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避難所用SS投下スレ11冊目

963ルイズと無重力巫女さん ◆1.UP7LZMOo:2017/07/31(月) 20:44:37 ID:CWP4DxYk
 ネロは今から一、二ヶ月ほど前にとある山道の脇で蹲っていたのを仕事の帰りで歩いていたジュリオが見つけたのだという。
 怪我をしていた為、このままでは助からないと思ったらしい彼はそのフクロウを抱きかかえて山を下りた。
 それから獣医の話を聞いて適切に治療して傷が治った後、今ではすっかりジュリオのペットとして良く懐いている。
 とはいえケージに入れて飼ってるワケではなのだが、それでも彼とは一定の距離をおいて傍にいるのだ。
 ジュリオが呼びたいと思った時に口笛を吹けば、どこからともなくサッと飛んでくるのである。
「今じゃあこうして好きな時に抱えられるし、フクロウってこうして見てみると可愛いもんだろう?」
「は、はい…」
 まるで縫いぐるみの様に抱きかかえられる猛禽類を見て、思わず唖然としてしまう。
 恐らく、ふくろうをここまで我が子の様に手なずけてしまうのはハルケギニアでも彼だけだと、そう思いながら。

 そんな少女の考えを余所に、ジュリオは急に自分の元を訪ねてきたネロの頭を撫でながら話しかける。
「それにしても、お前はどうしてここへ来たんだ?念の為大使館には置いてきたけど………ん?」
 頭を撫でながら返事を期待せずに聞いてみると、ネロはおもむろにスッと右脚を軽く上げた。
 何だと思って見てみたところ、猛禽類特有のそれには小さな筒の様な物が紐で括りつけられているのに気が付く。 
 思わず何だこれ?と呟いてしまうと、傍にいた少女もまたネロの脚に付けられた筒を目にして首を傾げてしまう。。
「どうしました…って、何ですかソレ?」
「ちょっと待ってくれ…今外す。……よし、外した」
 ジュリオは慣れた手つきでネロの脚に巻かれていた紐を解き、掌よりも一回り小さい筒をその手に乗せる。
 筒は見た目通りに軽く、試しに軽く振ってみるとカラカラカラ…と中で何かが動く音が聞こえてくる。
 暫し躊躇った後、ジュリオはその筒を開けてみると中から一枚の手紙が丸められた状態で入れられていた。
「……手紙?」
 思わず口から出てしまった少女の呟きにジュリオは「だね」と短く答えて、それを広げて見せる。
 広げられた便箋の右上に、見慣れた宗教庁とロマリア大使館の印鑑が押されているのがまず目につく。
 つまりこれは宗教庁が大使館を通し、ネロを使って自分たちへ手紙を送ってきたという事になる。
 ネロの脚に手紙を取り付けたのは大使館だろうが、よくもまぁフクロウの脚に手紙入りの筒を取り付けられたなーと感心してしまう。
 まぁそれはともかく、手紙の差出人についてはジュリオも何となく分かっていたので早速手紙の本文を読み始めてみる。

 内容は今日届いた拠点の移動命令に関する事が書かれていとの事らしい。
 ワケあってその理由はギリギリまで伏せられ、ようやくこの手紙を送る許可が下りた事がまず最初に書かれていた。
(やれやれ…僕の見てぬ所で勝手に決めてくれちゃって…下の人間ってのは辛いもんだよ全く)
 自分達の都合など考えてもくれない宗教庁上層部への悪態をつきつつ、ジュリオはその『理由』に目を通し―――そして硬直した。
 それはジュリオや少女…否、ロマリアの国政に関わる者にとっては信じられないモノであった。


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