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避難所用SS投下スレ11冊目
785
:
ルイズと無重力巫女さん
◆1.UP7LZMOo
:2017/05/31(水) 21:25:42 ID:WZ82hnBc
地上であるならば、灯りひとつない山道を歩くだけでも相当な時間を要する。
それに対し、霊夢の様にスーッと空から飛んでいく事が出来れば時間も然程かかることは無い。
距離にもよるが、今回の場合ならばたったの二、三分程度ヒューッと飛んで行けばすぐにでも辿り着く程度だ。
「…!あれは?」
火が立ち上っている場所のすぐ近くまで飛んできた彼女は、眼下で何かが盛大に燃えているのを知った。
全体的なシルエットはやや四角形っぽいものの、その四隅には車輪が取り付けられている。
それが山中の少し開けた場所で盛大に横転しており、ついで勢いよく燃え盛っていたのである
一瞬馬車の類なのかと思ったものの、それを引いていたであろう馬は見当たらない。
逃げてしまったのか、それとも馬車みたいな何かを襲った存在の喰われてしまったのか…
そこまでは彼女の知るところではなかったし、今の彼女には別に考えるべき事があった。
夢の中の出来事とはいえ、こんな光景を目にしてしまっては無視したり見なかったことにするのは彼女的に難しかった。
それにもしかすると、まさかとは思うが…これが夢ではなく現実に起こっている事なのだとすれば、
そこまで考えた所で、霊夢は面倒くさそうなため息を盛大についてみせた。
結局のところ、夢の中だとしても自分は博麗の巫女なのだという現実を改めて思い知った彼女なのである。
「夢の中とはいえ…流石に見過ごすのは良くないわよ…ねぇ?」
一人呟いた彼女はやれやれと肩を竦めながら、そのままゆっくりと燃え盛る馬車モドキの傍へと降り立つ。
着地まで後数メートルという所から馬車モドキを燃やす炎の熱気は凄まじくなり、彼女の肌に汗が薄らと滲み出てくる。
服で隠れている肌にもはっきりと伝わってくる熱気が、目の前で燃え盛ってる炎がどれだけ凄まじいモノなのかを証明している。
「うっ…これはひどいわ。中に人がいたとしても、これじゃあ流石に…」
顔に掛かる熱気を服と別離している左腕の袖で塞ぎながら、彼女は周囲に何か落ちていないか見回してみる。
もしもこの馬車モドキに人が乗っていたとするならば、何かしら証拠の一つはある筈だ。
そう思って辺りを見回してみたのだが、周囲の地面には何も散らばっておらず、粘土交じりの土だけしか見えない。
「まぁ特に期待はしてないけど…それにしたって、誰がこんな事をしでかしてくれたのかしら?」
彼女自身それ程真面目に探していなかった為、今度は馬車モドキを燃やしたであろう犯人を捜し始める。
どういう方法でここまで燃やしたかは知らないが、少なくとも生半可なやり方ではここまでの惨事にはならなかっただろう。
先ほどと同じように周囲と頭上へ視線を向けて探ってみるが、当然の様に怪しい者や人影は見つからない。
まぁこれも予測の範囲内であった霊夢は一息ついた後、目を閉じて周囲の気配を探るのに集中し始める。
相手が何であれ、まだ近くにいるというのなら何かしらの気配を感じられる筈である。
それは霊夢が本来持つ勘の良さから来るモノなのか、それとも先天的なハクレイの巫女としての才能の一つなのかまでは分からない。
だが、異変以外の妖怪退治の仕事があった際にはこの能力を使って、隠れていたり物や人に化けた妖怪を見破ってきた。
今回もまた、何処かで馬車モドキが燃えているのを眺めているであろう『何か』を探ろうとした彼女であったが、
意外にも早く、というか呆気ない位に…馬車モドキをここまで酷い状態にしたであろう『モノ達』を見つけたのである。
「………ん?―――――!これって…もしかして妖怪?」
彼女は今立っている方向、十一時の方向に良くない気配―――少なくとも人ではないモノを感じ取った。
気配の先にあるのはモノへと続く鬱蒼とした茂みであり、時折ガサゴソと揺れている。
気配と共に滲み出ている霊力の質と量からして、相手が下級程度の妖怪だと判断する。
(夢の中とはいえ、まさか久しぶりに妖怪と戦うだなんて…働き過ぎなのかしら?)
そんな事を考えながら彼女は目を開けると、気配を感じ取った方向へと視線を向けつつスッと懐へ手を伸ばす。
懐へ忍ばした右手が暫く服の中を物色した後、目当てのモノを掴んでそれを取り出した。
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