減許してあげれば?」
「今許したらつけ上がるだけよ!」
 モンモランシーの怒りはまだまだ収まりそうになさそうだった。
 ここでルイズがふとつぶやく。
「それにしても、オールド・オスマンがそんなことをねぇ。いくら季節外れの暑さが続くからって、
いきなり慰安旅行だなんて、何を考えてるのかしら」
「まぁ、オールド・オスマンは変わり種ですもの。生徒のためになるんだったら、どんな常識外な
こともやってのけるんじゃない?」
 特に気にした風もなく答えるキュルケ。ルイズは先ほどのモンモランシーとギーシュの発言を
思い返して、うっとりとした。
(夜の渚で散歩かぁ……。たまにはサイトとそんなロマンチックなことをするのも、悪くないわね)
 ……だが、彼女たちはこの時知らなかった。オスマンと才人の目論見を。そして、自分たちを
待ち受けている大波乱を……。

 翌日。それからどうなったかと言うと、
「ルイズ〜……許してくれ〜……。もう二度としないからさ〜……」
 波打ち際に突き出た岩礁に縛りつけられた才人が、情けない声を上げた。その近くでは
オスマンやオンディーヌ隊員たちが、同様に縛りつけられていた。
 どうして海に来てこんなことになっているかと言うと、才人たちの自業自得であった。
海への慰安旅行の真の目的は、宝箱いっぱいに入れられていたハルケギニア文明のそれとは
違い、肌の露出が多い地球の女性用の水着を学院の女子に着させて自分たちの眼福にしようと
いう何とも低俗なものだったのだ。
 オスマンは「水の精霊に祈りを捧げる巫女の衣装」と適当な理由をでっち上げて女子に
水着を着させ、更に理由をこじつけて少しずつ布面積の少ないものに着替えさせていったの
だが、オンディーヌを交えた一番過激なものを着させる作戦会議をルイズに盗み聞きされた
ことがきっかけとなって目論見がバレ、逆に罠に掛けられて一網打尽にされてしまった
次第であった。
「まッ、相棒たちが女ってもんを甘く見たのがわりいのさ。っていうか、風呂の時も痛い目
見たってのに、全く懲りなもんだねえ」
 才人の横に立てかけられたデルフリンガーが呆れ返っていた。
「そんなこと言ってないでデルフ、助けてくれよぉ!」
「無茶言うなよ。俺が自力じゃ動けねえってこと忘れたのか?」
「そんなことより、みんな足元を見てよ……!」
 レイナールが切羽詰まった声を出す。
 座った姿勢で拘束されている彼らの下半身が、水の中に没していた。
「これって潮が満ち始めてるんじゃないか……!?」
「えぇ〜!?」
 悲鳴を上げるオンディーヌたちだが、騙された怒りに沸く女子たちは誰も助けてはくれないのだった。

 女子は才人たちのことなど眼中になく、自由気ままに戯れ合っていた。
「そうそうその調子! だんだん上手くなってきたじゃない、テファ!」
「ほんとう!?」
 ルイズは泳いだことのないティファニアの手を取って泳ぎを教えている。
 だがその最中にいきなり、ルイズの身体が変に跳ね上がった。

980ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc:2016/11/12(土) 20:44:40 ID:bys431v2
「ひゃッ!?」
「どうしました、ミス・ヴァリエール?」
 見守っていたシエスタが何事か尋ねかける。
「何かにぶつかったみたい……」
 後ろを振り向いたルイズのまたぐらを、何かがこすった。
「ちょッ!? くすぐったい……! 何するのよシエスタぁ!」
 傍目からすると変な踊りを踊っているかのように身悶えするルイズに、シエスタは呆気にとられた。
「わたしじゃありませんけど……」
「え?」
 言われてみれば、シエスタの立ち位置はティファニアを挟んだ反対側。どう考えてもシエスタの
腕は自分に届かない。
 ルイズはティファニアを見下ろしたが、彼女も違うと首を振った。
「じゃあ一体誰が……」
 ルイズがつぶやいた瞬間、太く長い何かの影が水の中から海面を叩き、バシャーンッ! 
と激しい水しぶきを上げた!
「きゃああああああッ!?」
 女子たちの叫び声が合唱となる。そして海中から飛び出してきたのは……全長百メイルは
あろうかという大きすぎるタコだった!
「な、何よあれ!?」
 モンモランシーの悲鳴に答えるように、オスマンが叫んだ。
「おお! あれこそまさに、三十年に一度人前に姿を現すという水の精霊、伝説の大ダコじゃ! 
乙女たちが、真の巫女装束を着用せんから、怒りに我を忘れておるッ!」
 オスマンをきつくにらむモンモランシー。
「あッ、冗談、冗談……」
 オスマンの解説は完全にでたらめで、大ダコの正体はかつてミクロネシアの孤島、コンパス島の
海域に棲息して次々に船を沈め、島民から祟り神と畏れられた怪獣スダールの同種であった。
 スダールは触腕を海中から伸ばし、逃げ惑う女子の中からモンモランシーとティファニアを
捕まえる。
「きゃああッ!?」
「テファ! モンモランシー!」
 二人に気づいたルイズが、単身スダールに向かっていく。それを見た才人が叫ぶ。
「あッ、馬鹿! 無理するなルイズ!」
 才人は両手首を縛る縄を岩礁にこすりつけ、どうにか断ち切ろうとする。
「このッ! テファたちを離しなさいよぉ!」
 ルイズとシエスタでティファニアを掴む触腕を振りほどこうと必死に引っ張るが、女子の
か細い腕では曲りなりにも怪獣の力に敵うべくもなかった。あっさりと振りほどかれ、二人も
捕まってしまった。
 スダールの触腕が獲物の質感を確かめるかのように、ルイズたちの身体をまさぐる。
「きゃああーッ! そこは駄目ぇー!」
 ヌルヌルとした触腕が肌にこすれ、ルイズたちは艶めかしい悲鳴を発した。
「あぁッ! な、何て羨ま……ひどいことをッ!」
 ギーシュたちが鼻血を垂らして絶叫した。
 猛威を振るうスダールに対抗できるのは、この場にはタバサしかいなかった。他は杖を宿に
置いてきているのだ。
「杖を持ってきてるのがタバサだけだったなんて!」
 焦るキュルケ。タバサは竜巻を作り出してスダールにぶつけるが、スダールの巨体は小揺るぎ
しかしなかった。
「もっと力を出せないの!?」
「駄目……これ以上はルイズたちが……」
 ルイズたちが捕まっている以上、タバサも強力な攻撃は使えないのだった。
 一方でスダールはタバサとその近くのキュルケに目をつけ、残りの触腕を伸ばす。海では
スダールの方が圧倒的に速い!
「きゃああああッ!」
 タバサたちも捕まってしまった。万事休す!
 しかしここで才人が手首の縄を断ち切ることに成功し、拘束をほどいて立ち上がった。

981ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc:2016/11/12(土) 20:46:45 ID:bys431v2
「解けた! 待ってろよ、ルイズ!」
「あッ、サイト! 僕のも……!」
 デルフリンガーを背負って駆け出していく才人に呼びかけるマリコルヌだったが、時間が惜しい。
才人は止まらなかった。
 スダールに向かって突き進む才人だが、腰まで水に浸かっていては水の抵抗でスピードが出ない。
そこでデルフリンガーが助言した。
「相棒、落ち着いて海の中を見ろ!」
 才人が目を落とすと、スダールの触腕の一本が海面に垂れ下がっていた。
「奴の足伝いに行けるだろ?」
「そうか! よぉしッ!」
 才人はデルフリンガーを抜いて、ガンダールヴの力でパワーアップ。スダールの足に飛び乗って
ルイズたちの元まで猛然と走っていった。
「安心しろ! 今助けてやる! おおおおーッ!」
 触腕を蹴って高く跳び上がり、ティファニアたちを掴む触腕を半ばから切り落として解放していった。
「今の内に早くッ!」
「う、うん!」
 ティファニアたちを逃がす才人に、スダールが怒りの眼差しを向けた。そして触腕を振り下ろすが、
才人はそれを逆に足場にしてスダールの胴体へ跳んでいく。
「はぁぁぁぁ――――――ッ!」
 才人の唐竹割りがスダールの眉間を捉え、深々と切り込んだ! スダールはショックで最後の
ルイズを手放した。
「きゃあ―――――ッ!」
 自由落下するルイズを才人が受け止めた。
「怪我はないか?」
「さ、サイト……」
 お姫さま抱っこする才人に、ルイズは感極まってガバッと抱きついた。
「よかった、無事で……」
「もっと早くに助けに来なさいよね……」
 才人がルイズを下ろす後ろで、致命傷を食らったスダールが大洋の方向へ逃げていく。
しかし途中でぐったりと力尽き、海中に没して絶命した。
「さぁ、早いとこ陸に上がろう」
「ええ……」
 才人はルイズを連れて砂浜の方向へ引き返していこうとしたが……その背後からまた何か
巨大なものが海面を割ってせり上がってきた! 表面にタコの吸盤が列を成して並んでいる。
「何!? まだ他にもいたのかッ!」
 ルイズをかばいデルフリンガーを構え直した才人だが……。
「あれ? 何だか丸くね?」
 今度現れたものは、触腕ではなく球体の表面に吸盤が並んだような姿であった。
 その球体が更に海面からせり上がってきて――短い手足と尻尾、爬虫類のような首を生やした
真の姿を晒した!
「カ―――ギ―――――!」
「うわああああッ!? た、タコじゃねぇぇぇッ! タッコングだぁッ!!」
 絶叫する才人。その通り、現れたのはスダールとは全く別の怪獣。オイル怪獣タッコングだ!
「カ―――ギ―――――!」
 タッコングは丸く巨大な肉体を才人に接近させていく。才人たちは距離が近すぎるために
逃げる暇もない!
「ルイズ、陸に向かってまっすぐ走れ! うりゃああああッ!」
「サイト!? きゃあぁぁッ!」

982ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc:2016/11/12(土) 20:49:05 ID:bys431v2
 才人はせめてルイズだけでも、と彼女の小柄な体を再び抱え上げ、タッコングの反対方向へ
力いっぱいに投げ飛ばした。投げ出されたルイズは海面に叩きつけられる。
 その直後に才人がタッコングの下敷きとなる!
「サイトぉぉぉぉぉ――――――――!?」
 絶叫するルイズ。だが、
『――せぇぇぇぇぇぇあぁぁッ!』
「カ―――ギ―――――!?」
 下からウルトラマンゼロがタッコングを持ち上げ、遠くへ放り投げた。危ないところで
才人が変身したのであった。
『ルイズ、早く逃げなッ!』
 ゼロも軽く振り向いて、ルイズに告げた。安堵したルイズはうなずき返す。
「カ―――ギ―――――!」
『だぁッ!』
 再び突進してくるタッコング。ゼロはルイズたちに被害が及ばないように、真正面から
受け止めてタッコングと組み合った。
 ゼロが抑えつけている間に陸へ向かって避難していくルイズ。その側に一緒に捕まっていた
ティファニアたちが駆け寄ってくる。
「大丈夫だった、ルイズ?」
「ええ。みんなも早く逃げましょう!」
 皆を連れて走っていこうとするルイズだったが……急に前のめりに倒れた。
「わぷッ!?」
「ちょっと、どうしたのよ!? 大丈夫?」
 キュルケに助け起こされるルイズ。海面なので怪我はなかったが、ルイズは怪訝な表情で
後ろに振り返った。
「何かが足に絡まってる感触が……」
 片足を持ち上げてよく見て……ルイズの顔が驚愕に染まった。
「な、何これ!? 細い紐みたいなのが……足に巻きついてる!?」
 ルイズの足首には、細長いものがしっかりと巻きついていた。しかもただの紐ではなく、
ハルケギニアにはない素材でコーティングされている。絶縁ゴム……つまりケーブルであった。
「きゃああッ!?」
 ルイズだけではなく、ティファニアたち全員も海中から飛び出してきたコードに襲われ、
がんじがらめにされてしまった。しかもそれに引っ張られ、六人が海の方角へ引きずられていく。
「ど、どうなってるのこれぇ!?」
 それと時同じくして、水平線上にまたもや巨大な物体が浮上してきた。それを目の当たりにした
モンモランシーが絶叫。
「何よあれぇ! 鉄の船のお化け!?」
 巨大な物体は、無数の船舶が乱雑に積み上げられて一個の形を作っているというあまりにも
異様な容貌であった。しかもハルケギニアの木製ではなく、地球の金属製の船で出来上がっている。
 それは1965年に氷山に激突して沈没したコンピューター制御の無人船が、十五年後に暴走して
複数の船舶を取り込んだことで誕生した科学の幽霊船、バラックシップであった!
「きゃあああああ――――――!?」
 ルイズたちはなす術なくバラックシップの方向へ引き寄せられていく。
『ルイズ!?』
 慌てて振り返ったゼロだが、タッコングがぶつかってくるため彼女たちへ手が回らない。
「カ―――ギ―――――!」
『うわッ! くっそぉッ!』
 早くタッコングをどうにかしようと焦るゼロだが、タッコングの力は強く、なかなか思う
ようにはいかない。

983ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc:2016/11/12(土) 20:51:06 ID:bys431v2
 噛みついてこようとするタッコングの顎を掴んで受け止めたが、タッコングの口からオイルが
噴出されて目つぶしを食らってしまった。
『おわぁッ!』
「カ―――ギ―――――!」
 ひるんだゼロに突進攻撃を決めるタッコング。ゼロは海面に倒れ込んで激しい水しぶきを上げる。
『くっそ……もう容赦しねぇぜッ!』
 しかしゼロはタッコングから離れた隙にストロングコロナゼロに変身した。そして突っ込んできた
タッコングをがっしりと受け止め、思い切り放り投げる。
『うらあぁぁぁッ!』
「カ―――ギ―――――!」
 先ほどとは反対に、自分が海面に叩きつけられたタッコングに、ゼロはとどめの一撃を繰り出す。
『こいつでたこ焼きにしてやるぜぇぇぇッ!』
 灼熱のガルネイトバスターがタッコングに炸裂!
「カ―――ギ―――――!!」
 タッコングの体内のオイルが過熱されて発火。タッコングはたちまち爆散して消し飛んだ。
 しかしその時には、ルイズたちはバラックシップに引き込まれてしまっていた。ゼロの中の
才人はすぐさま彼女たちを助けに行こうとする。
『ルイズッ!』
『待て才人!』
 それをゼロが止めた。カラータイマーが激しく点滅している。
 三分間の制限時間が近づいているのだった。更にバラックシップから突き出ている大量の
砲門がこちらに向いている。
『奴と戦ってる途中で変身が解けちまったら、一瞬でミンチにされちまうぜ……! 一旦変身を
解除するぞ!』
 ゼロは光に包まれて変身解除して、元に戻った才人は砂浜の波打ち際に立つ。
「ルイズ、みんな……! 待っててくれ、すぐに助けに行くからな……!」
 才人は水平線上のバラックシップを見やりながら、唇を噛み締めてそう誓った。

 その頃、バラックシップの船内に引きずり込まれたルイズたちは、ケーブルに引っ張られる
ままに心臓部のコンピューター室まで連れてこられた。そのまま柱に縛りつけられる。
「もう、立て続けにどうなってるのよ……!」
 災難の連続に毒づくキュルケ。ルイズは天井を見上げて叫び立てる。
「誰か、このでっかい鉄の船を操ってる奴はいるの!? いるんならコソコソしてないで、
姿を見せなさい! ガリアの手の者!?」
 と命令すると、それに応じるように人型の影がこの場にテレポートしてきた。
『ハッハー! そいつはミーさ! ミーを覚えてるかな〜!?』
「あッ! あんたは!?」
 ルイズ、シエスタ、ティファニアが目を見開いて驚愕した。
 出現したのは、見覚えのある宇宙人……アルビオンでの冷凍怪獣軍団との対決後に、卑怯にも
才人に奇襲を掛けてきたバルキー星人だったのだ!

984ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc:2016/11/12(土) 20:52:12 ID:bys431v2
ここまでです。
もうじき冬が来るのに海の話。

985名無しさん:2016/11/13(日) 14:04:34 ID:66Pimip.
おつ

986Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia 解説:2016/11/14(月) 22:52:51 ID:KIEbNWQc
ご無沙汰しております。
大変遅くなりましたが、よろしければまた23:00頃から続きを投下させてください。

987Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia 解説:2016/11/14(月) 23:01:30 ID:KIEbNWQc

 一行はラ・ロシェールにつくと、さっそく衛士の詰め所へ向かって、先刻襲撃してきた狼藉者どもを事情を話して引き渡した。
 その際に一応、今夜はアルビオンへ向かう船は出ないだろうかとも問い合わせてみたが、事前にロングビルから聞いていた情報が正しかったということが確認できただけだった。
 やはり、今日明日はアルビオンへ向かう船は出ないのだという。

 明後日までアルビオンに向かえない以上、今夜と明日とはこの街でゆっくりと疲れを癒やして英気を養っておこうということで、一行は宿を探すことにした。
 幸いなことに十分な空き部屋のある宿がすぐに見つかったので、そこに部屋を取ることに決める。
 だが、その店……『女神の杵』亭と呼ばれる、貴族向けの高級宿……の非常に豪奢な内装を見て、平民であるシエスタは気後れしたようだった。

「わ、私にはこんな高級なところはもったいないです。お金もあんまりないですし。私は、もっと安いところで……」

 なんでしたら馬小屋でもかまいませんから、というシエスタの言葉を受けて、ワルドが頷いた。

「ふむ、もっともだ。では、君にはよそで泊まってもらうことにしよう」

 一般的な貴族の感覚からしてみれば、平民が貴族用の宿に泊まるのを辞退するのは当然のことだった。それにワルドにとって彼女はまったく関心外の存在であって、どこに泊まろうと知ったことではない。
 しかし、それには彼とシエスタ以外の全員が反対した。

「ワルド……。いくら相手が平民だからって、本気で『馬小屋に泊まる』なんていってる女の子を引き留めもせずに出て行かせる気なの?」

「子爵。レディーに、それもミス・シエスタのような女性に粗末な寝屋をあてがうくらいなら、ぼくが部屋を譲ってそこへ泊まりましょう」

「いや、2人ともここに泊まった方がいいんじゃないかな。ディーキンたちは誰かに狙われてるみたいなんだから、分かれたりしないでみんなで固まってた方がいいでしょ?」

「ディー君の言うとおりだわ。なによ、あなたの宿代くらい、心配しなくても私が持ってあげるわよ」

「一緒に命をかけた仲に、貴族も平民もない」

 皆の言葉を聞いて、シエスタは感動したような面持ちになった。

「み、皆さん……。ありがとうございます!」

「……はは、そうか。いや、これはまったくだ。すまない、どうやら僕の配慮が足りなかったようだね――」

 ワルドは朗らかに笑って皆に同意しはしたものの、内心ではやや困惑していた。

(こいつらは、なぜ平民のメイドなどをここまで厚遇しているのだ? 揃いも揃って……)

 最初はてっきり、戦場へ向かうというのに日常の感覚が抜けないお気楽な学生貴族どもが、身の回りの世話をさせるために学院のメイドを連れてきたのだとばかり思っていた。
 しかし、道中でルイズは使用人として連れてきたのではないといって否定し、今もまたこうして妙に良い扱いを受けている様子だ。

 もちろん貴族と平民といえども、長年にわたって家族同然のつきあいであるとか、個人的な恩義があるなどで、身分の差を超えて親しくしているというケースはままある。
 だが、誰か一人だけというのならともかく、全員が全員そうだというのが解せない。

(そういえば、あの青髪の小娘が先程、一緒に命をかけた仲だとか言っていたか……)

 もしや、こいつらが学生やメイドの割に妙に戦い慣れしていることとも何か関係があるのだろうか?

(……ふん。まあ、どうでもいいがな)

 ワルドは少し思案を巡らせてみたものの、じきに無用な詮索だと結論した。
 気にはなるが、使用人と学生どもとの内輪の事情など、結局は自分には無関係なことでしかないのだ。
 あとで機会があればルイズから聞き出しておく程度でよかろうと考えをまとめると、小さく咳払いをして気を取り直し、宿の部屋割りを提案する。

988Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg:2016/11/14(月) 23:03:30 ID:KIEbNWQc
「では、全員で止まるということで、2人部屋を3つ取ることにしよう。キュルケとタバサ、ギーシュと使い魔君が相部屋だ。婚約者のルイズと僕が同室、あとはメイドの君が一人部屋で……」

 その言葉を聞いて、ルイズがぎょっとしたような顔で彼の方を向いた。

「ちょ、ちょっと、ワルド? 私とあなたが同室なんて、その……。結婚してもいないのに、ダメよ!」

 ワルドは首を振って、ルイズを見つめる。

「大事な話があるんだ。2人きりで話したい」

「……だ、だって――」

 そりゃあ、あなたは私の憧れの人だったし、小さい頃には親同士の約束で婚約もしていたかもしれないけど……。
 もう小さな子どもでもないのに、同室で寝るだなんてできるわけがないでしょう。
 だって、私とあなたとは十年も会わずにいて、今日の朝になってようやく再会したばかりじゃないの。

 ルイズがそう反論しようと口を開き掛けたところに、ディーキンが横槍を入れた。

「ンー、ワルドお兄さん?」

 話に割り込まれたワルドは、やや不機嫌そうに顔をしかめる。

「……なんだね、使い魔君」

「ええと、ディーキンには、人間の婚約者とかのことはよくわからないけど……。さっきのみんな同じ宿にしようっていうのは、敵が来るかもしれないから用心のためにってことなの。だから2人よりも、もっと大勢で同じ部屋に泊まった方がいいんじゃないかな?」

 冒険者は普通性別などをあまり意識せず、あらかじめ危険が予想される場合にはとにかく夜寝るときには単独でいることは避けて、なるべく大勢で固まっておくというのが一般的である。交代で見張りを立てることも多い。
 傭兵を雇ってこちらを襲撃させるような敵がいることが分かった以上、2人ずつという少人数に分かれてしまうのでは心もとない。
 ましてやシエスタが一人部屋だというのでは、彼女を同じ宿にしてもらった意味がほとんどないではないか。

 それに口には出さなかったが、危険な相手かも知れないワルドをルイズと2人だけで一晩同じ部屋にいさせるというのも、ディーキンとしては当然避けたいところであった。
 まあ、彼女1人を害したところで今回の任務を阻止できるわけでもないし、尻尾を出してしまうことにもなる。
 だからたとえワルドが黒だったとしてもルイズが部屋で襲われるとはあまり思ってはいないが……、たとえそうであるにしても、一応の警戒は必要だろう。

「確かに、寝るときにはできるだけ大勢でいた方がいい。全員で一部屋でも私は構わない」

 タバサがディーキンに同意してそう言うと、キュルケも皮肉っぽい笑みを浮かべて肩を竦めながら賛意を示した。

「そうよね、私も別に構わないけど。まあさすがに男女は分けるにしても、大部屋2つでいいんじゃない? 何かは知りませんけれど、お国のための大事な任務の最中でも2人きりで話さなきゃいけないような私事が隊長殿にあるっていうのなら、店に頼んでその時だけ別の空き部屋を貸してもらえば済むことだわ」

 ワルドは顔をしかめて同行者たちの様子を伺ってみたが、自分の提案に賛成してくれそうな者がいないのを見てとるとしぶしぶ頷いた。

「……そうか、ではそうしよう。大部屋を2部屋とって男女で分かれる。それとは別に空き部屋をひとつ借りるから、ルイズは後でそこへ来てほしい」

「ええ、それなら……」

 単に話をするだけなら断る理由も無いので、今度はルイズも素直に頷く。

 それから全員で軽い食事をとり、それが済んでワルドとルイズが連れ立って上にいくのを確認すると、ディーキンは念のために話の間部屋の前で見張りをしておくといって後に続いた。その際、タバサとキュルケにも同行を頼んでおく。
 シエスタとギーシュ、それについ先程街へ到着して主と再会したヴェルダンデには、万が一襲撃があった場合に備えて他の客や店員たちと一緒に下の酒場にいてもらうことにした。その間は酒場のマスターや客たちからアルビオンの情勢に関する情報収集などをできる範囲でしておいてもらえば、無駄がなくて済むことだろう。借りた部屋に行って寝るのは、メンバーが戻って来て合流してからだ。
 幸いこの宿は主として貴族の客を相手にしているので使い魔の類も部屋に入れてよいとのことで、溺愛するヴェルダンデとも一緒に寝られるとあってギーシュは喜んでいた。

989Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg:2016/11/14(月) 23:05:17 ID:KIEbNWQc




 しばしの後、ワルドらの入った部屋の前で、ディーキン、タバサ、キュルケの3人は筆談をしていた。
 耳の良い『風』のメイジであるワルドに、万が一にも聞かれないためである。

“確かにあの男は怪しい”“同感ね”“うーん、2人もそう思うの?”

 ディーキンは、『もしかするとワルドは敵かもしれない』という情報を早めに仲間と共有しておく必要を感じて、一番話が通りやすそうなキュルケとタバサに声をかけたのだが……。
 そのことを持ち出してみると、どうやら彼女らの方もすでにワルドに疑念を抱いていたらしいことが分かった。

 この旅に行くことは昨夜決まったばかりだというのに、敵がこちらの行き先に傭兵を雇って待ち伏せさせていたというのが普通に考えておかしい、と2人は気付いたのだ。
 そんなに早く情報が漏れているということは、トリステイン宮廷の内部、それも王女に同行して学院にきた者たちの中に敵の内通者がいる可能性が高い。
 してみると、王女自身と彼女に付き添って話を持ち込んできた枢機卿はまあ違うだろうから、最も怪しいのは当日の朝になって急に自分たちに同行することが決まった魔法衛士隊の隊長殿である。

“オオ……、そうだね。2人は頭いいの”

 ディーキンは彼女らの考察を聞いて感嘆しきりだった。
 占術に頼らなければ、自分は現時点でワルドをさして疑わしいとは思っていなかったに違いない。それに比べて、彼女らの洞察力はまったく鋭いものだ。

“それほどでもない”“別に、あの男が気に入らなかったから注意してただけよ、私たちは”

 そう、根本的なことを言えば、ワルドの朗らかな態度とは不釣り合いな冷たい目や同行者に対する配慮の欠片もない旅路での飛ばし方などが彼に対する心証をすこぶる悪くさせたことが、彼女らに疑いを抱かせたそもそものきっかけだったのだ。
 キュルケは元よりタバサにしても、ルイズとのおしゃべりにばかりかまけて女性も混じっている地上の同行者たちをろくに気遣いもせず、半日も馬で走らせ続けるような男に対しては不愉快にもなろうというものである。
 誰だって、好意を持っている相手のことはあまり疑おうとは思わないし、逆に嫌いな相手のことは必要以上に粗探しをしたくなるだろう。
 魔法衛士隊の隊長ともあろうものが、つい先程実際に襲われ、宿決めの件でもディーキンが夜襲の危険性を指摘したばかりだというのに、それをまるで考慮してないように部屋割りでシエスタを一人部屋にしようとしたり、ルイズと相部屋で大事な話をしたいなどと場違いなことを言い出したりするあたりも気に食わなかった。
 まるで夜襲を手助けするかのような、あるいは今夜は夜襲などないのだと“知っている”かのような態度ではないか……。

 結局のところ、ワルドは表面上はいい顔をしてはいたものの、実際は他人に対する気遣いなどない男だということをその振る舞いで露呈させてしまっていたのである。
 利己的な悪人が利他的な善人を装おうとしてみても、付け焼刃では言動や態度の端々から本性がにじみ出て、なかなか上手くはいかないものなのだ。

 3人はそうしてお互いのワルドに対する疑念を確認し合うと、これからの行動方針について相談していった。

 とりあえず、疑わしくはあるものの彼が黒だと確定されたわけでもないし、仮にもルイズの婚約者だというのだから、現状では3人で協力してそれとなく見張っておくに留めようということでほどなく意見がまとまった。
 他の3人にはこのことについては当面伝えないでおこうというのも、同時に取り決める。
 ルイズに対して確定してもいない婚約者への疑念などを伝えるのははばかられるし、彼女は隠し事も苦手そうである。
 ギーシュについても同様だ。信頼はおける男だと思うが、やはり隠し事が得意そうには見えない。

990Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg:2016/11/14(月) 23:07:05 ID:KIEbNWQc
 シエスタは……、彼女はパラディンなのだから、同行者があるいは敵であり悪であるかも知れない、などということはむやみに知らせない方がいいだろう。
 そんな疑念を伝えれば彼女は《悪の感知(ディテクト・イーヴル)》を用いてその事を確認しないわけにはいかなくなるだろうし、そうすると話が早いといえば早いものの、一触即発の事態を招きかねない。
 パラディンは改悛に向けて努力している者や、改心させるためにあえて同道させている者を別とすれば、悪だと知っている相手と仲間として同行することは戒律上許されないのだ。
 それに、仮に彼女に調べてもらった結果ワルドが悪だったとしても、それで彼が利己的で信頼できない相手だとはわかるだろうが、確実に敵だと決まるわけではない。悪人ではあっても今回の任務に関しては別に裏表はなく、味方には違いないかもしれないのだ。
 逆に言うと、仮に彼が悪ではなかったとしても、だからといって間違いなく味方だとも限らないのである。中立の属性の犯罪者や革命家などいくらでもいるのだから。
 したがって、彼女に調べてもらって一安心というわけにはいかない以上、伝えても事態をややこしくするだけであまり意味があるまい。

 ディーキンはそれから、明日の間にこの街で情報収集をしておきたいからその時には協力をして欲しいと2人に頼んでおいた。
 本当なら今夜のうちから酒場などを渡り歩いて行うつもりでいたのだが、襲撃の件などを考え、今夜は警戒に努めて明日に回すことにしたのである。
 彼女らはすぐに快諾してくれた。

“私は、いつでもあなたの力になる”“2人のお邪魔でなければ、もちろんご一緒したいわね”

 そんなこんなで話し合っておくべきことがあらかた済むと、3人は下から持ってきた飲食物などを軽くつまみながら、ルイズらが部屋から出てくるのを待った。



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 一時的に借りた2人部屋に入ると、ワルドはルイズと向かい合って机につき、まずはワインを勧めた。
 2人に、と言って陶器のグラスを掲げたワルドに、ルイズは微かに顔をしかめたものの黙ってグラスを差し出して乾杯に応じる。

「しかし、ずいぶんと大変な仕事を申し出たそうだね。姫殿下は、最低限ウェールズ皇太子へ手紙を届ければよい、とは言っておられたが」

「……ええ、そうね。とても難しいことでしょうね……」

 確かに、冷静に考えてみればおよそ無茶苦茶な話だった。
 余所者がもはや戦の趨勢が決したアルビオンの戦場へ向かい、情勢を確かめた上で両軍に戦争を終わらせるために何ができるのかを模索するだなどと。
 それでも、ディーキンの自信に満ちた……というか、楽しみだというように顔を輝かせたあの姿を見ていると、彼ならなんとかしてくれそうな気がしてしまう。
 戦争のなんたるかもしらない世間知らずな子供が夢を見ているだけ、と彼を召喚したばかりの頃の自分なら思ったかもしれないが……。

「いや、誰にでも言えることじゃないよ。さすがは僕の婚約者だ」

 そう言われて、ルイズは内心で苦笑した。
 どうやらワルドは、この仕事を申し出たのは自分だと思っているらしい。
 一瞬誤解を訂正しようかとも思ったが、少し考えて、まあいいか、と思い直した。
 経緯の説明が面倒だし、第一使い魔の亜人がそんなことを言い出したなどと説明しても、信じてもらえるかどうか。
 彼に黙っておいたからと言って、別にディーキンの手柄を横取りするようなことになるわけでもあるまい。

 そうして俯き加減で押し黙ったまま、少し微笑んだような顔をしているルイズを、ワルドは興味深そうに見つめた。

「誇らしいだろうね……いくらか妥協する必要は出てくるだろうし、危険も大きいが。大丈夫、きっとなにがしかの成果を上げて戻れるさ。なにせ、僕がついているんだから」

「そうね、あなたは昔からとても頼もしかったものね。それに、私の仲間たちもいるもの。きっと何かができるわ」

 ルイズは顔を上げると、そう言って力強く頷いた。
 ワルドも表向きは朗らかな顔で頷き返す……が、内心では少々顔をしかめていた。

(また仲間たち、か。ずいぶんとあの連中を信頼しているようだな)

991Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg:2016/11/14(月) 23:10:05 ID:KIEbNWQc
 かつてはすっかり自分に懐いて依存していた彼女のこと、すぐになびかせられると思っていたのだが、どうも反応が鈍い。
 離れていた期間が長いのもあるだろうが、どうやらあの仲間たち……特に使い魔であるあの『ガンダールヴ』に対する信頼が大きな原因のひとつだと思えた。
 今は仲間や使い魔を頼れるから、自分に依存する必要性を感じなくなったというわけだろう。

 確かにただのガキどもではないようだが、しかし、所詮はできもしない夢物語を抱いて戦場へ向かおうなどという幼く愚かな子供たちだ。
 あんな平民の傭兵どもを追い散らした程度で、これから向かう本当の戦場でどれほど役に立つというのか。
 ここはひとつ、仲間らへのその盲信を改めさせ、魔法衛士隊の隊長というずっと確かな実力を持つ自分に頼るように仕向けてやる必要があるかもしれない。

(そのためには、あんなザコの傭兵どもではない、本当に強い相手を用意してやる必要があるか……)

 そんな思案を巡らせてしばし黙り込んでいたワルドに対して、ルイズが首を傾げた。

「どうしたの、ワルド。大事な話があるんでしょう? 何?」

「ああ……。いや、すまない。その、ちょっと……昔のことを思い出していたんだよ」

 我に返ったワルドは、咳払いをしてそう取り繕うと、遠くを見るような目になって話しを始めた。

「きみも覚えているかな、あの日の約束を。ほら、きみのお屋敷の中庭で……」

「あの、池に浮かんだ小船のこと? ええ、もちろん覚えているわ」

 ワルドは頷いて先を続ける。

「きみは、ご両親に怒られたあと、よくあそこでいじけていたな。いつもお姉さんと魔法の才能を比べられて、出来が悪いなどと言われていたが……。僕は、それは間違いだとずっと思っていたよ」

「そんなお世辞を、今さら言わないでよ。意地悪ね」

 ルイズはちょっと顔をしかめて、頬を膨らませる。

「いや、違うんだルイズ。お世辞なんかじゃない。きみは失敗ばかりしていたけれど、誰にもないオーラを放っていた。魅力といってもいい。それはきみが、他人にはない特別な力を持っているからさ」

「……まさか」

「いや、まさかじゃない。僕だって並みのメイジじゃないつもりだ、だからわかる。今日、ますますそのことを確信したよ」

 最初はただの気楽な昔話やお世辞だと思っていたが、ワルドは妙に熱っぽく、力を込めて話してくる。
 そのことにいささか困惑するルイズをよそに、ワルドは話し続けた。

「たとえば……、そう、きみの使い魔だ」

「ディーキンのこと?」

「そうだ。彼はほんの子供の亜人なのに、傭兵たちと戦っていた時には実に巧みに武器を使っていただろう? あれで確信したよ、彼は伝説の使い魔だと」

「で、伝説の使い魔……?」

 ルイズは本気で困惑し始めた。
 ワルドは一体、何を言っているのだろう?

「そうとも。彼は左手に手袋をして手の甲を隠していたが……。きっとあそこに使い魔のルーンがあるはずだ、違うかい?」

992Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg:2016/11/14(月) 23:12:20 ID:KIEbNWQc
「え? ……え、ええ。確か」

 学院に来た当初は確かに自分が使い魔であると周囲に印象付けるために隠さないようにしていたのだが、既に十分自分が使い魔だということは納得してもらえただろうと判断したディーキンは、最近は左手にグラヴをつけるようになっていた。
 左手に刻んだ《秘術印(アーケイン・マーク)》はそろそろ薄れかかってきているし、そのグラヴはマジックアイテムの一種なので特に外す必要がなくなればできるだけ身に着けておきたい、ということらしい。

(やはりな)

 うまくルイズから聞き出してやった、これでもう間違いはないと確信して、ワルドはひそかにほくそ笑んだ。

 ルイズにその件について話すかどうかは少し考えたが……、彼女に対する自分の評価を教えておくことは、こちらが彼女を真剣に求めているということを納得させるためには有益なはずだ。
 ならば、そのくらいのことは今ここで明かしておいても構うまい。

「それこそが『ガンダールヴ』の印だ。始祖ブリミルが用いたという、伝説の使い魔さ!」

「は、はあ?」

 重大発表をしたつもりのワルドの意気込みに相反して、ルイズは怪訝そうに顔をしかめて思わず間の抜けた声を漏らしてしまう。

 本当に、一体何を言い出すのか。
 正規の契約をしていない以上、彼は本当は使い魔ですらないのだから伝説もクソもないのだ。
 左手のルーンだって偽物であって、それが『ガンダールヴ』の印なわけがないだろうに……。

「……あの、ワルド。あなた、疲れてるんじゃないの?」

 心配げにそう聞いてみたルイズに対して、ワルドは自信に満ちた様子で答えを返した。

「とんでもない、僕には確信があるんだ。誰もが持てる使い魔じゃない、きみはそれだけの力を持ったメイジなんだよ。いずれは、それこそ始祖ブリミルのように、歴史に名を残す偉大なメイジになるはずだ。僕はそう予感している」

「…………」

 自分の話に夢中になるあまり、処置なしだというように呆れて頭を振ったルイズの様子にも気付いていないのか、ワルドは熱っぽい口調で話し続けた。

「この任務が終わったら、僕と結婚しようルイズ」

「へ? ……え、ええ!?」

 唐突なプロポーズに、ルイズは思わずぎょっとして目を見開いた。

「ずっとほったらかしだったことは謝るよ。婚約者だなんて言えた義理じゃないこともわかってる。でもルイズ、僕にはきみが必要なんだ。僕は魔法衛士隊の隊長で終わるつもりはない。いずれは一国を……、いや、このハルケギニアを動かすような貴族になりたい。だから……」

「……ワルド……」

 なんだかわけのわからない話の後に来たものだから面食らってしまったが、ワルドが真剣なのはわかる。
 これは自分も真面目に考えなければ失礼だと、ルイズは考え込んだ。

 彼は……今し方はなんだかわけのわからないことを言い出しもしたけれど、そりゃあ優しくて凛々しいとは自分でも思う。
 ずっと憧れていた相手でもある。とっくに婚約など無かったことになっているだろうと思っていたのに、ずっと忘れていなかった、結婚してくれと言われれば、それは嬉しくないわけじゃない。

993Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg:2016/11/14(月) 23:14:12 ID:KIEbNWQc
 だが、どうにも今のルイズにはワルドと結婚するという気にはなれなかった。

 結婚など全然考えていなかった上に、彼とは長い間離れていたこともあってまず実感が湧かない。
 それに、今のルイズはパートナーであるディーキンや、ようやくできた友人たちと共に過ごす日々に、これまでにない喜びを感じていた。
 まだまだ大切な仲間たちと共に日々を過ごしていきたい、ワルドと結婚して、彼と2人で向き合う生活に入りたくはない。

 自分はまだ大人じゃない、だから今はまだ結婚相手よりも友人たちの方が大切なのだ、と彼女は思った。

 それに実際のところ、幼い頃には彼に憧れていたルイズでさえ、キュルケやタバサほどではないにせよ現在のワルドの言動にはしっくりこないものを覚え、どうにも今の彼の姿は昔のワルドと重ならない、今でも優しいし凛々しいはずなのに、なんだか親しめない……と無意識のうちに感じ始めていたのだ。
 熟達したバードのような演技の達人や、上級デヴィルのごとき偽装の巧者のそれと比べれば、ワルドの仮面は所詮は狭い宮廷社会の中のみで磨いたものである。
 上位の貴族や王族に取り入るといったようなごく限定された環境には上手く適応しているのだろうが、それ以外の状況で使おうとすればたちまちメッキがはがれる程度の素人芸でしかなかった。
 それでも、ディーキンを召喚する以前の、友人も無く劣等生として一人きりで周囲からの蔑みに耐えていた頃の彼女であれば、ワルドの態度に違和感を覚えることなく昔と同じように彼になびいていたかもしれないが……。

「……その、わたしはまだ、あなたに釣り含うような立派なメイジじゃないわ。もっと修行をして、いつか立派な魔法使いになって……。父上と母上に、みんなに、認めてもらえるようになりたいのよ」

 ルイズは言葉を探しながらそう言うと、顔を上げてワルドを真っ直ぐに見つめた。

「だから、それまでは結婚は考えていないの。ごめんなさい」

「そうか……。もしや、きみの心の中には誰かが住み始めたのかな?」

 そう言われて、ルイズは慌てて首を横に振った。

「あ、いえ……。そんなことはないわ、そういうことじゃないのよ! ただ、今はまだ結婚は早いと思うから……」

 ワルドはしばし探るような目でルイズを見つめたが、どうやら嘘は無さそうだと納得した。
 同行者のギーシュという少年あたりが相手なのかとも考えたが、確かにこれまでの彼女の態度を見ていると、あの少年を特別に気にしている風ではない。むしろ、他の仲間たちよりも若干ぞんざいな扱いをしている節さえある。
 あのディーキンという少年には特に信頼を寄せている様子だが、自分の使い魔であることを考えれば当然のことだろう。さすがに、あんなトカゲめいた姿の亜人が相手だなどということはあるまい。

「……わかった。取り消そう。今、返事をくれとは言わないよ。でも、この旅が終わったら、きっときみの気持ちは僕にかたむくはずさ。きみはまだ早いと言うが、もう十六だ。結婚してもおかしくない。恋をして、自分のことは自分で決められる年齢なのだから……」

 ワルドは表向きは潔い好青年の顔を保ったままそう言いながら、心中ではこの旅の間にルイズの関心を自分に惹き付ける策を練っていた。
 まずは他の仲間たちが頼りにならんということを見せてやるべきだなと、先程少々弄んだ考えを再び検討し始める。

 結局のところ、ワルドは己の野心のためにルイズの力が必要だと言うだけで、彼女を愛しているわけでない。
 彼はただ、彼女の力しか見ていない。ディーキンの表面的な力にばかり目が行って、彼の本当の姿が見えていないように。
 だから現在のルイズの姿も見えておらず、昔のように接すれば、そして昔のように自分が、自分だけが頼りになる存在だということを示せば、以前の彼女がそうだったのと同じように自分に懐くと思っているのだ。

 そうして話を終えた2人は、仲間たちと合流するべく部屋を後にした……。

994Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg:2016/11/14(月) 23:15:17 ID:KIEbNWQc
今回は以上になります。
また、できるだけ早く続きを書いていきますので、次の機会にもどうぞよろしくお願いいたします。

それでは、失礼しました……(御辞儀)

995名無しさん:2016/11/16(水) 21:21:31 ID:RykK237g
おつですー
次スレの時期だ

996名無しさん:2016/11/20(日) 08:38:28 ID:uYroLPug
次スレ、こっちでいいんじゃない?

避難所用SS投下スレ11冊目
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/9616/1392658909/

997名無しさん:2016/11/28(月) 10:13:49 ID:ZJRDiBGk
よくわかんないけどこのスレの続きで新スレ立てちゃいかんの?

998名無しさん:2016/12/04(日) 13:03:02 ID:sYA7uK4M
投下スレが複数あっても…それにこちらのスレに投下してた人たちも、向こうのスレに投下してるし

999名無しさん:2016/12/29(木) 00:58:14 ID:Axh4YQUw
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1000名無しさん:2016/12/29(木) 01:08:34 ID:Axh4YQUw
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