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避難所用SS投下スレ11冊目

953ルイズと無重力巫女さん ◆1.UP7LZMOo:2017/07/31(月) 20:24:26 ID:CWP4DxYk
「…まぁ概ね良好の様ね。…しかも、この世界の魔法については結構調べてるんじゃないの?」
「はい。この世界の魔法は広く普及しています故、情報収集には然程時間はかかりませんでした」
「それにしてもこの短期間で良く調べたられたわ。さすが私の式という事だけあるわね」
「いえ、滅相も無い。紫様が渡してくれたあの『日記』があったからこそ、効率よく進められたものです」
 藍はそう言って視線を紫からベッドの下、その奥にある一冊の本へと向ける。
 今から少し前…霊夢達の居場所を把握し紫が連れ帰った後、藍もまた幻想郷に呼び戻されていた。
 暇してただろうから…という理由で博麗神社の居間に座布団を用意した後、紫直々にあの『日記』渡されたのである。

 その『日記』こそ、とある事情でアルビオンへと赴いた霊夢がニューカッスル城で手に入れた一冊。
 本来ならハルケギニアには存在しない日本語で書かれた、誰かが残したであろう『日記』であった。
――『ハルケギニアについて』…?紫様、これは…
 霊夢と侵食されていた結界へ応急処置を施した後、彼女の見ていない場所で藍はその『日記』を渡された。
 表紙の日本語で書かれた見慣れぬ単語が、あの異世界のものだと知った彼女を察して、紫は先に口を開いて行った。
―――霊夢が召喚したであろう娘の部屋に置いてたわ…後は喋る剣もあったけど、そっちは私が調べておくわ
 そう言って彼女は右手に持っていた剣――デルフリンガーを軽く揺すってみせた。
 その後、藍をスキマでハルケギニアに戻した紫は霊夢とまだ狼狽えていたルイズから詳しい話を聞き出す事となった。
 異世界人であり、尚且つ学生としても優等生であろう彼女のおかげであの世界についての大まかな事はわかったらしい。

 しかし所詮は一個人だ。あの世界の事を全て知っているという事はないだろう。
 だから藍は橙と共にハルケギニアに居続け、現在も情報収集を継続して行っている。
 『日記』のおかげで国や地方の名前も比較的速くに分かったし、何より危険な情報も事前に知る事ができた。
「あの『日記』のおかげで、この世界では危険視されている亜人と下手に接触せずに済んだのは良い事だと私は思ってます」
 亜人のスケッチを興味深そうに眺めている紫を見て、藍は苦虫を噛み砕くような顔で呟く。
「あら?このオーク鬼やコボルドはともかく、翼竜人…や吸血鬼なんかとは話が通じそうな感じだけど…」
「とんでもありません。ハッキリ言って、彼奴らの宗教観では我々妖怪との共存も不可能ですよ」
 スケッチに書かれている翼人を目にして、藍はゲルマニアの山岳地帯で奴らに追いかけ回された事を思い出してしまう。
 最初は人の姿をして友好的なコミュニケーションを取ろうとしたが、かえってそれが仇となってしまったのである。

 悠々と大きな翼を使って飛ぶ翼人たちが自分に向けてどんな事を言ったのかも、無論覚えていた。
―――立ち去れ下等な人間よ。さもなくば我々は精霊の力と共にお前の命を奪って見せようぞ
 こちらの言葉に全くを耳を貸さない姿勢に、あの地面を這う虫を見るかのような見下した表情と目つき。
 きっと自分が来る以前に、大勢の人間を殺してきたのだろう。それこそ畑を荒らす虫を踏みつぶすようにして。


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