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避難所用SS投下スレ11冊目

91ウルトラ5番目の使い魔 23話 (6/11) ◆213pT8BiCc:2014/09/24(水) 01:56:23 ID:kjHCfTJM
 やったのは、もちろんジョゼフである。彼の発動したエクスプロージョンの威力によって、当て馬として用意された怪獣たちは与えられた役目どおりに派手に倒され、彼らの目論見どおりにリュティス中の人間の目を引いていた。
 
「おお、なんだ……あの化け物たちが一瞬で」
「魔法、魔法なのか? けど、あんな魔法見たこともないぞ」
「見ろ! あれ、あの空の上!」
 
 市民の何万、何十万という目が自分へ向いてくるのをジョゼフは感じていた。
 さて、ここまでは作戦どおり。リュティスの市民の頭の中に、エクスプロージョンは最高の形で刷り込むことができた。あとは、市民たちの頭の中が真っ白なうちに、伝説の虚無の名と救世主の存在を刻み込めばいい。
 が、ここまで来てなんだが、ジョゼフは市民に向かって名乗りをあげて演説をぶるということに、気乗りがまったくしなかった。ジョゼフにしては珍しいことに、自信がないと言ってもいい。
「民に語りかける仕事か。シャルルのやつならうまくやったであろうなあ。しかし俺はどうも、なにを言えばいいのか皆目わからん。シャルルとはいろいろ張り合ったが、こいつばかりはな」
「ジョゼフさまは凡人には理解できぬお方。それゆえ、愚民の機嫌とりなどは似合いませぬ。わかりました、ここはわたくしめがジョゼフさまの口となって、愚民どもに甘美な夢を見せてやりましょう」
「フフ、では任せるぞ。では、余はせいぜい偉そうに立っていることとしよう」
 おもしろそうに、ではお手並み拝見とばかりに不敵な笑みをジョゼフはシェフィールドに見せた。
 そしてジョゼフはガーゴイルの上に胸を張って立ち、リュティス全域を鋭い眼光を持って見渡した。その、たくましくも精悍な姿に人々の目は吸い込まれ、まるで神話の英雄のようにさえ神々しく見えた。
 
「あれはジョゼフ王! もしや、いやまさか」
「まさか、あの無能王が! い、いや、しかし」
 
 流れを察した市民たちの動揺が大きくなる。ジョゼフの精悍な姿に見惚れる心と、無能王を疑う心が人々の中でぶつかり合っているのだ。
 しかし、迷い戸惑う気持ちは心を混沌にして、どんなに聡明な人間の心にも空白を生じさせてしまう。
 シェフィールドはまさにその心の空白を突き、全リュティスの市民の心に影のように滑り込んだ。
 
「すべてのガリアの民よ、聞きなさい! この地を襲った悪魔の使者は今倒されました。あなたたちは救われたのです! 見たでしょう、怪物を倒した神々しい光を! あれこそ、始祖ブリミルの与えたもうた伝説の系統、”虚無”なのです! そして虚無を操り、奇跡を起こしたお方こそ誰でしょう! ガリアにあって始祖の血を引くお方! この国の正当なる統治者、ジョゼフ一世陛下なのです!」
 
 風魔法のマジックアイテムで増幅されたシェフィールドの声がリュティス全域に響き渡った。
 市民たちの中をいままでで一番の衝撃と動揺が走った。虚無、まさか! ジョゼフ王が、まさかそんな!
 人々の心は揺れ動き、一部ではすでに壮観なジョゼフの偉容に見惚れている者も出始めている。


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