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避難所用SS投下スレ11冊目

88ウルトラ5番目の使い魔 23話 (3/11) ◆213pT8BiCc:2014/09/24(水) 01:52:05 ID:kjHCfTJM
「と、いうわけで。シルフィード、あとはよろしくね」
「ええええええええ!!」
 最終的に責任を丸投げされたシルフィードは当然のように仰天した。当たり前だが、彼女としてはジルとキュルケがなんとかしてくれるものと期待していた。なのに、最後がコレとはきつすぎやしないか。
「ちょちょ! シルフィーじゃ逃げられないって言ってるでしょ! まだ二体もガーゴイル残ってるでしょ! ドッカーンてなっていいの! ドッカーンって!」
「矢がなくちゃどうにもならないよ。風韻竜は世界一速いんだろ、もうトリステインとの国境間際じゃないか。根性みせろ」
「ジルの鬼ーっ! 悪魔ーっ!」
 シルフィードは、平気で無茶ぶりしてくるところもやっぱりタバサの師匠だと思った。超実戦主義で、毎回背水の陣のスパルタを当たり前のようにやってくる。こちらの意思なんかちっとも考えちゃいないのだ。
 追いつかれたら爆弾で丸ごとにドカーン。それが嫌なら必死で逃げるしかないので、シルフィードは文字通り死んだ気になってがむしゃらに飛んだ。
「へえ、ガーゴイルどもが引き離されていくぞ。やればできるじゃないか」
 ほめられてもちっともうれしくなかった。今回一番肉体労働してるのは間違いなく自分だろう。そっちはやることやりきって気が楽だろうけど、こっちだって疲れているんだ、もう少し感謝のこもった言い方はないものか。
 しかし、シルフィードが速く飛べば飛ぶほど疲れるのに対して、ガーゴイルたちは疲労などなく同じ速さで追撃してくる。一度は引き離したものの、またも距離がぐんぐんと近づいてきた。
 まずい……シルフィードは一気に力を出した分スピードが衰えている。そこへ、それを見通したかのようにガーゴイルからシェフィールドの声が響いてきた。
「あははは! どうやらそこまでが限界のようね。あなたたちもよく頑張ったけど、勝負はより多く駒を持つほうが勝つものなのよ。さあ、もう遊ぶのも飽きたわ。このまま揃ってハルケギニアの空に輝く星にしてあげる!」
 勝ち誇るシェフィールドの笑い声。しかし今回は前までと違って油断してはおらず、ガーゴイルたちは無駄な動きをせずにまっすぐに迫ってくる。あの女は今度こそ本気だ。取り付かれたら、有無を言わさず大爆発を起こして吹き飛ばされるだろう。
 対して、こちらには打てる手が尽きている。シルフィードは、羽根の感覚がなくなりそうな中で必死に叫んだ。
「ふたりともーっ! お願いだからなんとかしてーっ!」
 すると、ジルは深々とため息をついてつぶやいた。
「……ふぅ、やれやれ、どうにか逃げ切れてくれと期待したんだけれど、やはり少し無理だったか。仕方ない、できれば使いたくなかったんだけど、奥の手を使うか」
 そうしてジルは片ひざを立ててしゃがむと、義足に打ち込まれているピンを数本引き抜いた。それで義足はジルの足から外れて、ごろりと転がった。
「やれやれ、こいつを作るのには苦労したんだけどな本当に」
「なんですのそれ? ああ、おっしゃらないでもわかったわ。爆弾でしょ、その義足」
 キュルケのQ&Aに、ジルは軽く口元をゆがめると、義足のももの部分の奥に火縄を突っ込んで火をつけた。
 これで爆発する。起爆は十秒後、投擲するタイミングを計っているジルにキュルケが呆れたように言った。
「驚いた人ね。爆弾を足に仕込んだまま、これまで跳んだり跳ねたりしてたの。わたしも大概だけど、あなたほど危険な香りのするレディは見たことないわ」
「使えるものは全部使うのが狩人の流儀でね。前に足をドラゴンに食われたから、今度は腹の中から吹き飛ばしてやろうと思って作ったのさ。シルフィード、腹減ってるなら半分食わせてやってもいいぞ」
「死んでもお断りするのね!」
「そうか、なら向こうにくれてやるとしよう」
 そう言って、ポイとジルと義足を宙に放り出した。義足はそのままくるくると宙を舞って、近づいてくるガーゴイルのほうへと飛んでいく。
 そして、ガーゴイルたちの正面に到達したとき、火縄が火薬に届いて起爆した。そう、例えるならばルイズの失敗魔法くらいの規模の爆発で。


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