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避難所用SS投下スレ11冊目
94
:
ウルトラ5番目の使い魔 23話 (9/11)
◆213pT8BiCc
:2014/09/24(水) 02:01:14 ID:kjHCfTJM
シルフィードと、ジルやキュルケはあまりに一瞬の出来事にわけもわからず、ショックでそのまま気を失った。しかし、巨鳥はシルフィードを守るようにがっちりと掴んだまま、音の速さにも近い猛速で飛んでいく。その行く手を遮ることは、何人たりとて許さないという王者の飛翔。行く手の山々で猛禽は逃げ出し、オークやトロルも脅えて巣穴に引きこもる。圧倒的な威圧感を振りまきながら巨鳥は闇に包まれた空の下を飛翔して、やがて人里近くにやってくると速度を緩めて、王都トリスタニアのトリステイン王宮の中庭へとゆっくりと降りていった。
それから、およそ半日ほど時間が過ぎた頃になる。戦いの疲れから深い眠りについていたキュルケは、どこか見覚えがあるような寝室で目を覚ました。
「ここは、えっと……ヴァルハラ、じゃないみたいね」
質素ながらこぎれいに片付けられた寝室のベッドから身を起こし、周りを見回したキュルケは、自分がまだ天国とやらに導かれたわけではないらしいことを悟った。
手は動く、足も動く。胸に手を当てれば、ルイズが血涙を流して悔しがる豊満なふくらみを通して心臓の鼓動が伝わってくる。心配せずとも、まだ幽霊でもゾンビでもないらしい。
「どうやら、助かっちゃったみたい」
口に出して言うことで、キュルケは自分自身を安心させた。
完全に死ぬかと思ったけれども、死なずにすんだようだ。しかし、いったいどうして助かったんだろうかと、キュルケは寝ぼけが残る頭を揺さぶって、自分がどうなったかを確かめようと試みた。
服は清潔な寝巻きに着替えさせられているが、自分の杖は枕元に置いてあった。六人分のベッドが並べられた寝室には自分以外には誰もいないけれど、自分に危害を加えてきそうなものは見当たらない。
ここはどこか? 少なくとも、かなり大きめの施設か屋敷のようだけれど、不思議とどこかでこの部屋を見たような気がする。どこだったろうか? その答えが見つかるかもと思い、キュルケは窓辺に歩み寄ると、板戸で閉ざされていた窓を大きく開けて外の景色を見渡した。そして、さしものキュルケも驚いて自分の目を疑った。
「ここって、トリステイン王宮じゃないの!」
夢の続きかと思ったが、紛れもない現実がキュルケの網膜に飛び込んでくる。窓の外に広がっていたのは、何度も訪れたことのあるトリステイン王宮の光景そのままであった。
見回りをしている兵士がいる。庭の草木の手入れをしている庭師が窓の下で働いている。右を見れば城門が、左を見れば高い尖塔が幾本もそびえる王宮がある。王宮の建物に刻まれた、メカギラスとの戦いの際の火災の跡もそのままだ。
完全に思い出した。見覚えがあるのも当然。ここはバム星人との戦いがあったときに、一休みしていた兵士の控え室ではないか。それに気づくと、記憶と風景が見事に合致する。ここは天国でもヴァルハラでもなく、間違いなくトリステイン王宮だ。
「ど、どういうことよ! わたし、ええっ!?」
パニックに陥りかけ、なんとか落ち着こうと自分に言い聞かせるものの、納得できる答えなど思いつけるわけもなかった。
最後の記憶はトリステインの国境線の空の上。それがなにをどういう経緯を辿れば王宮に来ているのか、キュルケは豊かな想像力を持っているほうではあったけど、これらをつなぐシナリオを推理しろというのは神業でもなければ無理だったろう。
と、そうして騒いでいるのが聞こえたのだろうか、部屋のドアのノブがガチャガチャと回される音がしてキュルケは振り向いた。
「おっ! 赤いのやっと目が覚めたみたいなのね」
入ってきたのはすでに元気いっぱいに回復したシルフィードだった。また人間の姿になっているが、彼女の身につけているものはトリステインの女性兵士の衣装であった。
「シルフィード、あなた。無事だったのね。ああ、さっそくで悪いけど教えてちょうだい。あのときいったいどうやって助かったの? あなたが王宮まで運んでくれたの?」
「わわわ、そんなにいっぺんに言われてもわからないのね。えっと、えっと」
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