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避難所用SS投下スレ11冊目

73ウルトラ5番目の使い魔 22話  ◆213pT8BiCc:2014/08/11(月) 01:30:47 ID:WGhDb4EY
 彼女を包囲しているガーゴイルから銃弾や矢が飛んでくることはない。なぜなら、ガーゴイルたちはそれどころではない事態に陥っていたからだ。
「あらまあ、わんぱくなワンちゃんたちだこと」
 なんと、ガーゴイルたちに向かって、味方であるはずのフェンリルが襲い掛かっていた。本物の狼同様に鋭い爪と牙を持つフェンリルが食らい付いていく度に、ガーゴイルたちの鎧がちぎられ、体の一部であった鉄の破片が飛び散っていく。
 こうなると、ガーゴイルたちもモデルになった人間の思考パターンの一部を受け継いでいる以上、反撃せざるを得ない。あっというまに場は鋼鉄のガーゴイルと鋼鉄の狼が互いに相食む混乱の巷と化した。そしてむろん、これはシェフィールドの意思などでは断じてなく、慌てたシェフィールドが指揮ガーゴイルの目を通して原因を探し回ったところ、涼しい顔をしているジルが視界に入ってきた。
「この始末はお前の仕業か、こじき女! いったい私のフェンリルになにをした!」
「フン、今頃わかったかバカめ。別にたいしたことじゃない、ちょっと薬を嗅がせてやっただけさ」
 そうしてジルは、パラパラと砂のように細かい薬がこぼれてくる小袋をかざして見せた。
「ファンガスの森のマンドラゴラなどから作った毒薬さ。私の家系は代々猟師で薬には詳しいんでね。人間には無害だが、鼻の効く狼や熊なんかが嗅げば、当分のあいだ錯乱して暴れ続けるのさ。フェンリルとか仰々しい名前をつけるだけに、嗅覚も本物なみにすごいようだからよく効くね」
「き、貴様っ。よくも舐めた真似をっ!」
「舐めた真似はあんたのほうだろ。赤毛の嬢ちゃんに気をとられて、私が風上に回ってるのに気づかなかったのが悪いのさ。おまけに自分の飼い犬の弱点も忘れてるなんてね。シャルロットは小さいときから相手を舐めたりしないいい子だったけど、自称飼い主のお前たちは飼い犬にも及ばないようだね」
「なっ、に……っ!」
 あざけるジルの言葉に、シェフィールドはガーゴイルの向こうで奥歯が削れるほど歯を食いしばった。
 単純にプライドを傷つけられたことだけではなく、タバサ以下とののしられたことがシェフィールドの血液を沸騰させた。
”私が、私がシャルロットより劣るだと? 冗談ではない、このガリアで一番有能な者はこの私だ。ジョゼフ様のおそばにいる私がそうでなくてはならないんだ!”
 シェフィールドの脳裏に、絶対的な戦力を与えられていながら敗北を喫したロマリアでの記憶がまた蘇る。
 いやだ! また無様をさらしてジョゼフ様のお役に立てないのはいやだ!
 不問にされたとはいえ、シェフィールドにとってあの敗北は大きなトラウマになっていた。このガーゴイルの兵団はロマリアに攻め込む前から、いずれジョゼフのために役立てようと準備していた虎の子で、晴れやかにお披露目できるのを心待ちにしていたというのに、この惨状はなんだ? ゲルマニアの小娘と泥臭い平民ふたりに一方的にやられている。


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