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避難所用SS投下スレ11冊目

87ウルトラ5番目の使い魔 23話 (2/11) ◆213pT8BiCc:2014/09/24(水) 01:50:55 ID:kjHCfTJM
 シルフィードは全力で飛んで、少しでも敵が追いついてくるのを遅らせようとがんばった。本来ならガーゴイルの到達できないほどの超高空まで逃げるか、雲に飛び込んで撒くかするのだが、これ以上高く飛べば虫の雲に突っ込むことになる。また、こんなときに限って身を隠せるほどの雲は無い。
 つまり、ひたすらに真っ直ぐ飛んで逃げるしかないわけで、シルフィードが振り切れない以上、運命はジルとキュルケに託された。
「残りの矢は三本か。キツいねえ、狼の大群に囲まれたときのことを思い出すよ」
 まずはジルが弓を引き絞り、先頭のガーゴイルに矢を放った。狙いは違わず、矢尻はガーゴイルの頭に突き刺さり、次いで巻きつけられている火薬筒に引火して赤黒い炎がガーゴイルを両隣と後ろにいたのを合わせて四体ほどスクラップに変えた。
 しかし、炎の中から別のガーゴイルが群れをなしてまた出てくる。生き物ではないからひるみもしない様子にジルはうんざりしたように言った。
「狼ならリーダーを潰せば逃げ出すんだけどねえ。これだから貴族の作るものは嫌いだよ、値段だけは張るくせにかわいげがない」
「凍矢をお守りにしてる人がよく言うわね。でも、ガリアの商品はダメなのが多いわよねえ。あの国でショッピングしようと思うと錬金の真鍮めっきと混ざりものの宝石のアクセサリーばっかり。寮で隣の部屋の子に買っていってあげたら、「だから高級品はトリステインの上品なものに限るわ」って言うんだけど、よく見たら『トリステイン王国・クルデンホルフ公国立工房製』って保証書に書いてあるのよね。だから目利きは大切なのよ、まあわたしは目利きされなくても美しいけど」
 芝居の台詞のように早口でまくしたてながらも、キュルケは流れるような繊細さで杖を振るい、凝縮した火炎弾を撃ち放った。
 爆発! またも数体の不運なガーゴイルが使い物にならないゴミになって空に舞い散っていく。まったくもったいない話だ。今ぶっ壊したガーゴイルに使われた分の税金でいくらの没落貴族が仕事にありつけることか。
 ジルとキュルケがほぼ同じくらいの数を撃破したことによって、敵の数はぐっと減った。が、脅威は変わらずに迫ってくる。一体でも取り付かせたらこっちの負けだ。
「ははは、早くなんとかしてなの! 怖い気配がどんどん近づいてきてるなのお!」
「うるさいよ。こっちだって疲れてるんだ。揺らさずにまっすぐに飛びな」
 ジルの矢とキュルケの魔法がガーゴイルたちを狙い撃って吹き飛ばす。しかし、相手も今度は編隊を広く取ってきたので同時に倒せた数はさっきより少ない。
「これが最後の矢だ」
「奇遇ね。わたしも次の魔法で打ち止めみたいよ」
 ふたりは同時に魔法と矢を放った。ガーゴイルの編隊のど真ん中でふたつはひとつになって、先にゴルゴスを粉砕したほどではないが、それなりに大きな爆発を引き起こしてガーゴイルたちを吹っ飛ばした。
 そして……それによってふたりの武器は尽きた。
 ジルは、ふうと息をつくとシルフィードの背中に腰を下ろした。次いでキュルケも杖をしまうと、ポケットから櫛を取り出して髪をすきはじめた。
「ちょちょ! どうしたのねふたりとも! まだガーゴイルはふたつ残ってるのね! すぐ後ろまで来てるのね」
「矢がない」
「精神力もないわ」
 簡潔にきっぱりとふたりは答えた。使える攻撃手段は今ので使いきり、今のふたりはなんのあらがいようもできないただの人間にほかならなかった。
 目の前に迫ってきているガーゴイルに対して打てる手は、ない。この期に及んでじたばたとするよりは、逃げ切れるほうに懸けて余計なことはしないほうがいいだろう。


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