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避難所用SS投下スレ11冊目
722
:
ルイズと無重力巫女さん
◆1.UP7LZMOo
:2017/04/30(日) 22:18:02 ID:oww8q7tg
大通りの真ん中、通行人たちの頭上で制止した彼女も少年を見失ったのか、しきりに顔を動かしている。
そして、先ほど以上に驚嘆している人々の中に必死で逃げるあの男の子を見つけた彼女は、そちらに人差し指を向けて叫んだ。
「……見つけたわよ!待ちなさいッ!!」
「え?…うわっマジかよ、やべぇッ!」
左手の御幣を見て彼女をメイジと勘違いしたのか、少年は焦りながらすぐ横の路地裏へと逃げ込んだ。
相手を見つけた霊夢は「逃がさないわよ!」と叫びながら、結構なスピードでルイズの前から飛び去って行く。
他の人たちと同じように彼女を見上げていたルイズがハッとした表情を浮かべた頃には、時すでに遅しという状況であった。
「ちょ…ちょっとレイム!私とマリサを置いてどこ行くのよ!」
「なーに、アイツが私達を置いていったんならこっちからアイツの方へ行ってやろうぜ」
『だな。オレっち達でアイツより先に、あのガキをとっちめてやろうぜ』
両手を上げて路地で叫ぶルイズの背後から、今度は魔理沙と置き去りにされたデルフが喋りかけてくる。
その声に後ろを振り向いた先には…既に宙を浮く箒に腰かけ、デルフを背負った魔理沙がルイズに向かって右手を差し伸べてくれていた。
彼女と一本の頼もしいその言葉に、ルイズもまた小さく頷いて、差し出しているその手をギュッと握りしめる。
「勿論よ!こうなったら、あの子供を牢屋にぶち込むまで徹底的に追い詰めてやるわ!」
「そうこなくっちゃ。罪人にはそれ相応の罰を与えてやらなきゃ反省しないもんだしな」
自分に倣ってか、気合の入ったルイズの言葉に魔理沙はニヤリと笑いながら彼女を箒に腰かけさせる。
その一連の動作はまるで、お姫様を自分の白馬に乗せてあげる王子様のようであった。
それから約三十分以上が経ち、ようやっと霊夢は少年を再度見つける事が出来た。
大量の金貨が詰まった思い袋を抱えて走っていた彼の体力は既に限界であり、全力で走ることは出来ない。
その事を知ってか、御幣の先を眼下にいる少年へと突きつけている彼女は不敵でどこか黒い笑みを浮かべながら彼に話しかけた。
「さてと、いい加減観念なさい。この私を相手に逃げ切ろうだなんて、最初っからやめとけば良かったのよ」
「…くそ!舐めやがって」
袋を左脇で抱えると右手で杖を持ってみるが、今の状態ではまともな攻撃魔法は使えそうにも無い。
精々エアー・ハンマー一発分が限界であり、今詠唱しようにも隙を見せればやられてしまう。
周囲は二人のやり取りに興味を抱いた群衆で固められており、このまま逃げても背中から羽交い絞めにされて捕まるのは明白であった。
(ち――畜生!ここまでは上手い事進んでたってのに、最後の最後でこれかよ)
八方ふさがりとしか言いようの無い最悪の状況に、少年は心の中で悪態をつく。
思えば最初に盗むのに失敗しつつも、土煙に紛れてあの少女達から金を盗んだところまでは良かったと少年は思っていた。
だがしかし、霊夢が自由に空を飛べると知らなかった彼はあれから三十分間散々に逃げ回ったのである。
狭い路地裏や屋内を通過して何とか空飛ぶ黒髪女を撒こうとした少年であったのだが、彼女相手にはまるで効果が無かった。
ある程度走って姿が見えなくなり、逃げ切ったと思った次の瞬間にはまるで待っていたかのように上空から現れるのである。
どんなに走ろうとも、どこへ隠れようとも気づいた時には手遅れで、危うく捕まりそうになった事もあった。
けれども、幸運は決して長続きはしない。既に少年は自分の運を使い切ろうとしていた。
博麗霊夢という空を飛ぶ程度の能力と、絶対的な勘を持つ妖怪退治専門の巫女さんを相手にした鬼ごっこによって。
もしもハルケギニアに住んでいない彼女を知る者たちが、少年の逃走劇を見ていたのなら誰もが思うに違いない。
あの霊夢を相手に、よくもまぁ三十分も走って逃げれるものだな…と。
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