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避難所用SS投下スレ11冊目
95
:
ウルトラ5番目の使い魔 23話 (10/11)
◆213pT8BiCc
:2014/09/24(水) 02:02:07 ID:kjHCfTJM
シルフィードの頭では矢継ぎ早の質問にはパンクしてしまいそうだった。それでも、なんとかリクエストに答えようと頭をひねるものの、口数の少ないタバサを相手にするよりずっと難しいキュルケにどう答えたものか脳みそがついていかない。
だが幸いにも、キュルケの疑問はシルフィードの後から入室してきた麗人によって氷解された。桃色の髪を持つルイズに良く似たその麗人に睨みつけられると、興奮していたキュルケの血液も一気に冷え込んでしまう。そして、麗人は息を呑んでいるキュルケの目を見据えて言った。
「それだけ元気が余っていれば余計な前置きはいりませんね。お久しぶりですね、ミス・ツェルプストー」
「は、はい、お久しぶりです。ヴァリエール、せ、先生」
恐縮しながらキュルケは答えた。不遜が服を着て歩いているようなキュルケでも、この人に直接睨まれると子兎のようになってしまう。この、『烈風』カリンことルイズの母親カリーヌ・デジレ。学院で前学期に教師をしていたころは生徒たちを例外なく恐怖のどん底に叩き込んだ眼光はいささかの衰えも見せてはいない。
「さて質問に答えましょう。簡単なことです。ガリアからあなたたちがトリステインに入ったときから監視していたのですよ、私の使い魔がね」
「使い魔……あっ!」
キュルケは、カリーヌの肩に止まっている小さな文鳥を見てはっとした。
「わかったようですね。私は、世界中の空が閉ざされた時から使い魔を放って、トリステインに敵が侵入する気配がないかを監視し続けていたのです。そこに偶然、あなたたちが飛び込んできたというわけです。事情はどうあれ、あなたたちは私の教え子のひとり。ガーゴイルどもを破壊させて、気を失ったあなたたちをここまで運ばせてきました。理解できましたね?」
「は、はい!」
そういうわけかとキュルケはすべてを飲み込んだ。カリーヌの使い魔、巨鳥ラルゲユウスの力は主人ともどもハルケギニアでは伝説となっている。爪の鋭さは竜を上回り、五十メイルを超える巨体が音よりも早く飛べば眼下の町はその羽ばたきだけで灰燼に帰す。あらゆる幻獣を上回るパワーだけでなく、あるときは手のひらに乗るくらいまで小さくなることもできるので、それを利用して多様な計略をおこなうこともできる。『烈風』カリンがいるために、小国トリステインが他国から侵されなかったのはこの文鳥のように愛らしい守護神がいたおかげでもあるのだ。
なるほど、『烈風』の使い魔となればあの絶望的な状況をひっくり返すことも不可能ではない。キュルケは、あらためて最上級の形で礼を述べ、そしてこれまであったことの知っている限りを伝えた。
「……というわけです。ガリアのジョゼフ王は恐ろしい男です。無能王などと呼ばれていますが、実際は悪魔的な底知れなさを持つ破滅主義者です。側近のシェフィールドとかいう女を使って、恐ろしい謀略の数々をおこない、タバサも奴の手で……」
訥々と話すキュルケに、カリーヌは黙ってじっと聞いていた。ガリアの無能王の暗部、それが世界を滅ぼそうとしているほどのものとは常識的には信じがたいが、しかし。
「わかりました。数ヶ月間の幽閉生活、本当に大変でしたね。生徒の窮状になにもできなかったことは、教師の立場として申し訳ありませんでした。ガリアに対しては、私から女王陛下に具申して対策を練りましょう」
「あ、ありがとうございます!」
意外にあっさり信じてくれたことにキュルケは驚いた。実際のところ、話半分でもいいところだと思っていたのだけど、しかし『烈風』は嘘をついたりはしない。
だが実は、カリーヌにはキュルケの言をすでに信じざるを得ない材料が揃っていたのだ。キュルケが眠っている間にガリアから届いた速報、ジョゼフ王の虚無の担い手であることのロマリアの証明と聖戦への参加、これに裏がないと思うほどおめでたい頭をカリーヌはしていない。ただ、目覚めたばかりのキュルケにこれ以上の心労をかけてはいけないと気を遣ったのである。
そしてカリーヌは、さらにキュルケに驚くべきことを告げた。
「学生の身の上でありながらの貴女方の奮闘は賞賛に値します。ですが、事態はすでに貴女たちの力を超えて巨大化しているようです。これからは、貴女たちは私の指揮下として働いてもらいましょう」
「えっ! ですが、わたしはゲルマニアの。いえ、それよりもわたしたちには」
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