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避難所用SS投下スレ11冊目
92
:
ウルトラ5番目の使い魔 23話 (7/11)
◆213pT8BiCc
:2014/09/24(水) 01:57:58 ID:kjHCfTJM
それでも、無能王ジョゼフを疑う目はなお多い。しかし、それでいいのだ。シェフィールドの呼びかけはあくまで呼び水なのだから。ほら、もう本命がそこまで来ている。
「リュティス市民の皆さん! 我々はロマリア宗教庁、教皇ヴィットーリオ・セレヴァレ聖下の使いの者です。我々は、今この時を持ち、始祖ブリミルの御名においてジョゼフ一世どのを虚無の担い手と認定いたしました!」
聖獣ペガサスを駆って飛び、ジュリオが準備していたロマリアの神官団がジョゼフを前にして高らかに宣言した。
そして、大勢はこの時に決したと言ってよかった。
「おお、あれは本物のロマリアの! すると、やはり本当だったんだ」
「虚無の担い手。始祖ブリミルの再来だ! おお、なんて頼もしいお姿だ」
「ジョゼフ王こそ救世主、ガリアの英雄だ」
「英雄王ジョゼフばんざーい! ばんざーい!」
本当はシェフィールドとジュリオの差し向けた神官とのあいだに、あと二言三言の言葉のやりとりがあったのだが、もはやそれはどうでもよかった。
怪獣を倒した魔法という直接的な証拠と、なによりハルケギニアで絶対的な権威を持つロマリア宗教庁の公認。それらが絶対的なインパクトと説得力を有して人々の思考を完全に支配してしまったのだ。
かくして、無能王は英雄王になった。
リュティスの市民たちは、昨日まで蔑んでいた相手に歓呼の声を送り、ジョゼフもそれに応えてかっこうよく杖を掲げる。
しかし、ジョゼフの本当の心を知る者は誰もいない。
なんともはや、予定通り、計画通り。ジョゼフはあまりのたやすさに興奮などなく、ひたすら馬鹿馬鹿しさばかりを感じていた。
”シャルルよ見ているか? 俺は今、英雄になったんだぞ。実に簡単だった、俺は今こそお前を超えることができたのかもしれん”
心中で棒読みの言葉を並べつつ、ジョゼフは形だけは完璧な英雄王を演じ続けた。もはや眠気さえ覚えてくるけれど、これも英雄のつとめだと思って我慢した。
”それにしてもシャルルよ。俺とお前は昔、この国の民のために国をもっとよくしていこうと誓っていた。しかし、民とはいったいなんなのだろうな……?”
そしてシェフィールドは、輝ける存在になったジョゼフの勇姿に感動しつつ、精一杯の演出に心を砕いていた。
無言を貫くジョゼフに代わって弁舌をふるい、ジョゼフの威光をさらに高めるべく訴える。たとえそれがわずかな期間だけの、虚構で作られたものだったとしてもシェフィールドは構わなかった。
彼女は思う。ジョゼフさま、あなたは今まさに何者にも負けないくらい輝いております。たとえあなた様がそれを望まなかったとしても、ジョゼフさまほどの王の才覚を持つ人間などおりませぬ。憎むべきは、類まれな才能をさずかった天才を活かせずにあなどり続ける愚劣なガリアと、世界の人間たちのほうです。ならば、シャルルさまのお耳に届くよう、ヴァルハラまで響く愚民どもの断末魔のオーケストラを奏でてやりましょう。わたくしは永遠にあなた様にお供いたします。そしてすべてが終わった後で、地獄でわたくしが酌をしながらあなた様の覇業を語りましょうと。
ジョゼフの心に根ざす闇の詳細は、シェフィールドさえせいぜい表層しか理解できていない。従って、こうした行いが本当にジョゼフの喜びになるのか、実のところ彼女にも自信などなかった。
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