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避難所用SS投下スレ11冊目

958ルイズと無重力巫女さん ◆1.UP7LZMOo:2017/07/31(月) 20:34:24 ID:CWP4DxYk
「こっちを向け、博麗霊夢!」
「ちょ……わわッ!」
 しかし、目をカっと見開き驚愕の表情を浮かべる式はもう片方の手で霊夢の左肩を掴み、無理矢理彼女を振り向かせた
 その際に発した言葉から垣間見える雰囲気は荒く、先程自分たちに見せていた丁寧な性格の持ち主とは思えない。
 思わずルイズと魔理沙は霊夢に乱暴する藍に何も言えず、ただただ黙って様子を眺めるほかなかった。
 橙もまた、滅多に見ない主の荒ぶる姿に怯えているのか目にも止まらぬ速さで部屋の隅に移動してからジッと様子を窺い始める。
 そして藍の主人であり、霊夢に手荒に扱う彼女を叱るべき立場にある八雲紫は―――ただ黙っていた。
 まるで機能停止したロボットの様に顔を俯かせて、その視線は『魅惑の妖精亭』のフローリングをじっと見つめている。
『おいおい一体どうしんだキツネの嬢ちゃん、そんな急に乱暴になってよぉ?』
「今喋られると喧しい、暫く黙っていろ!」
 この場で唯一藍に対して文句を言えたデルフの言葉を一蹴した藍は、未だに狼狽えている霊夢の顔へと視線を向ける。 

 一方の霊夢は突然すぎて、何が何だか分からなかったが…流石に黙ってはおられず、藍に向かって抗議の声を上げようとした。
「ちょっと、いきなり何を―――」
 するのよ!?…そう言おうとした彼女の言葉はしかし、
「お前!どうしてその事を『憶えている』んだ…ッ!?」
 それよりも大声で怒鳴った藍の言葉によって掻き消された。
 
 突然そんな事を言い出した式に対し、霊夢の反応は一瞬遅れてしまう。
「え?――……は?今、何て――」
「だから、どうしてお前は『その時の事』を『まだ憶えている』と…私は言っているんだ!」
 しかし…今の藍はそれすらもどかしいと感じているのか、何が何だか分からない霊夢の肩を揺さぶりながら叫ぶ。
 紫が境界を操っているおかげで部屋の外へ怒鳴り声は漏れないが、そのせいなのか彼女の叫び声が部屋中へ響き渡る。
 目を丸くして驚く霊夢を見て、これは流石に止めねべきかと判断した魔理沙が彼女と藍の間に割り込んでいった。
「おいおいおい、何があったかは知らんが少しは落ち着けよ。…っていうか紫のヤツは何ボーっとしてるんだよ?」
「あ…そ、そうよユカリ!アンタが止めなきゃだれ…が……―――…ユカリ?」
 仲介に入った魔理沙の言葉にすかさずルイズは紫の方へと顔を向けて、気が付く。
 タルブで自分たちを助け、そして霊夢の夢の中にも出て来たというあの巫女モドキの話を聞いた彼女の様子がおかしい事に。
 ルイズの言葉からあのスキマ妖怪の様子がおかしい事を察した霊夢も何とか顔を彼女の方へ向け、そして驚いた。

 霊夢が話し出してから、急に凶暴になった藍とは対照的に沈黙し続けている八雲紫はその両目を見開いてジッと佇んでいる。
 その視線はジッと床へ向けられており、額から流れ落ちる一筋の冷や汗が彼女の頬を伝っていくのが見えた。
 今の彼女の状態を、一つの単語で表せと誰かに言われれば…『動揺』しか似合わないだろう。
 そんな紫の姿を見た霊夢は変な新鮮味を感じつつ、言い知れぬ不安をも抱いてしまう。
 これまで藍に続いて八雲紫という妖怪を永らく見てきた霊夢にとって、彼女が動揺している姿など初めて目にしたのである。

 あの八雲紫が動揺している。その事実が、霊夢の心に不安感を芽生えさせる。
 そして土の中から顔を出した芽は怖ろしい速さで成長を遂げ、自分の心の中でおぞましい妖怪植物へと変異していく。
 妖怪退治を生業とする彼女にもそれは止められず、やがて成長したそれが開花する頃には――心が不安で満たされていた。

「ちょっと、どういう事?何が一体どうなってるのよ…」
 押し寄せる不安に耐え切れず口から漏れた言葉が震えている。
 言った後でそれに気づいた霊夢に返事をする者は、誰一人としていなかった。


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