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避難所用SS投下スレ11冊目

982ウルトラ5番目の使い魔 62話 (9/18) ◆213pT8BiCc:2017/08/10(木) 13:52:59 ID:TiRezyjA
 四面楚歌とはまさにこのことだろう。しかし彼らはそれでも逃避行を続け、今日も昼間、なんとか追っ手をまいたミジー星人の三人組は、人気のない空き家でこそこそと夜露をしのいでいた。
「今日でもう何日目かしら。これから、どうなるのかしらねアタシたち?」
「さあねえ、でも街から外には検問で出られないし、妖精亭にも今さら帰れないしなあ。どうなるんだろう」
 不安げなカマチェンコに、ウドチェンコも疲れた声で答えた。これまで宇宙人であることを隠して何とかやってこれたのに、まさかダイナまでこっちに来るとは思わなかった。ダイナにはそう、恨まれていないほうがおかしいということをやってきたので、追いかけられるのも当然なのだが、それにしたっていつまで続くのだろうか。
 持ち出してきた食料も残り少ない。魅惑の妖精亭の温かいまかない飯が懐かしい……
「妖精亭、どうなったかしらね。宇宙人をかくまってたって、ひどいことになってなければいいけど」
 カマが、心配げに窓から夜空を見上げてつぶやいた。いまごろ、スカロンのおじさんやジェシカたちもこの空を見上げているかもしれない。
 だが、その心配は杞憂であった。魅惑の妖精亭はこれといって掣肘を受けることもなく、今日も普通に営業に精を出している。
「さーあ妖精さんたち、今日もはりきってお仕事しましょう!」
「お父さん、料理がまだ出来上がってないから、わたし厨房を手伝ってくるね」
「ごめんねジェシカちゃん。んもう、皿洗いが減っちゃったからペースが乱れてしょうがないわね。ドルちゃんたち、いまごろどうしてるのかしら?」
「おなかがすいたらそのうち戻ってくるでしょ。ペットのエサ代は未払いのお給金から引いておくとして、さぁて、今日もがんばらなきゃ!」
 魅惑の妖精亭は、元々こういう店だということが公式なので、宇宙人が紛れ込んでいても、あまり驚かれることはなかった。それにこの地域を担当しているチュレンヌが温厚であったことと、なにより店の常連たちが気にも止めなかったことが大きい。男たちにとっては、宇宙人よりかわいい女の子のほうが重要であったのだ。
 スカロンやジェシカは、役人の取り調べに対して三人組を特に抗弁はしなかったが糾弾もしなかった。来るものは拒まず、去るのならばそれもよし。夢の世界への門はいつでも開いている、それが魅惑の妖精亭だ。
 しかし、そんなことを知る由もないミジー星人たちは、今日も寂しく逃亡生活を送っていた。
 しだいに逃げ場がなくなっていくことに元気のないウドチェンコとカマチェンコ。ドルチェンコだけは、まあ性懲りもない様子で吠えている。
「おのれダイナ、我々のハルケギニア侵略の野望をまたしても邪魔しおって。今に見ていろ、次こそは必ずやっつけてやるからな!」
 どこからこれだけのやる気が湧いてくるのやら、まさしく揺るぎないファイティングスピリットの持ち主である。ウドチェンコとカマチェンコは、ハァとため息をついているが、ドルチェンコにはまだ切り札があった。
「まだだ、まだ我々にはアレがある。なんとかしてこの街を脱出できれば、森に隠してある秘密兵器でダイナをあっと言わせてやることができるのだ」
 そう、ドルチェンコの心にはまだまだ野望の火が赤々と燃えていた。初めて地球にやってきたときから、彼だけはまったく変わらずに侵略宇宙人の本分を保ち続けてきたのだ。


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