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避難所用SS投下スレ11冊目

748ウルトラ5番目の使い魔 58話 (20/24) ◆213pT8BiCc:2017/05/16(火) 11:28:07 ID:qB1md0Gc
 才人やルイズもじんと感じ入っている。ティファニアは杖を握りながら涙を滝のように流している。さすがにタバサやカリーヌたちは気丈に立っているが、心に思うところはあったようで視線は動かしていなかった。
 ただ、エレオノールやルクシャナは少し考え込んでいて、皆の様子が落ち着くと、それを確かめるように切り出した。
「ねえ、ちょっと疑問なんだけど。未来でのこのことを知った始祖ブリミルが過去に戻ったら、歴史が変わっちゃうんじゃないかしら?」
 皆がはっとした。確かに、未来でのこの顛末を知っているなら、ブリミルたちにはやりようがいくらでもある。しかしブリミルは少し考えると、それを否定するように言った。
「いや、たぶんだけど大きな影響はないんじゃないかな」
「なぜ? 根拠を示してくださいませんこと?」
「カオスヘッダーが浄化できたのは、地球という星でそれなりの条件が揃ったからだよ。残念ながら、僕の時代では無理だね。人が少なすぎて、カオスヘッダーは僕らを観察対象にすら見ないだろう。と、いうよりも……僕らの時代はすでにカオスヘッダーの目的の、なあんにもないがゆえに秩序が保たれてる世界に近い。もう間もなくしたら、カオスヘッダーは勝手に僕らの世界から去っていくだろうね」
 ブリミルの自嘲げなつぶやきに、ふたりの学者も返す言葉がなかった。ブリミルの時代の世界人口はすでに一万人以下に落ち込んでしまっている。文明を維持できる範囲ではなく、カオスヘッダーからすればコスモスも含めて誤差の範囲となり、目的を達成したと判断したカオスヘッダーは次の惑星を求めてこの星から去っていく。そしてわずかに残った人間たちによって、数千年をかけての復興が始まるのだ。
「けれど、未来で起こることに対して、いろいろ書き残したりすることはできるんじゃないの?」
「もちろんそのつもりだよ。聞いたけど、実際この時代にも祈祷書とかなんとかの形でけっこう残ってるようだね。特に、あの首飾りは役に立ったようだね。それと、ミーニンもこっちで元気にやってるようでよかった」
「なら、過去に戻ってさらなる始祖の秘宝を残すことも」
「できるけどね、それならすでにこの時代に影響があってもいいはずだろ? でも、特になにもない。なら、それを前提にして過去で行動したら?」
「え? え?」
 頭がこんがらがる面々、これがタイムパラドックスだ。原因と結果のつじつまが合わなくなり、わけがわからなくなってしまう。時間旅行はこれがあるから難しい、何をすれば何が起こるかが読めないのだ。
 しかし、理論はめちゃくちゃになっても、この世界では実際にタイムワープができてしまう。それについては、ブリミルは投げやりに言うしかなかった。
「つまり、やってみないとわからないってことさ。心配するだけ無駄だよ、いくら考えても頭がバターになるだけさ」
 思考放棄だが、実際それしかないようだった。エレオノールやルクシャナは、学者として考えることをやめるのには抵抗があったものの、論理的に組み立てようのない問題相手に沈黙するしかなかった。
 歴史が変わるか変わらないか、それこそやってみないとわからない。そして仮に変わったとして、それを認識できるかもわからない。そういうものだと割り切るしかないのだ。


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