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避難所用SS投下スレ11冊目

987ウルトラ5番目の使い魔 62話 (14/18) ◆213pT8BiCc:2017/08/10(木) 14:02:24 ID:TiRezyjA
 おのれおのれおのれダイナ、ガラオンさえあったならお前なんて!
 ミジー星人たち三人の(八割がたドルチェンコの)怨念がパワーとなり、その力を使って宇宙人はワンゼットに復活パワーを注ぎ込む。
 まばゆい光がワンゼットを包み、その光が晴れたとき、そこには雄々しく立つワンゼットの雄姿が……なかった。
「えっ?」
「あら?」
「こ、これは」
「あれまあ」
 四者四様の驚きよう。彼らの前にそびえたっていたのは、怒り、泣き、笑いの三つの顔を持つ頭だけの巨大ロボット、そうつまり。
 
「ガラオン!?」
 
 ミジー星人の三人は、懐かしく見間違えるはずもない、その個性的なフォルムに目が釘付けになった。
 これはいったいどういうことだ? ワンゼットを復活させるはずだったのに、なんでガラオンがいるんだ?
 目を丸くしているミジー星人たち。しかし宇宙人は、しばらく考え込んでいたが、ふと手を叩くとおもしろそうに言った。
「そうか、イメージしているときにあなた方はこのロボットのことばかり考えていたんでしょう。だからイメージが反映されてこうなっちゃったんですねぇ。いやあ失敗失敗」
 予想外の出来事にも関わらず、愉快そうに笑う宇宙人。
 なぜなら、この宇宙人にとってミジー星人たちの進退ごときは別にどうでもいい問題だった。目的のために騒ぎを起こす必要はあるが、自分が動いてウルトラマンたちを怒らせるより、自分と関係があるかどうかわからない使い捨ての手駒として一度でも働いてもらえればそれで十分。どうせウルトラマンたちを倒そうなどとは、この星では考えていない。
 とりあえず、ミジー星人たちは言いなりにできる。思えばワンゼットの復元に失敗したのも、考えようによってはいいことかもしれない。こんなマヌケな格好のロボットでは、いくらミジー星人がアホでも何もできないだろう。
「他人の生殺与奪を好きにできるということほど楽しいものはないですねえ」
 ミジー星人たちに聞こえないよう、声を抑えて宇宙人はつぶやいた。後はこいつらをハルケギニアの官憲に捕まらないよう保護してやる振りをしつつ、いくつか考えてある策に組み込んで適当に暴れてもらえれば、後は野となれ山となれで知ったことではない。

988ウルトラ5番目の使い魔 62話 (15/18) ◆213pT8BiCc:2017/08/10(木) 14:04:24 ID:TiRezyjA
 しかし、宇宙人はミジー星人たちの”小物っぷり”を甘く見すぎていた。
「あら? あの人たちは?」
 ふと、隣を見た宇宙人はいつの間にかミジー星人の三人がいなくなっているのに気付いた。
 そして、どこに? という疑問の解消に、彼の努力は必要とされなかった。なぜなら、彼の眼前で、ガラオンが猛烈なエンジン音をとどろかせて動き出したからである。
 
「なっ! あ、あなたたち!」
 
 宇宙人は、ガラオンの起こす振動と排気ガスの勢いで吹き飛ばされかけながらも、動き出したガラオンに向かって叫んだ。
 もちろん、動かしているのはミジー星人たち三人に他ならない。
「すっごーい! エネルギーが、前のガラオンのときの何十倍もあるわ。これなら、いくら動き続けたってへっちゃらそうよ」
「パワーもだぞ。こりゃ、スーパーガラオンって呼んでもいいな。でも、いったいどうしたんだろう?」
「フフ、どうやらワンゼットがガラオンに再構築されたときに、そのジェネレーターなどはそのまま組み込まれたようだな。だが、我々にはガラオンのほうがむしろ合っている。ようし、いくぞお前たち!」
「ラジャー!」
 ドルチェンコの指示で、カマチェンコとウドチェンコが操縦用の吊り輪を掴む。そしてガラオンは、怒りの表情を向けて、トリスタニアの方向へとドタドタドタと進撃を始めた。
 当然、唖然と見ていた宇宙人は激怒して叫ぶ。
「待ちなさいあなたたち! いったいどこへ行こうというのですか!」
 それに対して、ガラオンからドルチェンコの声がスピーカーで響く。
「フハハハ、聞かなくてもわかることよ。いまこそダイナに積もり積もった恨みを晴らすのだ!」
「なんですって! およしなさい! 今、余計な騒ぎを起こしても何のメリットもありません。戦いを挑むタイミングは、私にまかせる約束だったではないですか!」
「ダイナのことを一番よく知っているのは我々だ。ガラオンで出ていけば、奴は必ず現れる。ほかのウルトラマンが出てきても、このパワーアップしたガラオンなら敵ではないわ」
「そのロボットを修復してあげたのは私でしょう。恩人を裏切るのですか?」
「君の修理のおかげで使いやすくしてくれてありがとう」
「使いやすくしたぁ!?」
 さすがにこの時点で宇宙人もキレた。彼は自分がミジー星人たちの性格を見誤っていたことに、いまさらながら気が付いた。頭が良くて計画を立てて動く人間は、その場の勢いで考えなしに動くアホの思考を理解できない。
 いくらなんでもここまでアホな宇宙人はいないだろうと思っていた。しかしいた、もっとも珍獣を発見して喜ぶ趣味は彼にはなかったが。

989ウルトラ5番目の使い魔 62話 (16/18) ◆213pT8BiCc:2017/08/10(木) 14:07:10 ID:TiRezyjA
 ガラオンは土煙をあげながら、その不格好な見た目からは信じられないほどの速さで走っていく。
 まずい、このままではせっかく手間をかけて作り変えた舞台を台無しにされかねない。しかし、この宇宙人にはガラオンを力づくで止められるほどの戦闘力はなかった。
「ええい、仕方ありません! こうなったら、怪獣墓場から連れてきた星人か怪獣に止めてもらいましょう。計画が遅れてしまいますが、この際は仕方ない……ん?」
 そのとき、宇宙人のもとに、その怪獣墓場から連れてきた宇宙人のひとりからのコールが届いた。
 忙しい時に電話がかかってきたのと同じ不愉快さで、宇宙人はそのコールを無視しようかと思ったが、残っていた理性を総動員させて通話に応じることにした。
「なんですか? 今こちらは忙しいんですが……はい? なんですって」
 思念波での通信に応じて、相手の言葉を聞いたとき、宇宙人は思わず聞き返さずにはいられなかった。なぜなら、それは凶報というレベルではない問題を彼に叩きつけるものだったのだ。
「ちょっ! もう我慢できないって、怪獣墓場から連れ出してきたからまだ全然経ってないでしょう! ウルトラマンさえ倒せば文句ないだろうって、私はそういうつもりであなた方を連れ出したわけではって……切りやがりましたね!」
 一方的に通話を切られ、宇宙人は言葉遣いを荒げながら地団太を踏んだがどうしようもなかった。
 まったく、よりにもよってこんなときに。怪獣墓場で眠っていた怪獣や宇宙人の中から、ウルトラ戦士に恨みを持っていて、比較的実力のあるものを連れてきたつもりだったが、こんなに早く勝手な行動を起こすものが出るとは思わなかった。
 いや、冷静になって考えたら、アレを連れてきたのは間違いだった。宇宙ストリートファイトのチャンピオンだというから連れてきたが、あんなバカっぽい奴を信用するべきじゃなかった。
 頭のいい奴は割と簡単に従わせられる。しかし、バカを従わせることの難しさと偉大さを、彼は初めて痛感したのだった。
 後悔で思わず頭を抱えてしまった彼を、明け始めた朝の太陽が慰めるように照らし出していた。
 
 そして、新しい一日が始まる。
 
 夜のとばりが去り、トリスタニアは雲の少ない好天に恵まれて、実に爽やかな朝を迎えた。
 澄み切った空気を風が運び、家々の屋根の上では小鳥たちが歌を歌う。王宮では、バルコニーでアンリエッタ女王(仮)が、なぜか悲しそうな表情で朝焼けに涙を流していた。
 魅惑の妖精亭も、そろそろ夜なべの客に酒の代わりに水を渡して店じまいをする時間が近づいてきている。

990ウルトラ5番目の使い魔 62話 (17/18) ◆213pT8BiCc:2017/08/10(木) 14:09:05 ID:TiRezyjA
 が、そんな平和な朝も、トリスタニア全域に伝わる馬鹿でかい足音によって中断を余儀なくされた。
「うわっはっは! 出てこいウルトラマンダイナーっ!」
 猛進するガラオンがトリスタニアの大通りを驀進する。トリスタニアの通りは、怪獣が現れたときに備えてかなり広く作り直されているのは以前に述べたとおりだが、それでもガラオンほどの巨体が走り回る轟音は、どんな寝坊助も夢の国から引きずり出して窓を開けて外を見させるパワーを秘めていた。
「なっ、なんだありゃ!」
 トリスタニアの市民たちは、貴族、平民をとらずにあっけにとられた。
 そりゃそうだ、街中を怪獣とさえ呼べないような奇妙奇天烈な物体が驀進していく。早朝なので大通りにはほとんど人通りはなく、引かれる人間はいなかったものの、ガラオンは早くもトリスタニア全体の注目を浴びていた。
 唯一、魅惑の妖精亭でだけはジェシカやスカロンがため息をついている。
「ドルちゃんたち、ほんとに困った人たちなんだから」
 しかし、呆然とする一般人とは別に、軍隊は怪獣らしきもの出現の報を受けて動き始め、そしてミジー星人たちのお目当てであるダイナことアスカも、カリーヌに借りているチクトンネ街の仮宿でベッドから叩き出されていた。
「あいつら、またあんなもん出してきやがって」
 アスカにとって、見慣れたというより見飽きた姿のガラオンは懐かしさを呼ぶものではなかった。むしろミジー星人がらみでいい思い出のないアスカは早々にリーフラッシャーを取り出した。
「朝メシもまだだってのに、ちっとは人の迷惑を考えやがれ。ようし、すぐにスクラップにしてやるぜ」
 しかし、リーフラッシャーを掲げ、ダイナーッと叫ぶことで変身しようとした、その瞬間だった。アスカの耳に、別方向から悲鳴のような叫びが響いてきたのだ。
「おい空を見ろ! なんか降ってくるぞ!」
 アスカも思わず空を見上げ、そして青い空をバックにして垂直に落下してくるトーテムポールのような巨大なそれを見て絶句した。
 別の怪獣!? それは重力に引かれて落下してくると、街中に轟音をあげて着地した。
 今度はなんだ! 驚く人々は、派手な石柱に手足がついたような変な怪獣を見て思った。踊るような姿で停止しているそいつの胴体には、怒り、笑い、無表情の順で縦に顔がついており、アスカも初めて見るそいつが何者なのかと戸惑う。
 そしてそいつは、顔の額についているランプを光らせながらしゃべり始めた。
 
「久しぶりのシャバだジャジャ! ウルトラマンメビウスにやられた恨み、今日こそ晴らしてやるでジャジャ!」
「ぼくちんたちは蘇ったでシュラ。もうこの際はメビウスでなくてもいいでシュラ。この世界のウルトラマンたちを片っ端から倒して、ぼくちんたちの名前を再び全宇宙に響かせてやるでシュラ!」
「ではまずは、このチンケな街をぶっ壊して、ウルトラマンどもを引きずり出してやるでイン! 久しぶりに思いっきり暴れるでイン!」
 
 やっぱり凶悪怪獣だったか! 人々はうろたえ、アスカはそうはさせないと今度こそ変身しようとする。

991ウルトラ5番目の使い魔 62話 (18/18) ◆213pT8BiCc:2017/08/10(木) 14:10:16 ID:TiRezyjA
 しかし、そのときであった。ガラオンが突進の勢いのままに、そいつの真正面に飛び出してきたのである。
 
「うわわわわわ! ぶつかるぶつかる! ブレーキ、ブレーキッ!」
 
 ドルチェンコが悲鳴をあげ、ガラオンはキキーッと音を鳴らしながら急ブレーキをかけた。
 減速し、地面をひっかきながらガラオンはそいつの寸前で停止した。
 そして……
 
「……?」
「……?」
 
 突然に目の前に現れた同士、二体はお互いを見つめあった。
 固まったように動かず、見つめあう縦一列の顔と横一列の顔。
 
「怪しい奴!」
  
 かくて、トリスタニアの民に永遠に語り継がれる戦いが、ここに始まる。
 
 
 続く

992ウルトラ5番目の使い魔 あとがき ◆213pT8BiCc:2017/08/10(木) 14:17:21 ID:TiRezyjA
今回は以上です。
始まったばかりでこの始末☆はてさてこの先どうなりますことやら

993名無しさん:2017/08/10(木) 15:57:02 ID:vrpbj.56
ウルトラ乙

>「君の修理のおかげで使いやすくしてくれてありがとう」
∀?

994ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc:2017/08/14(月) 13:54:42 ID:tnRMCI/M
新しい投下スレ立てました。

あの作品のキャラがルイズに召喚されましたin避難所 4スレ目
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/9616/1502686395/


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