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避難所用SS投下スレ11冊目
783
:
ルイズと無重力巫女さん
◆1.UP7LZMOo
:2017/05/31(水) 21:21:07 ID:WZ82hnBc
とはいえ、このまま気の赴くまま動いてしまっては迷ってしまうのは必須であろう。
足元もしっかりと見回しつつ、霊夢は何か目印になるようなものがないか闇の中をじっと睨みつけていた。
まるで闇の中に潜んでいる不可視の怪物と対峙するかのようにじっと凝視しながら、あたりを見回していく。
しかし、彼女の赤みがかった黒い瞳に映るのは闇の中に佇む針葉樹や凸凹の山道だけである。
何処なのかも知れぬ山中で立ち往生となった霊夢は一瞬だけ困った様な表情を浮かべたものの、すぐにその顔が頭上を見上げる。
まるで空を突き刺さんばかりに伸びる針葉樹の隙間からは、森の中よりもやや薄い夜空が広がっている。
幸いにも彼女が空へ上がるには十分な隙間は幾つもあり、ここよりかは幾分マシなのには違いない。
「んぅ〜…面倒くさいけど、誰かが待ち伏せしてるって気配は無いし…しゃーない、飛びますか!」
寝起きという事もあってか気だるげであった霊夢は仕方ないと言いたげなため息をつくと、その場で軽く地面を蹴りあげた。
するとどうだろう。彼女の体はそのまま宙へと浮きあがり、ふわふわ…という感じで上空目指して飛び上がっていく。
そして三十秒も経たぬうちに、空を飛ぶ霊夢は無事濃ゆい闇が支配する森の中から脱出する事が出来た。
地上と比べて風の強い空へ浮かんでいる彼女は、容赦なく肌を撫でていく冷たい風に思わずその身を震わせる。
「ふぅ〜…やっばり夏とはいえ、こう風がキツイと肌寒い…ってあれ?」
針葉樹の枝を揺らす程の強い風におもわずブラウス越しの肩を撫でようとした霊夢は、ある違和感に気づく。
感触がおかしい。ルイズに買ってもらったブラウスの感触にしては妙に生々しかったのである。
思わず自分の両肩へと視線を向けた直後、霊夢は今の自分がルイズから貰った服を身に着けていない事に気が付く。
無論、一糸纏わぬ生まれたまま…ではない。今の彼女が身に着けている服、それはいつもの巫女服であった。
紅白の上下に服と別離した白い袖、後頭部の赤いリボンと髪飾り。そしていつもの履きなれた茶色のローファー。
いつもの着なれた巫女服を身に纏っていたという事実に今更になって気が付いた彼女は、目を丸くして驚いている。
何せついさっきまで大分前にルイズが買ってくれた洋服一式を着ていたというのだ、おかしいと思わない筈がない。
「…ホントにどういう事なの?だって私は気絶する直前まで……う〜ん?」
流石の彼女も理解が追いつかず、思わず頭を抱えそうになったとき―――ふと、ある考えが頭の中を過った。
こうして落着ける場所まで来て、良く良く考えてみればこの意味不明の状況を全てそれに押し付ける事ができる。
「――――まさか…ここは夢の中ってオチじゃないわよね?」
首を傾げた霊夢は一人呟いた後で、ここでは自分の疑問に付き合ってくれる者がいない事にも気が付いた。
あの巫女もどきとぶつかった後、呆気なく気を失ってしまったのは理解していたので、きっと現実の自分は今も意識を失っているのだろう。
それならば今自分が体験している出来事は、全て自分の夢の中という事で納得がいく。
闇夜の森の中で目を覚ましたのも、いつの間にか巫女服になっていたのも全て夢だというのなら説明する必要もない。
「な〜んだ、それなら慌てる必要も無かったじゃないの。馬鹿馬鹿しい」
ひとまず今の自分が夢を見ているという事で納得した霊夢は、安堵の色が混じる溜め息をつきながら空中で仰向けになった。
空を飛ぶことに長けた霊夢らしい特技の一つであり、何かしらする事がなければ幻想郷でもこうして寝転がる事が多い。
今が日中で快晴ならば風で流れゆく雲を間近で見れるのだが、当然ながら今は夜である。
しかも月すら雲で隠れているせいで、眺めて見れれるものは闇夜だけと言う情緒もへったくれもない天気。
だが今の霊夢は綺麗な夜空は見たかったワケではなく、今の自分が夢を見ているだけという事に安心しているのだ。
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