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避難所用SS投下スレ11冊目
771
:
ルイズと無重力巫女さん
◆1.UP7LZMOo
:2017/05/31(水) 20:57:08 ID:WZ82hnBc
噴水の近くにいた女たちが飛んでくるハクレイに黄色い叫び声を上げて広場から逃げていく。
お年寄りたちも同じような反応を見せたものがいたが、何人かはそれでも逃げようとはしなかった。
三者三様の反応を見せる中で、勢いよく跳んできたハクレイは少女のいる広場へと降り立った。
青く妖しく光るブーツの底と地面から火花が飛び散り、そのまま一メイルほど滑っていく。
これには跳んだハクレイ自信も想定していなかったのか、何とか倒れまいとバランスを取るのに四苦八苦する。
「おっ…わわわ…っと!」
まるで喜劇の様に両腕を振り回した彼女は無様に倒れる事無く、無事に着地を終えた。
周囲と通りからその光景を見ていた人々が何だ何だとざわめきながら、何人かが広場へと入ってくる。
彼らの目には、きっと彼女の今の行為が大道芸か何かに見えているに違いない。
「…すげー、今の見た?あっこからここまで五メイルくらいあったぞ」
「魔法?にしては、杖もマントも無いし…マジックアイテムで飛んだとか?」
「さっきまで光ってたあのブーツがそうかな?だとしたら、俺も一足欲しいかも…」
「っていうかあの姉ちゃん、スゲー美人じゃね?」
暇を持て余している若者たち数人がやんややんやと騒いでいるのを背中で聞きつつ、少女は逃げようとしていた。
今、自分が息せき切って走ってきた距離を一っ跳びで超えてきたハクレイは、自分に背中を向けている。
だとすれば逃げるチャンスは今しかない。急いで踵を返して、もう一度人ごみに紛れればチャンスは…。
そんな事を考えつつも、若者たちが騒いでいる後ろへ後ずさろうとした少女であったが―――幸運は二度も続かなかった。
「ふぅ〜…こんな感じだったかしらねぇ?何かまだ違和感があるけど――――さて、お嬢ちゃん」
「…ッ!」
一人呟きながら自分の足を触っていたハクレイはスッと後ろを振り返り、逃げようとしていた少女へ話しかける。
突然の振り返りと呼びかけに少女は足を止めてしまい、騒いでいた若者達や周囲の人々も彼女を見遣ってしまう。
相手の動きが止まったのを確認したハクレイは、キッと少女を睨みつけながらも優しい口調で喋りかける。
「お互い、もう終わりにしましょう。貴女だって疲れてるでしょう?私も結構疲れてるし…ね?」
「で、でも…」
相手からの降伏勧告に少女は首を横に振り、ハクレイはため息をつきながらも彼女の傍まで歩いていく。
そして少女の傍で足を止めるとそこで片膝をつき、相手と同等の目線になって喋り続ける。
「私は単に、貴女が私から盗んだモノを返してくれればいいの。それだけよ、他には何もしない」
「…他にも?」
「そうよ。貴女がやったことは…まぁ『犯罪』なんだけど、私は貴女を付き出したりしないわ」
本当よ?そう言ってハクレイは唖然とする少女の前に右手を差し出して見せる。
周囲にいて話を聞いていた人々の何人かが、何となくこの二人が今どういった状況にいるのか察する事ができた。
大方、この女性から財布か何かを盗んだであろう少女を諭して、盗られたモノを取り返そうとしているのだろう。
王都は比較的治安が良いが、だからといって犯罪が一つも起こらないなんて事は無い。
大抵は盗賊崩れや生活に困窮している平民、珍しいときは身寄りのいない子供や貴族崩れのメイジまで、
様々な人間が大小の犯罪に手を染めて、その殆どが街の衛士隊によってしょっぴかれてきた。
中には目の前にいる少女の様な子供まで衛士隊に連れて行かれる光景を目にした者も、この中には何人かいる。
残酷だと思われるが、犯罪で手を汚ししてしまった以上はたとえ子供であっても小さい内から大目玉を喰らわせなければいけない。
痛い目を見ずに注意だけで済ましてしまえば、十年後にはその子供が凶悪な犯罪者になっている可能性もあるのだから。
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