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避難所用SS投下スレ11冊目

978ウルトラ5番目の使い魔 62話 (5/18) ◆213pT8BiCc:2017/08/10(木) 13:47:45 ID:TiRezyjA
 以前に一度、立体映像で対峙したときの宇宙人の尊大な姿は忘れられない。奴はふてぶてしくも、自分たちウルトラマンに対しても脅迫じみた要求を突き付けてきたのだ。
 そのときに、その宇宙人が突き付けてきた要求の、破滅招来体でもやるかという悪辣さには一瞬冷静さを失いかけた。
 しかし、我夢たちの地球では、いわゆる〇〇星人といった宇宙人は現れていないが、ゼブブなどの例から地球外知的生命体の存在は確認されており、その宇宙人が要求の内容を確実に実行できるであろうことは、疑う余地がなかったのだ。
 宇宙人の要求を、結局そのとき拒絶することはできなかった。そして今日、我夢と藤宮はささやかな抵抗として、ハルケギニアに内包する災厄の芽を摘んでいっている。あの宇宙人は、自分たちウルトラマンと直接対決する気はないと明言したが、目的のためにこれから暗躍をはじめるとも宣言した。なにを仕掛けてくるか、想像もできないが、少しでもあの宇宙人の悪だくみに利用できるものを減らせば、それだけ救える者を増やすことにつながる。
 だが……我夢と藤宮は、それとは別に、ひとりの友人の心配をしていた。
「タバサ……」
 あの日以来、彼女も姿を消してしまった。
 万一のことがあったとは思わない。しかし、人間である以上、絶対がないということもわかっている。事実、自分たちも過去には何度も過ちを重ねた。
 だが、だからこそ信じてもいる。恐らく、今タバサが直面しているのは彼女の人生で最大の壁だろう……そのときに、あちらの世界で経験したことは必ず役立つはずだ。
 
 我夢と藤宮の活躍で、ハルケギニアは人知れず安定を取り戻しつつある。もしも今の状況がなかったら、とてもこううまくはいかなかったに違いない。
 
 そして、人知れず活躍しているウルトラマンは彼ら二人だけではない。
 ハルケギニアは狭いようで広く、しかも電信などがあるわけではないから辺境で事件が起きても伝わりにくい。そこで、もし宇宙人や怪獣が事件を起こしても、助けを呼ぶ声が届くころにはすべてが終わっていることもありうる。
 ならばパトロールをするしかない。見回りは大昔から、事件を未然に防ぐためにもっとも基本とされてきたことだ。今でも、ハルケギニアのどこかでは謎の風来坊が旅を続けていることだろう。
 そして、ウルトラ戦士がパトロールするのは地上だけではない。ハルケギニアの天空を象徴するふたつの月では、小規模ながらも極めて重大な戦いが起こっていた。
『ビクトリューム光線!』
 ハルケギニアの衛星軌道。ウルトラマンジャスティスの放った赤色の光線が、赤い月を背にした赤い怪獣に突き刺さる。始祖鳥にも似たシルエットの中央を射抜かれ、宇宙有翼怪獣アリゲラは目を持たない頭部から断末魔の叫びをあげて爆散した。
 アリゲラの最期を、ジャスティスは爆炎が収まるまで黙祷のようにじっと見つめていた。好き好んで倒したわけではないが、異様に凶暴性が高い個体で倒さざるを得なかった。三十年以上も前にも、アリゲラの同族はこの星にやってきたことがあるが、別宇宙ではアリゲラは群れで移動する光景が確認されていることから、そのときのも今回のも群れからはぐれたか追放され、そのために凶暴化した個体だったのかもしれない。
 ジャスティスはハルケギニアの星を振り返り、宇宙正義の代行者としての自分の役割としては異例なほどこの星に肩入れするなと思った。本来ならば、コスモスもこの星に来た以上、自分は宇宙の別の問題を解決するために旅立ってもいいはずだが、この星を今狙っている相手は悪質さのレベルでいえばジャスティスの知る限りにおいてもそうはいない。無視して、もしこの星の外にまで手を伸ばされたらまずい。


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