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避難所用SS投下スレ11冊目

751ウルトラ5番目の使い魔 58話 (23/24) ◆213pT8BiCc:2017/05/16(火) 11:36:56 ID:qB1md0Gc
「英雄になりたがる奴にろくなのはいねーよ。ブリミルさんだって、なりたくって始祖なんて呼ばれるようになったんじゃないだろ。だいたい、英雄ルイズの銅像がハルケギニア中に立つ光景なんて想像したくねえ」
 才人のその言葉に、皆は「かっこいいポーズで立つルイズの銅像」が世界中に聳え立つシーンを想像した。ひきつった笑みをこぼす者、ププッと笑いをこらえられなくなる者など様々だが、誰もが一様にそのシュールな光景に腹筋を痛めつけられており、ルイズは急に恥ずかしくなってしまった。なお余談ではあるが、皆の想像の中の英雄ルイズの像の横には忠犬サイトの像が並んでいた。
「はぁ、もういいわよ。考えてみたら、教皇がいなくなってこの時代の担い手は減っちゃったし、秘宝とかなんとかいろいろあったわね。なんか一気にめんどくさくなってきちゃったわ」
 気が抜けた様子のルイズに、今度は皆から安堵した笑いが流れる。そう、それでいい、才人の言うとおり、人生は長い、まだ燃え尽きるには早すぎる。
 ブリミルとサーシャも、子孫たちの愉快な様子に笑っていた。こうしてつまらないことで笑い合える、それができる未来があるというだけで、自分たちのやってきたことは無駄ではなかった。それがわかっただけで十分だ。
 
 と、そのとき壁にかけられていた時計が鐘を鳴らして時報を告げた。どうやら、かなり長い間話し続けてしまっていたらしい。
 ブリミルとサーシャが帰らねばならない時間が近づいている。さて、残りの時間をどう使うべきだろうか? 重要なことはほぼ聞いた、あと何か聞き逃していることはないだろうか?
 時間は少ない。しかし、おしゃべり好きなアンリエッタやキュルケなどは、少しでも話す時間があるならサーシャからブリミルとの間にどんなロマンスがあったのかを聞き出そうとし、いいかげんにしろとカリーヌやアニエスから止められている。
 平和な時間、それもあとわずかしかない。そんな中で、ルイズは疲れた様子のブリミルに恐縮しながら礼を述べた。
「始祖ブリミル、どうも騒がしいところですみません。ですがあなたの子孫として、もう一言だけお伝えしておきたいのですが、よろしいですか」
「もちろん、君たちの言葉に閉ざす耳は僕にはないよ」
「では、始祖ブリミル……このハルケギニアを、わたしたち子孫をこの世に残してくれて、ありがとうございます。わたくしたちの遠い遠い、素敵なおじいさま」
 優雅な仕草で会釈したルイズに、ブリミルは照れながらも頭を下げ返した。
「こちらこそ、もうないものと思っていた未来を見せてくれてありがとう。君たちなら、僕らと同じ間違いはせずに、いつかマギ族も追い抜いていける。いつでも応援してるよ、僕らの可愛い遠い遠い孫の孫の孫たち」
 にこりと笑いあう先祖と子孫。年の差実に六千才のふたりは、今では同じものを見つめていた。


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